ゲームクリエイター甲子園 2023に応募があった全1200作品の中から17作品が、ゲームクリエイターズギルドが運営するクリエイター支援のためのコミュニティレーベル「Seeds by Game Creators Guild」の第三弾として登場することが決定しました。
今回のインタビューでは、第三弾作品の『HORIZONTAL MIRROR』をピックアップします。

このインタビューシリーズでは、ゲーム作品の制作の裏側に焦点を当て、どのような構想を経て形づくられたのか、学生クリエイターのゲーム制作への思いや今後の展望についても探っていきます。

チーム名:Studio ZeF/作品:『HORIZONTAL MIRROR』

Studio ZeFは、ゲームクリエイター甲子園 2023において総合賞 第5位、アンバサダー賞 ゲームパビリオン.jp賞を受賞した制作チームです。

Studio ZeFチームメンバー紹介
ZeFゲームデザイナー・プログラマー
Oz3Dモデリング・イラスト
コロン2Dデザイン・マネージャー
O.A.音楽・SE
【作品紹介】
水位調整×左右反転のミニマルな3Dアクションパズル

《「みんなのゲームパレード」からダウンロード!》
実際に遊んでみたい方は、作品紹介ページ内の「作品をダウンロードする」をクリック!
作品紹介ページ ▶ https://gameparade.creators-guild.com/works/1770

こだわりの色彩、ZeFブルー

──自己紹介をお願いします。

ZeFさん:
Studio ZeFの代表、ZeFと申します。よろしくお願いします。

コロンさん:
デザイン担当のコロンです。

Ozさん:
3Dモデリングをしました。Ozです。

O.A.さん:
BGMを担当していましたO.A.です。

──2年連続の受賞おめでとうございます。受賞した感想をお願いします。

ZeFさん:
とても嬉しかったです。まず第一にその喜びがありました。やっぱり自分たちの判断は正しかったという思いも湧きました。今回のゲームは僕自身がものすごく良いと思って取り組みましたが、一般の人に受け入れられるかがずっと不安でした。そんな中、自分たちの方向性は間違っていなかった、これでも良いんだと認識できてとても嬉しかったです。

──ゲームクリエイターズギルドEXPOでの受賞発表時は何をしていましたか。

ZeFさん:
総合賞の発表が始まったことに気づかずブースで接客をしていました。いつ発表が始まるかとステージを見たら、あの特徴的な青が目に入りました。そのセンスのいい青が自分のゲームの色だと分かりましたが、その時点では総合賞第5位とは知りませんでした。会場の雰囲気から総合賞かもしれないと気づいて嬉しく思いましたが、そのままブースの接客に戻りました。

──あれはセンスのいい青という認識なんですね。

ZeFさん:
これは選び抜いた特別な青なんです。今後は、この青を僕のゲームで積極的に使用して、将来的には後世がこれを「ZeFブルー」と呼ぶようになりますね(笑)。

──どうやって選んだんですか。

ZeFさん:
これはもう感覚ですね。Unityのカラーを触って探しに探しました。1年ぐらいかかりました。爪の色と自転車の色もZeFブルーです。

コロンさん:
やっぱりこだわりを全部出せているのがすごいと思います。

──審査員のコメントでは「水に入ると世界が反転する演出が巧みで、反転していることが明確に伝わります。例えば、チュートリアルの文字が鏡文字になっているなど、細かなアイデアとゲーム性、アート性、分かりやすさを結びつける手腕が素晴らしいと感じました。その結果、パズルとして楽しむことができました」とのことでした。

ZeFさん:
実は見た目にかなり気を遣って、画面が美しくなるように目指したので、その点が評価されて嬉しいです。逆に、パズルの部分は少し甘かったと感じています。今作ではパズルが遊びにくい部分があったと反省しています。今後はこの点を改善していきたいと考えています。

