学生クリエイターにフォーカスしたインタビュー企画!
― 学生クリエイターがどんなことを考えて、何に熱中しているのか。―
今回は日本電子専門学校 ゲーム企画科 の薛 恵美さんにインタビューを行いました。
アニメ情報を調べるうちに独学で日本語を習得したプランナー志望の薛さんはどんな思いでゲーム業界を目指すのでしょうか。
アニメの情報を調べるうちに日本語を習得
― 自己紹介をお願いします。
薛:私は薛恵美(ソル ヘミ)と申します。韓国出身で今は日本電子専門学校ゲーム企画科に通っているプランナー志望です。
― 日本にはいつ頃に来られたんですか。
薛:去年の3月ぐらいに来て、1年経ちました。
― 日本語お上手ですね。
薛:日本語は中学の時から独学で、そこから色々話せるようになりました。
― 何が教材でしたか。
薛:アニメです! でも韓国ではアニメの情報が当時はあんまりなくて「だったら自分で調べてやる」と、そこから翻訳機を使って学んで、そこから話せるようになりました。
― 1番ハマったゲームやアニメってなんですか。
薛:1番は多分『刀剣乱舞』という乙女ゲーでしたが、それもだんだんコンテンツが少なくなって、最近は『グランブルーファンタジー』で遊んでいます。
― 『グラブル』の好きなところを教えてください。
薛:バレンタインデーやホワイトデーでは、好きになったキャラの新しいボイスが聞けるイベントがありました。定期的に自分にそういったいいネタをくれるので、だんだん好きになってる感じです。キャラはグリームニルさんが好きです。
― 他にはどんなところが好きですか。
薛:戦闘システムで同じ敵を倒すのに、他の人とリアルタイムで順位を競うのができて、自分よりランクが高い人が私に負けたら嬉しくてハマります。
敵のHPが1%ぐらいで、私が最後の1発を決めて1位を取ったんです。リザルト画面を見ると2位の人より私のランクが低かったということがありました。
― そのリザルト画面を見たら。
薛:「これ何? 低ランクの私よりできないのか?」となりますね(笑)
自給自足の創作意欲
― 趣味で突き詰めているものについてお話ください。
薛:フリーソフトのMMDで理想の推しキャラ作りです。
『刀剣乱舞』が好きでしたが、最初の頃はメディアミックスがめっちゃ少なくて、自分が推しキャラを見る機会が絵ぐらいでした。そこで「どうしたらもっと推しに触れられるんだろう」と思って見つけたのがMMDでした。
MMDでは直接推しを触れることができて「これなら自分の理想の推しを見ることができるんだ」と思って、そこから勉強して、モデリングも挑戦したり、動画制作も挑戦しました。
― すごい。動かないなら……
薛:「自分で動かしてやる」ですね!
― 実際に作ったのはどんな動画でしたか。
薛:アイドルみたいに踊るのが好きで、作ったものをツイッターにアップしました。
― 交流が広がりましたか。
薛:そうですね。もともと韓国人って名乗らなかったというのもありますが、フォロワーさんが日本人しかいなくて、日本人の方と色々話して、そこで日本語がちょっと上達しました。
― 実際にオフラインで会うこともあるんですか。
薛:ディズニーランドやカフェに行って、推しキャラの話をします。
― 楽しそうですね。どのキャラの3Dモデルで投稿してたんですか?
薛:厚藤四郎という……。
― ああ、かわいい。
薛:薬研くんと乱ちゃんたちが好きで作っていました。
― 今までの好きだったキャラクターも厚くんとかに似ている感じですか。
薛:あのスポーツ系の髪型がすごく好きですね。
― 3Dモデルを動かすのはゲーム制作でも役に立ったりしていますか。
薛:最近反映できるようにしています。同じ学校に韓国人の子がもう2人いて、その子たちと3Dのゲームを作ることを決めました。モデルもまあまあ作れるのと、モーションもできるから「やってみよう」となって最近作り始めました。
― どんなゲームですか。
薛:ホラーゲームを作りたいです。最近Steamで300円ぐらいでホラーゲームが売られていたんです。そのゲームは結構なクオリティでいろんな方に実況されていました。それがすごく憧れで、そんなゲームを作りたいなと思っています。ちょっとホラーで気軽に遊べるゲームを作りたいです。
学内ランキング1位がもたらしたもの
― “学校のランキング戦で1位”というのは、何のランキング戦ですか。
薛:日本電子専門学校 ゲーム企画科はちょっと特殊で、1ヶ月に1回 ランキング戦があります。自分が”作ったゲーム”や”企画した作品”を競って、1年生と2年生が評価して順位を競うんです。
作ったゲームは2位で、企画書部門では1位になったんです! 1位になった瞬間から、日本人の方々の私を見る目が変わって、爽快感がありました。
― 見る目が変わったというのは、具体的にどんな感じでしたか。
薛:ゲーム業界って女性が少なくて、私の学科も2~3人ぐらいしかいないんです。しかも私は外国人で、日本語もちゃんと話せないからできないんじゃないって思われていたと思うんです。日本人でもないのに韓国人の女性が1位になった瞬間から私の言うことをみんなが聞いてくれるようになったんです。
― 大きく変わったんですね。
