東京と京都で行われている「BitSummit Game Jam 2023」についてお伝えします!
このゲームジャムでは、国境・言語を越え、複数学校の参加者が集まり、チームを組んでゲーム制作に挑戦しています。作品は7月14日から16日開催のBitSummit Let’s Go!!(ビットサミットレッツゴー!!)で展示されます。
ゲームクリエイターズギルドは「BitSummit Game Jam 2023」を共催しています。
今回、京都で活動しているチームにインタビューを行いました。本シリーズでは、彼らがどのようなゲームを制作しているのか、そして直面している困難についてもお聞きしました。
『Murret』物理演算パズルゲーム!
菊谷:リーダー/プランナー
―ゲームジャムに参加されたきっかけについて教えてください。
菊谷:
大学2年生の菊谷です。講義中にゲームジャムの告知があり、興味があってプランナーとして参加しました。
―参加する前と現在の状況との間にはギャップはありますか。
菊谷:
個人開発とは責任の度合いがまったく異なりますね。個人で取り組む際に投げ出してきた頃と比べると、今回は全く違います。しっかり進んでいくので非常にやりがいを感じて楽しんでいます。
―チームで作っているゲームについて教えてください。
菊谷:
このゲームは、2D横スクロール型のパズルゲームです。ジャンプや横移動などのアクション要素に加えて、時間の操作もゲームの重要な要素となっています。デフォルトでは時間は停止しており、プレイヤーは時間を進めたり戻したりすることができます。
菊谷:
時間を進めると、崩落が発生したりなどのイベントが起こります。プレイヤーは時間の操作を駆使してゲームを進め、さまざまな困難を乗り越えることになります。
このゲームの世界観は、スチームパンク調の中世ヨーロッパ風で、蒸気技術が盛んに使用され、その結果、蒸気による影響で恐ろしい病気が広まっています。主人公は生き抜くために盗みを働き、生計を立てています。プレイヤーは治療薬を作るために、草を取りに行くことが目的のゲームです。
―ストーリーがしっかりあるのですね。
菊谷:
僕が作ったのではなく、ストーリーを作るのが好きな人を募集して作ってもらいました。
―操作していなくても主人公が動いているのがいいですね。
菊谷:
実はキャラクターの動きが1枚ずつ描かれています。そのためシンプルな形にしてあります。
それから、歯車やトロッコ、パイプなど、スチームパンク風の要素は意外と限られていることがわかりました。幸いにも、使い回せる素材が多くありますので、スチームパンクの時代設定がうまく成り立ったと思います。
―このゲームになった経緯について教えてください。
菊谷:
チーム全員でアイデアを出し合い、その中で時間を操作するシークバーの案が提案されました。デザイナーさんの中でも3Dが得意な人と2Dが得意な人など分かれるため、人数配分や仕様については全体のコンセプト実現を考えながら決定していきました。ロジックで仕様を決めていくことで実現性が高まり、制作はスムーズに進みました。
―チームメンバーについて教えてください。
菊谷:
全員で13人です。プランナー4人、デザイナー5人、 プログラマー3人、サウンドデザイン1人という構成ですね。
―サウンドもいらっしゃるんですね。
菊谷:
そうなんですよ。すごく助かっています。
―制作中に困ったことはありますか。
菊谷:
僕自身の問題ですが、リーダーになってから、運営の方法や勉強には取り組んでいましたが、後になって「これをやればよかった」と気付くことが結構ありました。
―例えばどんなことがありましたか。
菊谷:
チームを過ごしやすい環境にすることが大事ですね。例えば、他のチームでは制作するゲームとは関係のない活動を通じて団結を固めていました。チームの結束を高める意味でやるべきだったと思うこともあります。
他には、私たちのチームでも、班ごとにプランナーやデザイナー、プログラマーなどのリーダーを設けています。仕事の振り分けやイラストの担当などを決める際には、リーダーに任せることにしようと考えています。やはり専門分野ではないと、作業にかかる時間や目安がつかみにくいことがあります。最初は作業にかかる時間が把握できなかったため、期限を設定することができませんでした。この点は改善が必要だと感じています。また、実用レベルでなくても絵を描いてみることも大事かと思いました。そうすれば、タスクの目途も見えてくるかもしれません。
―次の機会がありましたら、どんなふうにやっていけそうですか。
菊谷:
最初の会議では、アイデア出しに時間を割いたため、実際の作業にあまり時間を取れませんでした。その際、作業と交流の両方を兼ねた集まりをするのも良かったかもしれません。
スケジュール管理アプリの導入も重要だと考えています。最初はドキュメントにすべてを記載していましたが、Googleカレンダーなどを使用して、チーム専用のスケジュールをしっかりと立てて、管理運営を行いたいと思っています。次回の機会があれば、このようなアイデアを提案してみたいです。
―BitSummit当日までにこだわりたいところを教えてください。
菊谷:
2つあります。
まず先ほどお話した通り、限られた時間の中でできるだけ多くのデザインを使い回すことが望ましいですが、それに加えて、市販品のようなカッコ良さや雰囲気のゲームにしたいです。
もう1つのポイントは、時間を操る要素があるゲームのため、物理現象を取り入れることです。
物体の落下や転がり、滑り、崩れるなど、そういった物理現象をゲームに反映させたいと考えています。物理演算パズルゲームも存在しますが、一般的なパズルゲームではゲーム進行がフラグ管理によって行われることが多いため、物理演算を使ってパズルを構築することはかなり難しいですね。
―ゲームのイメージ共有はどんなふうにしましたか。
菊谷:
このプロジェクトでは、毎週土曜日に全員が参加する「毎週会議」と、必要な時だけ参加する「毎日会議」の2つがあります。私は「毎日会議」には必ず参加しており、数をこなすことでメンバーへの共有を進めていますが、もっと効率的な共有方法を見つけたいと感じています。事務運営を学ぶ中で、もっと早く実践すればよかったと思うことがあります。成功体験よりも失敗体験の方が多いですが、チーム内での共有については改善していきたいと考えています。
―「毎週会議」「毎日会議」はチームで決めたのでしょうか。
菊谷:
チームで決めましたね。参加経験のあるメンバーから「前回ここで失敗したから、こうした方がいい」ということを初期の段階で言ってくださいました。そのため、前年度のチームが立てた運営ノウハウを引き継いで、開始することができました。この点が大きかったのかなと思います。
ゲーム自体はプレイ体験をどれだけ高めるかという段階ですので、ぜひ当日遊んでいただきたいです。
ガスから逃れる脱出ゲーム!
