FINAL FANTASY XVI:おうちDEモーションキャプチャ|CEDEC2023 レポ

CEDEC2023が8月23日~25日に開催されました。楽屋でまったりで行ったアンケートをもとに、様々なセッションのレポートをお送りいたします。今回は『FINAL FANTASY XVI:おうちDEモーションキャプチャ』のセッションをご紹介いたします。

本講演では、自宅で簡単に収録できる3つのモーションキャプチャツールについて解説がありました。そのうちの2つのツールは『FINAL FANTASY XVI』の一部収録で実際に使用したそうです。一体どのようなモーションキャプチャツールを使用して、どのように自宅収録をされたのか、自宅でのモーションキャプチャ撮影に挑戦してみたい方はぜひ最後までご覧ください!

FINAL FANTASY XVI:おうちDEモーションキャプチャ

セッション内容

『FINAL FANTASY XVI』チームではリモートワークへの移行に合わせて「おうちdeモーションキャプチャ」を目標に、自宅で撮影できる環境を作り上げて実用化しました。いくつかのモーションキャプチャツールをおうちで使用して『FINAL FANTASY XVI』のモーションデータに活用した実例を交えながらお伝えします。さらに、おうちで撮影する工夫やメリットについても紹介します。

受講スキル

  1. アニメーションやモーションキャプチャに興味のある方
  2. 自宅でモーション制作されている方
  3. 手軽さを重視したモーションキャプチャに興味のある方

得られる知見

  1. 自宅でモーションキャプチャを始めるために必要なこと
  2. 大がかりな設備が無くても手軽にモーションキャプチャをする方法とメリット

コロナ禍の影響で2020年からリモートワークを開始した『FINAL FANTASY XVI(以下、FF16)』チーム。『FF16』の制作で必要なモーションキャプチャの撮影・収録はこれまで通りスタジオで行われていたそうですが、それと並行して実験的に自宅でのモーションキャプチャにも挑戦されたそうです。

【従来のアニメーション開発環境】
モーションキャプチャスタジオ
・人型のキャラクターなどを収録する
・専用のキャプチャスーツを使用して収録スタジオの収録方法
・複数台のカメラを使用
・光学式モーションキャプチャシステムを採用

佐藤さん
これらのツールが今回の『FF16』プロジェクトで検証・実際の収録で使用したものです。ただ『mocopi』に関しては、検証のみで実際の収録には使用していないため、簡単な紹介だけさせていただきます。

おうちDE加速度センサー!

まずはじめに紹介されたのは、完全ワイヤレスの小型センサーで人間の動きを読み取ることができるモーションキャプチャー『Perception Neuron Studio』です。

佐藤さん「センサーの着脱はマジックテープ式なので、6分半ほどで簡単に装着できました」

ちなみに、撮影前のキャリブレーションは4ステップで完了。セットアップは「Axis Studio」によるサポートが付いているため、こちらも簡単に準備ができたのだそうです。

『FF16』では、武器を収めるモーションなどを撮影するために『Perception Neuron Studio』を使用したそうです。本ツールはセンサーがワイヤレスになっているため、リモート会議をしながらでも手軽に撮影ができるのがメリットだそう。撮影中にフィードバックがきてもすぐに対応できるため、試行錯誤しながら撮影するのが楽しかった、と仰っていました!

ちなみに階段の昇り降りのモーションにも対応していたほか、手などの部分撮影も可能だったそうで、今後はそういった細かな動きの収録にも挑戦していきたいとも仰っていました。

おうちDE動画キャプチャ!

続いて紹介されたのは、Googleが開発しているオープンソースの機械学習ライブラリ『MediaPipe』です。『FF16』では、主人公が肩で息をしているモーションを撮影するために用いたそうです。

【『MediaPipe』を使用した収録フロー】

(1)Webカメラなどで動画を撮影、姿勢を推定。『MediaPipe』は推定した座標を得ることができるため、推定した座標データを出力する。

(2)座標データからフレームごとの位置を取り出し、スケルトンの回転に変換。骨の回転情報を「Maya HumanIK」のRigに移し込む。

(3)「Maya HumanIK」のリターゲット機能を使用して、プロジェクトで使っている内製のモーションキャプチャ用HumanIKに(2)のアニメーションをリターゲットする。

(4)プロジェクトで使用しているRig流し込みシステムを使って、(3)のリターゲット結果を流し込む。

撮影の際はTポーズを取って腕の長さなどの体格を測定してから、モーションを撮影したそうです。『MediaPipe』は顔や指先の動きも認識できるそうですが、今回の検証では大まかな動きを撮りたかったため、顔や指先の細かな動きは使用しなかったと仰っていました。

