ゲームクリエイターインタビュー
様々なゲームクリエイターにインタビューをする本企画。
今回はソニックパワード社が開発し、8月19日にニンテンドースイッチで発売した『悪夢の妖怪村』のインタビューをお送りします。
妖怪の棲みつく恐ろしい廃村の噂を聞きつけた「君」。珍しい映像での金儲けに目の眩んだ君は、無謀にも単身その廃村に乗り込んでいった。『妖怪村』と呼ばれているその村へと…。というもので、ニンテンドーDSiウェアでリリースしたゲームのリメイク版になっています。10年ぶりのリメイクはどのように行われたのでしょう。さっそく見てみましょう
■開発について
●開発のきっかけについておしえてください
当社では大手ゲームメーカーの受託開発や自社タイトルのリリースを行っていますが、スイッチで気軽に楽しんでもらえるゲームを提供しようという社内テーマがありました。
私自身がアドベンチャーゲームが好きでしたので、何か素材はないか思案していたところ、当社で2011年にニンテンドーDSiウェアでリリースしたゲーム、「悪夢の妖怪村」を改めて遊んでみて、原作の鳥井架奈子さんの脚本の面白さと、スイッチで楽しめる操作性と表現に改善を図ることで今でもかわらず楽しんで頂けるのではないか?と気付きました。
また、原作本でもあるゲームブックを遊んだことが無い皆さんには、ゲームブックの世界をデジタルで楽しんで頂けることも新鮮かと思い、社内提案したことがきっかけです。
リリースがお盆のあたりの計画で「悪夢の妖怪村」がホラー風味の原作でしたので季節的にもマッチすると考え、早い段階でフルリメイクの全体像をとりまとめることができました。
●開発チームは何人くらいでしたか
制作人数や制作期間は、ゲーム内容によってまちまちですが、この製品の場合は気軽に楽しんでもらえるゲームがテーマでしたので、制作に関わる人数も大人数でアサインすることが大人の事情で難しく(笑)、コアのスタッフは2-3人の開発&作画に絞って進めました。
演出強化やテストプレイなどで一時的に増員することもありましたが、当社の様々なタイトルの中では、かなり少人数で完成できたと思います。もっともDSiウェアの作品があったこと、鳥井架奈子さんの原作脚本があったことで、スイッチ版のリメイクに注力できたのも、少人数で進められた要因ですね。
●また、どのようにして集まったのでしょうか
プロジェクトに応じて開発や画像など職種ごとのグループから制作に参加してもらう体制ですが、本作はシンプルなプロジェクトでしたので、若手のプログラマーやデザイナーを中心にゲームをクリエイトしてみる!といった、チャレンジケースのような方法でスタッフを集めました。
●開発で苦労されたところは?
制作に参加してもらったクリエイターとしては新しい作品を手掛けるチャンスでもある一方で、実際の開発ではなかなか思い通りに進まないこと、満足いく出来に達しないことが多々ありました。
社内にはベテランの開発者やデザイナーもたくさんいますので、制作の壁にぶつかったら、先輩方と密に相談をしてアドバイスをもらったりしながら創りあげてきました。
本作の制作に携わったクリエイターは、ゲームづくりやコミュニケーションなど学んだこともあったでしょうから、実績を積むという点では良い開発機会だったと実感しています。
完成に近づくにつれてスタッフが原作を暗記するほどになり、どこでどんなイベントが発生するかすぐさま答えられるくらいになっていました(笑)。
また、原作者様や版元さんとの調整、販売計画など、開発以外の対応も多くありましたが、それぞれの担当者にとっても有意義な経験ができたプロジェクトだったと思います。
製品としては、原作脚本のあるゲームブックで、物語と遊び方が確立していましたから、その点は苦労なく進められましたが、スイッチ版としてゲームへの没入感を高めてもらいつつ原作の雰囲気を壊さない新しいイラストデザインや効果音の選定、プレイの邪魔にならないようなページめくりや表現、ゲームならではの便利機能などアイデアを盛り込む点が試行錯誤の苦労とも言えますが、どちらかというとゲーム創りのやりがいを楽しんだ印象です。
プレイヤーの皆さんにも本作の面白さが少しでも伝わると嬉しいですね。
■ゲームについて
●本作のおすすめのポイントを教えてください
ズバリ随所に描かれる妖怪たちのイラストです。
スイッチ版ではイラストを所々に散りばめて物語を盛り上げようと思いました。
出会った妖怪はゲーム内の「妖怪図鑑」に記録されていき、いつでも鑑賞できますので、物語とともにお楽しみいただくことで世界観を楽しんでいただくことができます。
公式サイトやPV、今後はSNSでも公開していく予定ですのでチェックしてみてください。
●本作の気に入っている箇所を教えてください
恐ろしい妖怪ばかりではなく、中にはかわいらしい見た目の妖怪も登場します。
特に「カッパの子ども」は開発スタッフからも人気でした。
また、ゲームならではの自動マッピングやアイテム管理などの便利機能により、メモ代わりにもなる点も大変気に入っています。
本作で全てのアイディアを搭載できたわけではないので、次の機会がありましたらさらにパワーアップしたゲームブックを楽しんでいただきたいと思っております。
