Game Creators Guild(ゲームクリエイターズギルド)主催。
第8回は、「弟切草」、「かまいたちの夜」、「街」など数々のサウンドノベルを制作してきた元株式会社スパイク・チュンソフト、現テクテクライフ株式会社取締役の麻野一哉氏をゲストにお招きし、クリエイターとしての軌跡と自身が感じる幸せについて語っていただきました。こちらは2021年7月29日にYouTubeにて配信された番組のレポート記事です。アーカイブ配信を希望の方はGCG公式LINEに登録していただくと動画のご案内が届きます。LINE登録はこちら!
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『『かまいたちの夜』、「街』の生みの親が語る幸せなクリエイタ […]…
制作中に幸せを感じるタイミング
『かまいたちの夜』にはディレクターとして関わっていた。
そして、ここでイベントのタイトル回収きます。制作中に一番幸せを感じるタイミングは何でしょうか?
根本の設計とかではなく、サウンドとイラストを付き合わせる、みたいな事務作業に近い部分に幸せを見出しているんですね。
着々と出来ていく過程にすごく幸せを感じます。あとは、贅沢なことを言っていますが、作ったものがどうなったとかあまり気にしていないですね。評価されたら、された方がもちろん良いですけど…。
あとは、学生時代演劇部にいて、役者・音響・照明がきちんと合わさると劇的な瞬間が来るのを見てきたのもあるかも。サウンドノベルも、ユーザーが一番びっくりしたり、感動したりするタイミングを自分で設計していけるので、演出をする人間としてはワクワクするし、一番楽しいです。
様々な要素を組み合わせて、演出していく過程こそがディレクションだと信じている麻野さん。絵や音楽を発注して、手元に集まってきたものを自分で組み立てていっている。
『街』の時は、映画監督みたく、各シナリオ毎にディレクターを割り振り、カット割りなどを意識しながら制作してもらっていた。麻野さんは統括として関わっていた。
そういうディレクション術とかってどうやって学ばれたのですか?
演劇部で学んできたこと、見てきたことを応用して、更に応用して…の繰り返しですかね。試行錯誤の連続です。
それでいうと『弟切草』の文字の出し方とかもどうやってやったら良いか分からないので、一時期はカラオケみたいなスタイルも試していました。既に文字が画面に書いてあって、徐々に色がついていく、みたいな。あとは1文字ずつバンバン出すとか。1ページも試したな。そんな感じで、色々試した結果、今の形に落ち着きました。
制作に関わることはそういう風に、色々自分たちでやってみて、一番しっくり来る方法を採用する感じなんですね。
『街』の制作秘話!他人分岐とは…
『弟切草』の制作が終わった直後に、シナリオを担当してくれた長坂さんと、早速新作の相談をしていた。長坂さんは、100人の主人公で、100通りのシナリオを展開するイメージで、執筆している間に『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』や『かまいたちの夜』を制作していたが、2作の制作が終わった後でもまだシナリオが出来上がっていなかった。
そこで、その時点で出来上がっていたシナリオをコンパクトにまとめて、とりあえずゲームとして出そう、という方向にシフトした。
そう言われると、『街』が出来上がったのって割りと偶然の産物なんですね。『弟切草』や『かまいたちの夜』とはまた違ったタイプのシナリオですよね。
そうですね。中でも一番の違いは、前2作は主人公が一人称視点の「自分」だったり、三人称視点でも1人なんですけど、『街』は8-9人主人公がいるんですよね。それまでは、自分の選択肢で自分の話が変わったけど、『街』では、他人の選択肢で自分の話が変わるシナリオ展開にしたかった。ウチでは「他人分岐」と呼んでいましたね。
