本記事はクリエイター向けUXを学び合うコミュニティ「ものづくり UX Lab」に掲載しているものをまとめた記事となります。UXについての意見交換などは⇩のコミュニティで!
こんにちは。ものづくりUX Lab を主催する株式会社B.C.Membersの西田です。
普段は企業や業界の方々にUX設計のレクチャーを行ったり協力をしたり、ものづくりUX Labや、ものづくりUX SCHOOLでUX設計の講師をしたりしています。
9月6日にモンスターハンターワールド:アイスボーンが発売されましたね!
私はジンオウガのファンなので、是非是非やりたいと思ってます!
元々モンスターハンターワールドはリリース直後からプレイしていて、
初プレイ時は過去作と比べて格段に面白くなってる!と驚いておりました。
今回は、モンスターハンターワールドが何故こんなにも面白いのかを、
UXの観点からできる限りわかりやすく紐解いてみたいと思います!
ゲームクリエイターを目指す方などをはじめ、クリエイティブに取り組む方々に少しでも役立てば幸いです!
記事内でのUXという言葉の意味は、「ものづくりUX Lab」での定義を元に使っております。
ユーザーが体験し、認識したこと。その経験そのもの。
1.ゲームの理想達成に必要のないストレスは極力排除された
本作では、ユーザーの「アイテム採集」「モンスターを探すという行動」のストレスが、過去作に比べ大幅に軽減され、ゲームの本質的な面白さの体験をさらに追求した内容になっております。
私自身、過去作はPSPのモンスターハンターポータブル2G(以下:MHP2G)からプレイしています。
MHP2Gではずっと弓を使っていまして、クシャルダオラがすごく強く感じたことを覚えています(笑)
①モンスターを倒す
↓
②素材を剥ぎ取る
↓
③植物や実、鉱石等を集める
↓
④装備を作る
↓
⑤強くなってまた新しいモンスターを倒す
↓
①〜⑤繰り返し
これは2Gどころか、恐らく初代からあるモンハンユーザーには骨の髄まで染み付いているロードマップだと思います。
この辺は、最新作のモンスターハンターワールド(以下:MHW)も変わらないですよね。
モンスターハンターのヒット後、たくさんの ”狩りゲー” と言われるゲームが生まれましたが、そのゲームはほぼ全てこのユーザーロードマップを踏襲しています。
つまり、
モンスターハンターは、”狩りゲー” というゲーム業界のひとつのUXを確立させたんですね! 流石モンハン! 流石CAPCOM! (笑)
最新作のMHWも、もちろんこのユーザーロードマップを踏襲していると先に述べました。しかしながら、実はかなり大幅な変更が加えられている箇所も多いんです。
植物や実、鉱石などを集める行動
「アイテムのあるポイントに近づいて、〇ボタンでアイテムを探して回収する、というところは同じじゃないか」とお思いの方もいるかもしれません。
実際、操作としてはそのとおりなのですが、実は変更が加わっているのは「アイテムを集めるのにかかる時間」です。
前作ダブルクロスまでは、〇ボタンで探し始めてから、実際のアイテム獲得までには少しの時間がありました。これは「アイテムを採集している」というリアル感を表現するための時間ではないかと私は考えています。
しかしながら、今作ではそれがほぼなくなっています。
この変更は、一体どのような意図で行われたのでしょうか。
ユーザーから「アイテム採集に時間が掛かるのでストレスを感じる」という意見は勿論上がってきていたとは思います。
ただし、現実世界に照らし合わせて考えた場合、植物とか実とか鉱石を採集するときはもちろん、まず探すところからですよね。
だからこそ、アイテム採集のストレスはダブルクロスの時代までずっと「あえて」残されてきたと感じます。
多少のストレスはあれど、シリーズを通してのユーザーも多数いるモンハンでの狩猟生活では、これが当たり前のこと、と受け入れていました。
しかし、今作MHWではそれが無くなったのです。
これは、様々なUX設計に関わってきた身としては、開発時のことを想定すると、UX設計として大変難しい判断だったのではないかと思います!
