『ハルカノカナタ』インタビュー
今回は、東京ゲームショウで展示されていた『ハルカノカナタ』について「そらまめゲームス」の「わんちゃん」と「いもさん」にお聞きしました。
UE5で描かれる不思議なWEB漫画『ハルカノカナタ』は、プレイヤーのタッチやフリックが未来を描いていく新しいスタイルのゲームでもあり、WEB漫画でもある独特の作品です。本作がどのように形になっていったか、インタビューでぜひご覧ください。
■クリエイターについて
●チームの紹介をお願いします。
私達『そらまめゲームス』は、かつてゲーム会社に勤めてた夫婦二人によるインディーゲーム開発チームです。夫の「わんちゃん」は元プログラマーで、妻の「いもさん」は元デザイナーです。
●チームは何人くらいですか。
コアメンバーは2人です。その他、知り合いのサウンドさん、漫画家さん、などに協力いただいています。
●また、どのようにして集まったのでしょうか。
実家の家業を継ぐため田舎へ帰る際に、どうせなら家業の傍らでインディーゲームを作ってみようという話になりました。お互いプログラマーとデザイナーで都合が良かったこともあり、はじめは軽い気持ちで作り始めました。
■開発について
●『ハルカノカナタ』開発のきっかけについておしえてください。
当初は、スマホでリッチな表現の3D謎解きゲームを作りたいというところからスタートしました。
しかし、縦持ちのプレイスタイルにこだわって開発していくうちに、縦画面でカットシーンを演出する際の構図に難があると思うようになりました。
そこで、スマートフォンならではのコンテンツである「縦スクロール漫画」という表現を取り入れたところ、これは遊びとしても面白いことができそうだということになり、『謎解き×縦スクロール漫画』という初期コンセプトが生まれました。
それから講談社クリエイターズラボにお世話になることになり、更に企画を練っていくうちに、『漫画に触って物語を創る』というコンセプトにたどり着きました。
●開発で苦労されたところは?
– わんちゃん(プログラム)
3D漫画としてリッチな表現を目指しつつ、縦スクロール漫画としてストレスのない操作を両立するのが大変ですね。スクロール操作が滑らかに感じるためには、フレームレートを60fpsで維持する必要があります。しかし、スマートフォンでむやみに60fpsで動かすと、すぐに端末が熱くなり動作が重くなってしまいます。また、一瞬カクつく、いわゆるヒッチが発生してもストレスを感じます。そうならないために、漫画の基盤システム開発は時間をかけて丁寧に作りました。
– いもさん(デザイン)
類似したタイプのゲームが少なく、画面遷移などの演出作成時に参考にするものを探すのに苦労しました。
また、個人開発全般に言えることかもしれませんが、全ての工程を1人、もしくは少人数で担当するので苦手な分野をどうカバーするかは常々工夫しています。わたしの場合は3Dキャラ、背景制作が不得手なので、外部の方に協力していただいたり、購入したアセットに手を加えたりしています。
●完成までどのくらいの期間を想定していましたか?
講談社クリエイターズラボの目安が2年なので、それまでに完成させたいと思っていました。
●実際にかかった期間はどうでしょう?
実際にはそろそろ2年になるのですが、まだもう少し時間がかかりそうです…。
●ゲームエンジンは使っていますか?
Unreal Engine 5を使用しています。
エンジンを選んだ決め手の一つは、デザイナーのいもさんが以前の業務で使用していたことです。デザイナーに使用経験があるというのは強みだと思います。
もう一つは、エンジンを検証する為に、株式会社ヒストリアさんが主催する「ぷちコン」に出展したことです。Unreal Engineは機能としては十分すぎるので、あとは自分達に扱えるかどうか、その判断のためにコンテストに応募しました。結果として良い手応えがあったため、Unreal Engineで開発することに決めました。
第8回UE4ぷちコン応募作品「リアル1分間スピーチ」 – YouTube
第12回UE4ぷちコン応募作品「呪いのマーケットプレイス」 – YouTube
■ゲームについて
●本作のおすすめのポイントを教えてください。
まずは縦スクロール漫画の新しい表現に驚いてもらいたいです。物語は編集者さんのサポートもあり素敵なお話に仕上がっていると思います。キャラクターも外部の方にご協力いただき、とても可愛くなりました。そして自分の手で漫画の続きを作るという、このゲームだけの体験を楽しんでいただきたいです。
●絵柄がかわいいですね
ありがとうございます!実は現在の絵柄に至るまでにかなり変化しています。どのような人に本作を届けたいか、年齢層や性別の見直しを行ったり、キャラクターモデル発注のタイミングでデザインを詰めた結果、8回くらい変わっています。
最終的に少女漫画風の絵柄に辿り着き今に至ります。
●『ハルカノカナタ』は分岐して終了する(複数のエンドがある)こともあるのでしょうか?
