『Death the Guitar』開発者インタビュー|ギター未経験者がギターモチーフの作品で最優秀賞を獲得できた理由とは

『Death the Guitar』開発者インタビュー

ゲーム制作初心者ながら「Indie Games Contest 学生選手権(以下、学生選手権)」で見事最優秀賞を獲得したトロヤマイバッテリーズフライド氏にインタビューを実施しました。

全くのギター未経験者だと語る彼が、なぜエレキギターをモチーフにしたアクションゲームを制作したのか。審査員から「エレキギターのかき鳴らし音とアクションの爽快感が素晴らしい」との評価を受けた本作が生まれたきっかけと、制作過程でこだわった部分に迫ります。

ギターサウンドが魅力の2Dアクションゲーム『Death the Guitar』

主人公は持ち主を殺されたエレキギター。電気と音を操り人間を滅ぼせ!『Death the Guitar』はドット絵+ゲームボーイサウンドの楽曲+エレキギターSEで表現される、ポップでバイオレンスな2D横スクロールアクションゲームです。主人公は持ち主を殺されたエレキギターで、音波で敵を倒すことができるほか、アンプを震わせて大ジャンプしたり、電気を流して遠距離の敵に攻撃することもできます。ステージの地形をよく理解し、気づかれないようにスピーディーに倒していきましょう。

「音」と「電気」の二要素をエレキギターというモチーフに収斂させたミニマルなゲームデザインがこだわりです。Xボタン一つで多彩なアクションを繰り広げることができます。最高に爽快でドライブ感のあるプレイ体験をぜひお試しください!

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Twitter ▶ @toroyakun

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―まずは自己紹介をお願いします。

トロヤマイバッテリーズフライド:
トロヤマイバッテリーズフライドという名前でゲーム制作活動をしています。気軽に“トロヤ”と呼んでいただけると嬉しいです。

僕は昔から何かを表現することが好きで、今後のキャリアを考えた時に「創作活動に専念しよう」と決め、大学を中退して2022年に美術大学に入学しました。ちょうどその頃からゲーム制作に取り組み始めましたね。

―以前まで通われていた大学では、どのようなことを学んでいたのでしょうか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
工学を専攻していました。大学ではプログラミングの授業などもあったと思いますが、僕はほとんど授業を受けることなく、ゲーム制作に必要な技術は独学で身につけました。大学を退学した後、東京の美術専門の予備校で1年間デッサンや絵を学び、その後美術大学の受験に臨みました。

―創作活動やゲーム制作をしたいと思うようになったきっかけを教えてください。

トロヤマイバッテリーズフライド:
子供の頃からコンテンツづくりが好きで、中学から高校にかけて、さまざまな動画制作をしていました。また、以前通っていた大学では映画サークルで映画作りに携わっていました。

ゲーム制作への明確な思いは中学生の頃からで芽生えました。当時からインディゲームで遊ぶのが大好きで、Steamでさまざまなゲームを遊ぶようになりました。その頃から「将来自分が創作するなら、自分が一番好きなゲームを作りたい」という思いが強くなりました。最近はゲーム制作に集中して創作活動を行っています。

―ちなみに、トロヤさんが好きなゲームは何ですか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
3歳の頃にプレイした『クラッシュ・バンディクー』シリーズは、僕にとってゲーム人生の始まりの一つと言っても過言ではありません。独特な物理空間に身を置きながら進んでいくという世界観が面白く、キャラクターたちも可愛らしく、全てが愛おしいゲームですね。

インディーゲームだと『Night in the Woods』や『Papers, Please』、『Celeste』などの作品が好きです。あとは東方プロジェクトにのめり込んだ時期があって、弾幕シューティングも遊ぶようになりました。その頃から音楽を掛け合わせたゲームに惹かれるようになりましたね。

―学生選手権に参加した理由は何でしょうか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
『Death the Guitar』は元々2022年に行われた同人ゲーム・インディーゲーム展示会の「デジゲー博」に向け制作された作品です。展示会での評判が予想以上に良かったため、作品を改良して正式にリリースすることを考えるようになりました。ちょうどその頃、学生選手権の応募を見つけ、「ゲーム制作の励みにもなるし、将来的なキャリアにおいてゲーム開発者との関わりも必要だ」と思ったので、応募をしました。

―コンテストでは見事最優秀賞を受賞されましたね。改めて、おめでとうございます!授賞式当日はいかがでしたか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
ありがとうございます!二次選考の際にコナミの社員の方とお話しする機会があったんですが、授賞式ではその時にお話した方からトロフィーを渡していただいたので、めちゃくちゃ嬉しかったです。

