『Jack A Loop』開発者インタビュー
JACKALは、『Jack A Loop』で「Indie Games Contest 学生選手権(以下、学生選手権)」において優秀賞を受賞した制作チームです。今回はチームを代表して、チームリーダー兼プランナーの岡本さんにインタビューを実施しました。
独学でゲーム制作を始めて苦節3年、今回の優秀賞を受賞するまでに味わった彼らの苦労と、『Jack A Loop』に込められた想いに迫ります。
過去の自分と共闘する新感覚アクションゲーム『Jack A Loop』
───繰り返す時空の中で生き残れるのは、ただ1人あなたは”ジャッカル”としてループする時間の中で自身の存在を賭けて戦うことになります。多種多様な”タワー”や”スキル”を駆使して敵ジャッカルよりも多く”コア”を奪取しましょう。
ループ内で行った行動は次のループに影響を与えます。よく考えて行動することが勝利への鍵に繋がります。
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―まずは自己紹介をお願いします。
岡本:
徳島大学のゲームクリエイトプロジェクトというグループ団体で、チーム代表を務めている岡本と申します。『Jack A Loop』は、ゲームクリエイトプロジェクト内の「JACKAL」というチームが制作したゲームで、僕も開発者の一人として制作に携わりました。
―学生選手権に参加したきっかけを教えてください。
岡本:
以前この作品を福岡ゲームコンテストにも応募したんですが、一次審査に通ることができず、とても悔しい思いをしました。しかし、我々としては自信作なので、もっと評価される場があるのではないかと思いました。さまざまなコンテストを探していたところ、学生選手権を見つけ、応募することにしました。
―学生選手権では見事、優秀賞を獲得されましたね。改めて、おめでとうございます! 授賞式当日はいかがでしたか。
岡本:
ありがとうございます! こういったイベントに参加するのが初めてだったので、当日はめちゃくちゃ緊張していました…(笑)。ですが、参加者の方に開発されたゲームの制作意図や制作過程など、様々なお話を聞けたので、とても貴重な経験ができました。
プレゼン会の時に『Unknown Pyramid』制作者のRainyDollGamesさんが後ろの席にいたので、何度かお話させていただきました。RainyDollGamesさんは個人制作でゲームを仕上げていて、しかもちゃんとマーケティング戦略を立てて販売までされているんですよね。彼のゲームに対する熱い想いが伝わってきて、とても衝撃を受けました。
―コンテストを通じて刺激を受けられたんですね。受賞後の周囲の反応はいかがでしたか。
岡本:
大学に受賞した旨を報告したところ、とても喜んでくれました。メンバーからは「成果が出て良かった、満足のいく結果だった」との声もありましたね。
僕たちは1年に1作品ゲームを制作していて、『Jack A Loop』は3作目になるんですが、実はそれまでの2作品は失敗に終わっているんです。これまでの2年間はゲームが完成しない苦しさを味わいながら、がむしゃらに開発を続けてきました。だからこそ、今回の受賞はチームのこれまでの集大成として大きな意味を持ったと思います。
―岡本さんは一般の大学でゲーム制作をされていますが、ゲーム業界の専門学生と比べて制作環境や技術・情報の格差を実感することはありますか。
岡本:
専門知識を教えてくれる先生がいないので自力で情報収集をするしかない、というのはありますね。本を読んで学んだり他の大学のゲームサークルに組織運営について聞きに行ったりと、自主的に動いて情報を得る必要があるので、専門学生との差は多少感じています。それに、自分が所属する大学ではゲームとは全く別の勉強をしているので、ゲーム制作をする時間が取りにくい、というのもありますね。
ただ、そういった不利な状況でも「専門学生に勝つ」という目標を設定して制作に取り組んだことで、今回のような成果を出せたんだと思います。知識や技術で比べると専門学生には劣るかもしれませんが、そこに戦いを挑まないことにはコンテストには勝てません。そういう高い壁を越えることができたのは、地道な努力を続けたおかげだと自負しています。
日本のMOBA界隈を盛り上げたくて『Jack A Loop』を制作した
―『Jack A Loop』はMOBAゲームに位置しますが、なぜMOBAのゲームを制作したんでしょうか。
岡本:
ゲーム研究を兼ねて『リーグ・オブ・レジェンド』をプレイしたことがきっかけでした。このゲームをプレイする中で、「MOBAのゲームが日本であまり広まっていない理由は、自分が下手でチームに迷惑をかけることを心配している人が多いからだ」という気づきがありました。
実際、MOBAは世界ではプレイ人口が1億人を越えているものの、日本のプレイ人口は多くありません。この心理的不安を解消できるゲームを作れば、日本でもMOBA界隈が盛り上がるんじゃないかと思い、MOBAゲーム制作に挑戦しました。
