「ゲームクリエイター甲子園 2022」総合大賞 受賞|“究極のギアアクション”を生み出した『ギアガチャン』インタビュー

「ゲームクリエイター甲子園 2022」総合大賞『ギアガチャン』インタビュー

今回は2022年に行われた「ゲームクリエイター甲子園 2022」で、総合大賞をはじめ企業賞などの各賞に輝いた『ギアガチャン』制作チームのインタビューをお届けします!

審査員も大絶賛のパズルアクションゲーム『ギアガチャン』がどのように生まれたのか、またどのように「触り心地の良さ」を追求したのか。専門学校 HAL大阪の制作チーム「にゅー★じぇねれーしょんず!!」の皆さんにお聞きしました。

ギアの感触が気持ち良いアクションパズルゲーム『ギアガチャン』

【作品紹介】
歯車から感じられる金属質な感触を表現したアクションパズルゲームです。 噛み合い、回転させるというギアらしいシンプルなアクションのみで、「ガチャン」という気持ちいい感触を作り出しています。ギアらしさを常に感じれるように作りこまれたステージとアンティーク感漂う美しい世界観に、時間を忘れてプレイしてしまう事間違いなし。 不思議な部屋に立ち並ぶ6つの閉じた宝箱、全ての開錠を目指そう!
制作チーム名 ▶ にゅー★じぇねれーしょんず!!
作品詳細 ▶ https://gameparade.creators-guild.com/works/324
(写真上段 左から)サウンドクリエイター 後戸和樹 さん、プログラマー 小山颯斗さん、プランナー 有本湧祐さん、プログラマー 三宅廣大さん、デザイナー/3Dモデラー 三輪祐希さん (写真下段 左から)サウンドクリエイター 岡桂吾さん、サブリーダー/プログラマー 泉優樹さん、チームリーダー/プログラマー/プランナー 若山明史さん、プログラマー 岩本典志さん、デザイナー 松宮花朋さん

― 「にゅー★じぇねれーしょんず!!」は12名のチームですが、プランナーはそこまで多くないんですね。

若山さん:
そうですね。今日はお休みの瀬戸さんがプランナーで、基本的には僕と瀬戸さんの二人で中身の仕様を作っていました。あとは見た目の部分はデザイナー、SE、BGMはサウンド、挙動などはプログラマーも交えたりと、各職業を中心に一緒に話し合って決めました。

実はチーム制作のノウハウの元になっている師匠が、『はがれがしー』のチームリーダーを務めた冨田さんなんですよ。

冨田さんは僕の先輩で、僕が2年生の学内コンテストで初めてリーダーを務めさせてもらった時に知り合いました。その時にチーム制作での困りごとなどを色々と相談させてもらうようになって。個人的には凄く慕わせてもらっている方ですね。

― そうだったんですね。冨田さんからノウハウを教えてもらう中で一番参考になったのは、どういったことでしょうか?

若山さん:
「各職種からの観点や個人の価値観で意見をしやすくするために、どのように動くべきか」など、チーム運営やリーダーとしての心構えはとても参考にさせてもらいました。

チーム運営の方針として考えていた、「職種問わず何かを作る際にイメージしたり話しやすいように、コンセプトや世界観を固める」という考えについても、富田さんには共感していただきました。

― 「ゲームクリエイター甲子園(以下、甲子園)」の授賞式当日は、どのように過ごされていましたか?

若山さん:
正直な所、上位入賞できると思っていたメンバーが少なくて…(笑)。YouTubeの配信はほぼ全員観ていましたが、「Gather.Town」に接続していたのは自分含めて3人だけでした。なので、総合大賞が『ギアガチャン』だと発表された瞬間に、皆から連絡がいっぱい飛んできましたね。

有本さん:
僕は今日欠席しているもう一人のプランナーの瀬戸くんと2人でYouTubeを観ながらDiscordで会話していました。そこで1位が発表されて、2人とも「マジか!」って(笑)。発表前は「1位じゃないやろな」って話していたので、びっくりしましたね。

泉さん:
総合大賞ノミネート作品のどれもがクオリティの高い作品でしたが、僕は『ギアガチャン』のコンセプトは一貫していて、かつ尖っている作品だと思うので、「1位を取れたら嬉しいな」と思って観ていました。

「日本ゲーム大賞(以下、ゲーム大賞)」では『ギアガチャン』は優秀賞で、『はがれがしー』が優勝だったので、甲子園でリベンジできて嬉しかったです。

“ギアの触感”を極めた『ギアガチャン』制作秘話

【審査員からの講評(一部抜粋)】
・『ギアガチャン』は色んな側面から見て総合的に素晴らしい完成度でした。グラフィックはもちろん、操作感も良い。 UIを含め全てにおいてプロ並みの作品だったと思います。めちゃくちゃハマりました。面白いです。(稲船氏)
・発想が素晴らしい。一見簡単なように見えて技術的にハードルが高そうで、ゲームに落とし込むまでに大変な苦労があったんじゃないでしょうか。スチームパンクのような可愛らしい世界観なので、デザイナーとして自分の中でも広げたいと思いました。(今村氏)
・独特の触感があって、触り心地が良い。ギアを動かすだけで気持ち良かったです。その触感とパズルが密接に関わっていて、“これまでにない”タイプの挙動だと感じました。アイデアやパズル、触り心地の良さ、アート、サウンドエフェクト全てが一つになってゲームを高め合っている。これを学生チームで成し遂げた、というのは素晴らしいことだと思います。(榊原氏)

