留学生の就活に必要なこととは|中国出身 若手クリエイターインタビュー

今回インタビューを実施したのは、中国出身の若手クリエイター、benzさん。「人生の選択肢を増やしたい」と単身日本への留学を決意した彼が語る、留学生の就活に必要なこととは何か。留学生の方や日本でクリエイターとして働きたいと思っている方はぜひご覧ください!

中国から単身日本へ。人生を変えたゲームとの出会い

– benzさんがエンタメに興味を持ったきっかけは何でしょうか。

日本のアニメやゲームに触れたことがきっかけです。僕が生まれた頃には中国で日本のアニメが放送されていて。僕自身も4歳の頃にエヴァを観ましたし、ドラゴンボールとかも観ていました。小学生の頃は日本のゲームでたくさん遊びました。

– 小さい頃から日本のアニメ・ゲーム文化に触れられてきたんですね。では、日本のゲームで好きなタイトルはありますか?

『モンスターハンター』と『ゼノブレイド』が好きです。特にゼノブレイドはクロスとⅡが好きです。シナリオが良いですし、背景もすごく広くて初めてプレイしたときはとても感動しました。ゼノブレイドはキャラクターに感情移入をしてじっくり楽しむことができるのが一番の魅力だと思います。

– 高校卒業後に来日されたと伺いましたが、なぜ日本に留学しようと思ったのでしょうか。

「人生の選択肢を増やすため」ですね。これからの進路を考えたときに、自分が興味のある業界や仕事に就いた方が後悔しないですし。両親からは「自分がやりたいことをやるように」と言ってくれ、日本に留学しました。それに、先ほど挙げたモンスターハンターやゼノブレイド、ポケモンといったゲームの制作案件に関わってみたいとも思っていて。なので一年半ほど日本語学校に通った後、専門学校のCG科に入学しました。

– 学校ではどういったことを勉強されましたか?

デッサンや3Dソフトの使い方とかですね。学校に入学するまではそういった勉強は全くしていなかったので、一から学びました。入学当時はゲーム制作の勉強をしたいと思っていたのですが、実際にやってみたところ、モデリングよりもアニメーションの制作のほうに魅力を感じて。それからアニメーターを目指すようになりました。

– そうだったんですね。では、尊敬している日本のアニメーターはいますか?

日本人アニメーターだと、ソニーピクチャーズで活躍されているCGアニメーターの若杉 遼さんです。海外でも有名な方で、スパイダーマンの制作にも携わられています。将来的には映像制作にも関わりたいと思っているので、制作の裏話などを聞かせてもらえる機会があれば嬉しいですね。

若杉 遼さん
2012年にサンフランシスコの美術大学Academy of Art Universityを卒業後、 Pixar Animation StudiosにてCGアニメーターとしてキャリアをスタート。 2015年よりサンフランシスコからカナダのバンクーバーに移り、現在はSony Pictures​ Imageworksに所属。 映画スタジオでアニメーターとして仕事する傍ら、3DCGアニメーションに特化したオンラインスクール 「AnimationAid」の創設者として、運営の他、講師として教えている。 これまで参加した作品は『アングリーバード』(2016)、『コウノトリ大作戦』(2016) 『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』(2017)などがある。
わかすぎものがたり HPより

– アニメーターを目指すにあたって、おすすめの本はありますか?

前職の先輩に教えてもらった、アニメーター向けの「アニメーターズサバイバルキット」です。元ディズニー社員が書かれた本で、アニメーションの制作原理や技術周りの話が丁寧に描かれているんです。全379Pで、読み切ればかなり勉強になると思いますよ。2Dアニメーションの話が書かれているので、もし興味があればぜひ!世界的にも有名な本なので。

– ディズニーで働いていた方が書かれた本なんですね。とても興味深いです!

留学生に送る!就活準備に必要なことベスト3

– 専門学校を卒業後は日本の映像会社に就職されたとのことですが、留学生が日本で就活をするにあたって必要なことは何でしょうか。

一つ目は、エントリーシートを先生や友達に見てもらうこと。二つ目は、面接前に会社の情報や口コミなど事前に調べて逆質問をいくつか用意しておくこと。会社の成長方針や、今後どのような事業に力を入れていく予定なのか、など今後の展開を聞いておくと良いと思います。そして三つ目は、たとえ複数社の選考に落ちたとしても、心は落ち込まないようにしておくこと、ですね。

– どれも大事な準備ですね。特に三つ目は、就活中のメンタル維持に必要な準備になってくると思います。人気企業を受けるとなると、何百・何千ものエントリーの中から数名分の枠を競い合うことになりますし。「落ちて当然」くらいに思っておいた方が気持ちが楽かもしれません。

– では、benzさんが実際に就活で使った“面接のコツ”みたいなものはありますか?

