ゲームクリエイター甲子園 2023に応募があった全1200作品の中から17作品が、ゲームクリエイターズギルドが運営するクリエイター支援のためのコミュニティレーベル「Seeds by Game Creators Guild」の第三弾として登場することが決定しました。
今回のインタビューでは、第三弾作品の『コミックバチコーン!!』をピックアップします。

このインタビューシリーズでは、ゲーム作品の制作の裏側に焦点を当て、どのような構想を経て形づくられたのか、学生クリエイターのゲーム制作への思いや今後の展望についても探っていきます。

チーム名:バチコーン編集部/作品:『コミックバチコーン!!』

バチコーン編集部は、ゲームクリエイター甲子園 2023において総合賞 第2位、企業賞 PlayStation®賞、2次審査員賞 中村匡彦賞 ゲームパビリオン.jp賞、ゲスト審査員賞 太田垣沙也子賞を受賞した制作チームです。

バチコーン編集部 チームメンバー紹介
芦田雄祐リーダー/プランナー
太田理斗サブリーダー/プログラマー
池渕裕樹プランナー
谷口明プランナー
後藤雅智プログラマー
松山昂司プログラマー
池上優輝プログラマー
鈴木園未デザイナー
西林桃花デザイナー
ジェイソン・ヤプトラデザイナー
中川颯人サウンド
本田和希サウンド
【作品紹介】
大人気マンガ家となったプレイヤーは、原稿を完成させるためマンガの世界から飛び出したキャラクター達をコマへとたたきつけて原稿を完成させるアクションゲーム!!
キャラクターをコマや地面などあらゆるところにたたきつけまくれ!!

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作品紹介ページ ▶ https://gameparade.creators-guild.com/works/1180

プロの自覚を持ってユーザーに届けたい

──自己紹介をお願いします。

芦田さん:
バチコーン編集部のリーダーです。主にプランナーとして参加していて、ほぼディレクターみたいなポジションで作業してました。

太田さん:
サブリーダー兼リードプログラマーを担当しました。

池渕さん:
レベルデザイナーとして今回のゲームに携わりました。

鈴木さん:
私はデザイナーでキャラクターのモデリングと一部UIなどを担当しました。

芦田さん:
うちのチームはちょっと特殊で、リーダーがいて、インゲーム班とアウトゲーム班に分かれた構成でした。アウトゲームのリーダーやデザインのリーダー、インゲームのリーダーがいて、それぞれの役割を担っていました。特にゲームのデザインをほとんど担当してくれているコアメンバーが今日のインタビューに参加しています。

──受賞した感想をお聞かせください。

芦田さん:
本当に受賞できるとは思っていなかったのが正直なところです。僕らはこれまであまり受賞の機会に恵まれず、どれだけ頑張っても結果が出せないチームでした。この2~3年間、ずっとあがいてきました。そんな中で、今回正式に賞をいただけたことは、チームとして本当に嬉しく、誇らしかったです。あの日は本当に感動しました。

太田さん:
僕も授賞式に参加しました。自分たちのチームコンセプトとして、コンテスト向けにゲームを作るのではなく、本当に自分たちが作りたいものを世の中に届けたい思いで作ってきました。それが初めて世の中に伝わった瞬間があの場だったので、とても嬉しかったです。

池渕さん:
僕は会場には行けなかったんですが、YouTubeの配信を見ていました。いきなり名前が呼ばれた瞬間、「ここで?来た!」って感じでしたね。本当にタイトルネーム通り、バチコーン!と衝撃が走りました。今まで一歩足りなかったチームが、その一歩を踏み出せたと思いました。レベルデザイナーとしても、今まで以上に手応えを感じましたね。すごく報われた感じがしました。

鈴木さん:
当日は私も会場にはいませんでしたが、YouTube配信を見ていました。まさかこんなに素晴らしい賞をいただけるとは思っておらず、純粋に嬉しかったです。

──受賞までに、学校内でこのゲームいいねと話題になっていなかったのですか。

芦田さん:
自分たちで言うのも恥ずかしいですが、 これまで校内での受賞歴は相当あって……。

太田さん:
恥ずかしいよね。

池渕さん:
そう、恥ずかしい。

芦田さん:
これまでの制作では、学内と学外の評価に差があることが多くて、前作も学内では評価されるも、コンテストでは全然上位に届かない。今作も学内では手応えがあったんですが、 賞には届かない壁を感じていました。 でも、今回受賞の機会をいただき、本当に自分たちの目標を達成できたと思っています。 めっちゃ熱かったです!

