「売り」を伝える『ヘブバン』のマーケティング事例|CEDEC2022レポ

CEDEC2022が8月23日~25日に開催されています。
楽屋でまったりで行ったアンケートをもとに、様々なセッションのレポートをお送りいたします。
今回はリリース3日で100万インストールを達成した『ヘブンバーンズレッド』のマーケティングに関するセッションをご紹介いたします。

作品を広く認知させたいと考えているクリエイターさん必見です!

ヘブンバーンズレッド「最上の、切なさを。」伝えるマーケティング

セッション内容

一部長期タイトルによるシェアの占有や外資系企業の台頭など、超レッドオーシャン状態にある昨今のスマートフォンゲーム市場。その厳しい市場へ、完全国産オリジナルIPゲームがどのように勝負を挑んでいったのか。

『消滅都市』『アナザーエデン 時空を超える猫』などオリジナルIPゲームを作り続けてきたWright Flyer Studiosと、Keyとのタッグで生み出された集大成とも言える作品『ヘブンバーンズレッド』。

その完全国産オリジナルIPゲームが、2年を超えるマーケティング準備期間を経てどのような戦略でリリースし売上ランキング1位を複数回獲得するタイトルになったのか。

「最上の、切なさを。」伝えるマーケティングを、戦略から詳細施策までお話いたします。

受講スキル

  1. ゲームのマーケティングに従事している方

得られる知見

  1. 完全国産オリジナルIPゲームのマーケティング事例。

『ヘブンバーンズレッド』について

―最後の希望を託された少女たちの物語―
WRIGHT FLYER STUDIOS×Keyが贈る、メインシナリオ麻枝 准氏 15年ぶりの完全新作ゲーム

https://heaven-burns-red.com/

このセッションでは、完全国産オリジナルIPゲームが超レッドオーシャンであるスマホゲーム市場にどのように勝負を挑んでいったのか、戦略や施策についてお話されました。

本セッションでのオリジナルIPの定義──リリース前にアニメやマンガなどの事前の展開がなく、ゲームリリースが一番最初の展開であること。

プロモーションは生放送や動画が重要な要素として占めており、Twitterのキャンペーンも行われていたとのこと。

オリジナルIPで勝つためのターゲット設定

1stターゲットはKey、麻枝 准さんのファン。しかし、数百万単位のお客さんにゲームを知ってもらってインストールしてもらうことがビジネス上必要になってくるため、ターゲットを広げなければならない。

2ndターゲットは「Keyさんというお名前は知らないけど『クラナド』『エンジェルビーツ』を知っている」と他作品を見たことがある方たち、3rd以降は美少女が出てくるゲームで遊んでいる方などをターゲットとして設定されたとのこと。
この部分を闇雲にリーチさせようとするとコストが掛かってしまうため、親和性の高い層にリーチすることを大切に考え、目標KPIの優先度は、インストール数より継続率や課金MAU(Monthly Active Users)を第一に考えてプロモーションを建てられたとのこと。

さらに目標KPIを深く追求し、課金MAUに対して、層別に設定されたPUR(Paid User Rate)と「事前登録×自然流入」「事前登録×広告経由」「事前登録していない×自然流入」「事前登録していない×広告経由」の4つに分け、初月にどれくらいのインストールが必要かを逆算して考えられたそう。

 

オリジナルIPで勝つためのUSP設計

USP(Unique Selling Proposition)
強みを分析し、お客さまにわかりやすく集約したもの
一言でいうと「売り

ヘブバンのUSP・売りの部分

「 Key麻枝 准、15年ぶりの完全新作ゲーム 」
→他社にはない絶対的な「売り」の部分

「美少女が戦う」という世界観
→他社さんでも扱われており、これは世の中にありふれておりUSPにはなりえない
→美少女キャラが戦うけど他社にはないシナリオ・ゲームシステムを含めた強みを再設計

麻枝 准さんが紡ぐ切ないストーリー、ゆーげんさんが描く淡いタッチのキャラクターは「切なさ」を表現
他社よりも深い、キャラごとの物語への没入体験を本作ならではの価値とする。

