専門学校の先生に聞く、ゲーム業界に向く生徒、向かない生徒と面接の心得。

 

ゲーム専門学校の先生にインタビューを行う本企画ですが、今回はカプコンでのゲーム開発経験、面接官、そして学校教員と様々な経験をした手塚さんにお話しをお聞きしました。

ゲーム業界に向いている学生はどういう学生か、また自分が向いているかをどう判断すればよいかなどをお聞きし、面接に臨む考え方についても、手塚さんの経験を交えてお聞きしました。ぜひご覧ください。

 


 

――今日はよろしくお願いします。最初に、自己紹介をお願いします。

手塚と申します。1990年にカプコンに入社して、最初はアーケードゲームのプランナーをしていました。入社した年1990年は『ストⅡ』が出た年で、開発室では西谷さん(西谷亮氏:『ストリートファイターⅡ』の開発に従事)が隣にいました。
アーケードゲームでは、『マーヴル・スーパーヒーローズ』を手掛けたりした後、iモードのゲーム開発に進みました。当時は文字しか使えないほどの容量だったけど、ガジェット好きなこともあってそちら専門になり、その流れにスマホゲーム開発へと進んでいきました。

 

――アーケードとコンシューマーもスマホも経験があるわけですね。

実は、アーケードゲームって、お店に置いてあって誰にも遊べて、これはスマホのゲームにも通じるものがあります。アーケードゲームはどんどんマニアックになっていきましたが、私としては多くの人が広く遊ぶタイプのゲームを作っていきたいというのがあって、2014年にカプコンを退社して、ムゲンコンボを立ち上げてスマホゲームの道を選びました。

 

――アーケードは難易度が上がって、敷居が高くなるジャンルがあったように思いますね。

実際、ロケテスト(アーケードゲームを店舗においてユーザーがプレイして反応を見ること)を見ていると、すごく上手い人は2割、普通の人が8割くらいの印象がありました。でも開発していると自分達が上手くなっていくので「簡単すぎてつまらないんじゃないか?」とどんどん難しくしてしまうんですよ。初めてプレイする人のことを考えると難しくしたらダメなのに。

 

――ムゲンコンボとして独立後、学校で教師をやりはじめたのはいつ頃なのでしょう

この学校とは別の学校で2年ほど教員をつとめてから、こちらの学校にきました。3年生の授業を受け持っています。ここは大学なんですけど、担任制で10人くらい学生を受け持っています。ホームルームもしたり、企画志望の学生と話をしたり、生活指導もしたりしています。僕の授業では企業から「課題」を出していただき、チームに分かれてその「課題」を解決するコンテンツを作ることになっているんです。

 

――それは、ゲーミフィケーションのようなものですか

一般企業でしたら、ゲーミフィケーションでもあるけど、ゲーム会社からの依頼であればゲームになるし、動画の場合もあるのでゲーム以外のデジタルコンテンツになる可能性もあります。

 

――最近はゲームがほかの目的に使われることもありますからね。担任もされているとのことで、いろいろな学生に接するかと思いますが、ゲーム業界に向く学生についてお聞きしたいと思います。

まず、モノづくりが好きでないと、仕事が続かないと思います。これって、会社入ってから気づくと遅いので、中高生くらいから熱心にゲームを作って、面白いと思う子が向いていると思います。これは、その子の内なるモチベーションなので指導でどうにかなるものではないんですよね。

 

――たしかに。ゲーム開発は創意工夫の繰り返しですからね。とはいえ、中高生でゲーム開発はなかなか難易度が高いのでは?

そうですね。なのでまずは、ものづくりのハードルを下げてみてほしいですね。
壮大なゲームを作り上げるのは初めてだとかなり難しいので、昔のゲームを真似してみるとか、例えばプラモデルとかレゴを組み立てるとか、とにかく何でもいいから作ってみる。それも難しければ映画やアニメを観るだけでなくレビューをtwitterやブログに書いてみる、とか。

私も学校の説明会で話をしますがモノづくりをまだやっていない子は、モノづくりを面白いと思う体験や、モノを作る喜びの原体験をしてほしいですね。モノづくりが難しい場合は、映画や読書のような「人の作ったものを消費する」という趣味だけでなく、それを感想など「自分の創作物」にしてみることをお勧めします。

 

――ゲーム以外でもいいのですね。

ゲームクリエイターって意外と休日もクリエイティブなことをやっていて、プラモデル作ったり写真だったり、料理だったり、釣りだったり(ゲーム業界は釣りをしている人も多い)、いろいろしていますね。

 

――たしかに、皆さんいろいろ体験をして、新しい発見をしているように思います。手塚さんのモノづくりの原体験を教えてください。

高校生の時に映画を撮ったんですけど、それが原体験になっていて、大学では映画研究部で四六時中映画を撮っていて、撮影も編集も楽しかったですね。映像に効果音を入れると全然印象が変わるとか、試行錯誤を楽しめるところが面白かったんだと思います。

 

――試行錯誤を楽しむところはゲームに通じますね。たしかにそういう経験がある学生の方が経験のない学生よりいいでしょうね。

ゲームは娯楽なんですけど、娯楽って消費と創造の二つがあると思っていて、「ピタゴラスイッチ」とか例にすると、消費する人にとっては動画の1分ですが、作る人にとっては企画・組み立て・撮影にはものすごい時間がかかるわけです。映像でもゲームでも、想像する側の視点に立つのはゲームクリエイターに重要ですね。

 

