ゲームクリエイター甲子園に登場した中から18作品が、ゲームクリエイターズギルドが運営するクリエイター支援のためのコミュニティレーベル「Seeds by Game Creators Guild」の第二弾として参加することが決定しました。
今回のインタビューは18作品のうちの1つ『Out of the World』をピックアップします。

このインタビューシリーズでは、ゲーム作品に焦点を当て、制作の裏側に迫ります。どのような構想を経て形づくられたのか、学生クリエイターのゲーム制作への思いや今後の展望についても探っていきます。

Toyota Ryuto/『Out of the World』

個人制作クリエイターのToyota Ryutoさんは、「ゲームクリエイター甲子園 2022」において、総合賞 第4位のほか、Phoenixx賞、SEモバイル・アンド・オンライン賞、ゲームデザインラボ賞(旧・濱村崇賞)を受賞しました。

専門学校に入学してから、彼はおよそ30ものゲームを制作してきました。『Out of the World』に込められた思いやゲーム制作で大切にしていることについて聞きました。

Toyota Ryuto チーム紹介
豊田龍斗企画、プログラム、アート

哲学的な観点を取り入れたパズルアクションゲーム『Out of the World』

【作品紹介】
【この世界は “目に見えているモノ” だけが真実】
このゲームはキャラクターの視野外の物体の存在が消える2Dパズルアクションゲームです。自分の記憶を頼りに進むスリルと、その記憶が正しかった時の快感を楽しみましょう。アンケートに是非ご協力お願いします!
https://forms.gle/gNTZnQTaNmNVB6ZYA公式アカウント ▶ https://twitter.com/OutOfTheWorlds
開発者アカウント ▶ https://twitter.com/toyota_ryuto

《「みんなのゲームパレード」より『Out of the World』をダウンロード!》
『Out of the World』を実際に遊んでみたい方は、作品紹介ページ内の「作品をダウンロードする」をクリック!『Out of the World』作品紹介ページ ▶ https://gameparade.creators-guild.com/works/563

― 『Out Of The World』を作ろうと思ったきっかけや、開発経緯を教えてください。

Toyota Ryutoさん:
このゲームはNHKさんが主催する「神ゲー創造主エボリューション」というコンテストに参加する際に考えたゲームです。そのコンテストでは誰も見たことないような新しさや、既成概念を揺るがすような驚きを求められました。

革新的なゲームとは何かを考える際に、「シュレディンガーの猫」と呼ばれる哲学的な観点からアイデアを取り入れて『Out Of The World』の企画を立てました。この観点から、「自分が見えてない範囲に物体は存在するのか」という問いを持つ革新的なゲーム体験になりました。

―「さっきまで存在した足場が視界の外に出るとなくなる」という要素は、哲学の考え方を参考に作られたんですね。企画自体はいつ頃にまとまったんでしょうか。

Toyota Ryutoさん:
6月の下旬からアイデアを考えました。アイデアは2、3日ぐらいでまとまりましたが、企画書の作成に時間を要しました。リソース管理をテーマにしたゲームや今の世相を反映したゲームなど、計6パターンの企画案を考えました。先生からのアドバイスを受けながら、最終的に一番自分自身が納得できる『Out of the World』を選択しました。

―2、3日で企画案がまとまったんですね! とても早いです。6つの企画案を出されたということですが、『Out Of The World』を選んだ理由を教えてください。

Toyota Ryutoさん:
ゲームのメッセージ性がしっかり決まっており、またパズルとしても成立している上に、ビジュアル的にも目新しい要素があるので、『Out Of The World』が形にしやすいと判断しました。頭の中で考えた段階から既にゲームとして完成しているような感覚もありました。

