スクエニに入ったらいつの間にか任天堂子会社社長になっていた寄り道人生|亀岡 慎一【クリエイターヒストリア#10 後編】

クリエイターヒストリアとは
クリエイターヒストリアとは、ゲーム業界でお仕事をしているデザイナー、プランナー、エンジニアなどのクリエイター向けに、キャリアデザインをテーマに実施するセミナーイベントです。 業界で成功を納めているクリエイターは、今までどのようにキャリアを積んできたのでしょうか… 現在に至るまでの努力や道のり、人生の転機など、その歴史に迫っていきます。

クリエイターヒストリア#10、亀岡慎一さんが登場!

各回豪華ゲストを招き、キャリアヒストリーをインタビュー形式で紐解くクリエイターヒストリア。記念すべき第十回目のゲストは、株式会社ブラウニーズ代表取締役社長 亀岡 慎一(かめおか しんいち)さんです。漫画家からサラリーマンに転身した彼が任天堂子会社会長社長にまで登りつめた“寄り道人生”に迫ります。

ゲームの制作チームを作るはずが、任天堂子会社の社長に

スクウェアを退職後、縁あって任天堂の担当者と話し合いを行った亀岡さん。当初は「ゲームボーイアドバンスの制作チームを作らせて欲しい」と持ちかけていたところ、いつの間にか担当者から「会社を作ってほしい」と言われたのだそう。そうしてできたのが任天堂子会社の株式会社ブラウニーブラウン(現:1-UPスタジオ株式会社、以下ブラウニーブラウンで統一)です。

亀岡氏
経営のノウハウなんて持ち合わせていなかったので、そう言われたときは本当にビックリしました。
宮田
タイトルを作るつもりが、会社ができてしまったんですね。
亀岡氏
そうなんですよ。ゲームのチームだけ持たせてもらおうと思って話を持っていっただけなんですけど…(笑)。そんな流れで社長になっちゃったわけですね。
宮田
転職しようと思ったら社長になっちゃうなんて、本当にビックリです!
宮田
以前クリエイターヒストリアに出ていただいた倉島さんもそうですが、スクウェア出身で現在は違った形で活躍されている方々がたくさんいらっしゃいますね。では、ブラウニーブラウンでのお仕事はどんな感じで進められていましたか?
亀岡氏
ブラウニーブラウン設立からある程度システムが固まるまでは、好き放題させてもらっていました。逆に「本当にこれで良いのかな」と思うくらい何も言われなくて、若干不安ではありましたが…(笑)。一作目の『マジカルバケーション(以下、マジバケ)』のときは本当に好き勝手に作りましたね。

「“売れるもの”ではなく“面白いもの”を作りたい」

『マジバケ』は「バトルで魔法が倍増するチャットシステムのRPGを作りたい」と、ある社員が言ったことがきっかけで制作がスタート。他のRPGとの差別化を図りながら一気に世界観を構築していったそうです。

亀岡氏
ちょうどその頃流行っていた『ポケモン』は8種類のキャラ属性があったので「その倍の16種類ぐらい属性作っちゃおうぜ」っていう感じで。その場で盛り上がったネタをそのままゲームに反映させた部分もありますね。とはいえ、後からこの設定に苦しめられることになるんですけど…(笑)。
宮田
「売れる・売れない」よりも「これを作りたい」という気持ちを大事にされていたんですね。
亀岡氏
僕は「売れるもの」を考えて作ったことはないです。よく「売れないものを作ってもしょうがない」って言うと思うんですが、そもそも何が売れるのかなんて分からないじゃないですか。そんなの分かっていたら、世の中のゲーム全てが当たっているはず。
亀岡氏
それよりも、まずは社内の人間が「面白い」と思うものを作ってみる。それが当たるかどうかは、後から付いてきますからね。

『マジバケ』リリース後は制作陣も順調に増え、大規模な開発チームに発展したブラウニーブラウン。そんな中、母体の任天堂の人員不足からサポート会社として専任してほしいと依頼があったそうです。

亀岡氏
スタッフの中にはマリオを作りたい人もいるし、僕のように自由にゲームを作りたい人もいる。なので残留希望者は会社に残ってもらって、それ以外の人には新たに設立した株式会社ブラウニーズ(以下、ブラウニーズ)にきてもらいました。

