ゲームクリエイター図鑑No.007木村 征史氏#2「ヨカゼ運営の裏側」

 

「ゲームはおもしろい、ゲームを作ってる人も実はおもしろい」

多種多様な技術を持った人々が集まるゲーム業界。あの魅力的なゲームたちは、どんなゲームクリエイターが生み出しているのか。ベールに包まれた「ゲームクリエイター」の生態を解き明かし、この地に生息する「ゲームクリエイター図鑑」の完成を目指す。その過程として、一部のレポートを公開しよう

 

クリエイター図鑑 No.007

今回、お話をお聞きしたのは株式会社room6代表の木村 征史氏。非ゲーム業界からゲーム業界に参加し、自分たちの世界観を大切にしたインディーゲームレーベル「ヨカゼ」を立ち上げ活躍されています。前半は「ヨカゼ」を立ち上げるまでの様々な出来事をお聞きし、後半は、「ヨカゼ」をどのように運営しているのか、ブランドとしての哲学に触れていきます。

前編

 台北ゲームショウ2025最終日もたくさんの方においでくださってまして、ありがたい限りでございます〜!台湾の方にもroom6の事を少しは知ってもらえたかなぁ〜 pic.twitter.com/UiWX4IQqdh[…]

 

コロナ禍のピンチからブランド力で切り開いた未来

──現在のヨカゼにラインナップされるゲームの開発者さんたちとご縁ができたわけですね。

木村さん:
まさしくその通りです。そのころhako 生活さんの『アンリアルライフ』をroom6から出すにあたり、僕たちはパブリッシャーとしての特色が何もないという問題に気づいたんです。そこで単に『アンリアルライフ』をパブリッシングするだけではなく、なにかもう一押しできないかと考えて、nakajimaさんやおづみかんさんも交えて話し合いました。そこで「ブランド」を作ってみようという話になったんです。

話をしているなかで気づいたのですが、相談したメンバーの作っていたゲームが全部ピクセルアートだったんですよね。しかも『アンリアルライフ』も『From_.』もテーマカラーが青色系だったし、『果てのマキナ』もダークトーンなんです。しかも、どの作品もストーリーと世界観を重視したゲームでした。そこで、そういった空気の近いゲームを集めようという話になり、ブランドの方向性が決まりました。

 

──まさに「類は友を呼ぶ」ですね。ブランド名はどのように決めたのですか。

木村さん:
はじめhako 生活さんが「YOKAZE」と命名してくれたんですが、いろいろと議論した結果、最終的にカタカナで「ヨカゼ」という名前に決まりました。ロゴをおづみかんさんが作ってくれて。「これはいいな」と思って、すぐに気に入りました。こうしてヨカゼが生まれたんです。

 

──紆余曲折あって現在のコンセプチュアルなブランド「ヨカゼ」が誕生したんですね。ヨカゼ発足時の初期タイトルは『アンリアルライフ』『From_.』『果てのマキナ』の3本だったわけですか。

木村さん:
さらにこのころ加わったタイトルに『ghostpia シーズンワン』もありますね。このタイトルはもともとroom6とはかかわりがなかったのですが、僕が個人的に応援していて、クラウドファンディングに参加するほど大好きなゲームだったんです。このゲームをNintendo Switchで出したいという気持ちもパブリッシャーをするきっかけの1つでしたね。最終的に『ghostpia シーズンワン』もヨカゼの雰囲気にマッチしているということで、合流しました。

──そのころ、パブリッシャーとしての事業展開はどのような方向性で考えていたのですか。

木村さん:
正直なところ、始めたときは全然何も考えていませんでしたね。たくさん種を蒔いている事業の1つとして、裏で少しずつ進めていました。当時は今のようなヨカゼ専任のスタッフもいなくて、僕1人がhako 生活さんと話をしながら運営していたんです。そんなときに大きな壁に当たりまして、コロナ禍でゲームの受託案件が全部ダメになったんですよ。

 