武器を収めるシーンの撮影の様子
撮影データをキャラクターに流し込んだ状態

今回の検証では「手軽に」をキーワードに、カメラ一台で『MediaPipe』を使った撮影に取り組まれた『FF16』チーム。キャプチャスーツやマーカーの設置など、従来のモーションキャプチャ撮影に必要な準備をしなくてもすぐに始められる手軽さにとても魅力を感じたそうです。

今後はカットシーンの完成イメージをシェアするための仮モーションを作る時や、その場で演技をするようなモーション撮影などにも『MediaPipe』が活躍しそう、とのこと。

髙田さん
『MediaPipe』を使っている部分はポーズ推定のみなので、カメラを増やすなど拡張性もあります。総じて、カメラ以外の準備が不要でとても手軽でした!

おうちDE『mocopi』!

専用のスマホアプリを使ってセンサーを読み取り、『mocopi』を装着するだけでセットアップが完了

最後に紹介されたのは、SONYが開発しているモバイルモーションキャプチャー『mocopi』です。今回は実際のプロジェクトには使用しなかったそうですが、このツールでどの程度のクオリティの収録ができるのかを検証されました。

佐藤さん「左手にスマホを持って、スマホの映像を確認しながら撮影をしました」
佐藤さん

『mocopi』は、いつでもどこでも・歩きながらでもフルトラッキングで収録できるのが魅力です。スマホアプリながら「部屋の扉を開けて靴を脱ぐ」などの細かな動作にも対応していました。

それに小さなセンサーなので、体を動かしても気にならなかったです。今後は移動系のアニメーション収録や、カットシーンで移動をするようなシチュエーションでの収録に役立ちそうですね

スマホ一台でここまでのクオリティの収録ができるということで、個人でゲーム制作をされている方も導入しやすそうです!

さいごに

今回のモーションキャプチャツール検証を通して、キャプチャクオリティのアニメーションをすぐに収録できる点や、イメージの変更や調整があってもすぐに再収録ができる点に魅力を感じたという佐藤さん。その場で演技をするようなモーション撮影に向いているため、今後はウエストショットや手の演技を撮ることが多いカットシーン撮影で使えるのではないか、と考えているそうです。

佐藤さん

今後もキャプチャスタジオでの収録は続けていきますが、自宅の環境に合った収録方法を見つけてモーションキャプチャシステムを使っていきたいと思います。

皆さんもぜひこういったツールを使って、おうちでモーションキャプチャ撮影に取り組んでみてはいかがでしょうか。

参加者からの質問

今回紹介されていた簡易のモーションキャプチャツールは、磁気センサーの影響でモーションがズレるなどしてしまうと思います。その対策はどのように行ったのでしょうか。

磁気ズレは確かに起こりますが、一つのモーションを撮影する際に必ずキャリブレーションを撮り直したり、磁気の修正をしたりしたので、問題なく収録することができました。

ご登壇者

佐藤 逸人さん

株式会社スクウェア・エニックス 第三開発事業本部 アニメーター

<講演者プロフィール>

2016年からゲーム会社で2D・3DCGアニメーション制作と管理業務を経験。
2019年、株式会社スクウェア・エニックス入社。アニメーターとしてゲーム開発に従事。「FINAL FANTASY XVI」で複数のキャラクターアニメーションを担当。

<受講者へのメッセージ>

どこでも手軽にモーションキャプチャを行う事ができれば幅広く活躍する場面があると思いチャレンジしました。在宅環境の中、おうちで収録する工夫などを「FINAL FANTASY XVI」で使用した事例も交えてお伝えします。

手軽に始められるキャプチャの起点となるようなアイディアが見つかり、楽しんでもらえれば幸いです。是非お気軽にご参加ください。

髙田 英治さん

株式会社スクウェア・エニックス 第三開発事業本部 テクニカルアーティスト

<講演者プロフィール>

2018年、株式会社スクウェア・エニックスに入社。テクニカルアーティストとしてゲーム開発に従事。DCCツールの作成や保守、環境整備などを担当。

<受講者へのメッセージ>

在宅環境でのモーションキャプチャの取り組みでは、ポータブルなモーションキャプチャーデバイス「Perception Neuron Studio」のサポートやフロー整備などを担当しました。本講演ではツールの実装方法などの技術的な話というよりはどういった取り組みを行ってきたかをメインにご紹介しようと思います。

専門知識などは無くても理解できる内容となっておりますのでどなたでもご気軽にご参加ください。在宅モーションキャプチャーの一例として、ご参考になれば幸いです。

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