3Dパズルゲームの挑戦

──『HORIZONTAL MIRROR』を作るきっかけを教えてください。

コロンさん:
『HORIZONTAL MIRROR』の初期発想は、蛇口を見て思いついたものでしたよね?ZeFくんがそう言っていたような気がします。

ZeFさん:
そう、蛇口を見たときの発想です。食堂の蛇口や厨房の蛇口がすごく固く開けるのにすごく時間がかかって、「これを開けるための補助ロボットがあったらいいな」と思ったんです。そして開けるのは固いけれど、閉めるのは固くないですよね。だから、両方向に回す必要はなく、右方向だけで済むなら、コストが半分になるのではないかと思ったのですが問題がありました。車道に右側通行と左側通行があるように、蛇口にも右回転の国と左回転の国があるかもしれません。その場合、蛇口開けロボットは使えない国があるかもしれません。とはいえ、閉める機能は使えるかもしれません。つまり、蛇口開けロボットは、右回転の国と左回転の国では役割が異なるという考えが浮かびました。

コロンさん:
「だからゲームを作る!」と話を聞いて「お前は何を言ってるんだよ」という感じです。僕は自分が最終的にどんな体験ができるのか全く分からないまま作っていますが、彼の体験者が面白いと感じるように作り切る力がすごいと思います。

──面白がれるメンバーが集まっているのはすごく良いことですね。

ZeFさん:
ありがたいです。僕はこれまで2Dのゲームしか作ってなかったので、3Dのパズルゲームを作りたいと思いました。そこで『ポータル』か『Monument Valley』の2択が浮かび、『Monument Valley』のようなゲームを作ると決めて考えを巡らせた感じです。

──最初からチームを組まれていたんですか。

ZeFさん:
いえ、最初は僕1人で作っていました。それから「一緒にゲームを作りたい」と言ってくれる人が増えて今に至ります。僕は3Dでちょっとやってみるくらいの気持ちだったのですが、どんどん世界観が壮大になり、自分1人では作り切れないと思って今のメンバーにお願いしました。

コロンさん:
夏頃にOzさんがちょうど京都に遊びに来て、泊まることになったんです。その時、彼が絵が好きだと言ってくれました。

ZeFさん:
ちょうど前期の期末試験が終わった次の日でした。すごい開放感のもとで、最初のアイデアを描いて、「よっしゃ作るぞ!」って気持ちでした。Ozさんに会って「今、こんなものを作っているんだよ」って見せたら、興味を持ってくれました。

──自然な流れでだんだん人が集まったんですね。

コロンさん:
みんな吉田寮のつながりで集まった感じです。僕も1年ほど吉田寮にいたので、こういう場があるとすごくいいなと思います。

ZeFさん:
そうですね。吉田寮には本当にたくさんの人がいて、ゲーム制作者や音楽、演劇の人もいます。いろんなジャンルで活躍している人が集まっていますね。

O.A.さん:
ただ、あまり身の上話をしないので、どんな人かは分からない部分も多いです。退寮届を受け取って初めて見た人もいました。

ZeFさん:
僕、実は休学届を出したんです。今から勉強を始めても去年と同じことを繰り返すと思って、一度休んで外の世界に専念して作品を作り上げて発表したいと思います。だから来年度も2年生ですし、その次の年も2年生です。

アイデアの具体化とストーリー創作のプロセス

──ゲームをどのような概念として考えられていますか。

ZeFさん:
以前ゲームを定義したことがあります。「ゲームとは何か」特に「インディーゲームとは何か」という議論が度々ありますよね。それで、インディーゲームに限らず、ゲームの本質を考えるのは重要だと思い、意識が高くなったときにちょっと考えました。僕は、ゲームとは入力に対して出力を返すただの関数のようなものであり、プレイヤーはその差分から何かしらの感銘を得るものだと考えました。言い換えると、ゲームは一種の装置で、ブラックボックスのような感じです。要は、プレイヤーが受け取る感銘の方が重要なんです。これくらいシンプルな定義の方が、ゲームという概念がより豊かになる気がします。

