『8月32日の水族館』インタビュー
今回は、ヴァイスの今治さんに『8月32日の水族館』についてお聞きしました。会社立ち上げの由来や、新入社員の開発への努力の様子などをお聞きできました。ぜひご覧ください。
『8月32日の水族館』について
「8月32日の水族館」は、8番出口にインスパイアされた短編ウォーキングシミュレーターです。プレイヤーは不気味な水族館を探索し、出口を目指します。
異変があれば引き返し、なければ進んでください。
水槽のクラゲを8匹にすることができるとゲームクリアです。
プレイ時間: 15分~60分
動画配信ガイドライン
個人、法人問わず、許諾なしで配信が可能です。収益化は動画配信サイトが提供する機能を用いた場合のみ可能です。
このゲームの動画を配信したことによるいかなる損害に対しましても一切責任を負いません。
※本ガイドラインの内容は予告なく変更する場合があります。
操作方法
【マウス&キーボード】移動:W,A,S,Dキー
走る:Shiftキー
カメラ操作:マウス移動
【ゲームパッド】
移動:Lスティック
走る:Lスティック押し込み or Lトリガー
カメラ操作:Rスティック
オプション設定
オプションメニューでは、以下の設定が可能です。言語: 日本語 / English
ウィンドウモード: フルスクリーン / ウィンドウ
フレームレート上限: 最大60まで調整可能
音量: 0.0から1.0まで調整可能
カメラ感度: 0.0から1.0まで調整可能
■開発チームについて
──チームの紹介をお願いします。
株式会社ヴァイスの新入社員が中心に構成されているチームです。ゲームをクリアした時に出てくるスタッフロールにはもっと詳しく書かれています。
──チームは何人くらいですか。
メインスタッフは6人です。あとは弊社内のほとんどのスタッフが微に入り細に入りなんらかの形で協力しています。
──また、どのようにして集まったのでしょうか。
そもそもは新人研修の次の課題として設定されました。
──ゲーム業界の経験はありますか?
チームメンバーについてはディレクター以外は全員新人です。もちろん、弊社はゲームの開発会社ですので、スタッフは全員ゲーム業界の人間です。
■開発について
──『8月32日の水族館』開発のきっかけについておしえてください。
Unreal Engine5での研究・開発を行なっていくにあたり、新人には基本的なところを理解してもらうという目的で、開発がスタートしました。
「『Skyrim』のような壮大なゲームを作りたい」と言う意見もありましたが、8月くらいまでを目処に完成させると指示していましたので、「それよりも『8番出口』のようなコンパクトなゲームを短期間で1つ作ってみよう」という話になったと記憶しています。また、技術的には難しい水や光の幻想的な表現にチャレンジしたいという意向があり、水族館をモチーフにすることにいたしました。
ちなみに、8月32日は終わらない夏休みという想いで立ち上げた弊社にとって思い入れの強い日付(8月32日は流石に無理だが、株式会社ヴァイスの創立記念日は8月31日)で、『8番出口』の8にもかかっており、今回のゲームのテーマとしてもぴったりでしたので、タイトル名を『8月32日の水族館』といたしました。
──開発で苦労されたところは?
チームメンバーの大半にとって、商品としてのクォリティを求められること自体が初めてでしたので、何から何まで大変だったといいます。少なくとも開発が軌道に乗るまでは、僕も根本的なところからダメ出しを入れました。
例えば、企画では、異変の案を100個出してほしいというお決まりのフリに悩まされたみたいです。それでも、それぞれの異変には凝った設定があるそうで、ゲーム内には登場こそしませんがよりミステリアスな雰囲気を楽しめるようにと力を入れたとのことです。
また、開発においてはBlueprintによるビジュアルスクリプティングを採用したことでスピード感はありましたが、事前に堅牢な設計を行ったりメンバー同士で構造を理解しあったりすることが難しかったとのことで、今でもソースコードの最適化やリファクタリングを行いたい気持ちが残っているようです。
さらに、高クォリティなCGモデルを多用しているにも関わらず、それを考慮せずに作ってしまった結果、ミドルクラスのゲーミングPCでも処理が重くなってしまい、光の表現やCGモデルの最適化の際には苦労したといいます。それから「異変リスト」に登録される条件についてもどこまでのゲームプレイを「遭遇した」とするのかの境目を判断できず、ディレクターと日々相談しつつ進めたそうです。
販売サイトの作成にも苦労していて、特にヒーロー画像に関しては実際のゲーム画面を撮影して制作したため、クジラが良い画角で映るように3日ぐらい撮り直しなどを行って、渾身の作品になるように仕上げていきました。ヒーロー画像はTシャツにもしています。
カプセル画像もコントラストを調整するなどしてかなり力を入れているので、その雰囲気を楽しんでほしいとのことです。また、タイトルロゴに気づいて欲しいちょっとした細工が入ってます。
そういえば、このインタビューに返答するにあたり、チームメンバーに話を聞いていたところ、僕への苦情が上がってきました。開発前に実際に水族館に行く企画が上がっていたのに結局行けなかったと言う話なのですが……っていうか、この辺は遠慮して具体的に企画を進めていかなかったことが問題なのではないかと思っています……いえ、まあ、それではあまりに大人気ありませんので、事後ではありますが、水族館には日を改めて行くようにすることにしようと思います。
──完成までどのくらいの期間を想定していましたか?
