体験は創作の燃料『Death the Guitar』、トロヤマイバッテリーズフライドインタビュー【Seeds by GCG】|ゲームクリエイター甲子園 2023 総合大賞獲得!

ゲームクリエイター甲子園 2023に応募があった全1200作品の中から17作品が、ゲームクリエイターズギルドが運営するクリエイター支援のためのコミュニティレーベル「Seeds by Game Creators Guild」の第三弾として登場することが決定しました。
今回のインタビューでは、第三弾作品の『Death the Guitar』をピックアップします。

ゲームクリエイター甲子園 2023最優秀賞獲得を記念して、『Death the Guitar』の制作者、トロヤマイバッテリーズフライドさんとゲームクリエイターズギルドの宮田が対談しました。

このインタビューシリーズでは、ゲーム作品の制作の裏側に焦点を当て、どのような構想を経て形づくられたのか、学生クリエイターのゲーム制作への思いや今後の展望についても探っていきます。

チーム名:トロヤマイバッテリーズフライド/作品:『Death the Guitar』

トロヤマイバッテリーズフライドは、ゲームクリエイター甲子園 2023において総合大賞を受賞した制作チーム。

トロヤマイバッテリーズフライド チームメンバー紹介
トロヤマイバッテリーズフライド  ・制作
・音楽
Shun Kitakaze(協力) ・ギター演奏
【作品紹介】
主人公は殺人ギター!「音」と「電気」をあやつり人間を滅ぼせ。ポップ&バイオレンスな2D横スクロールアクション。

《「みんなのゲームパレード」作品紹介ページ》
作品紹介ページ ▶https://gameparade.creators-guild.com/works/841

コンテストへの参加の動機

宮田:
自己紹介をお願いします。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
トロヤマイバッテリーズフライドの名前でゲーム制作をしている、美術大学3年生の学生(2024年4月当時)です。音と電気を駆使して敵を倒す、スピーディでレトロなアクションゲームの『Death the Guitar』を制作しています。

宮田:
総合大賞を受賞した時の感想をお聞かせください。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
授賞式では、自分は受賞とは関係ないと思っていましたが、最後の総合大賞発表で自分の名前が呼ばれ、なんとも不思議な気持ちになりました

宮田:
コンテストには賞を狙って参加する方もいれば、単に作品の制作に興味がある方もいます。トロヤマイバッテリーズフライドさんはどちらの立場に近いですか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
自分は意識的に、ゲーム業界のコミュニティに積極的に参加するべきだと考えていました。特に大学2周目からその思いが強くなりました。当時は、自分が社会に参加する方法を模索していた時期で、ゲーム制作という創作活動に集中するなら、自分を露出させる必要があると感じました。そこで「Unity 1week」などのイベントに参加し、段階的に自分の露出を高めていくことを決意したんです。その過程で、賞レースに参加することを考えるようになったんです。それから積極的にイベントに応募して自分の作品を広く発表していきました。

宮田:
なるほど。大学2周目とのことですが、2周目の大学生活が始まってから、トロヤマイバッテリーズフライドというアイデンティティが形成されてきたのですね。振り返ってみると、そのアイデンティティは最初からすでに存在していたように感じられます。

トロヤマイバッテリーズフライド:
今もまだ漂っているような感じです。誘われたものはすべて受け入れて、とにかく身を投じて、認めてもらうという思いで動いています。

宮田:
健全な不安感という風に見えますね。今この瞬間は本当にこれでいいのかという疑問に直面して、振り返ってみると自分が進んできた方向に理解が深まることもありますからね。

賞金でバージョンアップした制作環境

宮田:
ゲームクリエイター甲子園 2023で獲得した賞金はどうしましたか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
賞金では、エフェクターとアンプシミュレーター、ゲーミングチェアを買いました。残りは貯金しています。

宮田:
アンプシミュレーターを買われたということは、ギターは自分で弾いているんですね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
いや、持っているだけなので弾けないんです。弾くというより、触っているだけですね。ゲームに活かせるか音の変化を見ています。

宮田:
いろんな賞金で制作環境をバージョンアップしているんですね。制作レベルもアップできたのではないでしょうか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
投資して生産性が向上した感じですね。環境の改善は本当に効果的でした。モニターも1つ増やし、ゲーミングチェアも購入しました。今までは2700円のバランスボールで作業していましたが、ゲーミングチェアに変えてから、QOLが上がって、制作ペースもよくなったような気がします。

宮田:
それ自体がゲームみたいですね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
ゲームに近いです(笑)。

制作の苦労と今後の課題

宮田:
総合大賞を受賞して周りの反響はどうでしたか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
反響は特になかったです。

宮田:
これまでにも多くの賞を受賞していますからね。制作で大変だった話を聞かせてください。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
今も制作を続けていますが、かなり大変です。実際のところ、展示できたり受賞するレベルのゲーム制作と、その後の商品化までの制作は雲泥の差です。賞をいただいてはいますが、ゲームデザインに危機感を抱いています。このままでは売れないという感覚があり、そこをどう解決するかが課題です。遊びの根本で面白くないと感じているので、この問題に真正面から向き合う必要があります。