オリジナルIPで勝つためのタグライン設定

タグライン
ブランドが持つ特徴を簡潔に伝えるための文言。例:「カラダにピース。」(カルピス)

キャッチコピーとの違い
タグラインは商品・ブランドの核心的な価値を打ち出したもの、キャッチコピーはターゲットやキャンペーンに合わせて柔軟に変化するフレーズ。例:「まっしろで、すすめ。」(カルピス)

タグライン「最上の、切なさを。」を設定するまで

Keyファン以外に広げていくにあたって、USP・売りに設定した作品の「切なさ」をお客さんにどう伝えるか。
USPの仮説を立てた上で、広告検証で数値的な確信を得るステップを踏まれたとのこと。複数のタグラインを作成し、Googleサーベイと運用型広告で検証。

マーケチームとしては、切ない物語という売りを考えているが数字を見たときにもしかしたら「RPG」や「ハイクオリティ3D」などが広く受け入れられる可能性があるため、様々なパターンを作成して検証されたそう。結果として「最上の、切なさを。」というタグラインの効果が一番良く、軸となるタグラインが決まったことでマーケティングの方向性が固まり、広告等でこのタグラインをしっかりと押し出す戦略を組まれていきます。

 

USPを伝えるクリエイティブ

映像作品として感情を揺さぶられる完成度を目指して「最上の、切なさを。」を表現することだけを考えて作られたファイナルトレーラー。

 

制作ポイントは前後の落差を意識されたとのこと。前半はアップテンポの中で世界観が分かるカット、後半は日常の先にある真実を見せるようなカットで切なく描いていったそう。

 

USPを伝えるマーケティング(リリース前)

広げる! デジタルマーケティング

PDCAを回しながら効率的に「広く」「深く」「早く」届ける

  • 広く:ターゲットユーザーに確実にリーチする
  • 深く:様々な訴求軸を組み合わせ、多面的な魅力を伝える。クリエイティブでは「最上の、切なさを。」を意識して入れ込むようなものを作っていた
  • 早く:リーチ到達速度も加味したアロケーション。

【セミナー】『ヘブバン』はいかにして好スタートを切ったのか 〜 デジタルマーケティングで大切にしたこと(https://gamebiz.jp/news/352628)

広げる! マスマーケティング

テレビCM×タレントさん

ターゲット層の認知度と好感度が高く「切なさ」を表現してくれる乃木坂46の齋藤飛鳥さんを抜擢されました。クリエイティブではとにかく「切なさ」にこだわったそうで、5秒間は涙を流しているだけのシーンで「切なさ」を表現。リリース後の認知度調査でもテレビCMでの認知が上位に入ったとのこと。

広げる! インフルエンサーマーケティング

リリース直前生放送を多くのフォロワーを抱えるホロライブの不知火フレアさんにミラー配信をしてもらい、多くの人に見てもらうことを狙ったとのこと。
ゲームの面白さを広げる施策として、ゲーム実況を依頼。VTuberファンはゲームとの親和性も高く、認知拡大からの獲得転換が多かったそうです。

深める! ファンマーケティング

ユーザーさんとのコミュニケーションを大事にした生放送。情報の初出しからずっと情報を追いかけてくれているコアファンのユーザーさんに向けた生放送。ファンコミュニティを作ったことで、事前登録初期段階からのユーザーさんは高い継続力を記録しているとのことでした。

生放送後には必ずコーナーごとの切り抜き動画をアップロードされているそう。なんとリリース前までの動画コンテンツ数は79本。1時間やっている生放送をすべて見てもらうのはやはり難しいため、生放送を見れなかった方向けに知りたい情報が見れるように細かく切り抜き動画を作られたそう。

YouTube上に動画コンテンツがいかに多いかもリリース前から狙っていたそうで、リリース前からコンテンツを増やすということは意識して取り組まれたとのこと。

 

