名越スタジオプロデューサーが語るチーム作りと開発現場のリアル|名越スタジオ×GCG トークセッションvol.4 イベントレポート

今回で最終回となる『名越スタジオ×ゲームクリエイターズギルド トークセッション 国境を超えて実現したいゲーム開発の未来像』。

今回は『名越スタジオのプロデューサーが語るチーム作りと開発現場のリアル』とのトークテーマで、名越スタジオのプロデューサー・潮田 太一さんに語っていただきました。

前編では大型MMORPG『TERA(テラ)』をはじめ、様々な作品のプロデューサーを務めた潮田さんのクリエイターヒストリーを振り返りつつ、後編では名越スタジオの現場の雰囲気や、今後のチーム作りに必要なことは何かをお届けします!

登壇者プロフィール:潮田 太一

潮田 太一(うしおだ たいち)

株式会社名越スタジオ プロデューサー

NHN JAPAN株式会社に入社後、株式会社スクウェア・エニックス、株式会社レベルファイブ、株式会社セガといったゲーム制作会社を経験。大規模MMORPGタイトルやスマートフォンタイトルなど、幅広いプロジェクトにおいてディレクター・プロデューサー・開発ゼネラルマネージャーとして携わる。その後、株式会社名越スタジオに入社。

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名越スタジオのプロデューサーが語るチーム作りと開発現場のリアル

現在は名越スタジオの企画部門の部門長 兼 プロデューサーを務めている潮田さん。実はゲーム業界に入ったのは20代後半と、少し遅めのスタートだったそうです。

宮田
当時一番印象に残っているプロジェクトは何でしょうか。
潮田氏

やはり『TERA(テラ)』というMMORPGのプロジェクトですね。大型のプロジェクト、かつ初めてプロデュース作品だったので。

実は、当時何の経験もない状態の僕に「『ファイナルファンタジー Ⅺ』が好きなんだから、MMOのプロデューサーやってみたら?」と声をかけられたのが、プロデューサーデビューのきっかけです(笑)。

潮田氏
今となっては笑い話ですが、0→1でプロデュースするのは本当に大変でしたね……。とはいえ、こういう経験をさせていただけたからこそ、今の仕事に繋がっていると思います。

その後、株式会社スクウェア・エニックスに転職された潮田さんは『ドラゴンクエストⅩ』の開発チームに配属され、運営統括を担当。当時のプロデューサー・齊藤陽介氏やディレクター・藤澤仁氏には「基本的には潮田さんの好きにやってもらいたい」との声をかけてもらったそうです。

潮田氏
『TERA』の時もそうですが、しっかりと裁量権がある中で、かつ「自由にやってごらん」と言っていただける環境があったのは、今の自分を形成する上で大きな経験でしたね。

 

“チャレンジングな環境”に身を置くために名越スタジオへ

『龍が如く』スタジオでの経験が長い方が多く在籍する名越スタジオの中でも、潮田さんはある意味“異色の経験の持ち主”。こういった経歴を踏んでいく中で、潮田さんが名越スタジオでチャレンジしたいと思ったのは「“一番チャレンジできる所”を考えたときに、名越スタジオが一番輝いて見えたから」なのだそう。

“何事も経験させてもらえる、チャレンジングな環境”に身を置くことを大切にされている潮田さんから見て、名越スタジオはそういった希望を叶えられる場所だと感じたと言います。

宮田
代表の名越さんから名越スタジオに誘われたと伺いましたが、名越さんからはどのような評価を受けましたか?
潮田氏

「良く言えば“ちゃんとした人”」だと言われましたね。裏を返せば“普通の人間”なんですが。

「ゲームを作れる人は“尖っている人”が多くて、尖った人が集まりすぎると意見がまとまらなくなる。その点潮田は考え方のバランスが良くて好き」と言ってくれました。率直に嬉しかったですね。

宮田
では、潮田さんから見て名越さんや佐藤さんはどんな方ですか?
潮田氏

名越はゲーム開発に関する物事をロジカルかつ粒度の細かい説明・指示をしてくれる人、ですね。

本人の風貌や作っているゲームからして尖った人だと思っていたので、面談の際には失礼を承知で「名越さんってとてもしっかりされているんですね」と思わず言ってしまいました(笑)。

