【イベレポ】『カプコン、アトラスからモンストまで、思想の違う数多のメガタイトルを経験して見えた”売れるゲーム”のプロデュース哲学。』クリエイターヒストリア#7【エクストラコンテンツ】

『カプコン、アトラスからモンストまで、思想の違うあまたの目がタイトルを経験して見えた”売れるゲーム”のプロデュース哲学。』クリエイターヒストリア#7Game Creators Guild(ゲームクリエイターズギルド)主催。
第7回は、伝説の格闘ゲーム「ストリートファイターⅡ」のマーケティングや「モンスターストライク」の海外運営を担当した、ザッシュ株式会社代表取締役の山尾和浩氏をゲストにお招きし、クリエイターとしての人生観、そして売れるゲームのプロデュース哲学を存分に語っていただきました。こちらは2021年5月26日にYouTubeで配信された番組のレポート記事です。アーカイブ配信を希望の方はGCG公式LINEに登録していただくと動画のご案内が届きます。LINE登録はこちら!

▼イベント前半部分

ゲームクリエイターの楽屋でまったり by Game Creators Guild

 

タイムマシンがあったら戻る?

宮田氏

まずは全員に聞いている質問からいきますか!タイムマシンがあったら自分の過去に戻って、やり直しますか?

山尾氏

これ、相当悩みました。今の知識を持って戻れるなら、単純に中学時代とかに戻ってみたいですが、知識がなくなっちゃうなら、今まで経験して来た成功と失敗が私を形作ってくれているので、戻りたくないですね。違う自分を生きたとしても、今の自分と比較できないので。

あ、でも単純に時代の話なら父と母が出会った時どういう感じだったか、とかは見てみたいです。

宮田氏

ドラマチックですね。皆さん結構戻らない、というのですが、山尾さんもやりたい事はこれからやれば良い、という考え方ですかね。

山尾氏

そうですね。とりあえず声優をやってみたいです。

宮田氏

声優(笑)。じゃあ、60代の目標ということで。

山尾氏

60代の目標(笑)。年齢って記号だと思っているのですが、色々な時代を体験できたのはラッキーだったな、と振り返って思います。

例えば私の学生時代ってレコードは購入できなかったのですよね。聴きたい音楽をどうすれば聴けるのか、飢えみたいなものが常にあった。そういう、制限されたエンタメの時代に育ったので、ゲームに対する想いや価値観という要素が変わってくる。もちろん、好みや仕事への思いの要素も絡んでくるのですが、色々自分で経験して来たからこそイメージできるお客さん、イメージできる体験設計もあると思います。

宮田氏

なるほど。劇的にテクノロジーやエンタメが変わって来た時代を実際に体験して来たからこそ、想像できる範囲が広がるという事ですかね。それでは、エクストラパートに入る前に本編最後という事で、皆さんにメッセージをお願いしたいと思います!

後悔しないクリエイター人生を歩むために

山尾氏

既に何回も言っているので、「またかよ」と思われそうですが、やはり誰のためにゲームを作っているのか意識して、それをおろそかにせず自分がそのゲームにどのように関わるのが一番効果的なのか常に意識して動いていれば、後悔は生まれないと思います。

宮田氏

誰を、どう楽しませるためにゲームを作るのか、考え続ける。

山尾氏

そうですね。例えば、デバッグとして関わっていたけど、改善案を提案し続ける事によって、制作チームに引き上げられる人なども見てきています。

また、同じ制作チームでもプログラマとプランナーで関わり方が違ってきます。プログラマはどう楽しませる、というよりはどう行動させるか。どう楽しませるか考えるのはプランナーの出番。それ以外にもゲームのバランス配分やガチャの出現配分…どういう調整をしたらプレーヤーが楽しめるのか考える役割ですね。

宮田氏

どんな役割でも、ユーザーさんを見つめて仕事していれば後悔しないよね、という話だと感じました!最後ZASHさんの告知とかなにかあれば…。

山尾氏

今丁度ゲームを作っているのですが、私たちの想いをしっかりと聞いて、多くのユーザーを楽しませる目的に共感してくれる会社さんがいれば長くお付き合いしていきたいと思っています。お互いを分かり合いながら制作を進めていきたいと思っているので、興味があれば是非お声がけください。

宮田氏

長く、深い付き合いができる企業さんと連携して制作していきたい、ということですね!良い縁が見つかる事を祈っています。それでは、本編はこれにて終了です。ありがとうございました!

山尾氏

ありがとうございました。

 

ありっさ
本編パートはこれにて終了です。お疲れ様でした!ここから先を見たい方はLINEで取得するパスワードが必要になるので、まだ登録がお済みでない方は登録をお願いします!

