本質の”気づき”にふれるゲームデザインを『HOW TO DIE.』インタビュー【Seeds by GCG】

ゲームクリエイター甲子園に登場した中から18作品が、ゲームクリエイターズギルドが運営するクリエイター支援のためのコミュニティレーベル「Seeds by Game Creators Guild」の第二弾として参加することが決定しました。
今回のインタビューは18作品のうちの1つ『HOW TO DIE.』をピックアップします。

このインタビューシリーズでは、ゲーム作品に焦点を当て、制作の裏側に迫ります。どのような構想を経て形づくられたのか、学生クリエイターのゲーム制作への思いや今後の展望についても探っていきます。

井戸掘り隊/『HOW TO DIE.』


井戸掘り隊は、「ゲームクリエイター甲子園 2022(以下、甲子園)」において総合賞 佳作のほか、企業賞 Phoenixx賞、SEモバイル・アンド・オンライン賞、2次審査員賞 三宅俊輔賞を受賞した制作チーム。

このゲームは日本ゲーム大賞を目指して制作されました。しかし、制作が始まって2ヶ月後に企画をリセットする決断をし、チームメンバーが納得するゲームを作ろうという思いで作り直されました。ゲームのコンセプトに込められたアイデアや制作者の思いを聞きました。

井戸掘り隊 チームメンバー紹介
四辻涼介ディレクター / アートディレクター
福島広人レベルデザイナー
岩田海来デバッグ / 映像 / 仕様書
入江颯太プログラマー

今回のインタビューはチームメンバー全員にご参加いただきました。

【作品紹介】
青と赤、2つのブロックを操作し、青ブロックを様々な方法で破壊していくパズルゲーム。
操作するスティックの動きと2つのブロックの動きをリンクさせ、ブロックを破壊した時のエフェクトや効果音、振動などの演出へこだわりと、「1ステージ内で同じ破壊方法は使用できない」というルールを設けるなど、他に類をみない「どうやって死ぬか」という視点で制作された作品です。

《「みんなのゲームパレード」より『HOW TO DIE.』の企画書が見れる!》
『Follow_You』を実際に遊んでみたい方は、作品紹介ページ内の「作品紹介PDF」をクリック!『HOW TO DIE.』作品紹介ページ ▶https://gameparade.creators-guild.com/works/392

企画をリセット、みんなが納得するゲーム制作を

―『HOW TO DIE.』を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

レベルデザイナー 福島さん:
日本ゲーム大賞(以下、ゲーム大賞)向けに制作していたので、テーマの「感触」を実現する話から始まりました。
四辻くんが「スティックの動きと自機の動きを連動させて自機がぶつかって移動するの感触がいいんじゃないか」といった案を採択しました。次に中身に関するアイデアをみんなで出し合いました。

「プレイヤーが操作する自機が死んだら、ステージクリアって面白くない?」という提案が最初にあって、みんな最初は困惑気味で「それなんなん?」って感じだったんですが「よくよく考えたら面白くね?」「今までにないよ」「じゃあやろう」となって、そこからゲームを成り立たせるためのシステムを考えた結果あの形になりました。
1回、企画をリセットしたこともありましたが形にできました。

―企画をリセットしたのはいつぐらいですか。

福島さん:
4月初めぐらいですね。企画を考え始めたのは2月です。

―制作から2ヶ月経ってリセットするのは問題ありませんでしたか。

福島さん:
実は、プログラムを担当していた入江くんが、使い回せるようにプログラムを組んでくれていました。企画の方向性自体はそんなに変わっていなかったので、入江くんからしたら「苦しかったぞ馬鹿野郎!」かもしれないです。本当に入江くん、ありがとう。

―リセットを決断するにあたって大きかったことは何ですか。

ディレクター / アートディレクター 四辻さん:
「作っている感じ」を見ていて、面白くなさそうで、みんなが妥協で作っていると感じたので「このまま作っても賞を取れなさそうやし、新しくしよう」って入江に相談したら「俺もそう思ってた」と言ってもらえて、新しく作り変える決断ができましたね。

―どういう部分が面白くなかったなと感じましたか。

福島さん:
ゲーム自体も、面白いと感じる部分があまりに少なくて、楽しく遊んでもらえる様子がイメージできない状態でした。制作過程に妥協があると認識し、やり直すことを決断してくれました。

