ゲームクリエイター甲子園 2023に応募があった全1200作品の中から17作品が、ゲームクリエイターズギルドが運営するクリエイター支援のためのコミュニティレーベル「Seeds by Game Creators Guild」の第三弾として登場することが決定しました。
今回のインタビューでは、第三弾作品の『Whale Fall』をピックアップします。

このインタビューシリーズでは、ゲーム作品の制作の裏側に焦点を当て、どのような構想を経て形づくられたのか、学生クリエイターのゲーム制作への思いや今後の展望についても探っていきます。

チーム名:FumaYamane/作品:『Whale Fall』

FumaYamaneは、ゲームクリエイター甲子園 2023において総合賞 佳作、ゲスト審査員賞 砂守岳央賞、ゲームクリエイターズギルド賞 宮田賞を受賞した制作チーム。

FumaYamane チームメンバー紹介
山根風馬(監督、制作)
・企画、プロデュース、デザイン、プログラミング、モデリングやアニメーションなど、
プロモーションも含めゲームのほぼ全てを個人制作。
北井里樹(作曲)
横澤暁生(作曲)
・二人で分担し、ゲーム内の全ての楽曲の作曲と制作。
松村道知(サウンド)
・サウンドデザイン、サウンドプログラミングを制作。
【作品紹介】
『Whale Fall』は、さまざまな海洋生物を操作して、壮大な海の世界を旅する、シングルプレイヤー探索ゲームです。

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実際に遊んでみたい方は、作品紹介ページ内の「作品をダウンロードする」をクリック!
作品紹介ページ ▶ https://gameparade.creators-guild.com/works/976

海を作る

──『Whale Fall』が生まれたきっかけについて教えてください。

yamane:
このゲームは海をテーマにしています。元々僕は生命の意義に興味があり、海の映像を見ることが好きでした。YouTubeなどで海の映像をひたすら見て過ごすこともありました。また中学生の頃には1人でパラオ諸国連合に行くツアーに参加した経験があります。そのツアーで、船からサンゴの海に飛び込む体験をしたんです。

本当に怖くて…。サンゴ礁の外れに飛び込むと一気に深くて底が見えず、魚しかいない。あの恐怖感が忘れられなくて。でも、美しい景色でした。そこから海に興味を持つようになりました。
後にYouTubeなどで鯨骨生物群集という現象を知りました。クジラの死骸が基盤となり、何もない海底で生物のコロニーが形成され、何万もの生き物が誕生するというもので、この様子をテーマに扱った作品を作りたいと思いました。これまで感じていた物質的な生命の循環を表現できないだろうかと、広大な水の中で起こる生き物たちの循環を描いてみようと思ったのです。

──壮大ですね。初めての作品ですか。

yamane:
初めてのゲーム作品です。

──まずは何から取り組んだのですか。

yamane:
最初に取り組んだのは、魚のモデルよりも先に世界観とライティングを決めることでした。Unreal Engineの中にクジラの骨を1つだけ作り、その周りに海らしいライティングを施すことから始めました。そしてシェーダーをかけて、CGでどこまで海を再現できるのかを試行しました。

そして企画書を作る時に、全体の流れを一旦絵にしてみることを考えました。絵で全体の流れを確認することで、カラースクリプトのような色彩の連鎖や、絵的な魅力がどれだけ続くかが大まかに分かります。それを各シーンごとに切り抜いて作成していくという作業がやりやすかったです。

──なるほど。さすが感性の人ですね。

yamane:
一貫して絵としての魅力があるものを重視して作り続けました。

──その流れがゲームになっていく、ということですね。

自分のゲームのための音楽

──『Whale Fall』ではどのあたりを担当しましたか。

yamane:
主に音楽以外の全てを担当しました。Blenderを使用してモデリングから行い、生物を約35種類作成しました。さらにこれらのモデルにアニメーションを付けたり、トレーラー映像なども全て自ら制作しました。

