Game Creators Guild(ゲームクリエイターズギルド)主催。
第8回は、「弟切草」、「かまいたちの夜」、「街」など数々のサウンドノベルを制作してきた元株式会社スパイク・チュンソフト、現テクテクライフ株式会社取締役の麻野一哉氏をゲストにお招きし、クリエイターとしての軌跡と自身が感じる幸せについて語っていただきました。こちらは2021年7月29日にYouTubeにて配信された番組のレポート記事です。アーカイブ配信を希望の方はGCG公式LINEに登録していただくと動画のご案内が届きます。LINE登録はこちら!
Q:タイムマシンで過去に戻れるとしたら、戻る?
これ、ずーっと考えているんですけど、答えがまだ出せません。戻るなら、想定する地点はあるけど、そこに戻っちゃうと今の僕と全然違う人間になっちゃうと思うので、本当に戻った方が良いのか、自分自身でも疑問。
皆さん結構そう仰られますね。分岐点…じゃないですけど、それがきっかけで別の自分になっていたりするので。
ですよね。そう考えると、やり直すか分からないな…。
逆に言えば、今って満足ですか?
そう問われると、満足ですね。なるべくして、なったかなと。
その、満足感の理由とかってあるんですか?
就活の時もなんですけど、何しようか、どうしようか、割と追い詰めて考えてきたんですよね。ゲーム業界に行こうか、というよりは何をしようかすごく迷った挙句に考えたことなので、これだけ考えた末に選んだことだから、自分の中で納得いっているというのが根本にあるんだと思います。
実際決めたことをやってきて、楽しかったですか?
楽しかったです。しんどいことや不安なことも山ほどありましたけど。人間そんな割り切れないですよね(笑)。なので、まあ、どうしても選べ!と言われたらサイコロを振ると思います(笑)。
そういう考え方なら、どちらになっても楽しめそうですよね。
究極、記憶が残っているかによりますよね。全部消えちゃう場合は、よく分かっていない状態になるので、関係ないかもしれないですね。
ありがとうございます。それでは、本編最後ということで、麻野さんからのメッセージをお願いしたいと思います。
麻野さんからのメッセージ
仕事が、時間を忘れられるような、没頭できるような内容かは判断した方が良いと思います。どの職種でも。例えばグラフィックの人って絵を描くのが好きで、どこ行っても絵を描いていたりする。そんな風に、好きで、気付いたらやっちゃってて、時間が経っていて、みたいな性質がが作っていく人には必要なのかな、と。
なるほど…。逆に楽しめなかった時はどうします?
それは、多分自分に合っていないんじゃないかな…。没頭できる形に変えていかなければいけないですね。それが、職種変えるか、仕事のやり方を変えるか、上司変えるか…は分からないですけど(笑)。
これ、完成まで持っていったらめちゃくちゃヒットするはずだ、でもつまらない、というのは麻野さん的には…
全然意味ないですね。
即答(笑)!今までの麻野さんの話を振り返ると、完成後よりも、作っている間の時間を意識していますもんね。皆さんも楽しくお仕事できるように頑張ってください、ということですかね。
それでは、質疑応答タイムへ入っていきたいと思います!最初はライトな質問から。
Q:最近プレイして面白かったゲームは?
クリアまでいったのだと…『Bloodborne』ですね。
お、アクション系もゴリゴリやられるんですね。
ものによりますけどね〜。
海外タイトルとかもやります?
やります。あー、でも…タイトルが思い出せない…。オープンワールド系とかもやるんですが…。よく出来ているな、と思ったのはロボット恐竜が出てくる、女性が主人公のやつ。
あ、スタッフが『Horizon』と言っていますね。
あ、それです!面白かったです。
Q:ノベルゲームの今後について何か考えがあれば聞きたい
サウンドノベル的なノベルゲームってもうあまりないですよね。あと、『街』を作った時に思ったんですけど、なんだかんだグラフィックってものすごくリソース食うので、中々作り辛くなってきましたよね。『かまいたちの夜』ぐらいまでは、グラフィックにそんなにリソース割かなくて良かったんですけど…。もし、今作るとしたら原点回帰でテキストと音だけ、とかはあるかも。
確かに、そうですね。どんどん複雑なマルチストーリーにして絵も必要だと、リソース負荷もどんどん上がっていくので、その分をストーリーとかに回したら、可能性が広がるかもしれませんよね。
短くして、10分とか20分で読み終わるものをいっぱい作るのもアリなのかな、と思ったりしています。
逆に、それこそ途中で出てきて、実現できなかった100人の主人公の物語も今ならできるかもしれないですよね。今結構インディーとかでもノベルゲームって出てきているので。そういう、ノベルゲームを作っている方に何かヒントとかってありますか?