薛:「1位様が言ってるんだぞ」というノリになるのもありますが、聞いてもらえるようになったのはありがたいです。
― 実力ですね! どんな作品でしたか。
薛:企画書で1位を取ったのはテーマがマス目のゲームでした。少し考えて自分がちょっと苦手なパズルゲームを作りたいなと思いました。そこでパズルゲームをプレイしていく中で『2048』というゲームにハマった理由を考えてみました。
5回までやり直しができたので気軽にプレイできたのかなと思います。そのため気軽に戻れるパズルゲームを作ろうと思って、アクションパズルゲームを作りました。
『Drift MAN』
左右に流れてくる板と自分の板をくっつけて10×10マスの板を作って脱出するパズルゲーム。
― 進級制作発表会で発表していた作品で苦労したところを教えてください。
薛:『3 Fingers(スリーフィンガーズ)』です。6人チームで、私たちのチームは他のチームと比べてかなり出席率が良かったんですが、企画段階で3人ぐらいと連絡が取れなくなることがありました。それでちょっとつまづきました。
日本電子専門学校 ゲーム企画科の進級制作発表会。 「ワールドワイドに通用する」をテーマに各チームが企画・制作した作品をプレゼン発表した。
『3Fingers(スリーフィンガーズ)』
ワールドワイドをテーマにチーム制作された作品。
ターゲット:30代~40代の子持ち女性
ユーザー:小学校入学前の子ども
30代から40代女性の悩みの1つである「子どもの教育」
中でも大人がストレス解消時間を確保するために考案した「子ども除け教育ゲーム」
遊ぶのは小学校入学前の子ども。3本の指を使って分別・数学・色彩をテーマにしたクイズが出てくる。
― どうやって解決しましたか。
薛:色々ルールを決めました。連絡を取れない理由が「家に帰った瞬間、携帯をあんまり見なくなっちゃう」というものでした。「ふざけんな~~っ」と思いましたね(笑)
そのときは連絡を確実に取れる時間を決めて、その時間は絶対に見るようにしました。
― 実際変わりましたか。
薛:前よりは見てくれるようになりました。ただ、私が学内ランキングで1位を取った後からあったんですが、私の言うことに重みがありすぎて、みんな私が言ったら「それいいね」という感じになっちゃったんです。それで私が言う案は全部いいねってなって、結局良くない方向に行って、批判的に見る目がなくなって、こんな感じになったんじゃないかなって思います。プレゼン会が終わった後にチームメンバーで打ち上げに行きました。
― 打ち上げで反省会をしたんですか。
薛:しました。
― ゲーム制作が上手くいくコツってなんでしょう。
薛:第3者視点が重要だと思いました。自分が好きなゲームでもいいんですけど、将来はゲームを売る仕事をするわけじゃないですか。そこで自分が好きなゲームを作っていても仕方がないから「客観的な視点を持つようにしよう」と思うようになりました。
「49%の善と51%の悪」
― 自分を構成している要素の「49%の善と51%の悪」とはどういうことですか。
薛:私、やる気だけはあって、行動力がそのやる気に追いつかなくて、スケジュールだけがっつりやってて、結局できなくなっちゃうタイプです。49%の善がその計画を立てて、残りの51%の悪がそれをできないようにしているんです。でも1回実行したら51%の悪がちょっとずつ善に変わるんです。
これは自分自身の直すべきところだと思って書きました。
― なるほど。その49%の善の自分と、51%の悪の自分の比率が変わって最後は善が100%になるんですね。
薛:そうですね。
― 将来の夢を聞かせてください。
薛:よく人から言われるのが「韓国もゲームが有名なのにどうしてわざわざ日本に来てゲーム会社に行きたいの」と言われます。私はコンソールゲームにすごく憧れがあります! 確かに韓国ではコンソールゲームよりオンラインゲームが主です。子どもの頃におばあちゃんの家に遊びに行ってもやることがなくて、本当におばあちゃんの家に行くのが嫌だったんです。
薛:でもそんなときに従兄弟のお兄ちゃんが持って来たゲームボーイで『スーパーマリオ』がすごく面白くて、それからおばあちゃん家に行くのがすごくドキドキするようになったんです。コンソールゲームに憧れ始めたのもこの頃です。韓国ではコンソールゲームを手に入れるのが結構難しくて、韓国語になっていないとか、そもそも高くて買ってもらうのもできなくて、作るんだったらそんなコンソールゲームを作りたいなと思って、日本に来ました。
最近『グラブル』のコンソールゲームが出たんですけどコンソール専用のゲームのエンドロールに名前を載せたいです。
― 最後に自己PRをお願いします。
薛:自分の強みは日本語も、MMDの話もそうなんですけど、自分が求めることに一生懸命学ぼうとする姿勢です。
1回ハマったらそこからすごく掘り下げて学んで、そこから関連する新しいものも学んで得ようとするところです。
― ありがとうございました。
学生クリエイターにフォーカスしたインタビュー企画! ― 学生クリエイターがどんなことを考えて、何に熱中しているのか。―…
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