「ゲームクリエイター甲子園 2022」総合賞 第2位|様々なこだわりが詰まった『はがれがしー』インタビュー

「ゲームクリエイター甲子園 2022」総合賞 第2位『はがれがしー』インタビュー

今回は2022年に行われた「ゲームクリエイター甲子園 2022」で、総合賞 第2位をはじめ企業賞などの各賞に輝いた『はがれがしー』の制作チームのインタビューをお届けします!

審査員から「とにかく可愛い!」と評価を受けたパズルアクションゲーム『はがれがしー』がどのように生まれたのか、「面白いゲームシステム」を考える上でこだわったポイントはどこなのか。専門学校 HAL大阪の制作チーム「サンバルがんばる」の皆さんにお聞きしました。

「剥がす感触」が楽しめるパズルアクションゲーム『はがれがしー』

【作品紹介】
「剥がす感触」に注目してこのゲームを作りました。
「剥がす」ことで裏に何かを発見するワクワク感、「剥がす」事で地形を変化させ次へ進むパズル性、一気に「剥がす」事でプレイヤーを巻き込んで吹っ飛ぶアクション性などをゲームに盛り込みました。「剥がす」をより楽しめるギミックやステージ、絵本を基調としたカワイイ世界観も含めて完成度の高い作品が楽しめます。
制作チーム名 ▶ サンバルがんばる
作品詳細 ▶ https://gameparade.creators-guild.com/works/331
(写真上段 左から)プログラマー ビリートリアディさん、プログラマー 米田孟範さん、プログラマー 井原瑞生さん、プログラマー 岩浅尚弥さん (写真中段 左から)サウンドクリエイター 小林亜由美さん、プログラマー 廣瀬江梨さん、デザイナー 大井誌晏さん、デザイナー 桑原七海さん (写真下段 左から)リーダー兼プランナー 冨田一花さん、サブリーダー兼プログラマー 澤下将也さん

ブレストを重ねて出てきた「剥がす」というテーマ

― 早速ですが、『はがれがしー』の制作経緯について教えてください。

冨田さん:
『はがれがしー』は元々「日本ゲーム大賞2022」に向けて制作した作品です。コンテストのテーマが「感触」だったので、チームで相談して「感触の良いアクションゲーム」を作ろう、という話になりました。

そこまではサクッと決まったんですが、何の感触をテーマにして作るかが全然決まらなくて。とにかく草案を出しては先生に見せて、という感じで進めていましたね。

― なるほど。色々と案を出されたということですが、具体的にはどういった案が出てきましたか?

冨田さん:
「輪ゴムが弾ける時の感触」というのを考えたんですが、先生からは「輪ゴムがテーマの作品は無限にある」と言われてしまいました(笑)。確かにそうだな、とも思ったので「自分が気持ち良いと思う感触」を改めて皆でブレストを重ねて、ようやく「剥がす」というテーマが出てきました。

私はゲームのパッケージのフィルムを剥がす時に「超気持ち良い!」と思いながら剥がしているんですが(笑)、その話を皆にしたら共感してもらえたので、そこからどんどん話が進んでいきましたね。

― 「剥がす」というテーマが決まってからは、どのようにゲームに落とし込んでいったんでしょうか。

冨田さん:
「剥がすあるある」を皆で考えて、その中からゲームに反映できそうなものを引き出して形にしていきました。実際の『はがれがしー』には反映させていないんですが、「ぷくっとした立体的なシールは価値が高い」っていうあるあるとか…(笑)。

女子は特に友達同士でシールを交換する文化があったので、結構案が出てきました。

― 「日本ゲーム大賞2022」では、アマチュア部門で見事大賞を受賞されましたね。
ですが、「ゲームクリエイター甲子園 2022」では総合賞 第2位でした。率直な感想はいかがでしたか。

冨田さん:
もちろん嬉しさもありましたが、2位なのでやっぱり悔しかったですね。作品名が呼ばれる前に審査員の方からコメントで褒めてくださったシーンが流れたじゃないですか。そこで「とにかく可愛い」というコメントを聞いて「これはウチらの作品しかないな」と確信しました(笑)。

ただ、これまで様々な作品を出してお世話になってきた身としては、最終的に凄く良い結果を残せたので嬉しかったです。

廣瀬さん:
私は他のチームの人と「どのチームが賞を取るのか」を予想しながら授賞式を観ていました。そんな中で『はがれがしー』が発表されたので、一緒に観ていた子にめっちゃ祝ってもらえて凄く嬉しかったですね。