谷口:リーダー/プランナー
田中:プログラマー
―ゲームジャムに参加されたきっかけについて教えてください。
谷口:
2022年のゲームジャムにも参加しましたが、その時は全く力になれませんでした。そんな経験から、今年はリーダーとして参加しています。
田中:
ゲームジャムに参加しないかと先生から言われたので、いい機会だと思って参加しました。
―今回は海外の方との合同プロジェクトでしたが、海外の人とどう知り合ったのでしょう。
谷口:
このゲームジャムは、去年までは日本のチームだけで作っていましたが、今年から海外の学生クリエイターと共同で開発することになりました。中国の方だとツールの問題もあって、discordが使えないなどの問題もありましたが、意思疎通をして作っていました。DeepLを使って日本語と中国語を翻訳しながらコミュニケーションを取っています。間に通訳の方も入ってもらっていました。
―制作はどのようにはじまったのでしょう?
谷口:
今回、ゲームジャムのテーマが「For the Future」で元々ファーミングゲームをつくる予定でしたが、いろいろな事情でゲームの企画が直前で変わったんです。新たに、毒の世界になってしまう未来を逃げ切るためにアイテムを手に入れて逃げ切る脱出ゲームを作っています。
―いろいろな事情というのは?
谷口:
最初は順調に進んでいたんですが、中国側の開発者4人と連絡が取れなくなってしまって……。メンバーもデザイナーさんが1人棄権してしまって……。中国側からプロジェクトの原案が出て、技術的にも優れた人で信じていたのですが、突然連絡が途絶えてしまいました。
―なんと。
谷口:
アイデアは元々の企画を中国の方が持ってきてくれて、ガスを集めて、作物を作るというものだったんですが、メンバーも抜けてしまって全部作るのは難しかったので方向転換をしました。締切も迫っていて、今から完成させるなら、脱出ゲームだったら実装も可能だと判断しました。
―メンバーは12人おられるとのことですが、方向転換したときは意見が割れたのでは?
谷口:
脱落して6人になっていたので、ゲームジャムで話をして方向転換を決めました。
―ゲームジャム開催までに、すでに大波乱ですね……
谷口:
正直、当日はテンションがだだ下がりしました。前提として、最後までやりきるという約束と、連絡をしっかり取り合うという約束があったのですが…
―約束が……ないですね。すでに大事件が起きていますが、他に大変だったことはありますか。
谷口:
連絡が取れなくなったのが一番の事件でした。ただ、元データはあったので、6人で乗り切っていました。
―ゲームジャム中に脱出ゲームに切り替えたのでしょうか。
谷口:
ゲームジャムのコアデイ最終日ですね。やっぱり数か月の期間があったのに完成していないのはさすがに、プライドというか傷つくので。現状は、なんとか頑張っていて、やりたいことは実装できている感じですね。
―12人が6人になったことで何が変わりましたか。
谷口:
結束が強くなって、コミュニケーションが良くなりました。確信はまだないのですが、みんなで団結することで完成の見通しが立ってきました。
―なんとか立て直すことができてきたようですが、本作で力を入れた部分はどの辺でしょうか。
谷口:
制限時間の中ですやるべきことが複数あるので、ストレスにならない程度の緊張感を感じてもらうことと、ギリギリで達成できるようなレベルデザインですね。
―これを乗り越えたらおそらくすごい成長されると思います。
谷口:
ちょっとそれは感じています。
―あと3週間くらいですが、開発の状況はいかがですか
谷口:
実装部分はできていて、素材を量産する過程に入って、ステージの追加を考えています。プログラマさんには頑張っていただきました
―エンジニアの田中さんに伺いますが、今回のような突然の仕様変更はどのようなものでしたか
田中:
先輩に多目に対応してもらったこともあって、自分の箇所はそこまで多くなかったです。自分の箇所は、中国のリードエンジニアさんがやってくれると思っていたところだったのですが、仕様変更後は先輩と二人で担当して進めています。
―開催も近づいていますが、当日は展示場所におられるのですか?
谷口:
います。自分のブースを見ながらボランティアスタッフをやります。
―兼任は大変ですね。作品の展示ははじめてですか?
谷口:
僕が2回目で、田中くんが1回目です。自分たちのゲームについては、背景イラストを使ったりして、会場でPRしようと思っています。
―今回の開発を通じて感じたことがあれば教えてください
谷口:
最初は順調そのものだったのが、まさか予想外でこんなことになるとはおもっていませんでした。この経験が今後も活かせるのかなというのは思っています。
田中:
急な変更でしたが、この経験を積極的に活かしたいわけではないですが、どこかで活きることもあるのかなと思っています。
今回は『Murret』と立て直しが始まったチームを紹介しました。
展示の詳細については、Bitsummit公式サイトをご覧ください。お楽しみに!!
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