──以前から同じメンバーで制作されているんでしょうか。

太田さん:
もうほとんど変わらず同じメンバーですね。

芦田さん:
専門学校2年生から4年生まで、ほぼメンバーは変わらずやっていましたね。

──チーム結成のきっかけはどのような流れでしたか。

太田さん:
間違いなく仲の良さですね。自然と制作を結構頑張っている同士が、「俺らが組んだら最強なんじゃね?」と思って 組んだアベンジャーズで結成されている感じです。お互いの温度感も近いので話しやすくて、いいチームだと思っています。

──賞を目指そうとしながら、審査員ではなくユーザーに意識が向いたのはどうしてですか。

芦田さん:
学生制作にとらわれず、プロの自覚を持ってユーザーに届けたいポリシーがありました。きっかけはテストプレイです。テストプレイした人とのやり取りが忘れられなくて、僕たち全員が「あの時に楽しんでくれた人をもっと楽しませたい」といった気持ちが原点にあり、これを絶対に優先しようと決めていました。僕が率いるチームで、太田がサブリーダーとしてやる以上、この方針だけは絶対に曲げないと意識して取り組んでいました。正直、僕は目の前で遊んでくれる人が楽しければそれでいいと言いますか。見えない審査員相手にゲームを作る意味はないと思っています。

太田さん:
きっと会社に行ったらやらなきゃいけなくなるし、学生の間ぐらいは俺らが作りたいもの作る思いが強かったです。

芦田さん:
モチベーションはそこでしたね。今、ユーザーが喜んでくれているからこそ、さらに驚きを与えたいと思っています。

分業体制で進めたゲーム制作

──『コミックバチコーン!!』を作ろうと思ったきっかけは何でしたか。

芦田さん:
チームの制作の流れとしては、僕がプランナーとしてアイデアを出し、それをメンバーに伝えて制作が始まります。『コミックバチコーン!!』に関しては、「叩きつけるのが一番面白い」という僕の考えがあって、ゲームのコアはそこから始まっています。

それに、僕たちは漫画が大好きで、制作中は『HUNTER×HUNTER』の話ばかりして小学生みたいに遊んでました。みんな共通して漫画が好きなので、 漫画を貼り付けるゲーム を作ろうというのが始まりですね。

──最初の構想から変わった部分はありますか。

芦田さん:
プレイヤーの「振り回して叩きつける」操作に関してはほとんど変わっていません。いろいろアイデアはあったんですが、叩きつけることに特化したゲームにしました。もう振り切った感じです。

鈴木さん:
「このままだと気持ちいい叩きつけ方ができないんじゃないか」とよく話し合いました。

──操作感は最初からこだわって作られたのですか。

芦田さん:
そうですね、操作感にはこだわっていました。アクションゲームを作りたい思いがあり、その中で操作感を大事にしながら、どう叩きつけると気持ちいいかを追求しました。メンバー間では喧嘩もしながら進めました。

──喧嘩!?

芦田さん:
いろんな操作パターンを試していました。これで行くと決めても、「いや、まだだ」となって、何度も試行錯誤しました。その結果メンバーに怒られて、「ここは大事だから、ちょっと待ってくださいよ」と言われたりしましたね。特にインゲームチームはひたすらこだわって取り組んでいました。

池渕さん:
結構激しいやり取りをしました。

──最終的な決断はどうやって決めるのですか。

芦田さん:
制作は、 インゲームとアウトゲームチームがいて、週に3日会議を行い、それぞれのチームの実装物に対して、フィードバックを受けてまた改善、1週間後の会議に報告するスタイルで進めていました。それぞれチームの報告や実装物に対しては、”たたきつける気持ちよさを感じられるか”を元に判断してました。