ゲームのテーマとして「目に見えているものだけが真実」と掲げており、「自分で導き出した答えを信じよう」というメッセージを込めています。

こだわったのは、一体感のあるゲームに仕上げること

―制作時にこだわった点や、アピールしたいポイントを改めて教えてください。

Toyota Ryutoさん:
特にこだわったのは、テーマ、コンセプト、グラフィック、世界観やサウンドなどゲームの要素を全部関連させて、全体的に一体感のあるゲームに仕上げることですね。

最初にシステムとゲームの面白さに影響するコンセプトを考えました。次にゲームを特徴づけるために白黒のグラフィックを選びました。そしてテーマやメッセージ性を決めました。さらに、ゲームの世界観を説得力のあるものにするために、キャラクターの設定やストーリーを充実させ、その世界観を表現する音楽や効果音を選びました。

―キャラクターデザインはどのように決められましたか。

Toyota Ryutoさん:
『Out of the World』は、心の中の世界で主人公が自問自答するストーリーなので、性別が分からない棒人間にしました。これによってプレイヤーがゲームの世界観により没入しやすくなると考えました。

このゲームの世界観になっている「心の中の世界」のイメージは夢の中のようなふわふわとした不思議な空間です。自分という存在が夢の中では曖昧になることがあります。そのため、棒人間のキャラクターデザインがぴったりだと思いました。

―なるほど。ゲームの世界観に没入できるように、あえて棒人間のデザインにされたんですね。

Toyota Ryutoさん:
横スクロールで進むゲームシステムを考慮した上で、“ひとつ目”のキャラクターが一番合うかなとも考えましたが、白黒のグラフィックだと変にホラー感が出てしまいました。むしろ落ち着きのある雰囲気のゲームに仕上げたかったので、もう少しポップで可愛い感じに寄せるために「ミニオン」のキャラクターデザインを参考にしました。

―しっかりとテーマや世界観が決まっている分、その世界観に合った効果音やアセットを探すのは骨の折れる作業だったのではないかと思いますが、いかがでしたか。

Toyota Ryutoさん:
最初の企画書の段階でグラフィックがすでに完成していました。アセットを使ってグラフィックを制作する過程で、白のアウトライン以外は真っ黒なものができたときに、かなり特徴的なグラフィックであり、ゲームの世界観にすごくマッチしていると感じました。

僕自身はモデリングや画像系の素材を作るのが得意ではないので、ゲーム制作において最もコストがかかるのは背景などの部分だと思っています。そのため、シンプルでありながら特徴的な見た目で、制作コストを抑えることができる白黒のグラフィックが完成した瞬間に、「これだな」と感じました。

―企画を考えるまではかなりスムーズだったと思いますが、実際にゲームを制作する中で難しかった点や苦労した点はありますか。

Toyota Ryutoさん:
メインとなるシステム部分を実装するのが難しかったですね。キャラクターからライントレースを飛ばして当たったものを実体化させて、「障害物で視界が遮られる」という演出を作りました。しかし、視点操作時にバグが発生し、そのバグの解決に時間がかかりました。マウスやコントロールスティックでの視点操作によって、当たり判定の処理が追いつかず、オブジェクトが実体化しないバグを直すのにはかなり苦労しました。

ゲームに登場する床は1マス単位のブロックでできているため、ライントレースが隣のブロックに映った場合に、現在のオブジェクトとの当たり判定を切り替える必要がありました。しかし、切り替えが正常に行われず、すべてのブロックが常にオンのままになるという問題も発生しました。

また動きが早すぎると、ブロックがすぐにオフになるバグもありました。このバグの解決は、状態が切り替わるまでに0.1秒程度のディレイを挟むことで、タイミング良くブロックを実体化するように調整しました。

―確かにブロックが実体化する際に少しだけディレイがあったように感じますが、まるで暗闇の中でぱっと懐中電灯が付くような、気持ち良い遅延でした。α版やβ版、完成後のタイミングで周りの人に遊んでもらいましたか?