プレイヤーは漫画に干渉することで続きの物語に関与します。物語の結末は一つとは限りません。
●本作の今後について教えてください。(セールやアップデートなどがあれば)
まずは来年リリースを目標に開発しています。
それまで順次情報を公開しますので、私達のX(旧Twitter)をフォローして頂けると嬉しいです!
■講談社ゲームクリエイターズラボについて
●応募したきっかけを教えてください。
第1回の告知を見たときに、これは我々のための企画だ!と思いました。
縦スクロール漫画をモチーフにした本作が、もし講談社さんのお力を借りられれば、どのように化けるのか、私達自身がわくわくしたからです。また実験的なタイトルとしてもラボというコンセプトに合っていると思いました。
ここで頑張らないと一生後悔すると思い、友人知人にアドバイスをもらいながら練りに練って企画書を作りました。
講談社ゲームクリエイターズラボ 一次選考通過した企画書の制作過程を公開します|そらまめゲームス
●当選してから開発は変わりましたか?
実は私達はコンテストに落選していたのです…。
ご縁がなかったと諦めていたのですが、それから数ヶ月経った後、当時面接していただいた方に偶然お会いし、改めて熱意をお伝えしたところ、ご支援いただけることになりました。
当選ではないため、謳い文句である「1000万」の資金的な援助はありませんが、パブリッシャーという範疇を超えて協力いただいています。
具体的には、物語と漫画の編集、企画検討、プレイフィードバック、情報収集、イベント出展、悩み相談等…、多方面でサポートいただいています。
●支援の中で助かったものをおしえてください。
– わんちゃん
実は一度、ゲームの仕様を大きく変更したことがあります。
以前は3D空間を歩き回って謎解きをするゲームだったのですが、どうしてもこのまま作り続けた先のイメージが湧かず、そのことを正直に打ち明けました。そこからコンセプトの再定義に始まり、何を作りたいのか、何を削るのかといった打ち合わせを半年以上積み重ね、今の形にたどり着きました。
あのときに一度立ち止まることを理解していただき、一緒に考えてもらえたのは非常にありがたかったです。
– いもさん
沢山ありますが、個人的にシナリオ作りとイベント参加のバックアップが大きいです。まずシナリオ作りについて。ハルカノカナタは物語ベースの作品ですが私たちは物語を作る力が無かった為、その点を重点的に力を貸していただくようお願いしました。わたしが絵コンテ(のフォーマットのネーム)を描いて講談社の漫画編集さんにチェックしていただいています。
次にイベント参加について。地方住まいの私たちは距離の問題がありイベント参加はどれも厳しいのですが、講談社さんに設営などサポートしていただき参加が叶っております。
■最後に
●この記事をご覧の開発者や学生の皆さんに一言お願いします。
– わんちゃん
私は自分一人で考えると行き詰まってしまいがちで、人に話を聞いてもらうと意外とすんなり解決したり、思いもよらない意見をもらえてグッと良くなったりすることがあります。そういった環境に身を置くことが成長の近道なのかなと最近思うようになりました。
そしてなんと、講談社クリエイターズラボはコンテスト応募だけでなく、企画や開発の相談も常時募集中とのことです!
ハルカノカナタは完成に向けて絶賛開発中ですので、今後も最新情報を追って頂けると嬉しいです!
– いもさん
「自分が必要な睡眠時間をとる」「進捗0%の日を作らない」と決めて体に負担がかからないようコツコツ進めています。仕事や日常生活で忙しい中、作品作りをするのはとても大変なことです。完成まで走り切る為にも日常的に無理をしてはいけないと思います。
また、ゲームに限らずですが作品を通して、そこに込めた想いが沢山の方に伝わっていく喜びは何にも変えられないものです。遊んだ方の心に残るような作品になるよう頑張ります!
●ありがとうございました。
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