──パンデミックのあおりを受けたんですね。

木村さん:
収益がほぼゼロになってしまいました。当時の社員は15人ほどでしたが、さすがに解散を考えましたね。コロナ融資を使ったりして何とかしのいでいたんです。そんなとき、パブリッシングで出した『アンリアルライフ』がヒットしました。おかげでパブリッシング事業が盛り上がり、いろいろなタイトルから声をかけてもらえるようになったんです。現在のヨカゼのラインナップの多くは、この時期にお話をいただいたタイトルですね。

 

──では、パブリッシング事業を中心として現在に至るというわけですか。

木村さん:
いえ、実はまだオリジナルゲームを開発したい気持ちがあって、ここ数年で自社開発にも取り組んでいます。

room6では毎年社内でゲームジャムをおこなっていて、2020年にkoheiくんというスタッフが放置タップ系のモバイルゲームを作ってくれたんです。プレゼンを受けて非常にいいなと思ったんですが、そのころroom6はPC/コンソール向けのインディーゲームを作っていこうとしていたんですね。だから、その作品をベースとしてPC/コンソール向けのタイトルが動き始めました。これが、2021年ごろにroom6で開発していた『Horizon』というタイトルです。

 

──『Horizon』の開発がその後どのような展開につながるのでしょうか。

木村さん:
それから2年くらい『Horizon』の開発を続けていたのですが、ゲームが非常に大掛かりになってしまったんですね。そこで『Horizon』の開発をストップして、原型だったモバイル向けの放置タップゲームを再始動させたんです。半年くらいかけて、僕自身もつきっきりでブラッシュアップをひたすら続けました。そうしてリリースされたのが2023年に誕生した『ローグウィズデッド』です。このタイトルが大きくヒットしたおかげで会社として安定した収益が入るようになって、現在のroom6に至ります。

──こうしてお話を伺っていると、「ヨカゼ」ブランドなどから見える静的な雰囲気と違って、room6の内部は激動の日々だったんですね。

木村さん:
本当に大変でした(笑)。社長としての立場でいうと、資金繰りのノウハウに関してはかなり勉強させられましたね。それから「迫りくる危機」を察知する嗅覚は鋭くなりました。経営的に「これはまずいぞ」という予感がしたら、何か月も前から対策を用意するようにしています。そういう風に先手を打っていたおかげで、今のroom6があると思いますね。やはり「種を蒔いておく」ということが重要だと思います。

room6が求める人材

──「種を蒔く」がキーワードとして出てきましたが、多くのイベントに出た経験も蒔いた種の1つですよね。

木村さん:
そうですね。今あるご縁のほとんどはイベントでのつながりだと思っています。それからTwitter(現X)でつながった人も多いですね。特に開発陣は、ほぼTwitterで募集して入ってくれた人なんです。30人くらいいるスタッフのうち3分の2が関西在住で、残りのメンバーはリモート勤務で全国に散らばっています。

もともとゲーム業界出身という人があまりいないのも特徴ですね。多くの開発スタッフは個人の活動として学生のころからゲームを作ってきた人や、趣味で絵を描いてきた人です。変わったところでは学校の先生や携帯ショップの店員から転職してきた人もいて、ゲーム業界と全く関係ない出自なんです。でも、みんな個人個人でクリエイティブな活動をしてきた人たちですね。

 

──そうした人員が集まってきたのは、やはり明確な採用方針があってのことですか。

木村さん:
そういう部分もあるかもしれません。room6ではもともと人員を増やすとき職種別に募集をかけていたのですが、ここ数年はその区切りをやめようという動きが出てきています。ゲームを作っていると、職種という垣根を越えて課題に挑まなくてはならないときがあるんですよね。デザイナーもUnityでプログラムに触れる機会があるし、エンジニアでもアートワークに携わることがあります。1人でいろいろなことができる人がありがたいですね。そう考えると「個人ゲーム開発者」という人材はとてもマッチしているんです。ある時期から個人でゲーム開発をしている人を積極的に採用するようになったのはそういう理由もありますね。

 

──ゲーム業界でプロとしてやってきた方からroom6を志望する人も多そうですが、いかがですか。

木村さん:
ありがたいことにたまにいらっしゃいますね。もちろんroom6とマッチする部分がある方であれば大歓迎なのですが、壁もあるんです。というのは、多くの大手ゲーム開発企業とroom6との開発方針は異なっている部分があって。もちろん企業によると思いますが、大手さんではそれぞれのスタッフが特定の分野のスペシャリストとして分業しつつゲームを完成させることが多いですよね。それに対してroom6では、ひとりひとりがジェネラリストとして複数の業務を請け負うことが多いんです。そういった部分でギャップを感じない方を人材として歓迎していますね。