また、当日はIGCのイベントも一緒に行われていたので、会場はとても盛り上がっていたように思います。授賞作品ブースで展示もしていただき、来場者がプレイしている様子を目にすることができました。

―お客さんの反応はいかがでしたか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
褒めてくださる方もいらっしゃった一方で、改善点を指摘してくださる方もいらっしゃいました。特に、当たり判定や攻撃判定の厳しさに関するコメントが数名ありました。また、地形の入り組みがキルの爽快感につながりにくいという意見も多く寄せられました。現在、これらの意見を参考に適宜修正しています。

『Death the Guitar』はティーンエージャーや20代の若い世代をターゲットにしていますが、今回はターゲット層のお客さんにプレイしていただき、貴重な意見をいただくことができました。とてもためになる時間でした。

―『Unknown Pyramid』で優秀賞を受賞したRainyDollGamesさんにもインタビューを行ったんですが、「トロヤくんとお友達になれた」と仰っていましたよ。

トロヤマイバッテリーズフライド:
本当ですか!嬉しいです。授賞式当日はRainyDollGamesくんには本当に良くしてもらいました。彼はゲーム制作に対してとても意識が高いんですよ。熱量が本当に高くて尊敬しています。

ゲーム制作に関する悩みなどを制作者同士で話す、という経験自体初めてでしたし、自分と同世代の人でゲームを制作している人がいなかったので、とても新鮮でした。仲間が増えたようでとても嬉しかったです。

こだわったのは、ギターの生音と血しぶきの表現

―『Death the Guitar』は音楽が魅力的な作品ですが、この音楽はトロヤさんご自身が制作されたんでしょうか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
そうです。まだまだ手探り状態ではありますが、ゲーム音源で作曲するのが好きなので楽しんで作れたと思います。ギターのアイデア源や効果音は友人にお願いして演奏・収録してもらいました。『Death the Guitar』に出てくる音楽はゲームボーイのピコピコ音とギターの生音をミックスさせているんですが、戦い方によって音の感じ方が変わってくるので、ぜひゲーム体験と一緒にサウンドを楽しんでほしいです。

また敵を倒す際に出る血しぶきもこだわって制作したので、そこも注目していただきたいですね。

―ゲームの概要を知らない状態でプレイしましたが、敵を倒した時に血しぶきが飛んだのでビックリしました(笑)。

トロヤマイバッテリーズフライド:
バイオレンスな雰囲気を入れたいと思ったので、少し刺激的なゲームにしました。決して暴力が好き、というわけではありません(笑)。

ドット絵だけどリアルかつマンガチックな描写で、血の色は少しポップで…。血しぶきの演出は絶妙な美意識を目指して作り込みました。このゲームはアクションゲームですし、敵を倒した爽快感を味わってもらうのが一番の狙いなので、血しぶきの表現はかなりこだわった部分です。

―エレキギターが主人公のゲーム、というのはかなり珍しいと思うのですが、本作はどのように着想を得られましたか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
先ほどお話したギター好きの友人がきっかけです。美大の課題でギターについて取材する機会が多くあったので、友人の話を聞いている内にエレキギターに興味を持つようになりました。僕はギター未経験者なんですが、アンプやエフェクターといった電子機器に繋いで生音を加工して様々な音色を作り出していくのがとても魅力的に感じて。

こういうエレキギターの魅力をアクションゲームに落とし込んだら面白いと思ったので、ギターの音と電気の要素を組み合わせたアクションゲームを作りました。

―制作で特にこだわった部分はどこでしょうか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
効果音ですね。主人公のエレキギターが敵を攻撃をする際にギターの音を鳴らしたいと思ったので、友人に「ゲームオーバーになった時は音が下がるようにしてほしい」といったような要望を出しながら効果音を制作しました。主人公がジャンプする時の音にもこだわっていて、何種類かの音がランダムで出るようにしています。

ゲームを盛り上げるのに必要な要素は組み込みつつ友人の音楽の感性に合わせて弾いてもらったので、ゲーム好きの方だけでなくギター好きの方にも楽しんでいただけるのではないか、と思います。

―素敵なご友人に協力してもらいながら制作されたんですね。

トロヤマイバッテリーズフライド:
そうですね。彼がいなかったらギターをモチーフにしたゲームは生まれなかったと思うので、とても感謝しています。

―では、実装面で難しかった箇所はありますか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
そもそもゲーム作りの経験が浅いので、アクションを作るだけでもかなり苦労しました。キャラクターが壁にめり込むのを防いだり、敵が勝手に落ちないようにしたりするために、何十行ものコードを書かないといけないのが大変で…。

