インディーゲームインタビュー
『最涯(さいはて)の列車』ストーリー
虚ろ野と呼ばれる草原はあの世とこの世の狭間だと人は言う。 魂が、安息を見つける最後の土地だと人は言う。 無限に広がる景色の中を走る列車。 廃帝ロクセラーナの儚い人生の足跡を、列車の中で手掛かりを見つけながら追って行く。
『最涯(さいはて)の列車』は、一人称視点のアドベンチャーゲームで、前作『NOSTALGIC TRAIN』同様に列車と風景が丁寧に描かれていて、この世界に行ってみたくなる作風が大きな魅力となっています。
今作では古代の魔器「ネブラの天文盤」を使用して世界を崩壊に導いた廃帝ロクセラーナの儚い人生を列車の中で追っていき真実に迫っていく内容になっています。謎解きだけでなく、ただ電車から見える風景を楽しんだり、テキストを読み込ませて読書の時間を楽しんだりもできる本作。どのような経緯でこの作品が生まれたのか、追っていきたいと思います。
■開発について
●開発のきっかけについておしえてください
前作『NOSTALGIC TRAIN』を出したあといくつかアイデアがありましたが、前作に引き続きもう少し列車シリーズで何か作ってみたいと言うのがありました。
旅情のようなものを演出したいとか、レトロな列車はゲームの舞台として絵になるというようなこと、あと個人開発なので大きなフィールドを作るのは時間的に厳しいため、ゲームの舞台を列車の中に限定できるのは良いな、というようなことなどを考えて徐々にアイデアを固めていきました。
●開発チームは何人くらいでしたか
完全に一人で作りました。フリーの音楽素材、テクスチャ素材などは使わせてもらってますが。
舞台となる列車や車窓の景色デザイン、モデリング、ゲームを進行させるためのスクリプト組み、ストーリーなど私が一人で手掛けています。
●また、どのようにして集まったのでしょうか
完全に一人なので、むしろチームで作っている人はどうやって気の合うメンバーを幸運にも集められるのだろう、と思ってしまいます(笑)
●開発で苦労されたところは?
何点かあります。
まず、言い訳のようになってしまいますが(汗)、どうも列車のように複雑な形状の動き続けるものの上でのゲームプレイは、コリジョン、当たり判定の処理がアンリアルエンジンでは不安定になってしまう場合があるようです。そのことに私がテストプレイをしているときは充分気づけず、発売当初遊ばれた方が、コリジョン抜けを起こして列車の外にプレイヤーが出てしまうなどの不具合に合われた方もいらっしゃいました。
色々とパラメータやデータを調整して今ではだいぶ落ち着いているはずなのですが、動くものの上を舞台にしたゲームはもうこりごりですね(汗)
次に、このゲームではプロシージャルに生成されて変化し続ける景色、二度と全く同じ車窓をプレイヤーが見ることがない、ということをウリの一つにしています。なので車窓の地形もゲームプレイ中にノイズを生成し、そこから地形の高さに変換し、高さに応じて山頂だけ雪が積もるとか、斜面は草ではなく崖になるとか現実的に見える処理を加えています。
エンジンでこれらをゲームプレイ内で随時行えるようには通常の機能としては対応していないため、かなりいろんなアイデアを練って、様々な機能を組み合わせながら処理を組んでいきました。面白かったですし結果には満足していますが、ここがうまく行かず数ヶ月悩んで暗中模索していたところです。
■ゲームについて
●列車の中、列車から見える風景が美しくていいですね。
ありがとうございます!
前の質問でお答えしたようにきれいな景色をリアルタイムで生成し続けると言うのがこのゲームで苦労したところですので、そう感じていただけると嬉しいです。
●本作のおすすめのポイントを教えてください
一言で言うのは難しいですね…。アクションが爽快ですとか、凝ったパズル要素に特に注力しているというようなゲームではないので。
遊ばれる方には、本当に異世界の列車に放り込まれて途方に暮れて、その中で模索しながらあがく、そして秘密を徐々に発見していくような感覚とその時に現れる感情を味わってほしい、そういうように考えて作品を作りました。
ですので景色が変わり続けること、一回しか同じ景色を見ることがない、というのもその演出の一環です。実際にそういう列車が走り続けていて、そこに放り込まれたら、毎回同じ場所で同じ丘や谷があるというものではないですよね。発見したストーリーの真実に疲れてふと車窓を見ると、たまたま遠くに美しい川が朝日に反射しているかもしれない、あるいは物語を反映するように雷雨かもしれない。その人だけがその瞬間に感じられるものがあると思うんです。一部演出上天候を決め打ちにしている場面もあるものの、それでもゲーム作者が完全にはコントロールするのではなく、ある程度ランダム化することで、一回きりのその人の感情を体験してほしい。
流れる音楽、小物のデザインのディレクションも、そういう体験を支えるものに統一させたつもりです。
ですのでオススメポイントというと、このゲーム世界にしかない独特の世界観、やや悲しく壮大な物語と、切ない音楽と、無限に異世界を走る列車の幻想性や旅情、にプレイ中に浸って体験いただくこと、となるでしょうか。
●本作の気に入っている箇所を教えてください
先程の質問へのお答えとも被ってしまうのですが、やはり世界観を作るために景色と列車と音楽と、の雰囲気や演出を統一させるように作り上げたことでしょうか。
あと、ストーリー無しで列車で旅するように世界を楽しんでいただけるよう、フリーモードというのを付けたのは気に入ってます。
青空文庫などのテキストファイルを自由にゲームに読み込ませて、景色を眺めながら読書や、ただお気に入りの座席に座ってぼーっとすることなど、が楽しめますよ。
■会社(チーム)について
●チームの紹介をお願いします
畳部屋という名義で、チームではなく個人で開発しています。
前作『NOSTALGIC TRAIN』と『今作の最涯(さいはて)の列車』共に、ゲームの物語性とその時に周りに広がっている景色、舞台がなにか繋がって化学反応を起こすような作品を目指す、という一応ささやかに実験的な試みをやりたいなと日々思いながらゲームを作ってます。そこが第一目標なので、人によっては畳部屋作品はどこかゲームとしてはアンバランスな印象を受ける方もいるかもしれないですね。改善するべきことは改善しつつも、このコンセプトに一部でも刺さる方がいらっしゃればいいなと思います。
●この記事をご覧の開発者や学生の皆さんに一言お願いします
ゲームエンジンの進歩やフリーアセットの充実で個人、少人数でのゲーム開発がすごくやりやすくなってきましたよね。インディー開発のゲームの素晴らしいところは仮に一般受けしなくても尖ったアイデアをそのままぶつけて作品にできることだと思います。最近自分が遊ぶゲームも刺激を求めてインディーばかりになってきました(笑)。
ぜひともいろんな開発者さんの作るゲームを楽しみたいので、一緒に盛り上げていきましょう!
あと自分からはシャイなのであまり他の方と積極的に交流できてないのですが、もし同業の開発者の方がいらっしゃれば私のTwitterまでお気軽にリプやDMなどいただきたいです!
●ありがとうございました。
今回は、畳部屋氏にインタビューをしました。車窓から流れる風景や列車の中の様子、一人で作るのは大変だったと思いますが、細かな部分までこだわりが詰まっています。このインタビューで興味を持った方はぜひこの作品に触れてみてください。
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