高校の授業「探求」にて、ゲーム開発を『PhobLack』インタビュー

『PhobLack』インタビュー

今回は、「InferiorWorks」代表者のロマさんに『PhobLack』についてお聞きしました。

『PhobLack』について

PhobLackは、あなたを恐怖の深淵へと誘う一人称視点のホラー探索ゲームです。

1980年、アメリカの山岳地帯で飛行機が墜落しました。
唯一の生存者であるあなたは、救助隊に連絡を取り、救助を要請しなければなりません。あなたのマッピング能力が試されます。

警告:必ずお読みください
探索するのは、ただの屋敷ではありません。
そこは、あなたの正気を奪う心霊現象が渦巻く、呪いと陰謀に満ちた廃墟です。
なんの前触れもなく突然現れる敵に注意してください。

ゲームの特徴
暗く不気味な廃墟:恐怖が息づく場所を探索。
謎めいたセキュリティ:数々の意味不明な仕掛けが待ち受ける。
懐中電灯:光量を調節可能(時折点滅します)。
正気度システム:恐怖を感じると正気度が減少、冷静さを保つことが鍵。

あまりにも暗い場合は、設定から明るさを調整してください。
コントローラーを使用する場合、UIの操作は十字ボタンで行います。
鍵などのアイテムを所持していれば、ドアに向かってボタンを押すだけで自動的に使用されます。

■開発チームについて

――自己紹介をお願いします。
個人スタジオ「InferiorWorks」代表者のロマと申します。友人に「あなたって浪漫だよね、異論は認める」と言われ、それが嬉しくてこの名前にしました。

――チームは何人くらいですか。
チームは私1人です。1人しかいないのでバグに気づけないのが最大の悩みです。

――これまでにゲームを作った経験はありますか?
小学生の頃Scratchに触ったことはありましたが、商用ゲームは作ったことがありませんでした。なので、実際には今作が初作品となります。

■開発について

――『PhobLack』開発のきっかけについておしえてください。
『PhobLack』開発のきっかけは、YouTubeで活動をしている「Hytacka」さんや「ひろはす」さんを見て自分も商用ゲームを開発してみよう、と思ったことです。この時期に開発したのは、高校の「探求(2022年度より導入)」という授業において、ゲーム開発をテーマにした論文を制作したためです。

――開発で苦労されたところは?
開発で苦労したのは、主に①スケジュール管理、②技術学習、③バグ対応、④多業務化、⑤PCのスペック不足です。

第一にスケジュールの管理です。
学校活動によってゲーム制作の時間が取れなかったり、ゲーム開発タスクの所要時間を少なく見積もりすぎていたりしました。細かい箇所を楽観視した結果として、Steamの発売日を延期する事態となってしまいました。

第二に技術学習です。
私はUnreal Engine 4というゲームエンジンを利用していますが、Unityと違って日本語での情報が多くありません。「UE備忘録本舗」さんや「九里江めいく」さんといった、YouTubeで情報発信をしてくれる方が本当に頼りになります。それでも見つからない情報は文献で探すしかありませんが、前述したように日本語情報はかなり少ないです。Google翻訳での技術的文章の翻訳は特に不完全ですし、自分の英語力では太刀打ちできないこともありました。最近はAIに頼る方が効率的ということに気づき、Windows右下のCopilotを多用しています。

第三にバグ対応です。
テストプレイを人に頼む手もありましたが、如何せん開発スケジュールが(リリース数時間前もバグ対応アプデするレベルで)ギリギリで頼めませんでした。また、ゲーミングPCを持っている友人は思い当たらず(高校生なので)、テストプレイヤーに対して用意できる報酬もなく、結局テストプレイは自分で行いました。バグを効率的に見つけるためテストプレイ中はゲーム内で走ることが多かったのですが、歩かないと発生しないバグがリリース後に見つかってしまいました。また、自分はテストプレイのためにRTAのようなことをしていたためあまりにも感覚が狂い、ゲームクリアまでの時間を想定の3分の1ほどに見積もってしまっていました。実際にはゲームクリアまでに3時間ほどかかるのに、「このゲームの所要時間は約1時間です」と発表してしまいました。結果として多くの方に「値段以上のボリュームだ!」と褒めていただいたのですが、ゲーム2本立てで配信枠を立てていらっしゃった方は予定変更せざるを得なくなってしまい申し訳なかったです(その方も褒めちぎってくれました)。

第四に多業務化です。
ゲーム会社にタスク管理専門の社員やディレクター・マネージャーがいる理由を深く理解しました。進捗の管理があまりにも難しいです(そこが楽しくもあります)。また、個人開発者はゲームの販促・販売も自身で行わなければなりません。X、Instagram、TikTok、Youtubeのアカウントを全て運営するのはかなりの高難易度です。今回自分はXにしか専念できませんでしたが、理想は主要SNS全てでの毎日投稿だと考えています。私のゲームはSteamにて販売していますが、Steamの仕組みやルールの理解にも手間取りました。Steamは開発者登録をしてから1か月、かつゲームのストアページを公開してから2週間はそのゲームを販売することができません。さらにSteam側で審査をしてもらわなければならない項目もあり、その待ち時間や審査が落ちるリスクもかなりのハードルでした。