宮田:
1人で作り続けると決めているんですか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
特に決めていませんね。共同制作もいいなと思いますが、僕にはあまり向いていないかもしれません。1人で作っていくと決めているわけではないので、その点は柔軟なスタンスを持っています。

宮田:
1人であのクオリティまで作りきれる人はあまりいないですね。トロヤマイバッテリーズフライドくんのように、普通に1人であそこまでデザインもゲームデザインもしている人は珍しいです。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
「1人で作ったんですか?」とよく言われます。

宮田:
個人制作もチーム制作も、それぞれメリットデメリットがありますから、突っ切ってみるのも一つの選択肢かもしれませんね。チームでフラットな形で進める方法もあれば、ピラミッド型の組織で進める方法もありますし、得意不得意を踏まえて選んでも、どちらも糧になると思います。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
前途多難だと思います。

ゲーム制作と生活の調和

宮田:
心配していることや不安に感じていることはありますか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
ものづくりは自分にとって大きな喜びですが、それが必ずしも売り上げに直結するわけではありません。それに、今の作品がうまく注目されたとしても、その後の作品で引き続き注目を集められるかはまた別の話です。

宮田:
それは確かに不安に思いますね。次を求められるのは、大変なプレッシャーだと思います。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
今はその恐怖に駆られて行動していますが、生き延びる方向に舵を取りたいです。社会からドロップアウトしたり、ふわふわと遊離している時期は辛い経験をしたので、それを燃料にして前に進んできましたが、新たな燃料を見つけて、駆動していきたいですね。

宮田:
インタビューのなかで、燃料の美談はいろんな人がしていると思いますが、実は本質的な燃料は、そのような原体験に根ざしていることが多いと思います。あの時には戻りたくないという思いに動かされることも結構ありますね。それに、そういった経験がある人の方が強いと思っています。とはいえ底にいる時は、浮上する方法が全く見えないんですよね。地面には階段や手すりもなく、この底の地は永遠に続いていくような気持ちになります。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
道を歩いてて、急に足が止まってしまうんです。人生に大きな変化が起こるわけではないのに、前に進んでも後ろに進んでも等価に感じて、どうしたら良いのか分からなくなり、その場でうずくまりたくなることがあります。

自分が何をすべきか分かっている状態にした方がいいと自覚しています。その時の自分にとっては、パソコンを開いてゲーム開発を始めることが正しい選択だと感じることもあります。とはいえ、作業が進んでいる時も、進んでいない時も、行動している方が精神的なダメージが少ないので、良い方向に働きます。

宮田:
「前に進むことと後ろに進むことが等価」という表現は、とても良いですね。前に進んでも後ろに進んでもループしてしまい、一生このループから抜け出せないという錯覚に陥ることがありますよね。作品にそういった気持ちも反映されているんでしょうか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
『Death the Guitar』に関しては、別の動機を切り取って作っているので、そのような要素は少ないです。自分のどの部分を切り取って燃料にするのかは、ゲームによって変わってきます。それしかモチーフがないので、自分が知っていることしか語れないような話ですが、おっしゃる通り原体験が強いのかもしれません。ドロップアウト状態で感じたことは、創作の材料になっています。

宮田:
極めて創作的で、ものづくりの本質に近い感じがします。ゲームはクリエイティブでありながら産業的な側面もあります。産業的な側面を重視する人もいますが、そこだけでは良し悪しは判断できませんからね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
ゲーム制作は、どれだけ熱意やエネルギーがあって語りたいことがあっても、必ずプログラミングの部分が挟まるので、そこで一瞬冷静にならざるを得ません。自分の考えている概念や思念を俯瞰し、コードやアルファベットに落とし込まなければならないので、小説を書くとは違った独特の温度感があると思います。その温度感のグラデーションの中で、人それぞれのドライさや熱っぽさのレベルで制作されているので、ゲームは非常に多様だと感じます。

宮田:
まさしくですね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
だからゲームが好きです。

宮田:
他の創作とゲーム制作の違うところですね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
力点の置き所が本当にすごく多様で、どこにでもあるし、上下方向にも広がっている感じがします。

宮田:
確かにそうですね。小説のように自分が発露してバッとアウトプットするものではなく、プログラミングも含まれています。しかも最終的に実際にゲームを動かすのはプレイヤーですもんね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
最終的にはプレイヤーに委ねるので、そこでまた複層的な体験や価値が生まれる点がとても良いですね。そういうのがすごく好きです。結局ゲーム内で自分について語っても、それを感じるのはプレイヤーなので、そのおおらかさが自分にとって有り難いです。自分の体験は他の人にはどうでもいい内容でもその人なりの感じ方をしてくれます。そういう意味では、ゲームだけに特有とは言い切れませんが、かなりおおらかなメディアだと思います。