──ゲームを制作する際に、エンターテインメント性と表現性のどちらを重視していますか。

ZeFさん:
前提として僕自身はエンタメ性の強いものしか作れないと思っています。もう1つの作家性、文学性、人文的なものは、僕は本当に持ち合わせていないんです。

O.A.さん:
その通りです。

ZeFさん:
『HORIZONTAL MIRROR』の「水に入ったら死後の世界で」というアイデアはゲーム性から生まれたもので、他の要素から来ているわけではありません。ストーリーや哲学的な要素については、実はそれほど深く考えていませんが、ストーリー担当の人にアイデアを持ち込むことで、深みのあるストーリーにしてもらえるかもしれません。それは僕にとって全く問題ないですし、ゲームというのは総合芸術だと思っているので、そういった要素は絶対に必要だと思います。しかし、僕にはその能力がないので、人に任せています。これが僕の明確な欠点だと思っています。結論としては、エンタメ性は高いですが、文学性は不足しています。ただしこれからは、その部分も強化していきたいと思っています。

O.A.さん:
ZeFくんは各ゲームにアイデアがあって、さらに彼独自の世界観が存在しています。僕は彼から話を聞いて、その内容をもとにストーリーを作っています。Ozさんも同様に、彼のやり方でストーリーを作ります。その結果として、分離した要素をくっつけるのが僕の仕事です。うまく組み合わせて文学的に見えるようにしています。僕の中にはそうした芸術性があると思っています。だから多分ZeFくんとは相性が良いのかもしれません。彼が自由にアイデアを出してくれて、それに基づいて僕がストーリーを作ります。

ZeFさん:
O.A.くんもOzさんもコロンくんも、そのような役割を担ってくれる人たちなので、本当に助かっています。

コロンさん:
個人的には、ZeFくんが考える世界の体系には、叙情性や感情移入の要素が含まれていないよう思います。直接的なアイデアや手触りの美しさ、たとえば『HORIZONTAL MIRROR』でクリックした感触などが体系的に表現されていて、これは「日本語で遊ぼう」や「ピタゴラスイッチ」のように面白いと感じる要素がありますが、自分自身が感情的に入り込める余地はあまりないような気がしています。ある種、ZeFくんのゲームに文学性を加えるとしたら、自分のコントロールをある程度諦めた先に見つけることができると思います。

創作スタイル

──『HORIZONTAL MIRROR』の今後について教えてください。

ZeFさん:
今年の秋か冬ごろには完成させてSteamで発表したいと考えています。色々と盛り込みたい要素がありますが、それ以上手を加えることはないと思っています。

コロンさん:
既に新しいゲームを3、4個作り始めています。

ZeFさん:
ちょっと試してみるかという気持ちでパズルを作っています。

──それがブランドとして確立されてきそうですね。パズルだけを続けていくと、パズルゲームとして認知されるだろうと思います。

コロンさん:
そこはブランド化したいですね。

ZeFさん:
ブランド化したいという話はしていますが、ブランドって何だろうという状態です。何か取っかかりになればと思っています。レーベルを作るとか、シリーズ化するというアイデアについては少し考えています。Studio ZeFシリーズとしてリリースできたら嬉しいなと考えています。

──『HORIZONTAL MIRROR』以外にチーム制作はありますか。

ZeFさん:
大体1人ですね。チーム制作らしいものは今回が初めてで、かなり四苦八苦しました。

──チーム全体としての目標はありますか。

O.A.さん:
ZeFくんのやりたいことをさせてあげる。

コロンさん:
悪口じゃないんですけど、ZeFくんの言ってることは意味が分からないんです。 とても分かりやすく説明してくれるんですが、その面白い考えをこっち側が汲み取りたいと思っています。

O.A.さん:
実際、ZeFくんのアイデアはかなり流動的で、固定されていない感じですね。私たち3人が面白がって掘り下げていくことで、『HORIZONTAL MIRROR』の形が少しずつ整っていきました。最初はZeFくんのアイデアを聞いてもよく分からない状態でした。質問をして掘り下げることで、本当の意図が見えてきたんです。ZeFくんをサポートする関係ですね。