 

──マルチな能力をもった人を積極的に採用されているのですね。ほかに企業として歓迎しているスキルはありますか。

木村さん:
やはり個人での創作活動をしている方に注目していますね。実はroom6では副業を大歓迎しているんです。どんどんスタッフに個人でもゲームを開発してほしいですね。実際に一部のスタッフは講談社のゲームクリエイターズラボに参加したり、集英社ゲームクリエイターズ CAMPで大賞を取ったり、iGiに選出されたりと、盛んに個人活動をしています。

 

──社員から賞の応募について相談を受けたり、会社としてサポートしたりすることはありますか。

木村さん:
サポートを求められれば喜んでフォローしますが、むしろ急に社員から「賞に選ばれました」と言われることもあります(笑)。パブリッシングに関しても、room6で出してもいいしroom6じゃなくてもいい、というスタンスですね。僕としては、room6出身のクリエイターたちが独自に有名になったとしても、会社としてはメリットがあると思うんです。「room6を飛び出たクリエイターがこんなに有名になった」ということで、お互いに良い相乗効果が生まれたらいいなと思っています。

 

──社員が独立することについても、ある種受け入れているということですか。

木村さん:
自分の社内で囲うのではなく、それぞれに活躍してもらいたいですね。結果的にroom6を出たとしても、いい関係を続けているクリエイターが多いので、それでいいと思っています。例を挙げると、もともとroom6で働いていたAchaboxさんという開発者さんが集英社ゲームクリエイターズ CAMPで大賞を取ったんです。それで予算をもらったので独立して会社を作って、『シュレディンガーズ・コール』というタイトルを作っていますね。そういうかたちでroom6から飛び出して会社を作るというかたちも、応援しています。

ほかにもイラストレーターだったスタッフが、今は独立して『ポケモンカードゲーム』の絵や『刀剣乱舞ONLINE』のキャラクターを描いていたりします。そういう風に、room6を出て有名になる人をどんどん増やしたいですね。行動力があって、裏で自分の作品を作っている人を歓迎しています。

ゲームって「人」なんです

──最近のroom6はインディーゲーム業界の先達として、頼られることもあるのではないでしょうか。

木村さん:
近年はほかの企業さんから「インディーゲームをやりたいんですけど、どうやって売ったらいいですか」という相談がすごく多いです。そういうときはまず「とりあえず売れません」とお伝えして、「長丁場で取り組んで、1年くらいで見切りをつけないようにしてください」とお伝えしています。大人の都合に振り回されるとあまり上手くいかない気がしています。クリエイターのことを会社やビジネスの論理で踏み荒らさないでほしい、ということはしっかり伝えていますね。

 

──ヨカゼ参加作品についてですが、「ヨカゼ的にはもう少しこういう風にしてほしい」といったディレクションをすることはありますか。

木村さん:
一切しません。作品の参加が決まったら、「あとはもう自由に作ってください」というスタンスです。ヨカゼだけでなく、room6で扱っているパブリッシング作品について会社からはまったく口出しをしていないんです。もちろんアドバイスを求められたらフォローに入ることはありますが、「こうしたら売れるんじゃないか」みたいなことは言わないですね。やっぱり作品は不可侵領域として、クリエイターを大事にしたいです。もとから惚れ込んで声をかけたゲームが多いので、「どうぞ好きにやってください」というのが基本の姿勢です。

──ビジネス的にはなかなか難しいスタンスではないでしょうか。

木村さん:
パブリッシング事業って、基本的にはそんなに儲からないんです。少なくとも、すぐお金になると思ってやっているわけではないですね。マネタイズやマーケティングをやっていかなければならないと思う一方で、それに特化してしまうとどこかで歪んでしまうと感じています。ブランド最優先で立ち上げた以上、マーケティングも意識はしますがそれを第一にはしない。「10年かけて、後から売り上げがついてくるかもしれない」という意識でやっていますね。ブランドが確立されていればいいタイトルが絶対に集まってくる、という信念のもとに運営しています。