あと、審査員の方からの「可愛い」という言葉も嬉しかったです。皆可愛さにもこだわって作っていたので、評価していただけて良かったです。

岩浅さん:
2位だと知った時は悔しかったですね。ただ、私自身ゲーム作品で賞を取ったことがなかったので、「ゲームクリエイター甲子園で賞を獲得できた」ということに嬉しさを感じました。

「ボス戦は絶対に作りたい」提出期限ギリギリまでこだわり抜いたゲーム制作

【審査員からの講評(一部抜粋)】
・とにかく可愛い!その中でもゲーム性自体はハードな部分があったり、パズルも難しくなったりと、可愛さとゲーム性の面白さ・難しさが融合されている素晴らしい作品でした。(稲船氏)
・「剥がす」という何気ない行動をゲームにしたセンスに脱帽!これは面白いです。このアイデアをゲームにするまで大変な苦労や試行錯誤があったことと思います。世界観にもすごく親しみがあって素晴らしい作品だと思いました。(今村氏)
・シールを剥がすとくるっと丸まって、そのシールがプレイヤーの足場になって次に進んでいく。そんなアイデアを思いついてゲームにするのは、シンプルに凄いと思いました。(榊原氏)
・お見事です!この手のゲームを思いついても「やろう」と思うプロは正直あまりいません。なぜなら、難易度が高いから。にも関わらず、技術面・デバッグ面の大変さにきちんと向き合えていて本当に感心しました。プレイヤーにとっても分かりやすい遊び方に昇華できているのも脱帽です。間違いなく、優勝候補の一つの作品だと思います。(松山氏)

― 審査員からの講評を一部ご紹介しましたが、いかがでしたか?

冨田さん:
審査員の方が言及してくださった「分かりやすさ」は凄く苦労した部分なので、本当に嬉しいです!

ゲームでは「肉球の形をした照準を出してシールを掴む」という挙動があるんですが、思った所を掴んでくれないというフィードバックがずっとあって。その課題をどうやって解消していくか沢山話し合いましたし、テストプレイヤーにも直接ヒアリングして改善を重ねていきました。

チュートリアルも何回も作り直しているので、「分かりやすさ」や「バグの少なさ」を評価していただけて良かったです!

― 『はがれがしー』の制作で一番楽しかったことや、思い出に残っていることは何でしょうか。

澤下さん:
僕はテストプレイが楽しかったです。レベルデザイン担当のプランナーがテストプレイの度にステージを変えてくれたので、それをデバッグするのが楽しかったですね。「デバッグが大変だったでしょう」といった審査コメントもありましたが、自分は楽しみながらできました(笑)。

大井さん:
私は「自分でデザインしたものがゲームに実装されたこと」が一番思い出に残っています。担当ポジション柄、制作時はゲームに触らないので、初めてゲーム画面を見た時は「自分が作った素材をこんなに美しく動かしてくれたんや!」と、感動しました。

ビリーさん:
僕が一番思い出に残っているのは、ボス戦を初めて遊んだときですね。作ったチームのメンバーからしても面白くて、プレイした瞬間に「うわ、凄い!」と思いました。

冨田さん:
ボス戦はボリューム的にも制作難易度的にもスケジュールがカツカツだったんですが、「ねじ込もう!」と結構無理やり作ってもらったんです(笑)。演出が決まったのもギリギリで、5月の末ぐらいに急ピッチで作ってもらいました。

― そうだったんですね。ですが、ギリギリで作ったことを感じさせないクオリティで、かつ面白く作られているのが凄いです。

澤下さん:
ボス戦は絶対作りたい、という想いがあったので何とか作りました。プランナーの秋田くんが考えてくれた案が凄く面白くて、“このステージの総集編”のような感じにまとめてくれたので、「これはやるしかないな」と。

廣瀬さん:
ボス戦の曲もめっちゃ格好良かったよね。

小林さん:
ボス戦の曲は自分なりに試行錯誤して作った記憶があります。私はSE志望で作曲は苦手なんですが、「どうせやったら曲作りも挑戦しよう」と思ってYouTubeで色々と調べながら制作しました。

それと、「シールを剥がす音」もかなりこだわって制作しましたね。紙を破る音を収録して、プラグイン等を使ってノイズの高音域を削って、いい感じにMIXさせて…。

冨田さん:
結構苦労したよね…。「シールを剥がすASMR」の動画とかも調べて小林さんと一緒に聞きました(笑)。

シールを剥がす音の長さはゲームに合わせて調整する必要があるので、「SEのピッチを徐々に上げれば“剥がした感”のある音になるんじゃないか」と試行錯誤をして。あの時は週一でお互いの教室に通い詰めて相談し合いました。

― 確かに、シールを剥がす時のSEも「ゲームの気持ち良さ」に一役買っていると思います。
― 各メンバーどこを切り取ってもこだわりと面白さが詰まっていて、色んな角度から突き詰めて作られたのがひしひしと伝わりました。

今後の目標

― 皆さんは「こんなクリエイターになりたい」というような目標はありますか?

