「ゲームクリエイター甲子園 2022」総合賞 第3位|製品版リリース予定!パズルゲーム『CHROMIX』インタビュー

「ゲームクリエイター甲子園 2022」総合賞 第3位『CHROMIX』インタビュー

今回は2022年に行われた「ゲームクリエイター甲子園 2022(以下、甲子園)」で、総合賞 第3位をはじめ二つの企業賞を獲得した『CHROMIX』の制作者インタビューをお届けします!

美しいUIとやり込みたくなるゲーム性が評価されたパズルゲーム『CHROMIX』はどのように生まれたのか。独学でゲーム制作を行っている京都大学理学部の学生 ZeFさんにお聞きしました。

シンプルで美しいデザインが目を引くパズルゲーム『CHROMIX』

【作品紹介】
ボールを正しい色に変えてゴールに導く、かわいらしいパズルゲーム『CHROMIX』です。三原色をベースにした斬新なパズルになっています。制作チーム名 ▶ ZeF
作品詳細 ▶ https://gameparade.creators-guild.com/works/597

― 大学の学部を教えていただいても良いですか?

ZeFさん:
大学では理学部に所属しています。2年の終わりに“系登録”を行って3年生でどの学科に進むのかを決めるんですが、自分は留年が確定したので“系登録”ができませんでした(笑)。3年生では数学か物理の学科に進みたいと思っています。

― なるほど、2023年の春からはもう一度2年生になる予定なんですね(笑)。ZeFさんは独学でゲーム制作をされていますが、ゲーム制作はいつ頃から始められたんでしょうか。

ZeFさん:
浪人生時代に「こんなパズルゲームがあったら面白そう」という考えはあったんですが、実際にUnityでゲームを作ったのは大学に入ってからになります。制作は取り敢えず大学に入ってからだ、と思っていたので。

― そうなんですね。プログラミングは元々されていたんでしょうか。

ZeFさん:
小学校5、6年生の時に3DSの『プチコン』という、簡単なゲームが作れるソフトでちょこちょこ作るようになりました。…これをカウントすると、大学より前からゲーム制作はしていましたね(笑)。こういったゲームソフトがきっかけで「プログラミングとは何か」を知っていきました。

ZeFさん流 ゲーム制作の進め方

― ゲーム制作はどのような手法で進められていますか?

ZeFさん:
本当に独学なので多分理想的なものとは程遠いと思いますが、個人制作なので基本的には「自分が理解できればそれで良い」というスタンスで制作しています。「この程度なら理解できるけど、これ以上は分からない」という尺度は一応把握できているので、その基準に照らし合わせて作るようにしていますね。

例えば「こことここのクラスの参照関係はこれぐらい離れてたら訳分かんないけど、このぐらい近づいてたら分かるよね」みたいな感じです。

― すごく数学的なアプローチと言いますか。ご自身の中できちんと設計されているんですね。デザイン部分もある程度設計を考えてから手をかける、という感じでしょうか。

ZeFさん:
最初から全て計算して設計しきれているかというと、そうでもないですね。

今回の『CHROMIX』でいくと、「色を変える縞々のブロックをここに置くんだったら、あの縞模様は結構きついからこの辺のデザインは抑え気味にしておくか」みたいな感じで考えました。

― 今回制作された『CHROMIX』は、デザインがとても素敵でした。デザインに関してはどうやって学びましたか?

ZeFさん:
ありがとうございます。お恥ずかしながら、デザインを体系的に学んだことはないんですよ。僕は俗に言う「ハイパーカジュアルゲーム」が好きでよくプレイしているんですが、そこで見たものが自分のモデルとなって積み重なっているのだと思います。

― ハイパーカジュアルゲームを参考にした、ということですが、それにしてもデザインの勉強なしにあれだけ綺麗にまとめられるのは凄いです。

ZeFさん:
ありがとうございます。

ゲーム制作で最初に出す仮案は当然粗削りなので、そこから試行錯誤をして変えていく作業を2022年の5月から無限大に繰り返しました。それでどんどん角が取れて丸くなっていった結果、あのデザインに辿り着いたんだと思います。

― ボールが跳ね返る時の独特な音も魅力的ですが、あの音にも一定のルールがありますか?それとも聞き心地の良さで選ばれたんでしょうか。

ZeFさん:
そこに関しては全て感覚的に選びましたね。音楽に関しての知識はさっぱりなので、色んなフリー音源をダウンロードして片っ端から聞いて選定しました。

ただ、パズルの色によって異なる和音については「赤、青、黄色の順番でコードを入れてるし、赤はド、青はミ、黄色はソで良いか」みたいな感じで機械的に当てはめました。結果的にそれが上手くいったのかな、と思いますね。