 

──そういった姿勢を維持できる会社はなかなかないと思います。

木村さん:
と、カッコいいことを言いつつ裏では必死なんです(笑)。『ローグウィズデッド』が出るまで何度もピンチになって、いろいろな会社さんから受託開発をいただいたりして助けてもらいました。でも、やはり一度突っ張った以上は最後まで突っ張らないといけないですね。開発者さんからの信頼を預かっているので、途中で方向を変えたらダメだと思っています。

 

──ここまでクリエイターをベースに考えているパブリッシャーも珍しいのではないでしょうか。

木村さん:
作品と同じくらいクリエイターさんのことを見ていますね。作品がとても優れていても、開発者さんがroom6と合わない場合は見送ることもあります。逆に作品が成長過程にあっても、クリエイターさんとすごく馬が合ったら一緒に伸ばしていこうと思っています。ゲームって「人」なんですよね。

 

──インディーゲームのパブリッシャーがどんどん増えてきていますが、なかにはすでに知名度のある「売れそうな」タイトルだけ見て声をかける方向性もあると思います。room6としてはいかがですか。

木村さん:
最近すごく目を惹く作品が数多くありますし、実際に売れているタイトルもたくさんあるので、焦ってはいますね。「あのタイトルが何十万本突破」といったニュースを聞くと、自分の至らなさを反省したりもします。でも、売れそうなタイトルだけ声をかけるということはやっぱり、しないですね。

 

──ここまでお話を伺って、room6は単なるパブリッシャーにとどまらず、インディーゲーム開発者にとってのコミュニティとしての役割も果たしていると感じました。そうしたポジションについて意識されたことはありますか。

木村さん:
それはよく感じていますね。room6のあるゲームをほかのゲームクリエイターが手伝うケースもよくあります。クリエイター同士で相互に助け合っているので、ある種コミュニティみたいな役割は果たせていると思います。

 

──クリエイターを育てるという観点で意識されていることはありますか。

木村さん:
ヒットを狙うのはもちろんですが、クリエイターが1作目を完成させたあと、次の作品も作れるか、あるいはずっとゲームを作り続けられるかという部分を意識しています。開発者がゲームを制作し続けられる土壌を作らないと意味がないと思っていて。長期でゲーム作家として生きていける環境を作っていかないといけないですね。

そのためには心身がフレッシュで、ある程度売れていくことが大切だと感じています。「ある程度」というところが大事だと考えていて、「ある程度手に取ってもらえる」というところまではブランドの力が育てばカバーできると考えています。ヨカゼも最初は全く利益が出なかったのですが、ブランドが育ってくると全体で購入してもらえるようになるのを実感していますね。やっぱり長く売れるんです。

 

──木村さんとしてはどのような売れ方が理想ですか。

木村さん:
『アンリアルライフ』は初年度が最も販売実績があるのですが、2年目、3年目、4年目と全部同じくらい売れています。そういうタイトルを作りたいと考えていて、僕の中でのインディーゲームの理想ですね。評価されるし、ずっと話題になっていて安定する。クリエイターの価値も上がる。これがやりたいですね。

 

──木村さんから見て、クリエイターは成長していると感じますか。

木村さん:
hako 生活さんはすごく成長していると思いますね。超人並の柔軟さを発揮しています。ほかにも、たとえばroom6のパブリッシングタイトルのクリエイターさんが社員になった例もありますね。チームメンバー全員入ってもらうというケースもあるし、育てるというか、一緒にやっていくという考え方でいます。

海を吹き渡るヨカゼ

──ヨカゼブランドの認知が高まっていますが、海外からもヨカゼに参加したいという声はあるのでしょうか。

木村さん:
数多くあるのですが、現状では多くをお断りしている実情があります。ヨカゼでは僕らとクリエイターさんの間のコミュニケーションをすごく大事にしているので、言葉の壁などがあると取り扱いにくいところがあるんです。クリエイターさんがヨカゼをどう思っているかは、やはり常に知っておきたいですからね。すごくコミュニケーションの濃度が高いというわけではないですが、心理的につながっておきたいとは思っているので、スタッフ同士でもまめにコミュニケーションをとっています。