『弟切草』も『かまいたちの夜』も各々発明がありましたよね。そもそも、当時のノベルゲームでそこまで複雑な話を展開しているゲームは少なかったと思います。
『かまいたちの夜』はシナリオライターの意向が強く、彼の取りたい方向性を実現するために木の根っこがどんどん広がっていくイメージですよね。戻ることは基本的にないですし。『弟切草』は逆に話が行ったり、来たりするのですが、最終的には分かれていきますね。
そこで、更に『街』では自分の選択によって、他の人のフローチャートが変動するので、制作もすごく大変だったんじゃないでしょうか。
大変でしたね…。舞台が渋谷だったので、道玄坂にいる人と宮下公園の方にいる人とかを突き合わせてイベントを発生させるとかしたかったのですが、それを管理するために当時Microsoft Office系列に入っていたAccessというソフトに全てのデータをぶち込んだのですが、3日経っても反応が返ってこなく。データの量が膨大すぎて、当時のバソコンじゃ処理しきれなかったんですよね。
処理しきれないほどのデータが(笑)。
すごいですよね(笑)。なので、ディレクター仲間に全ての情報を覚えさせていました。何月何日、どのキャラがどこにいるのか、もう全て。で、僕が「この日に宮下公園の近くにいるのって誰?」と聞いたらどんどん名前が投げられるので、それらの人物を何とかくっつけてお話を展開させよう、と。
めちゃめちゃアナログな解決策を取ったんですね(笑)。物量もかなりあるようですし…話を聞いているだけでパンクしそうです。
一回気になって、全てのシナリオを文庫本みたいな感じにまとめたら、どれ程の厚さになるのか計算してみたんですよ。もう、こんな(腰幅分腕を広げる)。よくこんな長さのを読んでくれるな、と思ったのですがユーザーさんからは「まだ足りない」という声も上がるんですよ。
大長編ですね。ハリポタ全巻位の厚さ。因みに、このおまけヒストリーって語れるんですか?
語れないんじゃないですかね…。めちゃめちゃ大変なことがあったとだけ思っていてください。
秘密でした(笑)。
新しい挑戦、次なる面白いもの…旅に出る感覚で独立
『かまいたちの夜 2』は監修役として参加。そして、終了と同時にたまたま抱えていたプロジェクトが全て収束。辞めるなら今がベスト、と感じフリーに。
チャレンジしてみたい、旅に出てみたい、みたいな感じですかね?次へ行くか、みたいな。
あ、そうですね!
なるほどですね。離れてみて、何かチュンソフトさんのことで気付いた事ってありますか?
非常に良い会社だということが分かりましたね(笑)。これ言うと、内輪褒めみたいになっちゃうんですけど、非常に優秀な人が集まっていたんですよ。依頼したものを飛び越えたレベルのものを作ってきてくれる人たちだったので、相乗効果で、物事が想定よりも良い方向に行くことが多かったですね。
結構フリーになってからも、チュンソフトさん関連のメンバーと一緒にゲーム作りしていましたよね。
確かに、そうですね。
『ドラゴンクエスト モンスターパレード』というタイトルは元チュンソフトの方々と連携して作ったものですし、その前にも『かまいたちの夜』チームでグラフィックを担当していた方が、ディレクターとして入っていた『銃声とダイヤモンド』というアドベンチャーゲームを一緒に作っていますね。
各社さん、同じゲーム作りでも、作り方とかは全然違いますかね?
違いますね。まず、ディレクターという言葉の意味が全く違う。誰が、どの仕事を担当しているのか、会社によってバラバラです。テレビとかの役職に比べて共通認識が薄い感じですね。
そうですよね。そこ、結構交通整理しないとディレクターとして求められて参加したのに、そもそもディレクターの仕事じゃなかった、みたいなズレが生じてしまいますよね。どうして、こういった齟齬が生まれてしまうのでしょうか?