あ、1つあるとしたら、意外と分岐の選択を面白くしようとする人っていないんじゃないかな、と感じています。選択肢だけで起承転結を完成させることもできるので、そんなに真面目に「ドアを開けた」、「ドアを閉めた」、「廊下を進む」とかだけじゃなくて、何かしらネタにしてくれれば。
選択肢の方も練り込んでみたら、面白くできるよ、と。
例えば、『弟切草』の時、僕が作ったわけじゃないんですが、カレンダーに赤い丸が書いてある箇所があるんですね。これはなんだって選択肢、カレンダーをめくってみる、とかの選択肢もあるんですけど、最後の方に「赤口ってなんだろう」という選択肢があったり(笑)。
そういう、ネタを磨いていくのも一つアリかと思います。みんなあまり思わないけど、面白いよって。
選択肢も織り込んで、面白い読み物にしていく感じですね。ありがとうございました。あまりピックアップできなかったのですが、本編パートはこれで終了したいと思います!アフタートークの方でもよろしくお願いします。
はい、ありがとうございます。
アフタートーク
はい、恒例のアフタートークです。ここでは、本編で拾いきれなかった質問に答えてもらいたいと思います。
Q:シナリオが面白いと思っているゲーム
色々ありますが…あ、古いのか新しいのか分からないんですが、今リバイバルしている、元はファミコンの『うしろに立つ少女』とか面白いです。散々ネタにされてしまっているけど…犯人が分かっちゃうので(笑)。あとは『ドラゴンクエスト3』のシナリオとか。
僕個人としては、日本のゲームの方がストーリーは好きですね。海外の方は大味というか…『アサシンクリード』とか、ゲームとしてはすごい好きなんですけど、シナリオの方は読んでいても細かすぎてついていけない。ゲームとしての爽快感はすごいし、やり込んでいるけど、単純にストーリーのみの観点で話すと、僕は日本のゲームの方が良いストーリー展開をしていると思います。
全体を通して見ると良いけど、細かい設定なども多いので、話をきちんと追うのが大変かもしれませんね。
あ、ストーリーというよりは、役者さんの演技の影響力の可能性もあるのですが、『The Last of Us』をプレイした時は演技もセリフも他と比べて頭一個分出ている、全然違うな、という印象を受けました。何が良いか聞かれたら、説明が難しいのですが、感情が揺さぶられました。冒頭のシーンとか、他のゲームでも見かけた演出なのですが、今までグッと来たことはなかったですね。
なるほどですね。ゲーム以外にも結構映画とか小説、ドラマも見るんですか?
最近はあまり見れていないのですが、昔は見ていました。
これだけは見とけ、みたいな作品ラインナップってありますか?
僕はね、かなり普通なんですよ。僕の好きな映画ベスト10とかを一回友達に見せたんですけど、「めっちゃ普通」と言われたので、それぐらい見ているわ!という感想を抱くと思います。
人気ランキングに近いみたいな感じですかね(笑)。
近いと思いますよ。例えば、最近面白いと感じたのは『進撃の巨人』なんですが、このシリーズを知らない人ってそうそういないじゃないですか(笑)。
まあ、良いものは良いということで(笑)。作る時に、参考にする作品とかもないのですか?
ないですね…あんまり。
今まで培ってきた経験とかでやっている感じですかね…。
結果的に参考にしているとかはあるかもしれないですが、敢えて、というのは特に思い当たらないですね…。うーん…。今度ホラー系のゲーム作るからホラー映画いっぱい見るか、というとそうではなく、昔見た時に思ったことをもう一度改めて自分の中で解釈し直すとかをしています。
関係なく、どんどん自分の中で貯めていっているという感じの方が近いですかね?
目的を持って制作していく、ということが僕はとても苦手なんですね。ものすごい刹那的にに何かをする人間だから、旅行とかも計画立てずにそのまま行っちゃう。その作業がつまらないとかではなく、そもそも出来ない感じ。調べて、そして行く、ということをやる気が全然起きない。とりあえず、新宿行って中央線乗る、みたいなことしかで出来ないんですよ。
ゲームを作っていく上でも予定を全然立てられないので、プロデューサーさんがしっかり取り締まっていてくれないと、僕はどんどん予定を伸ばしちゃう。やりたくないとかの話ではなく、シンプルに出来ない。
なるほど…(笑)。まあ、人間向き不向きありますからね。求められる時ってどうするんですか?
頑張ります。頑張るけど…あまり上手くいかないですよね。
努力が大事ということで…(笑)。刹那的に行動するって言っていましたが、麻野さん今もシナリオの構造分解とかしていますよね。作っていく内に、これはすごい発明だな、と出来上がっていく感じですか?