宮田:
トロヤマイバッテリーズフライドさんにとってのゲームは、自分が伝えたいものを届けるためのコミュニケーション手段ではなく、極めて双方向的ですね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
自分の心情や感情を作品にする際には、まず理性的にゲームにすることで、プレイヤーの視点からも見ることができます。この行為は認知行動療法的で、自分の行動を自分の視点からだけでなく、より高次の視点や社会的な視点から再び捉えて、自分自身を管理・調整でき、この点がゲーム制作に非常に近いと感じています。

宮田:
すごく面白いですね。プレイヤーとしての視点だけでなく、作り手としての視点からも救われる部分があるんですね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
自分が作ったものをそのまま受け取ってもらえなくていいっていうおおらかさがあると思います。

今後の目標

宮田:
今後の目標について教えてください。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
今後の目標は、『Death the Guitar』は2025年にSteamで発売する予定です。絶対に完成させるという目標と、あとは就活ですね。

宮田:
就活するんですか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
就活します。めっちゃ会社に行きたいです。会社に行って組織とは何かを知りたいですし、奨学金もあるので就職したいです。

宮田:
会社に勤めることで選択肢は広がりますね。ゲームクリエイター甲子園に参加していかがでしたか。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
参加してよかったと感じています。学生でゲームが好きで将来ゲーム業界に進みたいと考えているなら、ゲームクリエイター甲子園はかなり役立つと思います。宣伝っぽく聞こえてしまいますが(笑)。

宮田:
過去の鬱屈していた自分や今そんな状態になっている人たちに背中を押してあげる言葉があったらお願いします。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
睡眠は本当に大事ですね。辛くなった時には休むこと、そして適切な医療機関を訪れることが重要です。また信頼できる存在に相談すること、自分の考えをアウトプットすることも大切です。それが助けになるかどうかは個々の現実によるところもあります。人は頑張ってもいいし、頑張らなくてもいいし、どうにでもなるんじゃないかと思います。

宮田:
「頑張ってもいいし、頑張らなくてもいい」は結構本質ですね。

トロヤマイバッテリーズフライドさん:
客観視がとても重要ですね。自分の考えを絶対的なものと見なさず、他の人の意見を聞いたり、文章を書き直して次の日に読んでみるだけでも、前日の自分と今日の自分が異なることがわかります。その点はとても大切です。現在の思考に縛られないようにすることも重要ですね。これは確かに認知行動療法的なアプローチですね。

宮田:
具体的ですね。ありがとうございました!

「みんなのゲームパレード」から『Death the Guitar』をダウンロード!

今回ご紹介した『Death the Guitar』は、開発中ゲームのβ版が集まるサイト「みんなのゲームパレード」にて掲載中!作品を実際に遊んでみたい方は、Steamのウィッシュリストに追加してリリースをお待ちください!

作品紹介ページ ▶https://gameparade.creators-guild.com/works/841

「Seeds by Game Creators Guild」とは

「Seeds by Game Creators Guild」は、ゲームクリエイターの若きスターがここから羽ばたいていくことを支援するためのコミュニティレーベルです。

クリエイターコミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」が運営する「みんなのゲームパレード」に掲載されている作品や「ゲームクリエイター甲子園」に応募された作品の中から、特に輝いていたゲームタイトルを応援します。

本レーベルは、パブリッシャーではなくゲームクリエイター支援のためのコミュニティレーベルを基本コンセプトとし、特にコミッションなどをお支払いいただかず、必要な実費のみでご利用いただけます。

未来のある優れた作品がこのレーベルに集まることによって、ユーザーや業界への認知機会を増やし、本レーベルを通してスタジオ設立や、大手パブリッシャーへのステップアップにつながっていくことを目的とします。

Seeds by Game Creators Guild 公式サイト ▶ https://www.creators-guild.com/seeds

「ゲームクリエイター甲子園 2024」開催中!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。
このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。
「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

ゲームクリエイター甲子園 2024 エントリー情報

エントリー期間

※先行エントリーについては下記をご確認ください
エントリー締切:2024年10月31日(木)16時59分まで

作品応募期間

作品提出開始:2024年 2月1日(木)12時00分から
作品提出締切:2024年11月7日(木)16時59分まで

※作品がない状態のエントリーも可能です
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です

応募資格

年齢:小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数:無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です


「自作ゲームの宣伝がしたい!」という熱い思いをお持ちの方は、ぜひ下記のフォームよりご連絡ください!

 ゲームクリエイターズギルドとは
ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。
※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約7600人参加(2023年12月現在)

スキルや知識を学びゲームクリエイターとして成長・活躍し続けたい、同じ業界にいる仲間と市場の動向や技術についてなどの交流したい、日本のゲーム業界・職業自体の価値を上げ今より良い環境を作っていきたい……。そんなゲームを愛する人たちの未来に、必要な情報や機会を提供します。
ゲームクリエイターズギルド公式サイト ▶ https://game.creators-guild.com/

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