第五にPCのスペック不足です。
自分のPCは総額8万円程度の自作PCで、3Dゲーム開発には多少厳しいものがあります。UE5ではなくUE4を利用しているのは、UE5が私のPCではほとんど動かなかったためです。自分のPCのメモリ容量では多くの3Dデータやテクスチャを扱えず、メモリ不足対策としてテクスチャサイズをかなり落としていました。容量が64分の1になったテクスチャも少なくありません。
Unreal Engineでは簡単にテクスチャサイズを落とせるので、かなり助かりました。結果として私のゲームはかなり軽くなり、開発時のファイル容量が30〜40GBだったのに対して、販売用にパッケージ化したファイルの容量は2〜3GBに収まりました。グラフィックに対して動作が快適だと褒めてくださる方がかなりいました。
参考までに、私の開発環境を記述いたします。

Windows10
Intel Corei7 10700
メモリ 16GB
SSD 500GB
Nvidia GeForce GTX 1050 Ti
Elecomキーボードテンキー付き(一部キー押したら戻ってこない)
Elecomマウス(たまに左クリックが反応しない)
Elecomゲームパッド(昨年から右トリガーが壊れているが反応はする)
ヘッドホン(そろそろイヤーマフが完全に外れる)
この環境でも『PhobLack』は作れます!

――完成までどのくらいの期間を想定していましたか?
完成までの期間は当初は2か月ほどを想定していました。想定が甘すぎでした。ゲーム開発を始める前は知りもしなかった工程が存在しました。ですが、しっかりとスケジュールを組めば私の規模のゲームなら2か月での開発は不可能ではないと思います。

――実際にかかった期間はどうでしょう?
実際に開発にかかった期間は8か月ほどです。冬休み前から開発を始めて、夏休み序盤でリリースしました。

――ゲームエンジンは使っていますか?
ゲームエンジンはEpic Games社のUnreal Engine 4を利用しています。Unityと違い※ Unreal Enigneはプログラム不要で高クオリティゲームの開発が可能です。実際に私のゲームでVisual Studioを開いてコーディングをすることはありませんでした。グラフィックは言うまでもまく美麗で、ゲームの売り上げが100万米ドルを超えるまではロイヤリティすら払う必要がありません。個人開発で1億円を超えるまで成長したら、5%のロイヤリティはさほど痛くもないでしょう。Unreal Engineは無料ですし、Epic Games陣営が用意したハイクオリティ無料アセットが膨大にあります。現在はAIで日本語情報を手軽に集められるので、ゲーム開発者にはUnreal Engineをお勧めします。

※現在のUnityにはビジュアルスクリプティングという機能が備わっており、非プログラマーでもゲーム開発が可能ですが、複雑なゲームの制作には向いていない様子です。

■ゲームについて

――本作のおすすめのポイントを教えてください。
本作『PhobLack』の特徴は、予想外に入る恐怖演出です。「そろそろ恐怖演出が来るのではないか」という場所では演出を発生させず、恐怖を忘れたころに演出が入るように設計しました。また、特定の行動をしないと物語が進まないようなことはほとんどなく、どちらかと言うとマップを把握する能力こそが重要になってきます。

――飛行機事故から怪しい洋館に迷い込むという物語の流れが絶望的でいいですね。
ありがとうございます。飛行機事故にあっただけでなく、墜落場所が人のいない山岳地帯だからこそ、主人公が救助を呼ばなければならない状況になっています。また、自分は「Amnesia: Rebirth」という作品が大好きで、その影響もかなり強いかと思います。

――作中の家族の絵やマップは自分で描かれたのですか?
家族の絵はアセットで、自分で描いたものではありません。今回のゲームでは数多くのアセットを利用していて、そのほぼ全てが無料アセットです。Unreal Engine マーケットプレイスでは毎月数万円相当の無料アセットが配布されており、そちらを購入するだけで(ダウンロード不要)ゲーム素材が溜まっていきます。ゲームを作る前から無料素材購入はしていたので、私は総容量数TB分のアセットが無料で使える状態になっています。余談ですがEpic Gamesストアでは毎週無料ゲームを1、2本配布しているので、私が無料で入手したゲームは250本ほどもあります。

マップやインベントリに表示されるスケッチなどはClip Studio Paintでの手描きです。如何に手描き感を出すか、かなり考えました。中学の頃は漫画家を目指していたので、手描き感はありながらも多少伝わる絵にはなっていたように思います。好きな実況者さんに「絵がかわいいね」と言って貰えて凄く嬉しかったです。
作中に登場する敵キャラクター(双子頭キャラは除く)や鍵、バール、地下室のゲートやヒューズなどは自作しました。モデリングはBlender、テクスチャ作成はQuixel MixerとClip Studio Paint を使っています。
作中のムービーはBlenderやUE4で撮影し、Shotcutという無料動画エディターを使って編集しました。
Adobe製品は学校のライセンスで無料で利用できましたが、Adobe製品に慣れてしまうと今後困りそうだという理由で使いませんでした。

――本作の今後について教えてください。(セールやアップデートなどがあれば)
『PhobLack』はリリース後連続3日間アップデートを重ね、バグはかなり減り、ヒントの追加によりある程度遊びやすくなりました。しばらくはアップデートをせず、現状の状態で販売しようと思います。
Steamでのローンチセールが8/16で終了しますが、Steamではセール後30日間は新たにセールを実施できません。そのため、約30日スパンで割引を実施し、徐々に割引率を上げていこうと思います。
このゲームは値引き前の値段がそもそも安いので、割引金額による影響はあまり多くないと思います。つまり割引割合によって購入動機を高めることが重要だと考えています。

■最後に

――この記事をご覧の開発者や学生の皆さんに一言お願いします。
私も高校生で受験勉強と開発を両立していますが、なんとかリリースまで漕ぎ着けることができました。
あまり偉そうなことは言えませんが、「全体を楽観視して、細かいことは悲観的に観る」ことが重要だと学びました。
タスク管理をしっかりすれば、案外なんとかなります!

――ありがとうございました。

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