これまで長い間受け入れられてきた「アイテム採集のシステム」を、わざわざ変えたのです。
それこそ、多数にユーザーから「やっぱり昔の、ガサガサ探して見つけるっていうひと手間がいいんじゃないか」と異論を唱えられるであろう可能性も危惧していたかと思います。
ではなぜ、変えたのか?
突然ですが、みなさん
「モンスターハンターというゲームは一言でいうとどんなゲーム?」
と聞かれたら、どう答えますか?
そうなんですよ、モンスターを狩るゲームなんですよ、モンハンは!
当たり前ですが(笑)
決して、「採集するゲーム」じゃないんです!
ものすごくリアルに作られていることもモンハンの魅力ですが、モンハンの理想って結局のところ「怪物を狩る”体験”をしてもらう」ってことなんだと思います。
そうなると、この理想に強い関わりのない採集部分は、簡略化してストレス低減、最低限の体験部分だけ残しておけば問題はないってことなんですよね。
私、先ほど、「やっぱり昔の、ガサガサ探して見つけるっていうひと手間がいいんじゃないか」と言ったと思うんですが、実際はそんなこと言ってる人は少ないんじゃないかなぁと感じます。少なくとも私の周りでは聞いたことがないです(笑)
要するに、「怪物を狩る体験をしてもらう」という理想は、ユーザーも認識が同じだったということなんですよね。
面白いのは、こんなに長く受け入れられていたUXも、理想を元にさらに絞って考えてみると、まだまだ追求していく余地があるという素晴らしい例ではないかと思います。
モンスターを探す行動
ダブルクロスまでは、ペイントボールを投げてモンスターをマーキングすると、マップ上に居場所が表示されてそれを追っていく、という流れでした。
しかしMHWでは、導蟲という光っている虫がモンスターの場所まで案内してくれます。
プレイヤーからすれば、単に便利になっただけのように見えますが、侮るなかれ!
ここもゲームのUX設計的には非常に難しい判断なんです!
ペイントボールを投げてモンスターをマーキングすると、マップ上に居場所が表示されてそれを追っていく、というこの流れも、モンハンユーザーさんたちには長年受け入れられてきたUXなんです。
ここに関しては、私正直これまでの作品で不満を抱えたことはないんです。
なんなら、ペイントボールを投げて相手に当てるという行為、私好きでした(笑)
ちょうどペイントボールの効果が切れたころに逃げそうになったら、先回りしてペイントボールをアイテム枠に用意しておいて、動きを読んでいたかのように投げる。
仲間から「よくやった!」と言ってもらって気持ちいい!とまぁ、私と同じ気持ちの方がどれだけいるかはわかりませんが(笑)
しかしながら、本作ではゲームシステムとして長い間ユーザーに受け入れられてきたUXを、わざわざ変えているんですね。
ではなぜ、いまさら、変えたのでしょうか?(2回目)
この話、この後も何度も出てくるので飽きてくると思うんですが、モンハンって「モンスターを狩るゲーム」なんですよ。
モンスターをマーキングするゲームじゃないんです(笑)
つまり、理想である「怪物を狩る”体験”」に立ち返れば、わざわざペイントボールを投げる必要ってある?ないんじゃない?って話なんです。
この変更についても「やっぱり昔の(以下略」っていうよくある古参のアレがあるのかなと思うでしょうが、私は殆ど聞いたことが無いです。
つまり、殆どの方が新しいUXを全く抵抗感なく受け入れているということなのではないかと。
この2点、ちゃんと理想を見据えてからしっかりUX設計していかないとできない変更だと思います。
CAPCOMさんは凄い優秀なUXデザイン室がありますからね。
流石モンハン!流石CAPCOMさん!
(※この記事はCAPCOMさんとは何の関係も御座いません笑)
次回は『オープンワールドで”追いかけっこ”をするリアル感』
つづく…!
本記事はクリエイター向けUXを学び合うコミュニティ「ものづくり UX Lab」に掲載しているものをまとめた記事となります。UXについての意見交換などは⇩のコミュニティで! こんにちは。ものづくりUX Lab を主催する株式会社[…]