ゲームクリエイター図鑑No.002 藤井トム#02「学生時代の作品を練りに練る中で訪れた、自分たちの成長」

「ゲームはおもしろい、ゲームを作ってる人も実はおもしろい」

多種多様な技術を持った人々が集まるゲーム業界。あの魅力的なゲームたちは、どんなゲームクリエイターが生み出しているのか。ベールに包まれた「ゲームクリエイター」の生態を解き明かし、この地に生息する「ゲームクリエイター図鑑」の完成を目指す。その過程として、一部のレポートを公開しよう。

 

クリエイター図鑑 No.002
今回、取材に応じてくれたのは、インディーゲーム開発チーム『デスクワークス』代表取締役の藤井トムさん。同級生の南場ナムさんとの二人三脚で、学生の頃に作った作品をブラッシュアップし続け、『RPGタイム!~ライトの伝説~』として世に送り出した。妥協も譲歩もなく、自分たちの信じる道を突き進む熱意は、ゲームクリエイターなら誰しもあこがれ、見習うべきものに違いない。

#1記事

「ゲームはおもしろい、ゲームを作ってる人も実はおもしろい」多種多様な技術を持った人々が集まるゲーム業界。あの魅力的なゲームたちは、どんなゲームクリエイターが生み出しているのか。ベールに包まれた「ゲームクリエイター」の生態を解き明かし[…]

「まさかそこから4年かかるとは……」

──『RPGタイム!~ライトの伝説~』を開発するにあたり、事務所の一角を借りて「2年で開発して出ていきます」と言っていたはずが、結局は10年近くかかりました。

そうですね。最初の1年で量産体制を作って、残り1年でいろいろと作ってリリース、という考えでした。ですが当時から、アイデアだけ膨らんでなかなか進まない部分があって、東京ゲームショウにインディーゲームの展示ができて、そこに出すことを目指していたんですけど、なかなか実現させられませんでした。

1年間作り込んで合格できず、また作り込む。そうなると半年だったらまだしも「1年あったら、これも作ろうかな」とどんどん膨らんでいったという感じでした。

また時代も変わってきて、個人アプリクリエーターとか個人ゲーム制作者が注目されて、一つのキラリと光るアイデアですごくダウンロードされたり、収益も多いスターが登場していたので、僕らもゲームを作っていたらそこに参入したくなったりの誘惑も多かったですね。

 

──開発期間が10年近くになると、いろんな問題もあったと思います。その中で一番予想外の問題はどんなものでしたか?

想定外だったのは自分たちの成長でした。最初はお金を出して3Dを他所に頼んだのですが、あとからアイデアが膨らんでいく中で、「あれも用意した方が良かった」というのがどんどん出てきて、でもお金はないので自分たちで作ることにしました。自分たちにできることが広がると、まだ入れる予定じゃなかったアイデアも入れちゃおう、となって。

特に3Dができるようになると、あれも作れる、これも作れる、となります。最初はノートの中だけで展開するゲームだったのに、それが机の上になり、教室になり……と、どんどん広がっていきました。

 

──だんだんとスケールが大きくなっていきますね。

「机を作ってみた」となると、「机を並べたら教室になるね」となり、「黒板を作ってみた」となって、「黒板を使って何かできるな」と言いながら……。そうやってアイデアがどんどん膨らんで、しかも今回はほぼ畳んでいません。畳まずに作り切って、2018年に発表しようと考えていたんですけど、まさかそこから4年かかるとは……。そこからは風呂敷を広げないように注意しながら進めていました。

 

──そろそろリリースも意識していこうと。

リリースの意識はずっとあったんですけど、ダメでした。いろいろなイベントでプレイヤーの方に遊んでもらうと「もうちょっと作りたい」となって、風呂敷を広げないようにしながら内容は充実させていこう……という感じで本当に時間がかかりました。でも、やって良かったと思っています。

まさに藤井さんを表現したような標語「遊び心と粘り腰」

Unityの登場「これがあれば自分で作れる」

──『RPGタイム!~ライトの伝説~』を作ったきっかけについて、あらためて振り返ってもらえますか。

学生の頃に作った『バトルクエスト』をすごく褒めてもらったのがまずありました。学生の頃に褒めてもらった経験はそんなにないんですけど、日本ゲーム大賞で一番良い賞をいただいて、賞状を渡してくれるのがKONAMIにいた五十嵐孝司さんだったんです。そこで五十嵐さんが「他にも面白いゲームはいっぱいあったけど、このゲームが並んでいたら買ってしまうかも」と言ってくれて、「だったら作ろう!」と。その後、五十嵐さんも独立されてゲーム開発をされていますし、運命的なものを感じました。

『バトルクエスト』は、学生が少ない人数で、短期間で作ったので20分ぐらいでクリアできるRPGでした。本当は何十ページにも渡る長い企画書だったのですが、魔王城がダイジェストになり、迷いの森もなくなり、街も最初の1つだけになって……と減らしていました。それをフルスケールで遊びたいという思いがまずありました。

 

──そう簡単に実現できるものではありませんね。

そうですね。東京のゲーム会社に勤める時も、社内コンペがあるとかオリジナルのゲームを作っているところに絞って就職活動をしました。新規プロジェクトの募集があれば積極的にアピールしていましたけど、なかなか難しかったですね。

個人では作れないと思っていたんですけど、そこにUnityが登場しました。実際に触ってみると、これまではグラフィックをお願いして出来上がったものを確認していたのが、Unityは自分で直接やれるので、「これがあれば自分で作れる」となって。そのタイミングで個人でもプラットフォームの開発機が手に入るようになって、リリースできるようになったんです。

 

──紆余曲折の末に『RPGタイム!~ライトの伝説~』がリリースされました。ご自身での感触はどのようなものですか?

今までイベントでプレイしていただいて、楽しんでもらえる自負はありました。それでもイベントでは1時間も2時間も遊んでもらえるわけじゃないので、最後までプレイした時の感想は気になっていたところです。我々も終盤が会心の出来なので、それを見てほしいと思っていました。実際、最後までクリアしていただいた方からも好評のご意見をいただいていて良かったです。

幅広い方々に楽しんでもらえるゲームを目指していたので、それは達成できたかと思います。

#02結論

藤井さんの開発に妥協と譲歩はなく、やりたいことに突き進む日々だった。膨らみ続けるアイデアに、自分たちの開発力と環境が追い付いていく様子は、当事者からすると楽しくてたまらないに違いない。

『RPGタイム!~ライトの伝説~』公式サイト
©DeskWorks / Aniple

#3記事

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