冨田さん:
私は今回の『はがれがしー』のように、皆がやりたいことができるようなチームを組めるプランナーになりたいです。

澤下さん:
僕は「ゲームの気持ち良さ」が大好きなので、手触りの良いゲームを制作できるようなクリエイターになりたいですね。

大井さん:
今回のゲーム制作を通じて「もっとこういう風にできたら良いな」「この技術があったらもっと違う表現ができたのにな」と思うことがいっぱいありました。なので、これからはデザインだけでなくエンジンの技術など様々な知識を身につけて、オールマイティにこなせるようなデザイナーになりたいです。

桑原さん:
今回様々な方に「キャラクターが可愛い」と言っていただけたのが凄く嬉しかったので、そのように色んな方から認めてもらえるような技術をもったクリエイターになりたいですね。

小林さん:
私は人や動物の声を混ぜた「クリーチャーボイス」を作るのが好きなので、これからも色んな方の声を収録して自分だけのオリジナルモンスターを作って、ライブラリーにしたいです!(笑)

廣瀬さん:
これまで様々な作品を制作してきましたが、今回の『はがれがしー』ではかなりメンバーに色んな要望を出したり、改善策を提案したりしました。それを皆が納得して改善してくれたのが凄く嬉しかったですし、誰かの役に立てたことで自己肯定感も上がって。

今後は「廣瀬やったらこの仕事を任せても良いやろ」と言って貰えるようなオールラウンダーなクリエイターになりたいです。そして、色んな人にちゃんと意見を言えるクリエイターになりたいと思います。

井原さん:
僕は「プログラムを使って人にどう見せるか」を考えるのが好きなので、「ゴリゴリのプログラマー」としてではなく、ユーザー体験を考える部分にも携われるような仕事ができると嬉しいです。

岩浅さん:
今回の制作を通じて、シェーダー開発でユーザーに楽しさや感動を与えられることの嬉しさを知りました。なので今後はチーム全体の縁の下の力待ち的な存在としてシェーダー開発をしていきたいですし、ゆくゆくはテクニカルアーティストになれると嬉しいです。

米田さん:
僕は広く浅く物事を知ることが好きなんですが、今回の制作を通じて「もっと突出した知識や技術があれば、チームに貢献できたんじゃないか」なっていうのを感じました。なので社会人になったら「この人に任せても良い」という技術を持ったクリエイターになりたいです。

ビリーさん:
僕も井原くんと同じく「ゲームをどう見せるか」を考えるのが好きなので、プランナーのような仕事にも興味がありますし、将来的にはディレクターにも挑戦したいです。ですが、それ以上に思っていることがあって。

僕の母国であるインドネシアではゲーム制作はまだまだ発展途上なので、今後はインドネシアのゲームクリエイター代表としてゲーム制作の魅力を伝えられるようクリエイターになりたいと思います。

― 皆さんのご活躍を心より応援しています。本日はありがとうございました!

最後にゲームクリエイターズギルド主催の宮田よりトロフィーを授与させていただきました。

改めておめでとうございました!

 

宮田

今回インタビューを行った『はがれがしー』の制作チームの皆さんは、総じて「どうやってゲームを良くしていくか」という課題に真剣に取り組まれている印象が強くありました。

技術面を磨くだけでなく、ユーザービリティについてチーム全員で考え突き詰めていった結果、今回の成績に繋がったのではないでしょうか。

我々ゲームクリエイターズギルドは、「彼らは今後のゲーム業界を担うクリエイターになれる」と信じています。

 

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「ゲームクリエイター甲子園 2023」に挑戦しよう!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。

このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。

「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

【ゲームクリエイター甲子園 2023 エントリー情報】

エントリー・チーム登録期間:2023年1月30日(月)~10月31日(火)16時59分
作品提出期間       :2023年1月30日(月)~11月7日(火)16時59分

※作品がない状態のエントリーも可能です。
※一作品につき一回チーム登録が必須となります。個人参加の場合もチーム登録をお願いします。
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です。

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【応募資格】
年齢  :小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数 :無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です

「ゲームクリエイター甲子園 2023」エントリーはこちら

 

ゲームクリエイターズギルドとは
ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)

スキルや知識を学びゲームクリエイターとして成長・活躍し続けたい、同じ業界にいる仲間と市場の動向や技術についてなどの交流したい、日本のゲーム業界・職業自体の価値を上げ今より良い環境を作っていきたい……。そんなゲームを愛する人たちの未来に、必要な情報や機会を提供します。
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