 

エクストラコンテンツ

 

宮田氏

はい、それではここからは会員限定のエクストラコンテンツに入りたいと思います。質問結構頂いていたので、答えてもらえたらな、と思います。

まずは前編の方で来ていた質問で、「遊んで欲しいターゲット層の立場になって企画を考えていく過程である種の感情移入をして、主観が多分に混ざってしまって、本当にお客さんが求めているのか見つめ直す際に確証を持てなくなってしまいます。お客さんの立場に立つ際に、主観は徹底的に排除すべきでしょうか?」

山尾氏

この質問者が想定しているのってコンシューマーとF2P、どっちですかね…?

宮田氏

学生さんからの質問かもしれないですね。なので、ご自分でゲームを作る過程でどういう風に考えれば良いのかのヒントが欲しいのかもしれません。

山尾氏

条件によって、結構変わってくるのですが…例えばF2Pの場合、初っ端からよっぽど外したりしなければユーザーの動向を見ながら修正することができるんですよね。事前のヒアリングや調査はもちろんするべきだと思いますが、どこまでやったら十分だと捉えられるかの問題と、あと既にそのゲームに興味を持ってもらえている人の意見のみ聞いてもあまりアテにならないので、一度運営してみて如何にユーザーさんに楽しんでもらえるか試行錯誤するのも手だと思います

課金要素なども、課金してくれるユーザーより非課金ユーザーが何倍も存在しないと、課金する意義が見出せず、息切れしちゃう。そうならないように設計を組んだり、遊び続けてもらえるように工夫を施す必要が出てきます。

宮田氏

そのユーザーの実態ってどういう風に確かめていくのですか?

山尾氏

色々な人の話を聞くのはもちろん、常に自分の中で考察を重ねていくのも大事ですね。運営型ならユーザーの生の声を如何に聞けるか、なのでレビューとかよりはコミュニティみたいな所の反応を見たり。

 

宮田氏

なるほど…。じゃあ質問者さんに回答すると、自分の主観は極力排除する、ということですかね。

山尾氏

そうですね。好きなゲームしか作れない、とかターゲット層に該当しないから気持ちが分からない、と言い出したらそれで終わってしまうので…。誰だって多分モチベはがっくり下がるのですが、そこで、それでも仕事をするのがプロです。視野を広げるチャンス、と捉えたら良いのではないでしょうか。

 

宮田氏

質問者の方は感情移入しちゃう、ということだったので自分の主観をなるべく抜いて考察をして、制作を進めていく、という感じですかね。

山尾氏

自分の目線を如何にターゲットの目線にできるかがすごく重要になってきますね。割と有効なポイントとしては、あるジャンルを嫌っている、苦手な人がどういうゲームだったらそのジャンルの作品を遊んでくれるのか考えてみること。嫌い、と評している人はどういう基準でその判断を下しているのか仮説を立てて、検証をしていく。最初に仮説を立てることによって、帰結できる結論の有効性が高まるので、それで納得できる答えに辿り着いたら、沢山の人に遊んでもらえるゲームが出来上がっているはずです。

 

宮田氏

嫌い、と言っている人が「このゲームなら」と特別視してくれるなら確かに沢山の人に刺さるゲームができそうですよね。

次の質問も中々難しいかな、と思うのですが…「PDCAの話が参考になります。KPIの注目しているポイントもお聞きしたいです」

山尾氏

この項目が何に於いても大事だよね、という点がないので、PDCAを回していく過程で継続していくポイントは毎回変わってきます。その上で、個人的に気をつけているのは、単純なる数の推移だけでなく、比率の推移を見ること。ある要素がどう他の要素に影響するのか、比率の係数を出しておいて、その係数の推移を追っているとユーザーの動きが立体的に想像できるようになります。

例えば30日のリテンションのデータを見ているときも、30日時点で判断を下すよりも、1日に対して30デーズがどういう比率になっているのか計測していくことによって、最初に来てくれたお客さんの動きや、ある広告を打ったあとの動きなどが見えてきます。

 

宮田氏

ただの数字ではなく、意味のある数字にしていく過程が大事ですよね。

山尾氏

2つの指標を掛け合わせて、その流れを見るだけでも結構ユーザーの行動が立体的に視えてくるので、オススメです

…すごくマーケターみたいな答えになりましたね(笑)。でも、クリエイターとしても自分の感性が正しかったのか見極めるために数字を追うのも大切になってきますから。

 

宮田氏

そうですよね。数字を見てFBを得られるので…。それでは、最後に「モンストの海外版企画運営で海外ならではの苦労話などがあったら聞きたいです。日本でのやり方が通用しなかったとか、ローカライズの苦労があれば」ときています。

山尾氏

話せるものが少ないかもしれませんが…モンストにこだわらない、海外リリースの話で良いですかね。やっぱり一番は言葉が分からないので、ユーザーの反応が分からないこと。これはしんどかったですね。あとは、日本版に遅れて展開しているので、既に情報や反応を獲得しているユーザーをどう満足させていくのかという大変さもありました。

