プランナーのスキルセットって? ~新人研修編~|CEDEC2022レポ

CEDEC2022が8月23日~25日に開催されています。
楽屋でまったりで行ったアンケートをもとに、様々なセッションのレポートをお送りいたします。
今回はゲームプランナーの新人研修についてのセッションをご紹介いたします。ご登壇者の知久さんは社内のカリキュラムを見直し、将来的にはゲーム業界全体で運用できるものにしたいとお話していました。

ゲームプランナーの教育に関心がある方必見です!

楽しい!覚える!使える! ~体系的で実践的なゲームプランナー新人研修を目指して~

セッション内容

エンジニアやアーティストと比べると、ゲームプランナーの職能には共通言語や体系的な知見が少なく、プランナーの新人研修において何を教えるべきなのか曖昧なところがあります。

ついつい教育担当者の経験に依存した内容が多くなってしまったり、企画書・仕様書・QAなどの実習作業がメインになったりなど、多くのゲーム会社が新人研修カリキュラムの作成に苦労されているのではないでしょうか。

本セッションでは、弊社の技術開発部門が2019年より取り組んでいる「ゲームプランナー新人研修のカリキュラム改革」の事例をご紹介し、「体系的で実践的なプランナー研修」を実現するための知見を共有いたします。

また、研修カリキュラムを作成する過程で行った「ゲームプランニングやゲームデザインに必要なスキルセットの整理・体系化」についても、いくつかの成果を共有できればと思います。

受講スキル

  1. 新卒ゲームプランナーを採用しているゲーム開発会社の方
  2. ゲーム開発者およびゲームプランナーの教育に関心がある方
  3. ゲームプランナーのスキルの言語化に関心がある方

得られる知見

  1. ゲーム開発者およびゲームプランナーの新人研修や若手育成の取り組み事例、手法、フレームワーク
  2. ゲームプランニング業に求められる職能について、再定義や体系化の成果
  3. アカデミック分野の知見をゲーム開発の現場に活用する事例

研修設計のきっかけ

プランナーの研修・教育って難しい?
プログラマーやアーティストとくらべて求められるスキルセットが不明瞭で、業務に関する共通言語が少ないように感じられるため、社内で新人育成のために何をどう教えるべきなのかイチから考える必要があったとのこと。知久さんは2020年度から若手メンターとして新人研修に関わっていくことなりますが、これまでに会社で使われていたカリキュラムを見直すところから始めたそうです。

その際に参考にされた書籍の紹介

新人にゲームプランナーとしての継続的な「行動/意識の変容」を促すこと!】を研修の目的とされました。ゲームプランナーとしてどうあるべきかを知り、その場限りではなく将来の仕事にも好影響を与え、学んだ新人たちに実際に変化が起きることを目指したそうです。

 

体系的で実践的なゲームプランナーのスキルセット整理

施策①「面白さから体験価値をデザインする」を中心に捉えた知識の積み重ね!

なぜ座学の内容を変えたのか?
一般的に仕事のスキルはソフトスキル(対人感性・人間性)とハードスキル(専門的な知識・技術)に分かれるといわれています。ソフトスキルとはコミュニケーションや問題解決などプランナー以外にも必要になるスキルのことで、ビジネス研修や現場の経験から学ぶのが良いだろうと知久さんは考えられたそう。
新人がハードスキルを研修で学ぶことでスタートダッシュを決めることができ、ここで何を学ぶかによって今後のプランナー生活における吸収効率や解像度が変わってくるはずだ、と思われたそうです。そこで、座学カリキュラムではハードスキルに着目していきたいと考えられました。
ハードスキルの中でも最重要は「ゲームデザイン」。このゲームデザインを体系的に教えたいと知久さんは接続性・積み重ね・網羅性を工夫していきます。

ゲームデザインの分解

特に大事なのは「体験価値」だと知久さんは考えられているそう。

 

実際の研修ではどんなスケジュールで行われたの?
日程内容
1日目コアメカニクス編 ~「ゲーム」はなぜ面白い?~

目標:ゲームルールの面白さを言語化できるようにする

2日目レベルデザイン編 ~空間で面白さを広げる~

目標:空間上のほか要素との組み合わせで、メカニクスの面白さを展開・拡張する

3日目ナラティブ編 ~物語で面白さを広げる~

目標:伝え方・語り方によって、メカニクスの面白さを展開・拡張する

4日目エンゲージ・ユーザビリティ編 ~「ハマる」「わかりやすい」体験をつくる~

目標:メカニクスを続けたいと思わせる。プレイヤーに正しくわかりやすく伝える

5日目体験価値・コンセプト編 ~「欲しい!」「遊びたい!」を作る~

目標:どんなプレイヤーにどんな体験を与えたいのか設定し、目標を立てる

施策②プランナーのスキルセット体系地図をつくった!

