CEDEC2022が8月23日~25日に開催されています。
楽屋でまったりで行ったアンケートをもとに、様々なセッションのレポートをお送りいたします。
今回は関係値が浅いメンバーの制作物へのフィードバックについてのセッションをご紹介いたします。
本セッションでお話されるフィードバックの考え方や方法は、どのクリエイターにも関係する内容になっています。
伝わらないのは誰のせい?ゲーム演出フィードバックの仕方
「この演出、思っていたのと違うなぁ」「あれだけ伝えたはずなのに、どうしてこうなっちゃうんだ」
「全然ダメだなこの人 センスないわ」
アニメーターから提出された成果物を前に嘆くあなた。
あなたは自分の視点から相手にフィードバックしていませんか?
フィードバックがただの「ダメ出し」になっていませんか?
今セッションでは、ゲーム演出制作の事例を通じて、改めて自分と相手の視点(価値観)の違いを考えたうえでの本当の「伝え方」をお伝えしていきます。
受講スキル
- ゲーム演出の監修(フィードバック)を担当している方
- ゲーム演出(アニメーション、エフェクトなど)を制作している方
得られる知見
- 互いの価値観、考え方が全く違うことを前提に、「どうすればいいか」を提案することができる
題目
早速、登壇者の池田さんからクイズが出されました。
「まるのうえに ほしをかいてください」
(書いてみました。)
すべて正解です!
どれも正解なので厄介ですよね。
このクイズの答えがみんな一緒だったら、コミュニケーションが楽ちんですが、「やりたいと思っていること」が相手に伝わらないのは誰のせいなのか。それは「自分のせい」と話す池田さん。
互いの視点・価値観・考え方が全く違うことを前提に「どうすればいいか」を提案するのが真のフィードバックとのこと。
※本セッションはお互いの「信頼関係」は浅いが、最低限の「前提条件のすり合わせ」は出来ている状態を想定した内容とのこと。
フィードバックにおける前提条件の確認
演出制作前にすり合わせるべき 3つの前提条件
- 自由度
- 共通認識
- 言葉の定義付け
自由度
制作における難易度に直結する重要な要素。
新規IPは新しい発想や積極的な提案が求められる作家寄りな印象。既存IPであれば自分が持っているアイデンティティやオリジナリティではなく、原作が持っている再現性を重視される傾向が強いとのこと。
作る前に制作側はここを確認しておくといいですよとおっしゃられていました。
共通認識
共通認識を分けると「基礎知識・専門用語・ルール」の3つに分かれる。この3つが理解できていないと、作りたいものがお互いに一致していたとしても意図通りのものが仕上がらず、フィードバックの無限ループに陥りやすいとのこと。
- 基礎知識──演出制作における必要最低限のもの(リテラシー能力)
- 専門用語──開発メンバーが現場で頻繁に使用する用語
- モンストであれば「キラーが乗る」「友情を誘発する」など。ゲームをやり込むことやメンバーが書いた用語集などを事前に確認して勉強する必要がある
- ルール──仕様・コンセプト(約束事)・ベンチマーク(指標)
言葉の定義付け
もっと気持ちよさを意識して頑張ってください。
品質の定義付けにもなるのでしっかり確認しておくことが大切。
フィードバックの伝え方
優れたフィードバックに必要不可欠な2つの要素
- 事実
- 提案
客観的な事実と主観的な提案を分けて、事実を先に相手に伝えることが大切。
フィードバックの順番は「事実→提案」。伝えた内容が正論だったとしても、一方的に提案を持ちかけると、相手が身構えてしまう。
提案の際に覚えてほしい 3つのこと
- 敬意を払う
- 一気にすべてを伝えない
- 曖昧さを避ける
敬意を払う
- 相手もプロ。自分と対等な立場であることを忘れないこと
- 相手にも自分より優れた部分が必ずある
- 決してマウントを取らないこと
一気にすべてを伝えない
- 全体から部分へと伝えること
- 3項目以内に抑えること
一気に伝えると、相手のモチベーションも一気に低下する可能性が大きいため。
コンセプトは尖らせつつシンプルに、制作者に自由にやらせた方がお互い楽になることがあると思います。
曖昧さを避ける
- 具体的な数値を交えて伝える
- 形容詞(強い・激しい・美しいなどの抽象表現)を控える
- オノマトペ(擬音を使った表現)も控える
以上、フィードバックの前提条件の確認・伝え方を通して、真のフィードバックについてお話いただきました。
フィードバックが多くなる場合はコンセプトがずれていたり、そこが伝わっていない可能性があるなど、フィードバックする側が一歩下がって振り返らないといけないですね。
真のフィードバック
互いの視点・価値観・考え方が全く違うことを前提に「どうすればいいか」を提案
ご登壇者
池田 博幸さん
株式会社ミクシィ
VFXチーム エフェクトアーティスト<講演者プロフィール>
1973年福島県生まれ。
ゲーム業界歴約30年。専門分野はリアルタイム処理のエフェクトデザイン。
CEDEC登壇は今回で5回目。スクウェア(現:スクウェア・エニックス)、サイバーコネクトツー、ポケラボなどを経て現在、
株式会社ミクシィ モンスト事業本部 ゲーム運営部 UI・UXデザイングループ VFXチーム所属。関わった主な作品
【家庭用ゲーム】
ファイナルファンタジーVII/FF7(1997)
パラサイト・イヴ(1998)
ファイナルファンタジーIX/FF9(2000)
ポケモンバトルレボリューション(2006)
アスラズラース(2012)他多数【スマホアプリ】
クロスサマナー(2014)
SINoALICE-シノアリス-(2017)
アサルトリリィ Last Bullet(2021)
モンスターストライク(2021)他多数CEDECにおける実績
【CEDEC2017】SPARKGEARを用いたスマートフォンでのハイクオリティなVFX開発事例とハイエンド向け新機能の紹介(三社合同セッションにて登壇)
【CEDEC2018】進化し続けるSINoALICE-シノアリス-(ショートセッションにて登壇)
【CEDEC2019】こっそり教えます!エフェクトデザインのイ・ロ・ハ(レギュラーセッションにて登壇)
【CEDEC2020】CEDEC AWARDSノミネーション委員会ビジュアルアーツ部門審査員として参加
【CEDEC2021】リテイクゼロを目指して ゲームエフェクトをスムーズに制作する入門指南!(ショートセッションにて登壇)<受講者へのメッセージ>
相手に「どうリテイク(やり直し)を伝えたら良いか」、また「どうすれば意図通りのものを作ってくれるのか」お悩みの演出監修者の方、結構いらっしゃるのではないでしょうか?
このセッションは、ゲーム演出の監修側と制作側との間で起きがちなフィードバックの問題を解決することに焦点を合わせております。
ちょっとしたクイズや、フィードバックの実例も交えており、実際の業務で使える実用的な内容になるように努めました。
皆様のご来場お待ちしております。
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ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。
※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)
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