会社のWebサイトやピッチ資料などに目を通すようにしました。面接担当の方がサイトや資料に載っていた方の場合は、そのことに触れてみたり、個人的な趣味を話してみたり。しっかりと会社の下調べを行ってから面接に挑みました。

– 素晴らしい情報収集力ですね!これは面接官の心を掴めそうです。

僕は自分の目的を達成させるために、前向きかつ貪欲に挑戦してきました。こういったガッツも就活には必要だと思います。特に留学生の方は、そこにプラスアルファで語学の勉強が必須になってきます。在学中にやっておくことがたくさんありますが、それ以上に在学中は良い思い出を作って欲しいですね。

入社からわずか一ヶ月でコロナ禍に。立ちはだかるコミュニケーションの壁

専門学校を卒業したbenzさんは、2020年に日本の映像会社に新卒入社。しかし、入社からおよそ一ヶ月で緊急事態宣言が発令されたそうです。ただでさえ言葉の壁がある中で、当時はスムーズなコミュニケーションが取れないことが大変だったと語ります。

– 入社からわずか一ヶ月でコロナ禍に、とのことでしたが、社内ではどのような状態でお仕事されていたのでしょうか。

全社的には在宅勤務がメインになり、社内でのコミュニケーションはチャットにシフトしました。新入社員へのフォローとして、案件へのアサイン前に研修用のバッファー期間をいただきました。その間にチャットでやり取りをしながらスキルトレーニングを実施して。

ただ、チャットで雑談することは日々あったものの、当時は一新入社員ですし、なかなか仕事以外のことを声掛けするのは難しかったですね。社員に話しかけるタイミングとか、どういう話し方をすれば良いのかが分からなかったので、コミュニケーションの壁を感じて少し大変でした。ですが、先輩にたくさん助けてもらったのでとても感謝しています。

– ただでさえ新入社員でコミュニケーションを取るのが難しい中で、対面ではなくオンライン上でやり取りをするのは大変だったと思います。

– では、その会社ではどのような仕事をされていましたか?

コンシューマー向けのゲームやソーシャルゲーム、パチンコなどのコンテンツ制作を行っている会社なのですが、僕はキャラクターのモーション制作とカットシーンにおけるレイアウト・カメラワークなどに携わっていました。

– 仕事の中でどのようなことを学びましたか?

先輩からは「必ずキャラクターの動きを自分で再現をして、その様子をスマホで撮ったり観察するように」と教えていただきました。作ったことのないモーションを落とし込むときは、必ず自分で動いてみて体がどのように動いているのかを確かめる。これがとても大事だとおっしゃっていました。

また、モーション制作でのアドバイスだけでなく、コンテンツの進行管理の際にもたくさんフォローしていただきましたね。とある案件にアサインしたときに、制作が難航していて中々スケジュールが思い通りに行かなかったんですが、その先輩に助けていただいて。

– プロのアニメーターとして、そして社会人としての基礎を教えてくれたんですね。この映像会社には二年間働かれたとのことですが、転職を考えたきっかけは何でしょうか?

カットシーンにおけるレイアウト・カメラワークやモーションキャプチャーデータ修正の仕事がメインだったのですが、案件を通して手付アニメーションのスキルアップをしたい、またはジャンルに絞らず幅広く経験したいと考える為転職を決めました。

 

– では、次の現場ではどのようなお仕事をされる予定ですか?

次の現場では、コンシューマーゲームの開発現場でモーションキャプチャーデータ修正、フェイシャルやハンドポーズの制作がメインになりますが、自社開発の為、ゲームエンジン実機テスト・デバッグなどを行う予定です。とても楽しみです!

– 今後はどのようなクリエイターになりたいですか?

「360度どこから見ても丁寧で綺麗なゲームアニメーション」を作れるようなクリエイターになりたいです。手付アニメーションのスキル強化を軸とし、キャラクターアニメーターとして業界に貢献したいと考えております。もちろん、レイアウト・カメラワークも凄く興味深いので今後もカットシーン制作に関わりたい、どれも魅力的な仕事だと思っています。まだ具体的なキャリアビジョンはありませんが、これまで得た知識やスキルを忘れることなく、次の現場でも様々なことを吸収して、今後のキャリア形成をしていきたいと思います。

 

留学生にとって最も大事なのは「たくさんコミュニケーションを取る」こと

– これまでのお話を振り返ると「コミュニケーションの重要性」が一つの軸にあったと思います。やはりコミュニケーションは留学生にとっても大事なことなのでしょうか。

一番大事なことだと思います。実は、自分は学校で部活やサークルに参加していなかったんです。こういったイベントに参加することで、日本語の習得にも役立ちますし、何より友達との良い思い出作りにもなる。
学生時代はこういったことがあまりできていなかったので、後になって「惜しいことをしたな」と思うようになりました。留学生の皆さんにはぜひ学内のイベントに参加したり、日本人の友達とコミュニケーションを取ったりして、色んな思い出を作ってください!

– 少し勇気が要るかもしれませんが、とても大事なことですね。では最後に、将来クリエイターになりたいと考えている留学生に一言アドバイスをお願いします。

繰り返しになるのですが、今のうちにたくさんコミュニケーションを取っておくことが大事です。社会に出ると「この場面ではどう接触すれば良いか」「どう話しかければ良いか」を常に考える必要があります。そういった場面でスムーズに話せるように、心と言葉の準備をしておきましょう。

バイトや語学学校での受験などで忙しいとは思いますが、サークルなどのコミュニケーションの場には積極的に参加して、たくさん思い出を作りながら学んでいって欲しいです。そして、必ず日本語試験に合格すること。これは就職にも関わってくる重要なミッションです。日本人の友達に勇気を持って話しかけて、日本語を習得してください。

アニメーター目線の助言としては、CG業界を目指すなら必ず自主練習をすること。キャラクターの動きは必ず自分自身の体で確認しながら、コツコツと練習していってください。

 


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