■会社(チーム)について
●チームの紹介をお願いします会社そのものは1995年に創業して98年に法人化しましたので今年で25年程度になります。
浮き沈みの激しいゲーム業界的には長く続いている会社ではないでしょうか。
昔も今もジャンルにも捉われず、自分達が実現したいことや先方からの開発相談をカタチにする為、全方位で様々なプロジェクトに挑戦してきました。
おかげさまで大手ゲームメーカーからの信頼を重ねて暗躍していたり(笑)しますので普段遊ばれているゲームの中身は当社が作っているという巡り合わせもあるかもしれません。
また、メーカーとしても自社製品を開発・発売していますので、ファンの皆さんにも恵まれながら日々精進しています。
社内では、主に、プログラム、グラフィック、企画、音楽、デバッグなどの職種ごとに、まずグループでまとまっており、プロジェクトによって各職種のグループから制作スタッフを編成する仕組みでプロジェクトチームが固まります。
プロジェクトによっては絶対外せないキーパーソンに編成参加を依頼したり、クリエイター自身が希望して得意な案件に立候補したり、いろいろなパターンがありますが、本作「悪夢の妖怪村」の場合は、ご説明したように、規模的にも小さめのプロジェクトでしたので積極的に若手中心のチームを編成してみました。
制作スタッフも、ずっと同じプロジェクトを続けるのではなく、時々全く違った案件に携わったり、本作のように実践を通して技能アップの機会を得られたりもしますので、新しいテクニックを飽きることなく身に着けられると思います。
社内で動いている案件は大小様々、数多くありますが、社風というか企業文化というか、やらされ仕事に従事するのではなく、プレイヤーの皆さんや取引先企業に喜んでもらう為に才能を使うという姿勢がクリエイトポリシーの礎になっており、自発的にクリエイトしたい人が集まってチームが編成されますので、スタッフのモチベーションも高く、成果物へのこだわりや配慮に反映されるのだと思います。
まだまだ挑戦したいことはたくさんありますし、リリースした作品は皆様からの反響こそ、クリエイターの励みになりますので、さまざまな意見を参考にさせていただきながら、より喜んで頂ける作品創りへの挑戦を続けています。
●この記事をご覧の開発者や学生の皆さんに一言お願いします
ちょっと真面目な話ですが、ゲームが好きなスタッフは多いですが、制作会社の立場からしますと、プレイヤーではなくクリエイターとしてのプロ集団でなければならないと思うのです。
簡単に言うと作り手として、常に取引先やプレイヤーなど、相手先の皆さんが「何を求めているか?」を察知することこそ、仕事として何より大切なポイントだと考えます。
クリエイト業務は、お客様の納得・満足を頂いて、初めて仕事として成立するものですから、趣味で自分が好きなものを作るアーティスト的な芸術家とは方向性が違うのだと思っています。
リリースした先にいらっしゃるプレイヤーや取引先の求めに応えるために、知識や技術や工夫を総動員して実現するのが制作会社の実態であり、プロのクリエイターの心構えのようにも思いまして、それはいわばサービス業そのものだと思います。
ですから、将来もしゲーム業界で活躍したいと思われているのでしたら…
人を喜ばせる、人を楽しませるとは、どんなことだろう?
それを自分が得意とする開発力や画力、制作力など様々な才能と、どう結びつたら良いだろう?
ひとりで仕事は完成できませんから、仲間とのチームワークはどうするのが良いだろう?
といった、ゲーム構想とは全然別の切り口で見つめますと、プロとしてゲームをクリエイトするという意味の本質やプロとしての活躍の近道が、垣間見れるかもしれませんね。
ソニックパワードでは、こういったスタンスを「目的」だと捉えて現在まで続いています。
プログラムを作ったり画を描くというのは、その目的のための「手段」だということなのです。
ソニックで偶然出会った仲間達や案件と、この目的のために手段をアレコレ思案しながら、ゲーム業界で四半世紀近くお役に立てたわけです。
この目的に興味や賛同して頂ける方には、アグレッシブに楽しめる会社だろうとも思います。
会社見学や就職相談、求人応募など随時受け付けていますので、お気軽にご連絡下さい。
general@sonicpowered.co.jp
これからプロとして羽ばたこうと思われている方は、ぜひソニックパワードをご自身の実力を発揮するための舞台だと思って、刺激的な冒険の旅へ一歩踏み出せるといいですね!
株式会社ソニックパワード
●ありがとうございました。
ゲームブックは昭和のころから今も販売されていて、夢中になった方も多いのではないでしょうか。また、今回インタビューを実施したソニックパワード社のゲーム開発への情熱や意欲を感じることができるインタビューとなりました。同社は今回の『悪夢の妖怪村』以外にも他にも数多くのゲームを開発していますので、一度サイトをご覧ください。会社見学にもぜひ訪れてみたいですね。
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