『ECHO ESCAPE』開発者インタビュー|“新感覚のステルスゲーム”を制作するためにこだわったポイントとは

『ECHO ESCAPE』開発者インタビュー

Early Reflectionは、「Indie Games Contect 学生選手権(以下、学生選手権)」にて優秀賞を受賞した、日本電子専門学校の制作チームです。ステルスゲーム好きのプランナーの長谷川さんとプログラマーの高さんが企画した『ECHO ESCAPE』の制作でこだわったポイントはどこか、話を聞きました。

Early Reflection チームメンバー紹介
長谷川 結香 担当パート チームリーダー、プランナー
酒井 瑠花 担当パート キャラクターモデラー
村上 担当パート アニメーション
鈴木 担当パート リガー、モデラー
松堂 担当パート 背景モデラー
高 梓喬 担当パート プログラマー(画面表現、カメラ制御)
担当パート プログラマー(キャラクター挙動、UI)
下野 担当パート プログラマー(敵AI)
川島 担当パート プログラマー(技術検証)

今回のインタビューは、チームリーダーの長谷川さん、キャラクターモデラ―の酒井さん、プログラマーの高さんに参加していただきました。

音を頼りに研究所から脱出を目指す新感覚ステルスゲーム『ECHO ESCAPE』

耳が異常に発達した少女が、警備ロボットが接近する中、音を頼りに暗闇の中を進むステルス脱出ゲームです。大きな音を出すと警備ロボットに捕まってしまうけど、音を出さないと視界が暗くて進めない。そんなスリルをぜひ、味わってください。《「みんなのゲームパレード」より体験版をダウンロード!》
『ECHO ESCAPE』を実際に遊んでみたい方は、作品紹介ページ内の「作品をダウンロードする」をクリック!
作品紹介ページ ▶ https://gameparade.creators-guild.com/works/838

―『ECHO ESCAPE』は、どのようにして生まれた作品ですか。

高:
『ECHO ESCAPE』は、日本電子専門学校の各学科の学生と連携してゲームを開発する学科連携というプロジェクトで生まれた作品です。もう1人のプログラマーの方とステルスゲームを題材にしたゲームを作ろう、と二人で話し合ってこの企画を立ち上げました。ステルスゲームを制作するのは初めてだったので、挑戦の気持ちで制作に臨みました。

―企画が固まったのはいつ頃でしょうか。

高:
2022年の9月に企画を立ち上げて10月頃に案が固まりました。当初はアイテムを投げたり物陰に隠れたりしながら脱出を目指す一般的なステルスゲームでしたが、新しさが感じられなかったのでボツにしました。

酒井:
アイデアが煮詰まった時は、一度考えをフラットにするためにステルスゲーム以外のゲーム案も考えましたね。

―紆余曲折を経て今のゲーム性が決まったんですね。
―学生選手権の審査員コメントには、「物語とシチュエーションがマッチしていてゲームレベルも高い」とありました。本作のストーリーはどのように決めましたか。

長谷川:
音を出す要素を入れる時に、目が見えない少女を主人公にする案も出たんですが、それだと安直なゲームになると思ったので、別のストーリーを考えました。そこで出たのが「聴力が異常に発達した主人公が、音を頼りに暗い研究所から脱出を目指す」というストーリーです。

過酷な実験を強いる研究所に嫌気がさし、脱出を目指す少女。少女が歩き出すと、足音の反響で周囲が可視化される。

―学生選手権に参加したきっかけを教えてください。

酒井:
学校側から「IGC 2023(Indie Games Connect 2023)」に出展しないかと声をかけてもらったんですが、その時は学生選手権があることを知らなくて。たまたまIGCのサイトを見た時に学生選手権の存在を知って、面白そうだったのでチームと先生に相談して参加することにしました。

―最初は展示会に出展する予定だったんですね。コンテスト会場の雰囲気はいかがでしたか。

長谷川:
カメラが何台も回っていましたし、司会進行の方もいらっしゃって、凄く緊張感のある現場でした。特に二次審査のプレゼンの時が一番緊張しました…(笑)。実はプレゼンの順番が伝えられていなかったんですよ。ですが主催のコナミさんがボードゲームを用意してくださって。出場者の方と一緒にボードゲームで遊んだので、ある程度緊張がほぐれました。

酒井:
授賞式では審査員の方から賞状を受け取ったり、カメラの前で表情をキープしたりと、慣れないことが沢山あったので緊張しました。ただ審査の合間に出場者の方と一緒にご飯を食べに行って交流を深めることができたので、とても楽しかったです。改めて学生選手権に参加できて良かったです。

―同年代の学生クリエイターと交流できたようで良かったです。今回の受賞を経て、周囲からの反応はいかがでしたか。

長谷川:
制作当時は全員一年生でチーム制作も初めてだったので、「ダメ元で良いから取り敢えず出してみよう」と、軽い気持ちで参加しました。周囲の人たちもその事情を知っていたので、受賞したことを伝えた時は皆驚いてくれましたね。

酒井:
私も家族や先生に受賞報告をしたら、とても喜んでくれました。特に先生は一番近くで指導してくださっていたので、真っ先にお伝えしました。

―ゲームをプレイされた方からの反応はいかがですか。

長谷川:
同級生に遊んでもらったんですが、ゲームに対する感想よりも仕様に対する指摘の方が多かったです。個人的にもまだまだ未完成の作品だと思っているので、今後ブラッシュアップできる時間が取れれば直していきたいですね。