―リニューアルした部分はどんなところでしょうか。

福島さん:
元々の案がパズルゲームだったのに対して、パズルアクションになったのが大きな変化です。前の企画は四角を転がして解いてくパズルでしたが、がっつりアクションになって、移動の縛りに囚われなくなった点が、割と大きな変化かなと思います。

”死ぬ”ほど楽しい『HOW TO DIE.』

―アピールしたい点を教えてください。

福島さん:
ゲームとして大きくこだわった点はアイデアです。
破壊が気持ちいい新しいアイデアの部分と、全体的に操作していて気持ちいい感触の良さ、破壊した時の振動とかエフェクトが綺麗に入るなどのアートの統一感あたりですかね。

もう1つは直感的に遊べること。何も考えずに遊んでても、このゲームの面白さの本質に触れられるところにこだわっています。
このゲームの面白さの本質の部分は、磁器の破壊方法・クリア方法が複数あるからこそ自分で選択するところにあって、その選択を繰り返してステージを進んでいった結果、自分の選択が間違いだったことに気づいて、もう1回それをやり直しに行くという、「自分の選択で進めながらも、間違えたらやり直せる」ここが本当にこだわった部分です。

私はステージやレベルデザイン担当だったので、大々的に言っていますが、プレイヤーが何の気なしにばーって遊んでも、クリアしたステージをもう1回遊びに行く体験を得られるようにしたことに1番こだわったと思います。

―感覚的にクリアしていたら違う方法でステージ突破が必要になるという試行錯誤する面白さがこだわりポイントというところですね。
―ほかにもアピールしたいところはありますか。

四辻さん:
完璧だったようで。

福島さん:
これは完璧に説明しすぎちゃったかな!

四辻さん:
ミスターパーフェクト!

―入江くんや岩田くんはいかがですか。

デバッグ / 映像 / 仕様書 岩田さん:
納得する死に方は結構アイデアを出したよね。

福島さん:
確かに、プレイヤーにとって理不尽な瞬間は結構なくなりましたね。「なんで死ぬねん」って思うような状況はなくなりました。

四辻さん:
見てわかる死に方と、見てわからない死に方があります。例えば火で死ぬとか、炎と弓を組み合わせることで、死に方が増えていく部分に発見であったり面白さがあるんかなと思っていますね。

福島さん:
あとアウトラインの統一とか。

四辻さん:
あ! 自機を破壊するブロックは、大体アウトラインが赤になっていて警告色で危ないよって伝えています。ゲームを進めていく中で、見るだけで分かるヒントをちょこちょこ入れたりしています。

福島さん:
『HOW TO DIE.』を展示会などで説明する場面が多くて、その中でも結構自分が気に入っているアピールポイントの説明があって”気づきのデザイン”って勝手に呼んでいるものがあるんです。パズルゲームに限らず、ゲーム全般において、プレイヤー自身が気づいた時って、めっちゃおもろいと思うっていう話ですね。

例えばアクションゲームなら「この敵ってこの武器が弱点なんじゃないの、って気付き始めた時って面白い」という話で、このゲームではそういう”気づきのデザイン”をたくさん用意しています。

例えばステージに存在するクリア方法の数が事前に見えたり、説明はしていないですけど情報はあって、しかも気づけるタイミングもちゃんと用意している。これに気づいた時に「あ、これってそういうことなんじゃ」「こういう考え方できるな」とプレイヤーの思考が伸びていく部分はアピールしたいポイントかな。

―『HOW TO DIE.』を試遊された方からは、どのような反応がありましたか。

福島さん:
一番印象に残っている感想は、小説の一節に例えられたことがあって「トルストイの幸福への家庭は1つだが、不幸への家庭は様々だ」みたいな。ステージクリアの方法は普通1個だけど、死亡という不幸に対してはいっぱい過程があるよね。 クリアの幅と過程が複数あるという話だと思うんですが、そういう一節で例えられたのが一番面白かった感想かなと思います。

当日まで修正を重ね、遠足先でもパソコンを開いて作業

―『HOW TO DIE.』の実装で難しかったことはありますか。

プログラマー 入江さん:
1番実装に時間かかったギミックは、移動するブロックの関連かなと思います。
プレイヤーを潰す判定、箱が潰れた時に爆発する判定、赤い箱を潰した時は移動せず止まる特別な処理が入っています。スイッチで押した瞬間は動いて、離すと逆側に戻るように移動方向を切り替える、その4つが変に干渉しまくって、ずっとバグっていたので解決に一番時間かかったかな。