― デザインやサウンドもそうですが、基礎がないにも関わらず、あのクオリティの作品を作れてしまうのが本当に驚きです。

「まずは作ってみる」の精神で挑んだ『CHROMIX』制作

【審査員の講評(一部抜粋)】
・このゲームは私の中ではナンバーワンでした。何と言っても、この完成度。アイデア自体は他のゲームにもあったような気がしますが、非常に洗練されたUIとグラフィックで完成度の高い遊びになっていました。プロとしてデビューできるんじゃないかと思いました。最高です。(吉田氏)
・個人制作なのに凄く完成度が高くて、「色を混ぜる」というアイデアとパズルの組み合わせがユニークですね。ステージが進むごとに“イジワル”になっていくパズルの難易度・構成・アイデアにも感銘を受けました。ポップでシンプルなアートディレクションも自分好みでした。(榊原氏)
・「色を混ぜる」という一見簡単なようで難しい要素を上手くゲームに昇華できていると思いました。幾何学的なデザインセンスも素晴らしいですね。もう一押し、ユーザーの興味をそそる“何か”があると、さらに良くなるのではないでしょうか。(今村氏)

― 賞を獲得された時はいかがでしたか。

ZeFさん:
「こんなこと起こり得るんだ」っていうのが率直な感想です。総合賞の発表時は緊張を紛らわせるために、隣の部屋の友達と『スプラトゥーン』をやりながら観ていました…(笑)。

正直な所少しだけ期待はしていたんですが、なかなか『CHROMIX』の名前が呼ばれなかったので、最後の方は友達の手を掴みながら観ていましたね(笑)。プレゼンターの梨蘭さんが「チーム ZeF」と言った瞬間は本当に嬉しかったです。

― お話を聞くだけで当時の緊張感が伝わりました(笑)。企業賞も二つ獲得されていますが、そちらはいかがでしたか。

僕は「Phoenixx賞」の発表の後から授賞式を観始めたので、「PlayStationⓇ賞」の発表があった時は「聞き間違いだ」と、思わず二度聞きしてしまいました。「Phoenixx賞」や総合賞 第3位ももちろん嬉しかったですが、視聴のタイミング的に「PlayStationⓇ賞」の発表が一番衝撃的でしたね。

― 受賞の報告は周りの方にされましたか?

ZeFさん:
受賞の報告は寮の皆に言って回りたい気持ちもあったんですが、相手から聞かれるのを待つスタンスを取りました(笑)。

「PS5手に入れたんだけど、何かおすすめのソフトない?」みたいな感じで友達に聞いて、「何で手に入れたの?」と聞かれるのを持つ、みたいなくだらないことをやりましたね。

ただ、仲の良い友人や他にゲーム制作を行っている友人には言いました。親にも今回の結果を伝えたら、「単位を犠牲にした甲斐があったね」と言ってもらいました(笑)。

― 『CHROMIX』の制作では、どのような部分にこだわりましたか?

ZeFさん:
「ルールが分かりやすいか」は特に気を使った部分ですね。やはりパズルゲームなのにルールが分からなかったら、面白くないと思うので。極力ルールは言葉で説明したくないという気持ちもあったんですが、結局言葉による説明は付けるようにしました。

― 確かに、ノンバーバルで表現できると世界に通用するゲームになるので理想的ですよね。『CHROMIX』は十分世界に通用するタイトルだと思うので、ぜひその部分にも挑戦していって欲しいです。
― 今回の『CHROMIX』の制作で大変だったことは何でしょうか。

ZeFさん:
大きく二つあって、一つはプログラムの面ですね。僕は独学でゲーム制作をしているので、クラスの設計がどうしても上手くいかなくて。「変数をいつ参照すのるか」「関数はいつ呼び出すのか」という部分を、いかに自分自身も理解しやすく作っていくか。ここは特に苦労しました。

もう一つはデザイン面ですね。「このデザインも良いけど、こっちも良いし、どうしよう」みたいな感じで選択を迫られる場面があったんですが、その決断をするのに苦労しました。

きっと美術やデザインを学んでいたら、ここまで迷うことなく選択できたんだろうな、ということは思いましたね。

― ゲーム制作を進める中で参考にしたものや、勉強したことはありますか?

ZeFさん:
分からない部分は都度検索をして調べる、ということはしましたが、本を購入して腰を据えて勉強したのはUnityの使い方ぐらいです。「Unityの教科書」という本があって、「ゲームはこうやって作れば良い」みたいなことが書かれていたので、それを参考に制作を進めましたね。

「このゲームだったら、こういう風に設計すれば良いだろう」みたいなものは、裏切られることが多々あるじゃないですか。「やっぱりこっちの方が良かったわ」みたいなことはよくあるので。

何事もそうですが、まずは作った方が学びが大きいんだろうな、という感はありますね。

― なるほど。「習うより慣れろ」じゃないですが、とりあえず作ってみるのはとても大切なことですね。

製品版は目下制作中!

