東京ゲームショウ2023で出会ったキラリと光るインディゲーム ”終末を培養する7日間”『CultureHouse』クリエイターインタビュー

血液のように謎と不安が溢れ出る…『CultureHouse』インタビュー

今回は、東京ゲームショウに展示された作品の中から『CultureHouse』のインタビューをお届けします。20世紀のモダニズム建築に影響を受けた世界や、どこを切っても血液のように謎と不安が溢れ出る作風に迫りたいと思います。

どうぞご覧ください。

『CultureHouse』とは

あなたは、失踪した生化学者が暮らしていた住宅兼研究施設カルチャーハウスで7日間生活しながら、ジェニオと呼ばれる謎めいた生命体を育てます。
カルチャーハウスと縁のある訪問客と会話をしたり、周辺で起きる奇妙な出来事を観察しながらジェニオの育成を進めていくうちに、穏やかだった日常が少しずつ奇妙なものへ変容していきます。
あなたの死(あるいは世界の滅亡)によって一度幕を閉じた物語は、カルチャーハウスを訪れた1日目の朝から再びスタートし、あなたの選択によってジェニオは前回とは異なる姿に成長します。

破滅的なエンディングを何度か経験しながら、あなたは、生化学者が残したノートや訪問客との会話を手がかりに、カルチャーハウスで起きた悲劇的な過去の出来事、そして滅亡へ向かう世界とジェニオを繋ぐ謎に迫っていきます。

『CultureHouse』で表現しようとしているのは「謎を残して失踪した科学者が、かつて暮らしていた建物で生活する」というミステリアスな体験そのものです。
それは、コンピューターゲームというインタラクティブなメディアが持つ可能性を最大限に発揮できる体験であると同時に、インディーズとして挑戦するのに相応しい哲学的で実験的、芸術的なテーマでもあると考えています。

終末を培養する7日間

『CultureHouse』は生物の培養実験を題材とした育成シミュレーション×アドベンチャーゲームです。
20世紀のモダニズム住宅から影響を受けた建物を舞台に、培養実験と並行して進行する日々と、最後に訪れる終末を描きます。

■開発について

●『CultureHouse』開発のきっかけについておしえてください。

不穏でありながらも美しい体験を作りたいと思ったことがきっかけです。
プレイヤーを背後から驚かすような演出やグロテスクな映像で怖がらせるのではなく、静かに時間が流れる中で徐々に浮かび上がってくる違和感を味わうゲームができたら面白いのではないかと考えました。
現代美術や現代建築を見た時の「美しいけれどもどこか不安になる」という感覚が原体験としてあります。

 

●開発で苦労されたところは?

『CultureHouse』の舞台となる建物のレイアウトで苦労しました。
フォルムや光の入り方といった視覚的な魅力だけではなく、世界観との整合性、ゲームのステージとしての機能性といった複数の要素をバランスさせるのは複雑なパズルのようです。

資料として現代建築のマスターピースの写真を見すぎたせいで、自分の中のハードルを上げてしまったのも苦労した原因の一つです。9ヶ月くらい試行錯誤してやっと「これで行こう」という形が見えてきました。

 

●完成までどのくらいの期間を想定していましたか?

開発を始めた当初は全ての工程を最短で進めたとして1年半、ローカライズやQAを含めて1年9ヶ月くらいと考えていました。

 

●実際にかかった期間はどうでしょう?

まだ開発中ですが、順調に進んだとしてあと1年半、開発開始から数えて2年半くらいになると予想しています。
シナリオやイベントのアイデアがたくさんあるので、どこまで入れるかによって完成時期が変わります。

 

●ゲームエンジンは使っていますか?

Unityを使っています。

 

 

■ゲームについて

●本作のおすすめのポイントを教えてください。

『CultureHouse』の建物とそこで行う培養実験、訪ねてくる人々の目的や過去など、どこを切っても血液のように謎と不安が溢れ出るタイトルになると思います。
いつも安心していたい人にはおすすめできませんが、「わかりきったことはつまらない。謎や不安こそが世界を美しくするので、それに包まれていたい」という人にはおすすめです。

 

●東京ゲームショウでプレイしましたが、舞台となる施設が印象的でした。20世紀のモダニズム住宅から影響を受けたとのことですが、影響を受けたのはどうしてでしょうか?

ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエに代表されるモダニズム建築には美しさと同時に人間性を超越したような近づき難さを感じます。そのような場所で超自然的な何かに遭遇することを想像すると、ホラー以上にぞわっとする体験になるのではないかと考えました。
現実のモダニズム住宅でそのような体験をすることはないと思いますが、ゲームの中ではそれができます。

 

●本作の開発にあたって、他に影響を受けたコンテンツなどがあれば教えてください。

(とてもたくさんあるので一部)
ゲーム: 『MYST』『Wizardry』『BAROQUE』『CONTROL』
映画・ドラマ:『アルファヴィル』『惑星ソラリス』『シャイニング』『バンカー・パレス・ホテル』『ツインピークス』
画家・芸術家:ヴィルヘルム・ハマスホイ、ルネ・マグリット、クリスチャン・ボルタンスキー、ジェームズ・タレル
作家:フランツ・カフカ、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、スタニスワフ・レム

 

●本作の今後について教えてください。(セールやアップデートなどがあれば)

2025年のリリースを目指して開発中です。(Steamのストアページを公開しているので、ウィッシュリストに登録していただけると幸いです)
11月12日に開催されるデジゲー博と、11月25日のCEDEC+KYUSHU 2023では最新のプレイアブルデモを展示します。2024年も積極的にイベントに出展していく予定です。

 

■講談社ゲームクリエイターズラボについて

●応募したきっかけを教えてください。

もともとゲームメーカーで開発者として働いていましたが、会社員としてではなく、漫画家や小説家のような立場でゲームを作ってみたいと以前から思っていました。

 

●当選してから開発は変わりましたか?

企画が採用されたことで開発がスタートしました。
応募した時点では、コンセプトと1枚のイメージビジュアルを含む数ページの企画書しかありませんでした。

 

●支援の中で助かったものをおしえてください。

ゲームクリエイターズラボの編集者さんや他の開発者の人たちと打ち合わせやイベントで顔を合わせる機会があるので、社会から完全に孤立しないのは良いと思います。
また、東京ゲームショウへの出展など、ゲームクリエイターズラボが行っているプロモーションを通じて、開発中のゲームをたくさんの人に知ってもらえる効果も大きいと思います。

 

 

■最後に

●この記事をご覧の開発者や学生の皆さんに一言お願いします。

ただゲームを作って生活したいというだけでなく、いつか理想のゲームを作りたいという目標があるなら、ゲームメーカーで経験を積んだ後に独立してパブリッシャーから支援を受けるのはおすすめできるルートです。
講談社ゲームクリエイターズラボのように個人開発者を支援する企業が増えているのはとても良い流れだと思います。この流れがさらに加速していくように、『CultureHouse』もリリースを目指して開発を進めていきたいと思います。

 

 

●ありがとうございました。

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