― 『ギアガチャン』は総合大賞のノミネート作品の中でも、特に審査員の平均点が高い作品でした。改めて、作品の制作経緯を教えてください。

若山さん:
『ギアガチャン』は「ゲーム大賞で賞を取る」という目標で制作した作品で、コンテストのテーマでもあった「感触」を意識して作りました。今の『ギアガチャン』とは別のギアをコンセプトにしたゲームを先生に提出したんですが、「ギアはよくあるアイデアだし、オリジナリティがない。面白さに欠ける」と言われてしまって。

先生にはギアがテーマになった過去の作品を全て見せてもらって、どんな発想を取り入れれば独創的で面白い作品になるかを研究した結果、「ギアの触感を極めたゲームを作ろう」ということで今の『ギアガチャン』が生まれました。

― 「ギアの触感を極めたゲーム」ということですが、あの触感を生み出すのは大変だったんじゃないでしょうか。

若山さん:
そうですね。噛み合わせのプログラムはかなりこだわった部分であり、骨が折れた部分でもあります。特にプログラムでは「ギアが噛み合う」という表現が上手くいかなくて、本当に苦労しました。

ですがギアはこのゲームで一番重要な部分ですし、どうしても崩すわけにはいかないので、頑張りました。

― 確かに「ギアを噛み合わせる」、というプログラムを制作するのは難しそうです。ですが審査員からは「移動するだけで気持ち良い」という評価も出ましたね。

若山さん:
審査では主にチュートリアル部分が触られるだろうと想定していたので、初っ端のステージは特に「手触りが良い」という印象を与えたいと思って作りましたね。サウンドやデザインにもこだわっていて、キャラクターの移動音は3、4回ぐらいリテイクして作りましたし、ギアの見た目も金属質にするかどうか皆で話し合って決めました。

三輪さん:
デザイン部分でいくと、制作時の見た目と実際のゲーム画面での見た目とでは全く印象が違うので、そこのすり合わせが大変でしたね。

― キャラクターデザインはどのように決められたんでしょうか。

若山さん:
『毛糸のカービィ』を参考にキャラクターを制作しました。

当時「作品を印象づけられるようなマスコットキャラを作りたい」って思ってたんですが、どんなキャラクターにするか悩んでいて。ギア本体は小さいですし、円形のギアに目をつけると上下が分からなくなるので、どうするべきか考えあぐねていたんです。

それを冨田さんに相談したら、「『毛糸のカービィ』を参考にしたら良さそう」という案をいただいたので、そこからあのキャラクターを作り出しました。

― このほかにも、熱血道場の審査員で『弟切草』や『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』などを手掛けた麻野さんは「テクスチャが良い」と仰っていました。ゲーム全体の見た目はどのように制作されましたか?

若山さん:
実はこの作品、ゲーム大賞の締め切り1週間前くらいに今の見た目になったんですよ。元々のテクスチャがどうしても“学生クオリティ”という感じがして、もっとクオリティを上げたかったんです。

とはいえ質感や傷などの細かい部分はしっかりと作り込んでくれていたので、その上でデザイナーの吉岡さんに画像の解析度をどこまで上げられるか相談して、全部のテクスチャを4Kまで上げました。

先生からは「学内で『ギアガチャン』が一番データが重い」って言われましたね(笑)。ですが、テクスチャを褒めていただけて良かったです。

― 他の審査員の方もデザインやUIを評価されていましたし、直前まで粘って修正を加えた判断は正解だったのかもしれないですね。

作品制作時はメンバーとの衝突も

― 技術面で大変なことも沢山あったかと思いますが、チームで制作を進めていく上で大変だったことや、揉め事に発展してしまったことはありますか?

若山さん:
僕と泉くんで、かなりの喧嘩をしました(笑)。サウンドクリエイターとプログラマーを繋げていたのが泉くんなんですが、プランナーの有本くんを介して泉くんと会話をしていたせいで、作業効率を落としてしまったこともあります…(笑)。

有本さん:
その時はいわゆる“サンドバッグ状態”で、めっちゃ大変でしたよ(笑)。

― お互いに「より良いものを作ろう」と思うあまり、衝突してしまうことはありますよね。ですが、結果的に今回の成績に繋がっていますし、ぶつかって良かったのかもしれません。

泉さん:
そうですね。若山くんがリーダーとして思っていることと、メンバーが思っていることを取り合わせて実証していくのは大変でしたが、しっかり形になって良かったです。