コロンさん:
企画書やコンセプトを立てるとき、普通は「こういう面白さをやりたい」というアイデアから全てを決めていく作り方がありますよね。でも、ZeFくんの場合は少し違っていて、世界の体系だけを説明してくるんです。どう面白くなるのか最初はよく分からないですが、完成品を見るとやっぱり面白いんです。『HORIZONTAL MIRROR』の前半戦は、結構システム的に進めようとして、分業しようと試みましたが、全くうまくいきませんでした。そこで、ZeFくんのゲーム部分をブラックボックス化し、私たちはその方針に従うようにしました。そうするとうまく回り始めたんです。

──1人のメンバーの発想を軸にして、それを元に掛け算のように全員で形にしていくスタイルですね。ZeFさん以外はそれぞれでやりたいことはあるんですか。

コロンさん:
僕はデザイン事務所で働いていて、最近はインターンシップに参加しています。自主制作も進めていて、バックデザインをやりたいと思っています。

O.A.さん:
僕は音楽をやりたいと思っていますが、最近は別のことにも取り組んでいます。例えば収入が発生する場合、日本では税金の管理が大変ですよね。将来的に音楽で稼ぐようになったときにその知識が役立つと思うので、税理士の勉強もしています。最近はStudio ZeFの経理を担当しています。

──Studio ZeFとしては今後もゲームを作り続けていきますか。もう少し広い枠で考えていますか。

ZeFさん:
今のところ、スタジオ全体ではゲームですね。僕はStudio ZeFを「ZeFの外延機関」と呼んでいて、外に伸びるという概念です。僕一人ではできないことを、他の人に手伝ってもらって実現するという形です。

僕がやりたいことは、まずStudio ZeFのやりたいことと一致させたいと思っています。現時点で僕がやりたいことはゲームであり、ZeFの名前でやっているのもゲームだけです。ですから、何か表現したいものがあったとしても、その媒体はゲームになるだろうと思っています。

「みんなのゲームパレード」から『HORIZONTAL MIRROR』をダウンロード!

今回ご紹介した『HORIZONTAL MIRROR』は、開発中ゲームのβ版が集まるサイト「みんなのゲームパレード」にて掲載中!作品を実際に遊んでみたい方は、作品紹介ページ内の「作品をダウンロードする」をクリック!

作品紹介ページ ▶https://gameparade.creators-guild.com/works/1770

 

「Seeds by Game Creators Guild」とは

「Seeds by Game Creators Guild」は、ゲームクリエイターの若きスターがここから羽ばたいていくことを支援するためのコミュニティレーベルです。

クリエイターコミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」が運営する「みんなのゲームパレード」に掲載されている作品や「ゲームクリエイター甲子園」に応募された作品の中から、特に輝いていたゲームタイトルを応援します。

本レーベルは、パブリッシャーではなくゲームクリエイター支援のためのコミュニティレーベルを基本コンセプトとし、特にコミッションなどをお支払いいただかず、必要な実費のみでご利用いただけます。

未来のある優れた作品がこのレーベルに集まることによって、ユーザーや業界への認知機会を増やし、本レーベルを通してスタジオ設立や、大手パブリッシャーへのステップアップにつながっていくことを目的とします。

Seeds by Game Creators Guild 公式サイト ▶ https://www.creators-guild.com/seeds

「ゲームクリエイター甲子園 2024」開催中!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。
このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。
「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

ゲームクリエイター甲子園 2024 エントリー情報

エントリー期間

※先行エントリーについては下記をご確認ください
エントリー締切:2024年10月31日(木)16時59分まで

作品応募期間

作品提出開始:2024年 2月1日(木)12時00分から
作品提出締切:2024年11月7日(木)16時59分まで

※作品がない状態のエントリーも可能です
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です

応募資格

年齢:小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数:無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です

「ゲームクリエイター甲子園 2024」が2月1日(木)より開幕! エントリー手順を解説


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