ブラウニーズ設立から5年。ようやく生み出せた“自分たちらしい作品”

ゼロからの再出発の道は険しく、信頼を獲得するのが大変だったと語る亀岡さん。そしてブラウニーズ設立から5年後の2017年、遂にオリジナルタイトルであるスマホ向けアプリゲーム『EGGLIA ~赤いぼうしの伝説~(以下、エグリア)』をリリース。2021年12月にはNintendo Switchから『EGGLIA Rebirth』を発売しました。

亀岡氏
『エグリア』シリーズは、スクウェア時代の知り合いのプロデューサーから「一緒に新しい作品を作りましょう」と持ちかけていただいたのがきっかけで制作が始まりました。プロデューサーからは「好きなように作ってほしい」とありがたい言葉をいただいていたので、本当に楽しかったです。設立5年目にして、ようやく“自分たちらしい作品”を作ることができました。
宮田
最初はアプリから始まりましたが、アプリの制作はいかがでしたか?
亀岡氏
アプリというのが初めてだったので、こちら側としても少し不満の残るものになってしまいました。ユーザーの皆さんには申し訳ないな、と思う部分もあったので、今回のSwitch版は、そういったユーザーにも満足していただけるように全力で作りました。
宮田
満を持して、という形ですね。コンシューマー向けゲームとして、また一から制作するとなると、かなり体力も必要になってくるかと思います。
亀岡氏
そうなんですよ。宮崎駿先生のお気持ちがすごく分かります。毎回辛くて「引退しよう」と言うんだけど、でも結局やることがないから「じゃあ次は小さいタイトルだけ」って思って作る。とはいえ既に大きいタイトルに慣れているから、どんどん話がでかくなってきて、大変なことになって、また苦労して。このループはきっと死ぬまで続くんじゃないかな(笑)。
宮田
では少し変わった質問になるのですが、もしもスクウェアに残っていたら、また別の会社に転職されていたら、キャリアプランはどうなっていたと思いますか?
亀岡氏
スクェアでFFチームにシフトするのではなく『Legend of Mana 2』をそのまま作らせてもらえていたら、また違っていたかもしれないですね。
宮田
漫画家を続ける、という選択肢は?
亀岡氏
難しいかな。一度寄り道をすると、そちらにハマってしまう性格なので。
宮田
では、今改めて漫画を描きたいとかって思ったりするんですか。
亀岡氏
しばらく商業絵を描いてないのでリハビリが大変そうですし、恐らくもう漫画を描くことはないと思います。漫画家時代の「自身の作品をアニメ化させて、絵から脚本まで全て自分で作る」という目標は、ゲーム制作の現場で実現できることに気が付きましたしね。

人生に無駄なことはない。まずは行動を起こすことから始めよう

宮田
では最後に「振り返ったときに後悔しないクリエイター人生を歩む秘訣」を教えてください。
亀岡氏
まず前提として、人生に無駄なことはないと思うんですよ。何をやっても何かしらプラスになっているんじゃないかな。僕自身、何か行動を起こして悔しい思いをしたとしても、次の行動に繋がる原動力や糧になっているので。だから、やりたいことがあるなら、まずは“そっち”に行きましょう。
宮田
失敗や後悔を恐れずに、どんどんチャレンジしていった方が良い、ですね。
亀岡氏
少し変な言い方になってしまうんですが、今の若い人たちと話すと、“本気でやりたいこと”を持っている人が少ないように感じるんです。だから“本気でやりたいこと”を持っている人に投資したくて。お話に乗るので本当に来てほしいです。
亀岡氏
それと、僕的にはスーパーファミコンをもう一回出して欲しいな。色んなクリエイターが集まって、あの限られたスペックの中でどんな作品が生まれるのか、みたいなことがしたいです。
宮田
それめちゃくちゃ面白いですね。コンペ、ぜひやりましょう!

漫画家からゲーム会社のサラリーマンに転身、ゲームクリエイターとして様々なキャリアを積み重ねてきた亀岡さん。彼の“寄り道人生”は好奇心と行動力、そして、面白いこと・本気でやりたいことに貪欲に取り組むことで作り上げられたものでした。皆さんも失敗や後悔を恐れずに、本気でやりたいことに向かって全力でチャレンジしてみましょう!

それでは今回のクリエイターヒストリアはここまで。また次回をお楽しみに!

 

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