―クリア方法が複数あると大変そうですね。4月に企画をリセットして実質2ヶ月で制作だと大変でしたか。

入江さん:
プログラムをそんなに本気で組んだことがなく、勉強に時間を費やしたので余計しんどかったのかな。

福島・四辻さん:
ありがとうございます。

―完成したのはどれぐらいの時期でしたか。

福島さん:
ゲーム大賞に向けての完成は5月末です。

入江さん:
なんなら提出日の当日です。

四辻さん:
その日に学校行事で遠足みたいなのがあって。

福島さん:
遠足先でパソコン開いて修正していました。みんなで「ここ、こうしようよ」「てか、こうした方がいいんじゃないの」みたいなことを言い合って作っていましたね。

―なかなかハードでしたね。今後アップデート・改善したい点はありますか。

福島さん:
私としてはステージを単純に増やしたいのと、破壊方法やギミックをまた増やしたいですね。今ある8ステージをチャプター1として、チャプター2を作って大幅にテーマを変えるとか、大胆な拡張ができたら、1番面白いなと思いますね。他の皆様方はアプデするならどうでしょうか。

四辻さん:
ゲーム中に出てくるメニュー画面やステージ選択のUI面に関しては、もうちょっと見やすく、さらにゲームの世界観を伝えたりとか、見ているだけで面白いって思ってもらえるようにしたいです。

入江さん:
工数を完全に無視するのであれば、自分はプレイヤーの移動処理を1から作り直したいです。現状は、スティックを倒しきった時に動くのではなくて、中にある球が動いて壁に当たった時に箱が動くようになっているんで、若干の感覚の違いを直したい。

岩田さん:
壊れ方の種類は他にもいっぱい考えてあったので、チャプター2として実現できればいいなって思いますね。

「みんなのゲームパレード」から『HOW TO DIE.』を応援!

今回ご紹介した『HOW TO DIE.』は、開発中ゲームのβ版が集まるサイト「みんなのゲームパレード」にて掲載中!

『HOW TO DIE.』作品紹介ページ ▶https://gameparade.creators-guild.com/works/392

 

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「Seeds by Game Creators Guild」とは

「Seeds by Game Creators Guild」は、ゲームクリエイターの若きスターがここから羽ばたいていくことを支援するためのコミュニティレーベルです。

クリエイターコミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」が運営する「みんなのゲームパレード」に掲載されている作品や「ゲームクリエイター甲子園」に応募された作品の中から、特に輝いていたゲームタイトルを応援します。

本レーベルは、パブリッシャーではなくゲームクリエイター支援のためのコミュニティレーベルを基本コンセプトとし、特にコミッションなどをお支払いいただかず、必要な実費のみでご利用いただけます。

未来のある優れた作品がこのレーベルに集まることによって、ユーザーや業界への認知機会を増やし、本レーベルを通してスタジオ設立や、大手パブリッシャーへのステップアップにつながっていくことを目的とします。

Seeds by Game Creators Guild 公式サイト ▶ https://www.creators-guild.com/seeds

「ゲームクリエイター甲子園 2023」開催中!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。

このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。

「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

【ゲームクリエイター甲子園 2023 エントリー情報】

エントリー・チーム登録期間:2023年1月30日(月)~10月31日(火)16時59分
作品提出期間       :2023年1月30日(月)~11月7日(火)16時59分

※作品がない状態でのエントリーも可能です。
※一作品につき一回チーム登録が必須となります。個人参加の場合もチーム登録をお願いします。
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です。

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【応募資格】

年齢  :小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数 :無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です

「ゲームクリエイター甲子園 2023」エントリーはこちら

 

ゲームクリエイターズギルドとは
ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)スキルや知識を学びゲームクリエイターとして成長・活躍し続けたい、同じ業界にいる仲間と市場の動向や技術についてなどの交流したい、日本のゲーム業界・職業自体の価値を上げ今より良い環境を作っていきたい……。そんなゲームを愛する人たちの未来に、必要な情報や機会を提供します。ゲームクリエイターズギルド公式サイト ▶ https://game.creators-guild.com/

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