太田さん:
ゲームの管轄も全部僕が握っていました。リーダーとすり合わせながら進めていましたが、僕が管轄しているチームメンバーはエゴが強くて、「これがやりたいんだ」という意見が多かったです。それに対して、「分かるけど、一旦ゲームにしていこうか」と言いながら、みんなで形にしていく作業を繰り返していました。

──分業は珍しいですね。

芦田さん:
その方が細かいレベルで連携できて管理しやすいと感じました。僕たち3人、デザインリーダー、プランナーリーダー、プログラムリーダーは、意識の疎通が100%取れていて、長年一緒にやっているので信頼もあり、スムーズに進められました。

太田さん:
作るものは違っても共通認識は一緒ですからね。

芦田さん:
それが大きいサイクルになっても成り立っていました。また、チーム内でのモチベーションの一つとして、”お互いのチームが出す成果に対して、負けない”という気持ちが結果的に、ゲームを良い方向にしていったと思います。
ただ今回、アウトゲームチームが制作したデザインやUI/UXに関しては非常に高く評価される作品になり、一方で、 インゲームチームとしては非常に悔しい思いをしました。

太田さん:
そうそう、インアウトで分業するからこその思いですね。

──プレイ体験が統一されているのがすごいですね。

芦田さん:
ありがとうございます。「芦田の言うことはこれやろ?」 とメンバーが持ってくるものは当たってるんですよ。

──このメンバーがチームになった最初からその作り方なんでしょうか。

太田さん:
最初からですね。

芦田さん:
最初の1ヶ月くらいは、 12人のうち3、4人で超モック版を作っていました。 その後は制作の方向性を示さないとみんなが動けないと僕は思っているので、今回であれば 「叩きつけるのが大事だから最大限気持ちよくしよう」ということですね。この方針はメンバーに伝えることを意識していて、 コアメンバーに任せたものは、絶対にズレないだろうと思っていました。

──制作中にあった困難な出来事はありますか。

芦田さん:
リーダーとしては、 アクションゲームの開発は難しくて大変でした。 想定以上にすり抜けるバグが出たり、「これでアクションゲームを作れるのか」 という疑問が常にありました。またユーザーに対してこの体験をどう伝えるべきかを常に強く感じていましたし、 リーダーとして、またプランナーとしての責任も強く感じていました。

──既存のゲームにはあまりない形だったので大変だったかと思います。

芦田さん:
作っている側は分かっているんですが、どうやったらユーザーに伝わるのか。『コミックバチコーン!!』みたいなゲームって何?って言われたら、端的に表現しにくいと僕は思っていて、そこがやっぱり難しかったです。『コミックバチコーン!!』らしさを確立していく作業が、半端なく大変でメンタルも体力もやられました。

太田さん:
寝られないですし、どんどんご飯の量が増えていくんです。

──ストレスからの暴食ですか。

芦田さん:
もう最後の1ヶ月間、ナン食べ放題のカレー屋さんが近くにあって、メンバー全員で通って毎日爆食いして帰っていました(笑)。

太田さん:
「ナンを3枚食うまで帰らへん!」みたいな感じでした(笑)。

──年間を通して相当ブラッシュアップされていましたね。

芦田さん:
そうですね。 『コミックバチコーン!!』 はSteamでのリリースに向けてブラッシュアップの最中です。誰でも遊べるカジュアルな層から、 ゲームがめちゃめちゃ大好きなコア層にも満足していただけるように、とても作り込んだので、ぜひ触れてもらいたいです。

※現在は販売されています。

クリエイターとしての目標

──今後の目標について聞かせてください。

芦田さん:
今後はゲーム業界のクリエイターとして活動します。今回で得た「目の前の人を喜ばせること」は絶対に忘れないようにしたいですね。僕はソシャゲ系の会社に所属するので、どうしても利益を考えなければならないですが、お客さんが楽しむことが最も大事だと思っています。お客さんを楽しませるためにはどうすればいいかは今の自分が得た大きな教訓です。それを心に抱えながらクリエイターとして成長していきたいです。