5月ごろから企画を固めはじめ、6月から開発をスタートしましたので、8月リリースに向けておよそ2ヵ月~3ヵ月で想定していました。
──実際にかかった期間はどうでしょう?
8月末に早期アクセスバージョンとしてリリースしましたが、開発チーム側で実現したい機能を盛り込んで正式リリースを迎えるまでに10月末までおよそ5か月かかりました。想定よりは少し夢が膨らんでしまったのかなと振り返っています。
──ゲームエンジンは使っていますか?
Unreal Engine 5.3を使っています。
■ゲームについて
──本作のおすすめのポイントを教えてください。
『8番出口』ではリミナルスペース風ホラーも含めての雰囲気が強いですが、8月32日の水族館ではホラー要素をなくし、リラックスできる雰囲気を重視しましたので、何時間でも安心して入り浸ってもらえたら嬉しいです。また、トンネル水槽のエリアはかなりこだわって作ってますので、画質設定を高くできる人は設定を高くしてみることをお勧めします。あとは、水槽の向こうの海洋生物がトンネルをすり抜けてくるという異変は、とても感動的な見栄えとなってますのでぜひ一度体験してください。
それから、本作は多くのVtuberの皆さんに「水族館デート」と称して配信してもらえているのですが、推しとデートできる8番ライクという謳い文句は私たち独自の強みかなとも思っています。異変を探すのもいいですが、もはや、水族館でチルってもらうだけでいいんじゃないかなと思っているくらいです。
──水族館の描写が美しいですね。
そこはチームがとても力を入れたポイントです。アセットなども使ってますが、デザイナーやエンジニアがクォリティを上げるために頑張っています。
特に水中の表現、特に深い海の底をイメージするようなライティングには苦労しました。最後には満足のいくものになったかと思います。実際の水族館の写真なども参考にし自然光と人工の照明がうまくミックスされたような見た目を目指しています。
──展示パネルが「オジサン」になっているのは『8番出口』リスペクトだからでしょうか?
その通りです。ヒメジ科の魚が別名「オジサン」と呼ばれることから、展示パネルにしました。ただ、実はそれはフリでして、それをネタにして「オジサン」が「おじさん」に変わるという異変があります。また、異変として出てくるペンギンがスマートフォンを持っているのも、あの「おじさん」をイメージしています。
──VR版も楽しみですね。
ありがとうございます。株式会社ヴァイスはもともとVR、MR関連のゲームなどの開発を積極的に行っている会社ですので、VR版を楽しみにされている皆さんに一刻も早く体験を届けたいと思っています。VR版に関しては映像体験に関して様々な課題が出てきており、満足度の高い品質に整えるのはなかなか難しいようにも思っておりますが、我が社なりの努力を添えたうえで早期アクセス版として近いうちにリリースし、皆さんと共に歩む形でブラッシュアップを続けていければと考えています。また、単に高品質な水族館のVRとしても楽しめるものになればとも思っています。
──本作の今後について教えてください。(セールやアップデートなどがあれば)
Windows PC版につきましてはいくつかのグラフィックのアップデートやUIのアップデートを予定していますが、現在はVR版の開発を優先しているため、配信時期は定まっておりません。なお、セールについては定期的に行う予定ではありますので、続報をお待ちください。
また、多くの方から家庭用ゲーム機版を期待して頂いていることも、弊社では認識しております。すぐの対応とはなりませんが、Steam版を多くの方が購入していただければ明るい話題をご提供できる時期が早まるかと思いますので、今後の展開にご興味のある方は応援のつもりでご購入いただけますと幸いです。もちろん、VR版も楽しんでいただけると嬉しいです。さらにより多くの方の手元に様々な形で届けられればとも考えています。
■最後に
──この記事をご覧の開発者や学生の皆さんに一言お願いします。
では、先に学生の皆さんにより近いスタッフの声を伝えたいと思います。
「ゲームエンジンのチュートリアルはしっかりと履修しましょう。さもなければスパゲッティコードが爆誕するでしょう。」
「エディター上で調整したものと実際に体験として得られるものは大きく違います。デザイナーの方は完成したビルドを見せてもらいながら、自分の納得いくクオリティになるよう調整していく手法をおすすめします。」
「まずは今すぐ購入!」
さて、僕から学生の皆さんに言えることは、開発者の皆さんにはもはや釈迦に説法かと思いますが、何はともあれとにかく、作り始めたものはどうにかしてなんとしてでも完成させることが何より大切だということです。そして、その経験は、必ずどこかで力になってくれます。
あと、ゲーム業界に就職をお考えの皆さん、特にエンジニア志望の皆さんに言いたいのは、僕らは天才なんて求めていないということです。しっかりと勉強して、ちゃんと基礎力を身につけて、これからもずっと色々な人に尋ねながら自分で勉強が続けられるような人材を求めています。その上でなんでも自分のこととして真摯に課題に向き合える人になれたら、それだけできっともう大丈夫です。僕は弊社のスタッフにもそのような人材になれるように頑張ってもらっています。
あ、『8月32日の水族館』は誰でもすぐに楽しめる小品ですので、ぜひ一度と言わず何度も楽しんでください。
──ありがとうございました。
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