Toyota Ryutoさん:
はい。この作品ではテストプレイを通じてのブラッシュアップに重点を置いて制作していました。「システムのアイデアやグラフィックが個性的で尖っている」といった声が多かったです。細部までこだわって制作したので、とても嬉しかったですね。

一方で、「アクションが難しい」という声も多く寄せられ、現在はアクション性とパズル性のバランスを取るための調整を行っています。

―具体的にはどういった修正をされたのでしょうか。

Toyota Ryutoさん:
すでに実装した部分としてはメインのシステム部分です。以前は見えている部分だけが実体化して、見えていない部分にある物体は消えるシステムでしたが、現在は新たに「目をつぶる」アクションを追加し、一度見たものは実体化したままになるように改良しました。具体的には、目をつぶると見えている範囲のブロックが徐々に消えるようになっています。

他にはブロックを可視化させることとジャンプや壁キックを同時に行う必要がないように調整しています。

―メインシステムを簡単にすると難易度も下がってしまうと思いますが、レベルデザインも調整されたんでしょうか。

Toyota Ryutoさん:
そうですね。全体で50ステージありますが、最初の25ステージでは少しずつ難易度を上げつつ、慣れているプレイヤーであれば1時間ぐらいでクリアできるようになっています。一方、後半のステージではアクションが求められるような構成になっています。

―制作期間やブラッシュアップに費やした期間はどれくらいでしょうか。

Toyota Ryutoさん:
制作を開始してから完成までにおよそ3ヵ月かかりました。その後は主にブラッシュアップの期間だが続き、合わせて半年の制作期間を要しました。メインシステムの細かいブラッシュアップは大体完了しており、メインシステムの変更に伴い、ギミックも大幅に減らして50ステージを再構成した感じですね。

今後は再びテストプレイを重ねてフィードバックを得る動きを進めていきたいです。働きながらでもゲーム開発は続けるつもりです。無理に急がずしっかりとブラッシュアップをしてからリリースしようと思います。

リリースされたそうです! おめでとうございます!

システムを導入して、作品をブラッシュアップさせやすい環境に

―ブラッシュアップはどのようにされていますか。

Toyota Ryutoさん:
何かを実装した後はプレイヤーの行動を元にブラッシュアップを行っています。実は、プレイヤーの行動が見えるシステムを開発したんです。

―プレイヤーの行動が見えるシステム、ですか。具体的にどういうシステムなのか、ぜひ教えてください。

Toyota Ryutoさん:
ゲームをプレイすると、そのログがDiscordに送信される仕組みです。プレイしたログ情報は、開発側のプロジェクトデータのフォルダ内に保存されており、この情報を読み込むことでプレイヤーの行動を再現するシステムを作りました。このシステムを使ってブラッシュアップを行っています。

―プレイヤーがどこでつまずきやすいのか可視化できるので、どこを修正すべきか分かりやすいですね。これはプロの現場でも役立ちそうな画期的なシステムだと思います!

Toyota Ryutoさん:
今まではDiscordの上で「ゲームオーバーの回数」や「クリアにかかった時間」といった情報を文字でしか得られませんでした。しかし、このシステムを導入したことで、ユーザーがどこでつまずいているのかが分かるようになりました。

―ちなみに、次回作の構想はありますか?

Toyota Ryutoさん:
アイデアは思いついたらどんどんメモに書いていて、その中にアイデアが固まってきたものがあります。ただ、『Out Of The World』と同じプラットフォーマーのパズルゲームなので、作るか悩んでいます。違ったテイストのゲームを作りたい気持ちもありますが、アイデアとしては結構完成しているので悩んでいるんです。

―なるほど。良いアイデアはあるものの、ゲームとして形にするかどうか悩んでらっしゃるんですね。Toyotaさんが考える良いアイデアとはどんなものでしょうか。

Toyota Ryutoさん:
頭の中で遊んだときにゲームとして成立するものは、良いアイデアだと思います。あとは世界観やメッセージ性などがゲームと関連しており、一貫したテーマでゲーム全体がまとまっているかどうかも考える必要があります。これらの要素がうまく組み合わさっていれば、アイデアの完成度が高いと言えるんじゃないかと考えています。