太田:
僕は今回、リードプログラマーとして活動することが多かったのですが、人と人をつなぐ役目を経験できたのは、このチームだからこそだと思っています。今回の制作でプロとしての自覚を初めて学ぶことができました。チームのコンセプトとして「ユーザーに届けたい」思いはもちろん大事ですが、僕自身はユーザーに届けるだけがクリエイターの役割ではないと思っています。そのバランスをもっと磨いていきたいです。
エンジニアとして、自分が作りたいものを作る意思もありますが、ユーザーを満足させるものを提供する塩梅も高めていきたいです。自分が届けたものがユーザーにどう受け取られるのかを意識しながら、仕事に取り組みたいです。

池渕さん:
今回はレベルデザイナーとしても非常に多忙で、アクションゲームにおいて1ミリ単位の調整がゲームの面白さを大きく左右することを実感しました。それと同時に、全体の流れや遊びのコンセプトも考えなければならず、そのすり合わせを全て担うのはとても大変でした。しかし逆に言えば、それが今回の成長の糧となり、プロのレベルデザイナーとして必要な過程だったと感じています。メンバーには本当に感謝しています。

今後プロとして進んでいく上では、お客さんに届けることを大事にしつつ、細かい部分の調整と大きな流れの組み合わせを意識していきたいです。お客さんと真摯に向き合うことで、そのすり合わせが完璧なものになると信じています。私は今後コンシューマーゲームの開発に進む予定ですが、その長い開発期間においても、この経験を忘れないようにしていきたいです。

鈴木さん:
やはりゲームとしてユーザーがどう感じてくれるかが最も大事だと思います。いくらプランナーが面白いゲームを作っていても、デザインがビジュアル的に良くないと、とっつきにくいものになってしまいます。だからこそ、可愛さや分かりやすさなどの要素は追求しなければならないと強く感じています。

今回はある程度、漫画の世界観に落とし込めた点は良かったと思います。分かりやすさや見た目の良さは今後も追求していきたいです。

──これからの活躍を期待しています!

「みんなのゲームパレード」から『コミックバチコーン!!』をダウンロード!

今回ご紹介した『コミックバチコーン!!』は、開発中ゲームのβ版が集まるサイト「みんなのゲームパレード」にて掲載中!作品を実際に遊んでみたい方は、作品紹介ページ内の「作品をダウンロードする」をクリック!

作品紹介ページ ▶https://gameparade.creators-guild.com/works/56

「Seeds by Game Creators Guild」とは

「Seeds by Game Creators Guild」は、ゲームクリエイターの若きスターがここから羽ばたいていくことを支援するためのコミュニティレーベルです。

クリエイターコミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」が運営する「みんなのゲームパレード」に掲載されている作品や「ゲームクリエイター甲子園」に応募された作品の中から、特に輝いていたゲームタイトルを応援します。

本レーベルは、パブリッシャーではなくゲームクリエイター支援のためのコミュニティレーベルを基本コンセプトとし、特にコミッションなどをお支払いいただかず、必要な実費のみでご利用いただけます。

未来のある優れた作品がこのレーベルに集まることによって、ユーザーや業界への認知機会を増やし、本レーベルを通してスタジオ設立や、大手パブリッシャーへのステップアップにつながっていくことを目的とします。

Seeds by Game Creators Guild 公式サイト ▶ https://www.creators-guild.com/seeds

「ゲームクリエイター甲子園 2024」開催中!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。
このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。
「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

ゲームクリエイター甲子園 2024 エントリー情報

エントリー期間

※先行エントリーについては下記をご確認ください
エントリー締切:2024年10月31日(木)16時59分まで

作品応募期間

作品提出開始:2024年 2月1日(木)12時00分から
作品提出締切:2024年11月7日(木)16時59分まで

※作品がない状態のエントリーも可能です
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です

応募資格

年齢:小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数:無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です

「ゲームクリエイター甲子園 2024」が2月1日(木)より開幕! エントリー手順を解説


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