潮田氏

佐藤は本気で守ってくれる人。ちゃんとこちらの話を聞いてくれますし、理屈が通っていれば納得してしっかり任せてくれる。任せたうえで守る形で見てくれる。

普通だったら上からチクチク言われたり、逆に全部丸投げされたり、ということも起こりうるんですが、そうじゃないんです。

宮田
このイベントを通じて名越さんや佐藤さんの漢気、みたいなものを感じます。全てのパートに裁量がありつつ見守る体制もできているのは心強いですし、チャレンジしやすい環境ですね。

 

日本が世界に通用するゲームを作っていくために必要なこととは

名越スタジオには「世界に通じるゲームタイトルを作ろう」という大きなテーマがあり、前回のイベントでは「今後名越スタジオは独自のストーリー性を活かしたゲームで世界と戦っていく」とのお話がありました。

潮田さん曰く、これまで培った経験から「日本人が考えるキャラクターや世界観、物語などの“ドラマ”を立脚点にして進むのが、日本が世界と戦うための一つの手法」だと考えているそうです。

潮田氏

世界のゲーム市場を見ると、コンシューマーゲームの健闘が目立ってはいるものの、スマホタイトルの売り上げが大きい状況が続いています。ですがスマホタイトルも淘汰の時代。日本発のスマホタイトルが存在感を示すことは簡単ではなくなってきました。

では、日本が世界と戦える強みは何か。それは、日本のエンターテイメント文化に基づいたコンシューマーゲームにおける“物語の作り方”にあると思います。

宮田

前回のイベントでもあった、ストーリー性の部分ですね。確かに、日本はゲームだけでなく漫画やアニメーション文化が発達していますし、キャラクターや世界観の作り込み方は強い武器になりそうです。海外の物語より日本の方が上回っている、ということではなく、単純に文化としての違いがあるので、そこに特異性を持たせることができると思います。

潮田氏

まさにその通りですね。日本ほど様々なヒーローやキャラクターを生み出した国はないんじゃないかと思います。日本ならではの格好良さ・かわいらしさの描き方があることや、少しぶっ飛んだ設定も「良し」とする土壌がある文化なども、特異性の一つだと思います。

潮田氏

我々から生まれる日本の物語は強力な武器になることを自覚し、どう作り上げていくかが大事です。たとえば『ペルソナ』シリーズや『NieR』シリーズなどの作品は海外のお客様の認知度も高まっていますし、『龍が如く』は日本的な要素が散りばめられた人間ドラマですよね。こういったドラマパートに注力していくと、世界にも対抗できる唯一無二の作品ができるんじゃないでしょうか。

 

名越スタジオ流の組織・チームメイキング

名越スタジオでは“世界に通じるゲームづくり”だけでなく、“風通しの良い組織づくり”にも注力されています。潮田さん曰く、理想の組織・チームづくりに大切なポイントは二つあるそうです。一つは“夢と自己犠牲のバランス”が取れる人材を集めること。もう一つは“意志と伝達”を大切にすることなのだそう。

潮田氏

夢と自己犠牲のバランス”というのは、自分の夢と会社への貢献度のバランスが取れているかどうか、ですね。

ドライな表現になってしまいますが、ただ夢を持っているだけの人は“我が強い人”だと認識されてしまいます。なぜなら「自分のやりたいことがこの会社では実現できない」という思考に陥りやすいから。

潮田氏

多少自分を犠牲にしてでも、会社やチームに貢献する気持ちがあるかどうか。それは組織・チームづくりにおいて重要なポイントの一つだと思います。

とはいえ我が強いのは決して悪いことではないので、そのバランスを上手くコントロールできるかどうかですね。人は簡単に変えられないので、まずは採用時にそういった点を見極めるようにしています。

宮田
“意志と伝達”の部分はいかがでしょうか。
潮田氏

風通しの良さ、というのは「意志と情報がきちんと伝達される仕組みができている状態のこと」だと思っています。

一見当たり前のことだと感じると思いますが、それが実現できているかと聞かれると難しいんですよね。実際に名越スタジオでも、この課題は感じていました。

潮田氏

そこで、去年の後半頃に名越にキーマンとメンバー間の意思・情報伝達に課題を感じていること伝え、なるべく会話しやすい状態にしてもらいました。

現在は名越も企画のチェックやミーティングに週次レベルで参加してくれています。

名越スタジオは基本的にフル出社の体制で、常に会話しやすい環境を大切にされています。またオンラインミーティングも取り入れられており、代表の名越氏や主要メンバーは会議室に集まり、その様子をオンラインで繋げて自席で会議の様子を聴くこともできるそうです。

実際のボードメンバー会議の様子。写真越しでもその熱気が伝わってきます。
新入社員歓迎会の様子。強制参加ではないものの、「楽しいから」と全員が参加されるのだとか。
皆さん楽しそうですね!