──熱血道場に登場した際は、メンバーがいましたよね。

yamane:
企画から開発までは私1人で進めましたが、音楽担当のメンバーは3人いました。1人は音楽の録音編集や効果音などを手がけ、残りの2人は作曲を主に行い、シーンごとに分けて楽曲を制作しました。最終的には生演奏や録音も行いました。彼らは音楽系の学科の子たちですね。

──どうやって知り合ったんですか。

yamane:
学校で行っているアニメーション学科と音楽環境創造科のコラボレーションプロジェクトに参加しています。僕の作品は映像寄りの作品だったので、音楽とのコラボレーションは非常に良いものになったと感じています。

──学校の取り組みで知り合ったんですね。

yamane:
そうですね。おそらく彼らはゲームに音楽をのせるのは初めてだったと思います。最初は彼らも戸惑っている様子でした。僕自身も初めて人に音楽を依頼したので、最初は「こういう雰囲気で」とか「ネットでこんなイメージの音楽を見つけたんだけど〜」というような抽象的な指示をしていました。僕は音楽に対しての言語力が全くなかったんですが、その指示を汲み取ろうとしてくれて「とりあえずやってみよう!」という感じで始まりました。

彼らは僕が意図していることを自分たちで想像し、実現してくれました。結構僕と感性が合っているなと感じました。

──嬉しいですね。

yamane:
作曲家視点で見ると、僕のイメージをそのまま曲にするのが1番良いわけですが、実際に制作された音楽は、僕の想像を上回る魅力が生まれていました。音楽によって映像との相乗効果が生まれ、作品全体の魅力がさらに増していきました。

──開発当初は音楽が入るイメージがありましたか。

yamane:
最初は生のオーケストラが入るなんて考えていませんでした(笑)。彼らはオーケストラの生収録の手間をよく知っていたようでしたし、僕もやらないものだと思っていたんです。ですが作った音楽があまりにも良かったんだと思います。いつのまにか彼らが生録音に取り組むことを決意し、僕よりも彼らが主軸で動き出していました。僕も生録音に立ち会って、「この曲は〜」と拙い表現で説明し、何とか1日で録音を終えることができました。

──とてもいい経験ですね。

yamane:
自分が作ったゲームの曲が、実際にオーケストラで演奏されると感動で胸がいっぱいになりました。

ゲームを一本作るということ

──制作時に起きたハプニングとかってありました。

yamane:
苦労したことは結構ありました。僕のゲームは映像重視だったので、プレイヤーをどのように誘導するかという点が特に難しかったです。画面にUIや映像以外のものを表示したくなかったため、プレイヤーをうまく誘導する方法について、多くの試行錯誤がありました。

──このゲームのおすすめポイントを聞かせてください。

yamane:
悩みますね。このゲームの音楽も本当に好きですが、実はUIを使わないという、他にあまりないスタイルを持っていることですね。だから、プレイヤーは本当に映像に没入できるということが魅力の1つだと思います。

あとはUnreal Engineがフォトリアルな表現に力を入れている中で、あえて自分はリアルなディテールを隠して、空気感で表現する。という方向性を探っています。シェーダーやフォグ、ライティングなどで工夫して、トレーラーを見た人が「怖いけど、大丈夫かな」と思えるほど、雰囲気の表現がうまくいっているのではないかと思っています。その結果、リアルよりもリアルな海の中の表現ができていると考えています。

──リリースの目途は立っていますか。

yamane:
夏前までにはリリースしたいと思っています。

僕のゲームは誰でもプレイしてもらえるようにスティック1本で単純に操作できるようにしています。テストプレイを重ねたことで、ゲームを初めてプレイするような人やゲーム自体やったことがない人にも馴染みやすいゲームシステムだと思っています。