プログラミングで一番大変だったのは血しぶきの演出ですね。先ほどもお話したように血しぶきのリアルさにこだわりたかったので、 物理的な要素やバトルの流れなどを考えながら作り込んだんですが、ここもかなり苦労しました。ですがその甲斐もあって「血しぶきの演出が良い」と、色んな方に言っていただきました。実装は大変でしたが、独特な世界観を出すことができたので結果的に良かったと思います。

―敵を倒したときの派手な演出は、プレイしていて爽快でした。この血しぶきの演出にはトロヤさんのこだわりが詰まっていたんですね。

トロヤマイバッテリーズフライド:
僕は『Hotline Miami』という2Dアクションゲームが好きなんですが、そのゲームは家中の敵を倒した後、部屋に残った戦いの痕跡を見てから家に帰るまでがワンセットなんです。自分が戦った空間を一瞥して、「これだけ敵を殺したんだ」というのを味わう体験ができるのが面白くて、僕自身とても衝撃を受けました。

『Death the Guitar』にもその要素を盛り込んで、血しぶきが飛び散った部屋を見まわしてから次の部屋に進むように演出しています。

「ありきたりではないゲームデザイン」を常に考えている

―トロヤさんがゲーム制作で大事にしていることはありますか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
「ありきたりではないゲームデザインにしたい」という想いは常にありますね。『Death the Guitar』に関しても、音のアクションと電気のアクションをエレキギターという一つのモチーフに集約された作品は他にはないと思います。

―個人制作でここまで突き詰められた作品は少ないように思います。個人制作をする中で独学ならではの苦悩もあるんでしょうか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
苦手な分野を教えてくれる人がいない、というのは独学の個人制作者なら誰もが感じる悩みじゃないでしょうか。僕は3D制作が苦手なのでなるべく避けているんですが、専門学校なら周りの生徒や先生に教えてもらえるので、苦手分野を克服しやすいと思います。そこは純粋に羨ましいですね。

―ネットや動画だけでは解決できない部分もあるので、確かに大変だと思います。冒頭で2022年の春からゲーム制作を始めたとありましたが、『Death the Guitar』の他に制作されたゲーム作品はありますか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
3本制作していて、一つは『Death the Guitar』と同じゲームエンジンで作った横スクロールのシューティングアクションゲームです。あとの二つはUnityを使って一週間でゲームを制作する「Unity 1week」で作った見下ろし型のシューティングアクションと『トカイノウルフタイピング』というタイピングゲームですね。Unity roomで試遊できるので、ぜひそちらもチェックしていただければと思います。

Unity room ▶ https://unityroom.com/users/toroyakun

憧れのゲームに匹敵する作品を作っていきたい

―このゲームを通じて伝えたいメッセージや想いがあれば、ぜひお聞かせください。

トロヤマイバッテリーズフライド:
『Death the Guitar』は地形に依存したアクションゲームで、高台を利用して敵から身を隠しながら一気に飛び込んで攻める、スニークや潜伏要素があるゲームです。作風はドット絵の可愛さとバチバチのギター音、派手な血しぶきの演出など、若干「世紀末」的な要素を含みながらも、キャラクターはどこか愛おしい、という新しいデザインに挑戦しました。

今回のコンテストや色んな方から受けた評価を通して「ゲームを完成させて世に出したい」という想いが強くなったので、2024年末を目標にリリースできればと考えています。学生選手権での評価を受けた作品ですので、学生の内にリリースできると嬉しいですね。

完成したらぜひ皆さんに新しいゲーム体験をお届けできればと思います。ぜひ指と目と耳で、本作を楽しんでください。

―完成を楽しみにしています!ちなみに、今後展示会等に参加するご予定はありますか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
2023年の7月に開催されるBit Summitに出展するので、まずはそこを目標にゲーム配信用のステージを作り込んでいく予定です。実装を予定しているボス戦は、9月に開催される東京ゲームショウまでに作っていきたいですね。ボス戦は友人のギターサウンドをふんだんに使ったBGMで、より音楽を楽しめるような面白いバトルを作り込めればと思っています。

―では最後に、数年後はどんなクリエイターになっていたいですか。

トロヤマイバッテリーズフライド:
今よりもさらにクオリティの高いゲームを作れていれば良いですね。僕が中学校時代から遊んできたゲームに比べると、ボリュームやビジュアル、音楽面でまだまだ負けていると思うので、自分が憧れていたゲームに匹敵できるようなゲームを作れたら嬉しいです。

―トロヤさんの今後の活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました!

 

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