プランナーの専門知識・技術を分解してみるとどうなるのか。知久さんは大きく2つに分かれると考えられました。

  1.  = やるべきこと、責任領域
    • 企画立案
    • 仕様の設計・発注
    • 実装確認
    • データ調整
    • パート運営
  2. 能 = やれるとすごいこと
    • 4つの能力
      • 理論知識……基礎的な理論・フレームワーク
      • 応用知識……作品事例・開発事例・現場での経験
      • 技術・テクニック……設計(考える・組み立てる)・構築(つくる・イジる)・伝達(書く・伝える)
      • ディレクション……クオリティ(審美眼)・ビジョン(目的志向)
    • 5つの分野
      • ゲームデザイン……コンセプト・メカニクス・レベルデザイン・UIなど
      • プロダクション……予算・工数・PM・QA
      • 関連工学……エンジニアリング・ビジュアルアーツ・サウンドなど
      • ツール……MS Office・ゲームエンジン・スクリプトなど
      • ビジネス……産業構造・法律・マーケティング・プロモーションなど

理論知識は座学で教えて友好だが、他の能力は一朝一夕ではない! とのこと。カリキュラムでは理論知識を中心に設計していかれたそう。スキルセットを整理し、まとめていくと短期間の座学で効果が高そうなものに赤い丸をつけると。

現在の立ち位置を知り、成長の方向性を考えるための地図

知久さんは職能5分野をさらに分解され「知識の地図」を作成されました。

ゲームデザイナー座学研修で教えるべきスキルセットの体系地図は上記画像の通りで、中央の青い領域「ツール」の箇所はほかの領域のスキルを表現するために必須となるものに絞ったそうです。

この図でどの分野が得意でどの分野をあまり知らないのかというのが見てわかるようになっていますね。知久さんは新人研修だけでなくすべてのゲームプランナーにとって有用な基本スキルセットの地図になればとのこと。
研修では新人にどこを伸ばしてほしいのか可視化・選択できる地図として活用されていきます。

 

今後の展望

持続可能な社内研修としてさらにブラッシュアップが必要だと考えられているそう。カバーしきれなかったスキル領域をカリキュラムに組み込んだり、資料を充実させて講義の効率化を図っていきたいとのこと。

さらに、業界全体で運用できるように体系化や資料の充実もしていきたいそうです。「研修」をテーマにした勉強会の開催やプランナースキルの書籍化などをいつか出来たらと考えられているそうでした。

知久さんからのお知らせ

 

質問

研修の1回あたりの時間はどれくらいでしょうか?
知久さん
基本は180分構成で、休憩を2回ほど挟んでいました。

 

配属後の教育などを意識したり、配属チームなどからの意見をフィードバックして研修を設計した点などございますでしょうか?
知久さん
配属先の教育担当者の負担をなるべく下げるため、開発環境やドキュメントのお作法なども、なるべく網羅・体系化を心がけています。
現場からの声を受け取る機会もありますが、そのまま場当たり的な知識を座学に盛り込むだけではなく、その知識の必要性や本質から楽しんで理解してもらえるように、研修に組み込む際は慎重に設計し直します!
常業務を抱えながらやっていると、どうしても新人教育の準備に時間を割けない悩みがつきまとってしまいます。 御社ではどのように対応されましたか。 また、知久さん以外にも設計メンバーはいらっしゃいますでしょうか。
知久さん
これは私も同じ悩みを抱えておりました。正直最初の設計段階では、プロジェクト側に迷惑をかけながら時間を捻出するしかなく、できるだけテキストなどの資料の完成度を上げて次代に活かすことを意識しています。また、できるだけ既存のスライドや動画をフル活用して、自前の資料作成を極力抑えました!
設計は私一人でしたが、属人化しているのはよくないので、テキストなどを充実させて持続可能な体制にする必要は感じています。

参加者の感想

ゲームデザインってどんなことをするの? というところが細かく分類されていて、新人の頃に知ることができたら、それ以降の考え方や世の中のゲームの見方が今よりももっと変わっていたかも…なんて思いました。細かくてスゴイ。

ご登壇者

知久 温

株式会社トイロジック
開発部 企画課 プランナー 技術委員会

<講演者プロフィール>

【略歴】
・2015年、パブリッシャー新卒入社。
・2016年より株式会社トイロジックに中途入社。
・レベルデザインチーフ、ルールメカニクス設計、アクションデザイン、PM、オンラインゲーム運営などを経験。
・技術研究部門に所属し、ゲームプランニングに関するナレッジ集積や新人研修カリキュラム作成などを担当。
・CEDEC2020にて『PERACON』殿堂入り。2021年には同審査員。

【関わった主なタイトル】
・ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて(3DS)
・魂斗羅 ローグ コープス

<受講者へのメッセージ>

ゲームプランナーの専門技能って何だろう?
ゲームプランナーを教育するにはどうしたら?
そういった疑問に少しでもお答えできれば幸いです。

ぜひ皆さんの事例や経験もお聞かせください。
一緒にゲームプランニング業界を盛り上げていきましょう!

 

株式会社 トイロジック

・受託開発+自社開発
・コンシューマー、PC向けプロジェクトがメイン
・社員 146名(毎年10人弱の新卒採用)
https://www.toylogic.co.jp/

 

 

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※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)

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