──将来的にどんなクリエイターになりたいですか。

yamane:
将来的には、チームとしてもっと活躍していきたいと考えています。もちろん自分を中心に作品を広く展開していきたいです。自分のアート的な志向を忘れず、あまり商業的な側面に埋もれずに、しっかりとアーティストとしてクリエイターの道を歩んでいきたいと思っています。アートとしてのゲームを作り続けていきたいですね。

──就活生やこれからゲームを作ろうと思っている人に向けてメッセージをお願いします。

yamane:
僕は本当にゲームを1本作って良かったと思っています。プログラマーやモデラーなどの各専門知識はもちろん重要ですが、ゲームプロジェクト全体を把握できる人材がどれほどいるかが、進行のスムーズさに直結すると考えています。ゲームクリエイター甲子園に応募している人は、おそらくこれまでにゲームを1本作ってきた経験を持っているので、その過程を全て理解しているという点で、すごく価値があると思います。本当にそれを強みにして頑張ってほしいですね。

今の時代、さまざまなAIが生まれてきて、それを利用した作品が登場してくるでしょう。これは一見脅威に思えますが、そのAIが提案したものの選択は人が必ず行うと思うと、一通りの制作経験を持つ我々クリエイターは、ディレクターとしての役割を果たすことができると僕は信じています。

ゲームクリエイターって、みんなが小さなディレクターなのだと思います。例えばアートのディレクターやプログラムのディレクターがいるわけで、各々の経験をうまく活かしてもらいたいと思っています。
未来のテクノロジーは分かりませんが、今まで培ってきた制作経験は無駄にならないので、ぜひ頑張ってほしいなと思います。

「みんなのゲームパレード」から『Whale Fall』をダウンロード!

今回ご紹介した『Whale Fall』は、開発中ゲームのβ版が集まるサイト「みんなのゲームパレード」にて掲載中!作品を実際に遊んでみたい方は、Steamのウィッシュリストに追加してリリースをお待ちください!

作品紹介ページ ▶https://gameparade.creators-guild.com/works/976

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「Seeds by Game Creators Guild」とは

「Seeds by Game Creators Guild」は、ゲームクリエイターの若きスターがここから羽ばたいていくことを支援するためのコミュニティレーベルです。

クリエイターコミュニティである「ゲームクリエイターズギルド」が運営する「みんなのゲームパレード」に掲載されている作品や「ゲームクリエイター甲子園」に応募された作品の中から、特に輝いていたゲームタイトルを応援します。

本レーベルは、パブリッシャーではなくゲームクリエイター支援のためのコミュニティレーベルを基本コンセプトとし、特にコミッションなどをお支払いいただかず、必要な実費のみでご利用いただけます。

未来のある優れた作品がこのレーベルに集まることによって、ユーザーや業界への認知機会を増やし、本レーベルを通してスタジオ設立や、大手パブリッシャーへのステップアップにつながっていくことを目的とします。

Seeds by Game Creators Guild 公式サイト ▶ https://www.creators-guild.com/seeds

「ゲームクリエイター甲子園 2024」開催中!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。
このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。
「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

ゲームクリエイター甲子園 2024 エントリー情報

エントリー期間

※先行エントリーについては下記をご確認ください
エントリー締切:2024年10月31日(木)16時59分まで

作品応募期間

作品提出開始:2024年 2月1日(木)12時00分から
作品提出締切:2024年11月7日(木)16時59分まで

※作品がない状態のエントリーも可能です
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です

応募資格

年齢:小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数:無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です

「ゲームクリエイター甲子園 2024」が2月1日(木)より開幕! エントリー手順を解説


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ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。
※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約7600人参加(2023年12月現在)

スキルや知識を学びゲームクリエイターとして成長・活躍し続けたい、同じ業界にいる仲間と市場の動向や技術についてなどの交流したい、日本のゲーム業界・職業自体の価値を上げ今より良い環境を作っていきたい……。そんなゲームを愛する人たちの未来に、必要な情報や機会を提供します。
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