 

「“チャレンジし続けられる人”が5年後、10年も活躍できるクリエイターになる」

宮田
「5年後、10年後にも活躍するクリエイター」として、どういうことが大事だと思いますか。
潮田氏

“チャレンジし続けられるかどうか”ですかね。

自分自身チャレンジさせてもらえる環境があったので、結果的に新しいことが好きになりましたし。失敗も当然ありますが、相対的にみて右肩上がりでできていると思います。

宮田
年齢を重ねるごとに新しいことをするのが難しくなったり、現状維持がとても楽だったりしますもんね。チャレンジし続けるってとても大事だと思います。
潮田氏

そういう環境は会社全体で用意できると良いですが、会社である以上利益を出す必要もある。そのために新しい挑戦になかなか踏み出せない会社もあると思います。

それは仕方のないことですが、3年、5年と方針を変えずに進めていくだけだと、成長がストップしてしまう可能性もあります。そういった事態にならないように、名越スタジオは常に変化を求めて挑戦し続けたいと思っています。

潮田さん曰く、「名越スタジオの面白い所は色んな文化を持つ人間がいること」。セガ出身のコアメンバーは多いものの“セガ一色の会社”ではなく、他社から入ったメンバーから有用なメソッドを取り入れて常に変化し続けているそうです。

かく言う潮田さんも「これまでに無かった文化が取り入れられることもあるので、僕自身めちゃくちゃ刺激されています。良い方向に行きそうな施策があれば、今後も積極的に他社の文化を取り入れたい」と仰っていました。

潮田氏

より良いコンテンツを作るために挑戦して、悩んで、模索して、また挑戦して……。このサイクルを実現できる人が“5年後、10年後も活躍できるクリエイター”だと思います。

なにせ私の座右の銘は、大尊敬しているプロレスラー・ジャンボ鶴田氏の「人生はチャレンジだ」を、いただきましたから。

 

「学生の皆さんには、石にかじりついてでもゲーム業界に入って欲しい」

宮田
今回は学生の参加者も何名かいらっしゃるので、未来のクリエイターを担う学生の皆さんに向けて、ぜひ潮田さんからメッセージをお願いします。
潮田氏

学生の皆さんには、まずは石にかじりついてでもゲーム業界に入って欲しいです。

大手の会社に新卒で入るのは正直難しいですが、どんな会社であってもゲーム作りに携われれば必ず次のチャレンジに繋がります。なので、まずはゲーム業界に来てください。

潮田氏

そして、新卒入社の会社で3年続けてみてください。ゲーム業界は半年~1年で結果が出るものではないので、まずは3年やりましょう。

3年間経験を積んだタイミングで自己を振り返ってみて「環境が合っていない、もっとチャレンジしたい」と感じれば、転職を考えてみると良いと思います。若手の転職は結構アリな業界なので。

宮田
新卒の方で「この会社じゃないとだめ」と思っている方は多いですもんね。気持ちは分かりますが、まずは血肉を付けることが大事ですから。しっかりと経験を積んでいければいくらでもチャンスはありますし。
潮田氏

そうなんです。しっかりと経験を積んでいれば、案外中途の方が大手や希望する会社に入りやすいので(笑)。

ぜひゲーム業界に入って、数年後に名越スタジオで会いましょう!(笑)

 

配信終了後

Vol.1Vol.2Vol.3に引き続き、今回もサインとメッセージをお願いしました。

なんと、この日のためにわざわざサインを考えてくださいました……!

潮田さんからクリエイターへメッセージ

「最高のチャレンジを!」

“常にチャレンジできる環境”を大切にされている潮田さん・名越スタジオさんらしい言葉ですね!

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