若山さん:
泉くんは一年生の頃から縁があってプライベートでも「何故このゲーム面白いのか」みたいなテーマで議論をする仲なんですよ。お互い個人で作ったゲームについて、忌憚ない意見を言い合えますし。

なので今回の『ギアガチャン』でも「この感触は良いのか、悪いのか」を、しっかりと話し合いながら作れたのは良かったと思います。

― 2023年も引き続きこのチームでコンテストに挑戦されるんでしょうか。

若山さん:
ほとんどメンバーは変わりませんが、数名は別のチームに移ることになっています。

『ギアガチャン』では僕がリーダー兼プランナーとして主導していましたが、現在の制作ではプログラマーを兼任しているメンバーも含めプランナーを5名立てて、チーム全体で話し合えるような体制で進めています。

もしかすると元の体制に戻すかもしれませんが、とりあえずは自分たちのやりたいようにやりつつ、変に転ばないように落ち着きどころを考えた進め方ができれば良いですね。

泉さん:
僕は次のゲーム大賞は別のチームで制作を行う予定です。先ほど若山くんが言っていた通り、『ギアガチャン』では賞を取ることを目標に動いていたので、次のチームではメンバーがやりたいことを作品に反映できるように動いていきたいですね。

― 「ゲームクリエイター甲子園 2023」もスタートしていますが、こちらの意気込みはいかがでしょうか。

若山さん:
自分たちが賞を取ってから「次も大賞取るよね?」とか「プレッシャー感じてる?」といった話をされることが多いんですが、自分としては「次も賞を取らなきゃ」みたいな責任感はあまり感じていません。

それに「ゲームクリエイター甲子園」では純粋に“ゲームの面白さや独創性”を求められますし、作品の応募数もかなり多いと思うので、甲子園で連覇をするのは難しい気がします…(笑)。

もちろん賞を取りたい気持ちもありますが、まずは自分たちの好きなようにやっていければ良いですね。

― 「ゲームクリエイター甲子園 2023」ではクリエイターの「個の力」にもフォーカスしていく予定です。今年はぜひ、チームとしてだけでなく個の作品でも挑戦して、話題を呼び起こして欲しいです!

若山さん:
泉くんはイラストとかも全部自作して個人制作のゲームをめちゃくちゃ作っているんで、多分色々出してくれると思います。

― そうなんですか。それは楽しみです!

泉さん:
頑張ります!(笑)

今後の目標

― 2023年の4月で4年生になられるということで、卒業まで残り一年となりましたね。今後の目標があれば、ぜひ教えてください。

泉さん:
『ギアガチャン』に関しては、ゲーム大賞の研究をして審査員に評価されるようなものを作りたい、という気持ちで制作していました。なのでこれからは自分やメンバーの個性を出しつつ、尖った作品とかも作っていきたいですね。

有本さん:
僕はあんまりパズルゲームをやらないんですよ。基本的にはギャルゲーなどを好んで遊んでいるので、そっち方面で“とんでもないもの”を作ってやろうと思っています(笑)。

― 「ゲームクリエイター甲子園 2023」でも“応募できる範囲”で挑んできてください(笑)。期待しております!

岡さん:
僕は作曲担当なので、次に作るゲームは遊んでくださった方に「このゲームの楽曲は出来が良くて世界観が良い」と感じてもらえるような作品を作れればと思っています。

若山さん:
岡くん、こんな感じで言ってますけど、いざBGMの話をし出すとめちゃくちゃ熱くなるタイプなんですよ。専門用語も出てきて途中から分からなくなるんで、「そうなんや、それってどういう意味?」って感じで返事しながらいつも勉強させてもらってます(笑)。

― 今日は皆さん控えめでいらっしゃいますが、実は結構尖っている人が多いんですね(笑)。これから制作される作品もとても楽しみにしています!本日はありがとうございました!

最後にゲームクリエイターズギルド主催の宮田からトロフィーを授与させていただきました。

改めて総合大賞おめでとうございました!

 

宮田

今回インタビューを行った『ギアガチャン』の制作チームの皆さんは、控えめで慎ましやかな印象とは裏腹に、それぞれが熱い想いを内に秘めた情熱的な方たちでした。

この“スーパークリエイター”たちが、今後どのような化学反応を起こしてゲーム業界を盛り上げてくれるのか、とても楽しみです。

 

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└『ギアガチャン』制作チームも出展されていました。

 


「ゲームクリエイター甲子園 2023」に挑戦しよう!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。

このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。

「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

【ゲームクリエイター甲子園 2023 エントリー情報】

エントリー・チーム登録期間:2023年1月30日(月)~10月31日(火)16時59分
作品提出期間       :2023年1月30日(月)~11月7日(火)16時59分

※作品がない状態のエントリーも可能です。
※一作品につき一回チーム登録が必須となります。個人参加の場合もチーム登録をお願いします。
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です。

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【応募資格】
年齢  :小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数 :無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です

「ゲームクリエイター甲子園 2023」エントリーはこちら

 

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ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)

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