リリースからハーフアニバーサリーまで

第2弾CMの考え方

第1弾CMの調査でヘブバンの認知獲得は出来ていたが、ユーザー調査で「ヘブバンに興味があるがやらない理由」が見えてきたそう。

  • 携帯容量の問題 アプリ1つひとつのインストールのハードルが上がっている
  • 友だちやメディア、レビューなどの評価を重要視する特性がある
    →インストールまでの後押しがあればヘブバンを遊んでもらえるのではないか

そこで、著名人やメディアの方からいただいたコメントを交えたCMのクリエイティブを放送。

このCMや様々な施策の結果、GWやリリース100日記念の2段階プロモーションでDAUの積み上げに成功したとのことでした。

第3弾CMの考え方

第2弾でのユーザー調査を踏まえ、一般認知がまだまだ低いと感じられたそう。前回の調査同様、他者からの評価を重要視する姿勢を鑑みて、ターゲット層からの認知が高く、ゲーマーとしても認知されているマヂカルラブリー 野田クリスタルさんを抜擢。ゲーマーの野田さんがヘブバンをプレイしておすすめしていることでインストールの後押しを狙ったそうです。

ハーフアニバーサリー記念施策として、リアルイベントの開催やストーリーの更新・水着イベントの3段階のプロモーションでDAUの積み上げに成功。GW~100日記念の成功を再現することができたとのこと。

さいごに

オリジナルIPゲームの戦いは認知がない状態からスタートするため、マスマーケティングで認知拡大を狙っていく。今回のセッションでは簡単に触れられていたデジタルマーケティングもしっかりと行われており、ファンマーケティングで愛情を深めて長く遊んでもらえるようにするとのこと。このサイクルが上手く回ったからこそ、レッドオーシャンな市場でも売上ランキング1位を複数回獲得するタイトルに成長していったんですね!

 

質疑応答

タグラインの設定はいつ頃に行われましたか。
五十嵐さん
事前登録が始まってこのタイトルは伸ばしていけるという判断が下りました。
そのタイミングで、よりターゲットを広げていくために設定をしました。

 

空き容量が問題になっていると気づいたきっかけは?
小泉さん
キャンペーントレース調査でCMの前後にリサーチを行っており、インストールする理由・しない理由を聞いています。その時に空き容量の話が出てきました。
YouTubeやSNS・街頭広告・リアルイベントなど丁寧に行われているが目新しいものではないですよね?
小泉さん
組み合わせとタイミングだと思っています。
おっしゃる通り何か発明をしたわけではなく、組み合わせて一気にガンっと出すときと、お客さまと蜜にコミュニケーションを取るタイミングを切り分けてサイクルを回しているところが上手くいったかなと思っています。

 

 

ご登壇者

小泉 義英さん

株式会社WFS
マーケティング部 部長

<講演者プロフィール>

2012年4月 グリー株式会社に中途入社しプラットフォーム事業のディレクターを経て、
2014年2月 ネイティブゲームブランドであるWright Flyer Studiosの立ち上げからマーケターとして参画。

現在は株式会社WFSマーケティング部の部長としてマーケティング組織を統括。
『ヘブンバーンズレッド』ではマーケティングプロデューサーとして全体戦略を担当。

<受講者へのメッセージ>

完全国産オリジナルIPゲームのUSP設定、ターゲティング・メッセージング、施策への落とし込みと実行。
『ヘブンバーンズレッド』のマーケティングをどのような思考で練っていったのか時系列にお伝えいたします。

 

五十嵐 美里さん

株式会社WFS
マーケティング部

<講演者プロフィール>

2018年グリー株式会社新卒入社。
入社当時からWright Flyer Studiosのマーケティング部に所属。

『ヘブンバーンズレッド』をプロモーション始動時から担当。
現在はマーケティングアシスタントプロデューサーを務める。

<受講者へのメッセージ>

完全国産オリジナルIP『ヘブンバーンズレッド』のリリース前の準備からリリース直後の施策までを網羅してお伝えいたします。スマホゲームのマーケティングに関わる方々へ一助になれば幸いです。

 

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