うーん…それこそさっき宮田さん、「絵と音とシナリオを合わせる作業は事務的」と言っていたじゃないですか。僕からしたら、その作業こそ創作の肝なんですよね。でも、別の会社だとスクリプト打ち込むだけの作業かもしれない。
何を求めるかによって、やっている内容は似ているけど、目的が違ったり、名称は一緒だけどやる内容が違う、という差は出てくると思います。
なるほど、それは面白い考えですね…。それによって、アウトプットも全然変わってきますからね。それじゃあ、フリーになって携わったプロジェクトもぐっと増えたと思いますが、チュンソフトさん時代も含めて、一番関わっていて面白かったプロジェクトは何ですか?
面白い…うーん。それぞれ、面白さがあるのですが『銃声とダイヤモンド』はいつも通り自分で色々組み合わせて打ち込んでいっている時に、自分で感動して泣けてきたりしていましたね(笑)。
作っている本人が感動しているなら、ユーザーさんもきっと感動してくれますね(笑)。スライドに書いてある、「クリエイターとしての一番の幸せ」にも近いと思いますが、作っている工程こそが一番楽しいと感じるタイプですかね?
さっきの話でも出てきましたが、そうですね。完成した後よりも、作っている最中が一番楽しいです。没頭しすぎて、気付いたら何時間も経っています。昔はタバコ吸っていたので、ニコチン切れたらはっと我に返ったのですが、今はもう辞めているので、ヘトヘトになるまで続けてしまいますね…。
完成された後の評価とかって気にならないのですか?
そうですね…。完成したら、終わったことなので、出来ればあまり近寄りたくない感じです。
ああ、そういう事を言う方、たまにいますよね。
汚い言葉なんですけど、排泄物みたいな感じで(笑)出してスッキリしたから、もう良いかな、という感じですね。
なるほど(笑)。作っている瞬間が一番大事とのことですが、ヒットタイトルに関わるよりも、自分が楽しめそうなプロジェクトに関わる方が大事、という思いもありますか?
そうですね。そうは言っても、あまりプロジェクトとか選んだりしていないですけど(笑)。
楽しそうな方に気付いたら流れていく、みたいな感じなんですかね。それでは、そろそろ質問パートに移りたいと思います!
登壇者ご紹介♪
■麻野一哉(あさのかずや)
兵庫県出身。甲南大学文学部社会学科卒業。『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』に感銘を受け、ウチダエスコを経てチュンソフトに入社。『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』などの開発を行い、『弟切草』ではサウンドノベルという新ジャンルのゲームを生み出す。また『不思議のダンジョン』シリーズの創出者でもある。
2002年にチュンソフトを退社した後は、フリーのクリエイターとして活動。ゲーム制作のみならず、米光一成や飯田和敏との共著や、単著の刊行、講師、評論、翻訳、イベント活動、またテクテクライフ株式会社取締役としても活躍している。
■宮田 大介(みやた だいすけ)
株式会社オルトプラス ゲームアライアンス事業執行役員/ゲームクリエイターズギルド主催
大学卒業後、在学中にお世話になった職人の元へ弟子入り、鉄材があれば何でも作れる職人のものづくりをネットビジネスの視点から支援。
設立間もないオルトプラスにフロントエンジニアリング兼なんでも屋として参画。プランニング部部長、第二ゲーム事業部の事業部長等を経て、オルトプラスもマザーズ、東証一部上場と成長。その後、日中韓での3拠点でのゲーム新規開発プロデュースや韓国支社の立ち上げメンバー、高知にてSHIFT社とのジョイントベンチャーの立ち上げなど、諸国を放浪する。
現在は、ゲームアライアンス事業を設立。ゲーム会社同士のマッチングコミュニティサービスである「ゲームコミューン」やゲームクリエイターの相互教育コミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」、ゲームのマーケティング事業等、ゲーム業界を活性化するための新規事業の立ち上げを行っている。
▼ゲームコミューン
https://www.gamecommune.jp/
▼ゲームクリエイターズギルド
https://game.creators-guild.com/
▼Twitter
https://twitter.com/gcg_miyata
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