―アイデアを練る段階でそこまで考えているのは素晴らしいですね。ゲームのアイデアはジャンルや取り組みたい技術から考えられることが多いと思うので、そのような視点でアイデアを持つことができるのはすごいと思います。

Toyota Ryutoさん:
もちろん何かテーマを課してアイデアを考えることもあるんですが、まずは「そのゲームで一番面白い部分は何か」を考えるようにしています。そして、それを引き立たせるための世界観を考えたり、「プレイヤーに面白さを体験してもらうには、どういうシステムが一番良いか」ということを考えたりします。

僕の頭の中では、世界観、システム、テーマなどのアイデアが密に絡み合って1つにまとまっています。アイデアを決定する際には、「そのゲームである必要性・意味」をしっかり考えて、全てがつながるように制作しています。

―そういった制作ステップを踏んで制作しているからこそ、世界観が破綻しないゲームになるんですね。今後Toyotaさんがどのような作品を制作されるのか、とても楽しみです。最後に、『Out of the World』をプレイされる方に一言、お願いします!

Toyota Ryutoさん:
学生生活の集大成となるゲーム作品『Out of the World』が、2023年の夏頃にSteamにてリリース予定です。皆さんもぜひプレイしていただければと思います。

「みんなのゲームパレード」から『Out of the World』をダウンロード!

今回ご紹介した『Out of the World』は、開発中ゲームのβ版が集まるサイト「みんなのゲームパレード」にて掲載中!作品を実際に遊んでみたい方は、作品紹介ページ内の「作品をダウンロードする」をクリック!

『Out of the World』作品紹介ページ ▶https://gameparade.creators-guild.com/works/563

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「Seeds by Game Creators Guild」とは

「Seeds by Game Creators Guild」は、ゲームクリエイターの若きスターがここから羽ばたいていくことを支援するためのコミュニティレーベルです。

クリエイターコミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」が運営する「みんなのゲームパレード」に掲載されている作品や「ゲームクリエイター甲子園」に応募された作品の中から、特に輝いていたゲームタイトルを応援します。

本レーベルは、パブリッシャーではなくゲームクリエイター支援のためのコミュニティレーベルを基本コンセプトとし、特にコミッションなどをお支払いいただかず、必要な実費のみでご利用いただけます。

未来のある優れた作品がこのレーベルに集まることによって、ユーザーや業界への認知機会を増やし、本レーベルを通してスタジオ設立や、大手パブリッシャーへのステップアップにつながっていくことを目的とします。

Seeds by Game Creators Guild 公式サイト ▶ https://www.creators-guild.com/seeds

「ゲームクリエイター甲子園 2023」開催中!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。

このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。

「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

【ゲームクリエイター甲子園 2023 エントリー情報】

エントリー・チーム登録期間:2023年1月30日(月)~10月31日(火)16時59分
作品提出期間       :2023年1月30日(月)~11月7日(火)16時59分

※作品がない状態でのエントリーも可能です。
※一作品につき一回チーム登録が必須となります。個人参加の場合もチーム登録をお願いします。
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です。

LINE公式アカウントの友だち追加はこちら

【応募資格】

年齢  :小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数 :無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です

「ゲームクリエイター甲子園 2023」エントリーはこちら

 

ゲームクリエイターズギルドとは
ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)スキルや知識を学びゲームクリエイターとして成長・活躍し続けたい、同じ業界にいる仲間と市場の動向や技術についてなどの交流したい、日本のゲーム業界・職業自体の価値を上げ今より良い環境を作っていきたい……。そんなゲームを愛する人たちの未来に、必要な情報や機会を提供します。ゲームクリエイターズギルド公式サイト ▶ https://game.creators-guild.com/

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