 

──海外ではヨカゼのようにストーリーに焦点を当てたゲームを「ナラティブゲーム」とカテゴライズする動きが出てきています。こうした潮流は最初から意識されていましたか。

木村さん:
最初から意識していたわけではないですね。むしろ「ナラティブゲーム」というジャンルの存在は後から聞いて「自分たちがやろうとしているのはこれだ」と気づきました。海外でも独自のカラーを出していく動きがあって、LudoNarraConやWholesome Directといったショーケースも雰囲気を統一したラインナップでゲームを集めていますね。

やはりここ数年でのインディーゲームの増加が一因にあると思います。特色がないと埋もれてしまうので、room6も独自のカラーを打ち出していかないといけないのを感じているところです。「ゲームを作って集めてパブリッシングしています!」というだけだとユーザーの心をつかめないので、フックになるブランドはあった方がいいと感じています。ヨカゼブランドは5年ほど続けてきて、ようやく浸透し始めた感じがしていますね。

 

──今回は東京ゲームショウに出展されていますが、海外の展示会への出展予定はありますか。

木村さん:
去年はドイツのgamescom 2023に『MINIDHACK』を出しました。ほかにも、台湾の台北ゲームショウや韓国のPlayX4など、少しずつ出展実績を作っていますね。でも、room6のユーザーは大半が日本で、海外での認知を上げるのはこれからの課題ですね。

現在、room6の海外プロモーションはスウェーデンのPR会社であるNeonNoroshiさんにお任せしています。いろいろ勉強させていただいていて、海外のイベントは年々状況が変わっていくので、日本にいると分からないことを教えていただいていますね。

 

──room6の作品の海外での売上はいかがですか。

木村さん:作品によってまちまちですが、特徴的なところでいうと『ghostpia シーズンワン』は中国での売上が圧倒的に多いというデータがあります。中国にはノベルゲームジャンルのディープなユーザーが多いですね。作品によって好まれる地域があるというのは実感しています。やっぱりその国1つ1つを見ないとダメだという部分はあって、経験が必要ですね。じっくり時間をかけていきたいです。

room6とヨカゼのこれから

──今回の東京ゲームショウでroom6さんが出展しているブースの雰囲気も印象的でした。屋根がなくて開放感がありましたね。

木村さん:
実は合理的な理由でああいうレイアウトになった部分もあるんです。去年はブースにPCを7~8台置いていたら、ぎゅうぎゅうになって列ができてしまったんですよね。その反省を踏まえて、今年は16台のSteam Deckを置いてゆったりした配置を心がけました。加えて、去年はスタンディングだったのですが、今年は椅子を用意してゆったりゲームしてもらえるようにしています。開放感が出てきたのはその結果ですね。

 

──ノベルティが充実していることにも驚きました。

木村さん:
ノベルティを手に取ってもらうことで、まずブランドや作品を知ってもらうことを大切にしています。最近、グッズの方にも力を入れ始めることができるようになりました。渋谷PARCOさんで「ヨカゼの公園」という展示イベントをさせていただいたとき、とても力の入ったグッズをご提案いただき、一緒に制作させていただいたんです。来場された方の大半がグッズを手にとってくださって、需要があるんだなと感じました。なかにはグッズが品薄になってしまったタイトルもありましたね。

面白いグッズとしては、『アンリアルライフ』に登場するアイテムでエビが入った瓶詰めがあって、それをモチーフにした“エビのビン”キャンドルを販売しました。香り付きなんですが、PARCOさん側でエビの瓶そっくりの見た目にしたいね、という話になり、香りはさすがに…(笑)ということで、海を想起させるいい香りのキャンドルになりました。

──PARCOさんの助力あってこその、ユニークな商品ですね。

木村さん:
こうした展開に当たって、PARCOさんにはとても助けていただきましたね。ヨカゼのことをすごくよく知っていただいていて、きちんと世界観に合ったグッズを展開してくれました。それをきっかけとして、社内でもグッズを企画したいという声が挙がっています。もともとやりたかったんですけど、なかなか手が回っていなかったんですよね。

 