―確かに、ゲームの腕に自信がない人でも楽しめるようなゲームがあれば、日本でもMOBAが人気になるかもしれないですね。ゲームの研究を兼ねて『リーグ・オブ・レジェンド』をプレイした、とのことですが、岡本さんはどんなゲームがお好きですか。
岡本さん:
ゲームジャンルを問わず幅広くプレイするんですが、その中でも頭を使うゲームが好きですね。普段はカードゲームやシミュレーション系のゲームでよく遊んでいます。シミュレーション系のゲームは時間を忘れるくらい遊んじゃいます(笑)。
―本作は「過去の自分と共闘する」というのが大きなテーマですが、これはどのようにして生まれたアイデアなんでしょうか。
岡本:
時間をテーマにしたゲームを作りたい、というのは以前から考えていたので、新たなゲーム開発の企画案としてチームメンバーに出したところ、この案が通りました。2022年の3月頃からプロジェクトをスタートさせて約3ヶ月で企画をブラッシュアップして、そこから8、9ヶ月ほどかけて開発を行いました。
―『Jack A Loop』の制作で特にこだわった部分はどこでしょうか。
岡本:
ゲームシステムは特にこだわった部分であり、悩んだ部分でもあります。というのも、今のゲームシステムに至るまでに二転三転ありまして…。元々はキャプチャー・ザ・フラッグのゲームシステムを採用していたんですが、それだとどうしても「過去の自分と共闘する」という体験を得にくいほか、開発面でも問題が頻発してしまったんです。
それらの問題を解決するためにゲームシステムの根幹を変える必要があったので、チームメンバーと毎晩のように話し合いをしながら実装とテストを繰り返し行い、現在の陣取りゲームのシステムに落とし込みました。
―修正前のゲームシステムでは、具体的にどのような課題があったのでしょうか。
岡本:
先ほどお話したキャプチャー・ザ・フラッグのゲームシステムは「一つの標的(フラッグ)を皆で奪い合う」というルールなので、操作するキャラクターが真ん中に集中して画面上がごちゃごちゃになってしまうのが課題でした。
実装では、プレイヤーの同期に課題がありました。過去にプレイしたデータと現在進行形でプレイしているデータを重ねると、キャラクターがスタックしてしまうなどのバグが発生してしまって。エンジニア陣はかなり苦労していましたね。
―ゲームの理想の形を実現させるのは難しいですよね。チームの指揮を取るのも大変だったと思います。
岡本:
そうですね。エンジニアチームには実装可能な機能と実装が難しい機能をヒアリングして、常にコミュニケーションを取りながら制作を進めました。制作中、エンジニアの皆には「実装、大丈夫そうですか?」と声をかけて聞き回っていましたね。
―実際にプレイされた方からはどんな反応がありましたか。
岡本:
ゲーム制作経験が豊富な方々からは、レベルデザインなどについて突っ込んだコメントをいただきました。どれもためになるフィードバックばかりだったので、今後のブラッシュアップの参考にしたいと思っています。
一般参加の方からは「キャラクターのビジュアルが可愛い」という嬉しい声をいただいた反面、「チュートリアルでルールを理解しきれなかった」という意見もいただきました。こういう生の声を聞けると改善すべき点がはっきり分かりますし、制作のモチベーションにも繋がるので、とても嬉しかったです。
「ほかにないゲーム体験」を提供できるクリエイターになりたい
―今後、本作のブラッシュアップやリリースの予定はありますか。
岡本:
学生選手権でいただいたフィードバックの中でも「ルールが分かりにくく、チュートリアルに進むまでに脱落してしまう」という声が多かったので、ゲームの導入部分は特にしっかりとブラッシュアップさせたいですね。そして、2023年の秋頃を目標に製品版をリリースしたいですね。
―ゲームを通して伝えたいメッセージや想いがあれば、ぜひ教えてください。
岡本:
先ほどお話した通り、世界に比べて日本国内のMOBAプレイヤーの人口は多くないので、少しでも多くの方にMOBAゲームの魅力を知っていただきたいと思っています。今回我々が制作した『Jack A Loop』が、MOBAゲームをプレイするきっかけになれば幸いです。
―では最後に、今後の目標を教えてください。
岡本:
僕は常に「ほかにないゲーム体験をしてほしい」という想いのもと、ゲーム制作をしています。今後も「このアプローチのゲームは世界でもないよね」と感じていただけるような、ほかにない体験を生み出せるようなゲームを作っていきたいですね。
チームとしては今後も展示会やコンテストに参加していきたいと思っています。この数年間で苦楽を共にした仲間ですし、可能な限り引き続きこのチームでゲーム制作ができれば嬉しいです。
―ジャッカルチームの皆さんのように、一般の大学生の方にもぜひゲーム制作に挑戦してほしいですし、大学生チームから沢山の素晴らしい作品が生まれてくることを願っています。本日はありがとうございました。
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