― 『CHROMIX』は今後販売の予定はあるんでしょうか。

ZeFさん:
目下製品版を制作中です。ただ他のタイトルの制作も進んでいるので、なかなか思うように進んでいないですね。とはいえ春休みが終わるまでには作ってしまいたいと思っています。まずはSteamで配信して、その後はスマホ版をリリースする予定です。

― それは楽しみですね!
― そもそものお話になりますが、ZeFさんはどこで甲子園の存在を知りましたか?

ZeFさん:
運営スタッフの方からTwitterのDMでお誘いを受けました。僕は大勢の前に出るのが苦手なんですが、甲子園は良い意味でルールが緩いですし、前に出て発表するような選考もないので、これくらいラフなコンテストなら挑戦できそうだと感じて。

― ZeFさんに挑戦していただけて良かったです!
― 最後に、今後どんなクリエイターになりたいかなど、目標がありましたら教えてください。

ZeFさん:
「こうなりたい」というものはまだ特に決まっていませんが、大きく二つあります。一つは「自分にとって最強にエモいもの」をガンガン作っていくことで、もう一つは「遊んでいて楽しい」と感じるような作品を作って皆さんに遊んでもらうことですね。

実は今、Twitterで知り合った方と共同開発でオセロをアレンジした『四角リバーシ』というゲームを制作しています。まだどの程度面白くなるかはさっぱりですが、このゲームが完成したらUnityルームに載せようと思っています。

もう一人の開発者はAIとかオンラインの実装ができる方なので、AI対戦やオンライン対戦も実装しようと思っています。『四角リバーシ』も、よろしくお願いします!

― おぉ!それは楽しみです!ZeFさんの頭の中にある「エモい作品」がどんどんと形になることを楽しみにしております!本日はありがとうございました!

最後に、自室ということもあり、少しだけお部屋の様子を撮らせていただきました。ゲームクリエイター甲子園へ応募する!という熱い思いがボードに書かれていました。

また、普段は古本市へ行かれたり趣味でロシア語を勉強されているそうです。

改めておめでとうございました!

宮田

今回は専門学生ではなく、独学でゲーム制作を行っているZeFさんを取材させていただきました。

今回の取材を通して、彼が個人制作で実践している「まずはやってみる」というスタンスは、自分の可能性を見つけることにも繋がる大切な行動だと改めて感じました。

我々ゲームクリエイターズギルドは、ゲーム制作をしたことがない人にも甲子園にトライして欲しいと思っています。「習うより慣れろ」の精神で、勇気を持って挑戦してみてください!

 

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「ゲームクリエイター甲子園 2023」に挑戦しよう!

ゲームクリエイター甲子園は「ゲームクリエイターズギルド」が主催の、ゲーム制作に関わる学生クリエイターのためのゲームコンテストです。

このゲームコンテストの最大の特徴は、“成長型ゲームコンテスト”であること。作品がない状態からでもエントリーが可能で、1年を通して作品をブラッシュアップしながらクリエイター自身の成長を目指します。

制作途中の作品でも応募すればプロのクリエイターからアドバイスがもらえるほか、学生クリエイターコミュニティに参加する仲間たちとの切磋琢磨で刺激を得ることができるのも、このコンテストの魅力の一つ。過去の参加者の中には、企業からオファーを受けて新卒採用に至った方もいらっしゃいます。

「オリジナルのゲームを作ってみたい!」「色んな人に自分の制作物を見てもらいたい!」そんな方は、ぜひご応募ください!

【ゲームクリエイター甲子園 2023 エントリー情報】

エントリー・チーム登録期間:2023年1月30日(月)~10月31日(火)16時59分
作品提出期間       :2023年1月30日(月)~11月7日(火)16時59分

※作品がない状態のエントリーも可能です。
※一作品につき一回チーム登録が必須となります。個人参加の場合もチーム登録をお願いします。
※運営との連携のためLINE公式アカウントの友だち追加が必須です。

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【応募資格】
年齢  :小学生以上の学生 ※社会人は応募不可
制作人数:個人・チーム、人数不問
作品数 :無制限
ゲームクリエイター甲子園は作品の完成・未完成問わず参加・展示が可能です

「ゲームクリエイター甲子園 2023」エントリーはこちら

 

ゲームクリエイターズギルドとは
ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。
※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)

スキルや知識を学びゲームクリエイターとして成長・活躍し続けたい、同じ業界にいる仲間と市場の動向や技術についてなどの交流したい、日本のゲーム業界・職業自体の価値を上げ今より良い環境を作っていきたい……。そんなゲームを愛する人たちの未来に、必要な情報や機会を提供します。
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