──パブリッシング事業も運営しながらグッズを企画するのは大変そうです。

木村さん:
グッズもそうですが、ヨカゼは本当に少人数でやっていて単純に手が足りていないんです。今後はもう少し人員を増やして、いろいろな展開をしたいですね。人を増やすのは勇気がいるので躊躇していたのですが、結局スタッフを疲弊させてしまったと反省しています。最近はタイトルが増えてきて収益も黒字になってきたので、少しずつテコ入れをしていきたいですね。


──ヨカゼのラインナップは徐々に拡大していますが、「ヨカゼから出るなら次も買おう」という人もいると思います。

木村さん:
そう言っていただけることが多くなりましたね。「箱推し」してくださる方が増えたので本当にありがたい限りです。やはりブランドを確立していると、1つのタイトルが別の優れたタイトルを呼んでくれるし、Steamでバンドル販売できるのも強みですね。

 

──ほかにもヨカゼとして感じている強みはありますか。

木村さん:
ヨカゼという運営形態でいうと、パブリッシャーではなくあくまで「レーベル」というくくりなので、他社さんがパブリッシングした作品も入っているのが特徴ですね。たとえば『OU』という作品はレーベルがヨカゼで、開発はroom6で、パブリッシングはジー・モードさんなんですよ。

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──どうしてそのような複雑な形態になったのでしょうか。

木村さん:
『OU』はもともとジー・モードさんが企画を立ち上げて、room6が開発を引き受けたんです。そして後から、「世界観がヨカゼっぽいね」ということでレーベルに入ったという経緯ですね。ほかにも、KAMITSUBAKI STUDIOさんがパブリッシングした『ムーンレスムーン』がヨカゼに参加した事例もあります。

ヨカゼに参加するにあたって特に特別費用をいただいたりはしてないですし、他社パブリッシングだからといってプロモーションしないということもありません。あくまでヨカゼというブランド全体として一緒に頑張っていくというかたちで取り扱っています。僕は音楽が好きなので、こうしたヨカゼというブランドのあり方を「レーベル」と表現しています。

 

──レーベルという考え方は特徴的ですよね。もともと木村さんに音楽業界のノウハウがあったのですか。

木村さん:
いえ、一切ありません。むしろ僕は今でも、根底にゲーム業界や絵・音楽に対する憧れがあるんです。いまだにゲーム作りが憧れの存在なので、新卒でゲーム会社に入れなかったのはかえってよかったかもしれないですね。

 

──ヨカゼブランドがある程度定着したところですが、違う方向性のブランドを作る計画はありますか。

木村さん:
そうですね……たとえば今回東京ゲームショウに出展したタイトルでも、すごく可愛らしい『Pastel☆Parade』や『キメキャワ♥限界ビートちゃん!!』は、ヨカゼとはまた別の方向性として、僕が大好きで声をかけたんです。そういう方向性でほかのブランドを作るのはアリかなと思うのですが、まだしっくりくるアイディアがないですね。

 

──今回のお話では「種を蒔く」がキーワードになりましたが、今蒔いている種があればお聞かせください。

木村さん:
まず、新たなタイトルという種はいっぱい蒔いていますね。違う種としては、ゲーム以外の種を蒔こうとしています。多くはまだ全然お話しできる段階ではないですが、そのうちの1つとしてはroom6のオウンドメディア「かもやなぎ放送局」がありますね。このメディアはもともと、room6の社員は面白い経歴の人がたくさんいるので、発信したいと思ったのがきっかけなんです。今は社内を飛び出して、インディーゲーム業界のいろんな面白い人にインタビューをしていっていますね。

 

──改めて5年間room6を担ってきて、今の心境はいかがですか。

木村さん:
room6は10年計画と思って始めた会社なんです。今は半分まで来たところですが、僕としてはもう大・合格点かなって思ってます。残り半分で収穫ができれば嬉しいな、と考えていて、ありがたいことにいい方向に進んでいます。

 

──room6とヨカゼの今後が楽しみです。ありがとうございました。

 

https://game.creators-guild.com/g4c/creators-007-1/

ゲームクリエイター図鑑No.006小野 真弘氏#1「最先端の最後尾を独走する」北の技術者集団インフィニットループに話を聞く


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