散々言っている通り、ユーザーが何をどう捉えて、どう楽しんでいるかきちんと理解しようとすると単純に翻訳して、多国籍展開してもあまり上手くいかないんですよね。それをやるなら、現地の運営会社にライセンスして、一緒にカルチャライズ運営していく方が成功率が高くなると思います。私が関わっていたモンストはたまたま台湾でも上手くいってくれた感じですかね…。私は嬉しいですが。

 

宮田氏

ユーザーさんの視点が分かりにくい、というのは山尾さんにとってはかなりしんどいですね。

山尾氏

そうですね…。例えば、中華圏ではTwitterじゃなくて、FacebookがメインのSNSなんですよ。Facebookのページを作って、情報発信していく感じです。みんな色々コメントを書き込んでくれるのですが、怒っているのか喜んでいるのか分からない。怒っているマークがあるかないかとかで判断していました(笑)。

そこで、中国語も日本語も分かる人に訳して貰えば良いのか、と言われるとそういう人って大抵ゲームの知識はそこまでないので、中々適任者がいなく…。

 

宮田氏

全部できる人って少ないですよね…。海外版はやはり言葉の壁が一番難しいということですかね。

山尾氏

あとは、ユーザーの好みやライフスタイルって変わっていくので、あのゲームやっている人ってこういう人だよね、とガチガチに固定するのはあまり良くないと思います。海外展開の話になると、海外ですごく売れているゲームを日本に持ってきても売れない時もあれば、海外では全然売れていないけど、日本のこの層にこういう売り方をすればヒットするかも!と上手く展開させている人たちもいるので…。私も3年間毎日、ちゃんとログインしている中国製のゲームがありますよ。

他にも、モンストだと今まであまりゲームに興味を示してこなかった人たちが1日10時間位やっていますね。ものすごくゲームが好きな人って逆に1本のゲームをそんな長時間できない。他のもやりたくなっちゃう。それで、トップチャートに入るためには10時間位やらないといけないとなると、じゃあ良いかな、と遊ばない。

 

宮田氏

誰のためのゲームかしっかりと見極める必要性が、海外版だとより顕著に現れる、ということですかね。

山尾氏

海外運営がきちんと海外ユーザーに届いた瞬間は嬉しいですよ。日本のユーザーに羨ましがってもらえた時はやったー!という感じです。

 

宮田氏

それは、確かに嬉しいですね!努力が回り回って自国にも届いている証拠。

企画マーケティング塾が開講されそうな雰囲気になってきたのですが、一旦ここで終わりにしましょうか(笑)。収集つかなくなっちゃうので…。アーカイブ含めありがとうございました!

山尾氏

ありがとうございました!

 

ありっさ
エクストラパートでは視聴者さんからの質問をピックアップして答えてもらいました!たっぷりと時間をとって解説してもらったので、ゲームの企画を進めていく上で、運営していく上で参考にできる考え方があったのではないでしょうか!

次回のヒストリアも現在絶賛計画中なので、お楽しみにお待ちください!
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完!

登壇者ご紹介♪

山尾 和浩(やまお かずひろ)
ザッシュ株式会社 代表取締役
1962年生。成城大学経済学部経済学科卒業後、京セラに入社。
1992年にカプコンに入社しゲーム、アニメのマーケティング、プロデュースに従事した後、1998年にアトラスに入社。幅広くゲーム事業に携わり、2006年に株式会社キラウェアを立ち上げ。2014年にドリームゲートに入社し「モンスターストライク」 初期から運営に参画、台湾版立ち上げから企画運営も担当。2017年8月にエディアゲームサービス事業執行役員に就任。
2019年5月にザッシュ株式会社を設立し代表取締役を現任。

■宮田 大介(みやた だいすけ)
株式会社オルトプラス ゲームアライアンス事業執行役員/ゲームクリエイターズギルド主催
大学卒業後、在学中にお世話になった職人の元へ弟子入り、鉄材があれば何でも作れる職人のものづくりをネットビジネスの視点から支援。
設立間もないオルトプラスにフロントエンジニアリング兼なんでも屋として参画。プランニング部部長、第二ゲーム事業部の事業部長等を経て、オルトプラスもマザーズ、東証一部上場と成長。その後、日中韓での3拠点でのゲーム新規開発プロデュースや韓国支社の立ち上げメンバー、高知にてSHIFT社とのジョイントベンチャーの立ち上げなど、諸国を放浪する。
現在は、ゲームアライアンス事業を設立。ゲーム会社同士のマッチングコミュニティサービスである「ゲームコミューン」やゲームクリエイターの相互教育コミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」、ゲームのマーケティング事業等、ゲーム業界を活性化するための新規事業の立ち上げを行っている。
▼ゲームコミューン
https://www.gamecommune.jp/
▼ゲームクリエイターズギルド
https://game.creators-guild.com/
▼Twitter
https://twitter.com/gcg_miyata

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