酒井:
「敵のモデルがカッコ良い」というコメントをいただけたのは、モデラ―として凄く嬉しかったです。実際にプレイしてくださる方だけでなく、周りで見ている方も楽しそうに見てらっしゃったのがとても印象的でした。ゲームクリエイターの方からは「学生の作品だけど尖っていてとても良い」「ステルスゲームに音の要素を入れ込んでいるのが面白い」と評価していただきました。一方で「クリアしづらい」という意見もありましたね。

高:
難しいルートに挑戦したり、回り道をして冒険したりと、色んな遊び方をして楽しんでいただけたのがとても嬉しかったです。主人公を捕まえる一連の演出は私が担当したんですが、プレイしてくださった方が敵に捕まった時にビックリした姿を見て、とても達成感を味わえました(笑)。

フリーアセットは使用せず、オリジナルのビジュアルを追求

―本作を制作するにあたって、こだわった点を教えてください。

長谷川:
特にこだわったのはビジュアル面です。Early ReflectionチームにはCGデザイナーが4人いるんですが、それぞれの得意分野を活かしてビジュアルに凝ったゲームにすることを目標にして制作しました。なので今作ではフリーアセットは一切使っていません。

―フリーアセットを使わずチームで自作されたんですね。酒井さんは敵ロボットのモデリングを担当されましたが、どのような所にこだわりましたか。

酒井:
私は敵ロボットのサイズ感と、主人公の弱々しさを表現するのにこだわりました。ステルスゲームは敵を倒せないゲームなので、ビジュアルを見ただけで主人公の非力さと敵ロボットの威圧感や強さが分かるように制作しました。敵ロボットのビジュアルは、トラックボールマウスをイメージして作っています。我ながら近未来風のデザインにできたと思います。

―トラックボールマウスからデザインの着想を得たんですね。それは面白いです! ロボットのモデリングは得意分野なのでしょうか。

酒井:
ロボットに詳しいわけではないですが、サイバー風のデザインを制作するのが好きなので、作っていてとても楽しかったです。背景担当のデザイナーさんがとてもカッコ良い背景を作ってくれたので、思わずテンションが上がって「自分も頑張ろう」と思いながら作りました(笑)。

高:
敵が主人公を見つけた時に腕が赤く光る演出も上手く作ってくれたので、より緊張感のあるゲームになったと思います。

酒井:
敵の腕が赤く光る部分のマテリアルは高さんが事前に制作してくださったので、それを参考に今の演出を制作しました。高さんには技術的なアドバイスをしてくださったので、納得のいく演出を作ることができました。

音を感知した捕獲ロボットは、腕を赤く光らせて捕獲モードに。

―ゲーム制作で大変だったことは何でしょうか。

酒井:
UIの表示方法を決めるのが大変でした。リアルな世界観のゲームにしたかったので、なるべく体力ゲージなどの表示は出さないようにしたんですが、制作する中で「もう少しUIを表示した方が良い」というご意見もいただいて。シンプルだけど分かりやすいUIになるように試行錯誤しました。

高:
私は音に関するシステムをゲームに落とし込む作業が大変でした。当初はマイク入力で音声を認識したり、何かを命令したりする案もあったんですが、ゲーム性や遊びやすさを考えて、マイク入力のシステムはボツにしました。今は主人公が歩いた時に足音が波紋のように広がる演出にしているんですが、AI担当の方と話し合いながら作り込みましたね。

長谷川:
プランナーが私一人で全体の指揮を執るのが大変でしたが、頼りになるチームメンバーに沢山助けてもらったので、なんとか完成まで走り切ることができました。

『ECHO ESCAPE』の制作を通して、ゲーム作りの楽しさに気付いた

―皆さんの今後の目標を教えてください。

高:
私はプログラミングの能力を鍛えることが第一の目標で、特にC+言語の勉強に力を入れたいと思っています。また、今後必ず役に立つであろう数学の勉強にも挑戦する予定です。幸いなことに、学生選手権では良い結果が出ましたが、もっともっと勉強して良い作品が作れるように努力したいと思います。

長谷川:
私は現在新しい他学科連携プログラムに参加していて、今回とは別のチームで3Dアクションゲームを制作しています。まずは制作中のゲームを完成させて、東京ゲームショウに出展するのが目標です。

酒井:
最近はUnreal Engineでゲームを作っているので、個人制作でゲームを開発してコンテストに出すのが目標です。また、私も新しいチームでゲーム制作を行っているので、そのゲームも色んな展示会やコンテストに出したいですね。

―酒井さんは個人制作にも挑戦されているんですね。

酒井:
『ECHO ESCAPE』の制作を通して、ゲーム作りの楽しさに改めて気付くことができました。それに、学生選手権で出会った『Unknown Pyramid』制作者のRainyDollGamesさんと、『Death the Guitar』制作者のトロヤマイバッテリーズフライドさんに影響されて、自作モデルや自作ゲームに挑戦してみたいと思うようになったんです。影響を受けやすい人間なので…(笑)。

―個人で作った作品もぜひ見てみたいです!
―では最後に、学生クリエイターに向けてメッセージをお願いします。

長谷川:
『ECHO ESCAPE』は、メンバー全員が一年生の時に制作した作品です。3ヵ月という短い期間の中で作ったので、まだまだ課題も多く残っていますが、学生選手権では受賞させていただくことができました。この経験は私にとって大きな原点になっています。

これから様々なゲームコンテストや展示会に挑戦する方には、勇気を持ってチャレンジしてほしいです。たとえ「あまり良い出来ではない」と感じていたとしても、チャレンジして損することはないので、まずは一歩踏み出してみてください。

―年齢や経験に関係なく、積極的にチャレンジしてほしいですね。皆さんの今後のご活躍も楽しみにしています!
―本日はありがとうございました!

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