ああ…例えば『街』とかの他人分岐は新しいことをしなければいけないというすごいプレッシャーの中で作りましたが、それは「新しいものを作った!」という高揚感より「思いついて良かったー」という安心感の方が大きかったですね。
そうなんですね。最近だと、結構ヒット作の踏襲とかも多いじゃないですか。新しいものを常に作り続けなければいけない、みたいな。
チュンソフトの文化だったんじゃないかな。『ドラゴンクエスト2』は1とシナリオが違って、3では職業選択の導入。当時は、なんでそんなに新しいものを入れるんだろう、と不思議だったんですが、新しいものを入れないと逆に意味がない、という考えでしたね。その後もどんどん、モンスターを仲間にできるとか今までになかったものを絶対入れていっていましたね。
システム的に新しいものをどんどん入れていく。
ゲーム性をどんどん高めていきましたね。最近は、ゲーム性をあまり高めるとついていけない人も出てくる、という視点もありますが、当時は全振りしていましたね。
その考えの元、色々生まれていった時代ですからね。今も、難しいとは思うけど、どんどん新しいものが生まれてきて欲しい、という思いは変わらずです。何かコツとかってありますか?
たまたま、僕が好きなものがパソコンで、自分が実現したいものができたら、という感じで今までやってきたので実際に今、実現可能かは分からないですが…小学生の時とか雨が降ると運動場で流れてきた水を使ってダムを作る、みたいな事が好きだったんですよ。今でも好き。あれをゲームでできないかな、とずっと思っているけどアナログすぎて、ゲームでもまだ表現できない。そういう感じで、自分の好きなものをデジタルで表現できるようになったら良いな、と考えたりはしています。
どんどん進化しているので、出来ることも増えてきているはずですからね。
はい。GPSの進化とかがなければ、『テクテクライフ』とかもできなかったと思います。ただ、今あるものを組み合わせていく事も大事だとは思いますよ。意義的にやっているというよりは、結果的にできていた、というものが多いと思いますが…。
難しいですよね…。「ゲームを作ろう!」となった時にどういう風に作っていけば良いのか…。
僕、まだ遊べていないんですが、お米作りのゲームとかあるじゃないですか。『天穂のサクナヒメ』。お米を作るという要素にフォーカスして、きちっと作っているそうじゃないですか。今までゲームであまりなかったものに照準を当てて、しっかりと作り込んだことによって新しい面白さ、新しいジャンルを発見できたんじゃないかと思います。
確かに、『天穂のサクナヒメ』はシステム的には物凄く斬新なことをしているわけではないですもんね。引き算じゃないですけど、敢えてまたこの時代にサウンドノベル的な作品を作ったら新しい発見に繋がるかもしれないですよね。
それでは、ここまでにしたいと思います!色々なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!
ありがとうございました!
完!
登壇者ご紹介♪
■麻野一哉(あさのかずや)
兵庫県出身。甲南大学文学部社会学科卒業。『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』に感銘を受け、ウチダエスコを経てチュンソフトに入社。『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』などの開発を行い、『弟切草』ではサウンドノベルという新ジャンルのゲームを生み出す。また『不思議のダンジョン』シリーズの創出者でもある。
2002年にチュンソフトを退社した後は、フリーのクリエイターとして活動。ゲーム制作のみならず、米光一成や飯田和敏との共著や、単著の刊行、講師、評論、翻訳、イベント活動、またテクテクライフ株式会社取締役としても活躍している。
■宮田 大介(みやた だいすけ)
株式会社オルトプラス ゲームアライアンス事業執行役員/ゲームクリエイターズギルド主催
大学卒業後、在学中にお世話になった職人の元へ弟子入り、鉄材があれば何でも作れる職人のものづくりをネットビジネスの視点から支援。
設立間もないオルトプラスにフロントエンジニアリング兼なんでも屋として参画。プランニング部部長、第二ゲーム事業部の事業部長等を経て、オルトプラスもマザーズ、東証一部上場と成長。その後、日中韓での3拠点でのゲーム新規開発プロデュースや韓国支社の立ち上げメンバー、高知にてSHIFT社とのジョイントベンチャーの立ち上げなど、諸国を放浪する。
現在は、ゲームアライアンス事業を設立。ゲーム会社同士のマッチングコミュニティサービスである「ゲームコミューン」やゲームクリエイターの相互教育コミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」、ゲームのマーケティング事業等、ゲーム業界を活性化するための新規事業の立ち上げを行っている。
▼ゲームコミューン
https://www.gamecommune.jp/
▼ゲームクリエイターズギルド
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▼Twitter
https://twitter.com/gcg_miyata
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