――創造する側に立ったときに、ゲーム業界を志望する子はどこかでチャレンジして、うまく行かず挫折した子もいると思うのですが。

そういったときは、ハードルを下げるのは一つの方法かなと。創造を実際にやりはじめるとすごく時間がかかったりして挫折してしまうけど、もっと簡単なものにチャレンジしてみるのもいいかもしれないですね。消費している時は、超一流のモノを見てるけど実際に作るのはすごく大変なので。

 

――そこに挑むにはまだ、レベル上げが足りない。みたいなことかもしれないですね。そう考えると、いろいろなモノづくりにチャレンジしてレベル上げをするのが大事ですね。

学校の課題で作ったモノと自分で作ったモノは違って、課題では「言われて作ったもの」ができるんですけど、採用する側はそこを見てないんですよ。「言われたらやる」人では頭打ちになってしまう。自分で考えて作ったものが大事ですね。

来年プランナーコースに来る学生たちに言うんですが、男の子のなりたい職業だと、スポーツ選手に並んでゲームクリエイターが上がります。でも、例えば野球選手って、小中高と野球をやり続けて、甲子園に出たり、大学や社会人でも野球をやり続けるわけですよ。

 

――たしかに。朝から素振りをしたり、夜もボールを蹴ったり努力をしています。

もちろんスポーツ選手と年収などは違いますが、同じ人気の職業という点で考えると、ゲームクリエイターもクリエイティブなことを学生時代にどれだけやってたかで違いが出るわけです。
だから学校は最長でもたかが四年ですからその間は全力でクリエイティブに取り組んでもらいたいです。何となく授業を受けているだけでは実力はつきません。
学校はジムに似てて、ジムのカードを持っていても意味がなくて、ジムに来て鍛錬しないと結果が出ないですよね。

 

――ジムのたとえはわたしにも刺さりますね……モノづくりについて言うと、ハードルを下げて、自分が作ったものを友達に見せるのはいいきっかけになるかもしれないですね。

人に見せて反応が返ってくるのがいいと思うんですよ。企画を誤解している人はアイデアを思いつく仕事だと思っているんですが、手を動かして実際に作る、そしてそれを誰かに見てもらってその反応を元にさらに修正するのが大事な業務です。学校の授業は誰でも理解できるような平均的な速度で進行しますが、やる気のある学生はどんどん自分で作って人に見せて修正してというのを自主的にやってほしいですね。
夢をかなえたい人が、情報不足で夢をかなえられないのはすごくかわいそうだと思っていて、本当にやりたい人には何を求められているのかを伝えています。ゲーム会社もクリエイティブ(制作物)だけを見たいのではなくクリエイティビティ(創造力そのもの)を見たいんですよね。

 

――どういう風に考えて、どう作っていったのかということですね。最近は、本でも動画でも学ぶことができるのですが、企画書の書き方は動画でも人気があるように思います。

就活では、企画書の提出を求められますが、実務では新人が「企画書」を出すことってそんなにないんですよ。
じゃあ、何を見ているのかというと、企画がロジカルにできているかどうかを見ているんです。読む人の立場に立っているかを考えているのか。どこを見てほしいのかを伝えられているのかを見ています。

カプコンの時に面接も担当しましたが、面接前なので、企画書の本数もすごく多いんですが、その中でどう読まれるのか、どう目立つのが大事ですね。ただ面接で目立とうと奇抜な格好でくる人もいたりしますが面接はパフォーマンスをする場じゃないので、そんなことをするなら企画書を充実させたり自分が作ったゲームを出したほうがいいですね。

 

――手塚さんは就職活動の時、何か提出されたのでしょうか?

就活の時に某社のロケの俯瞰図を提出しました。どういうゲームが何台置いてあって、奥に麻雀ゲームがあって常連が入っていくようになっているんじゃないかとか、50円の台を置いているコーナーがある(当時のアーケードは1プレイ100円が多い)かなどを分析したレポートもつけて。それから、大学時代の自分の映画も出したりしました。

 

――アーケードが主流だった当時ですと、それは面接官も興味を引くでしょうね。さっきの企画書の本数が多いことですが、これはゲームのリリースにも通じるものがありますね。販売されるゲームの本数が多いのでその中でどうやって気づいてもらうのかが大事です。

アーケードだと、筐体の横に貼ってあるインストカードだけでゲーム内容を説明しないといけなくて、基本読まれないんですけど、2回目にインストカードを読むので、そこを想定して書いていましたね。

 

――アーケードの場合まずはプレイしてみて、もっとやろうと思ってから読むことが多いですね。そういうユーザーの立場に立って書いているわけですね。すこし、話は変わりますが、ゲーム開発の現場入るとやる気のある学生は伸びるとよく言いますね。

授業をしっかり受けている学生から「今の自分には××というスキルがないから心配です。」っていう相談があるけど、授業を受けている子でやる気がある子は開発現場でいくらでも吸収できると思うんですよ。

やる気があって頑張る子には資格などのスキルよりも一本でも多くゲームを作るって体験をしてもらいたいですね。

 

――ありがとうございました。

 


手塚さんはカプコンで開発にも従事し、面接官もされていましたが、皆さんのお役に立つヒントも多かったのではないでしょうか。もし、進路を考えている高校生の皆さんが読んでおられたら、ぜひ参考にしてほしい内容でした。また、春から専門学校に進む皆さんの参考になればうれしいです。

今後も、先生にインタビューをしていきますのでよろしくお願いします。

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