CEDEC2022が8月23日~25日に開催されました。
楽屋でまったりで行ったアンケートをもとに、様々なセッションのレポートをお送りいたします。
UIデザインはスケジュールがタイトであったり、工数を見積もりにくい、人員計画を立てにくい方々が多いのではないでしょうか。今回は、そんなUIデザイナーの方々に向けたベーシックな工数感覚やタスク管理方法を元に、こうすれば理想的なスケジュールが立てられる! タスク管理ができる! といった具体的な方法をお伝えいただいたセッションをご紹介いたします。
スケジュールやタスク管理で悩まれている方はぜひご覧ください。
「ヘブンバーンズレッド」UIデザイン開発事例から導くスケジュール&タスク 理想的モデルケース
スマートフォンゲームを新規開発する上で、UIデザインの工数を適切に見積もり、人員計画を策定する事に苦労する方は多いのではないでしょうか。仕様やゲームシステムによって工数は異なるものの、ゲームUI製作におけるベーシックな工数感覚を知っておく事で、各マイルストンでの現在地の把握や、次に打つべき対応の検討がスムーズになります。
本セッションでは「ヘブンバーンズレッド」におけるスケジューリングの成功・失敗の知見を元に見出した、理想的なスケジューリングのモデルケースを紹介します。
受講スキル
- スマートフォンゲームのUI製作に従事している方。
得られる知見
- ゲームUIデザインを製作する上で欠かせないスケジューリングや進行管理の理想的なモデルケースを「ヘブンバーンズレッド」の開発事例と共に学ぶことが出来ます。
『ヘブンバーンズレッド』
―最後の希望を託された少女たちの物語―
WRIGHT FLYER STUDIOS×Keyが贈る、メインシナリオ麻枝 准氏 15年ぶりの完全新作ゲーム
UIスケジュールの理想形とは
『ヘブバン』のUIデザイン開発期間に3年2ヶ月かかったそう。長崎さんの経験上、モバイルゲーム開発でのUI開発は1年から長くても2年くらいがスタンダードだそうで、今回は順調な作り方ではなかったとおっしゃられていました。
- UIの仕様再検討による改修
- ユーザーテスト対応からの改修
- 全UIビジュアル見直しによる改修
作っては改修するという開発上の予期せぬ変数が重なったため期間が延びてしまったが、ゲーム開発は試行錯誤が不可欠なので、ある意味必要な改修だったがもう少し早く対応できたのではないかと振り返って感じられるポイントだそう。
◎図の見方:開発期間と主なタスクごとの制作時間・追加人員をまとめた図
- 下にある横軸がマイルストーンごとの時間経過
- 下にある人のアイコンと数字がフレーズごとに増えていった総人数
- UIデザイナー 最大約7名とあるが、常に7名で運用していたわけではなく、徐々に増えていき最大7名
- 黄色い四角はそれぞれのタスク開始時期
- 改修回数を矢印で表現。青い矢印は1回改修。赤い矢印は2回改修。多くの画面は少なくとも1~2回改修を入れている
どういった箇所でどういった理由で改修が多く入っているのかを振り返ることができます。
画面を制作する上で2Dや3Dなど他のデザインパートと連携する必要があるため、こういった画面は仕様や見た目を決定する上で変数が多く、実装してみないと良し悪しが判断できないことも多く、難易度が高い画面だったとのこと。
プレイヤー資産に関する画面も仕様や見た目での着地難易度が高く、実装完了が長期化したそうです。
UIレイアウト製作の理想的なスケジュール
一般的なモバイルRPGゲームのUIを2年で作るための人員・期間を割り出したものが下記の図。
この図のコンセプトは、重要性が高いものからカテゴライズして作ること、指定の期間での着地を徹底するというコンセプトで作成されたとのこと。
重要性の高いものはプロジェクトの初期に固められ、後半は変数が少ない機能を配置することで追い込みのスピードが出やすい構造となっているとおっしゃられていました。
- 8つのポイント
- 主機能
- ゲームサイクルを回すための軸となる機能群(ホーム画面・フィールドHUDなど)。だいたいプロトタイプからベータ2の手前あたりで完成させる。
- 恒常タスク
- 明確なタスクの終わりがなく、長期で運用していくもの。(実装画面・チュートリアルなど)。仮実装を各マイルストーンで行いながら進める必要があるため長い期間で見積もられている。
- 準機能
- 主機能より重要度が落ちるが、マップ画面・編成画面などメインサイクルを回すために必須となる機能群。アルファ中半からベータ2までに完成させる。
- 育成機能
- メインの成長機能(キャラ強化・スキル装備など)。アルファ1からベータ2までに作っていく。
- ソーシャル機能
- ベータ1からユーザーテスト後にランキング要素・GvGなどのソーシャル要素を作成。
- 補助機能A
- 補助機能B
- CBTを実装する前に⑥・⑦の補助機能(データ引継ぎ・プレゼントBOXなど)を実装する。
- 運用機能
- CBTが終わった後に多言語対応やリリース後の運用素材などの制作を全体のクオリティアップと並行して進める。
- 主機能
UIルール作成の理想的なスケジュール
こちらの図のコンセプトも、重要性が高いものからカテゴライズして作ること、指定の期間での着地を徹底するというコンセプトで作成されたとのこと。
- 6つのポイント
- スケジューリング・タスク管理・UIビジュアルコンセプト策定
- UIリーダーが長期で担当する
- ルール化
- ①で決めたUIコンセプトを元に基礎的なパーツの汎用化やレギュレーション化をする。プロトタイプからアルファ2あたりで固める
- さらに多様なパーツ汎用化
- ②で決めた汎用パーツよりもさらに多様な制作物(トランディションアニメ・ローディング表示・アイコン類など)。ベータ2あたりで固めておくことで、CBT前後の開発スピードのアップにつなげることができる
- 運用素材1
- アルファ2からサムネイル、バナーといった運用素材をリリースまでに制作
- リリース・運用素材
- 外部へのバナー出稿や公式ホームページ素材、ストア画像といった所謂パブリッシュ素材を固める時期。ベータ2終わりからアセット締め2ヶ月前くらいまでに進める
- 運用素材2
- リリース後3か月分くらいの運用素材を作成する。
- スケジューリング・タスク管理・UIビジュアルコンセプト策定
UIレイアウト製作とUIルール・絵素材作成を合体させると、開発期間は2年・UIデザイナー数は最小見積もりでも約6名必要ということが分かりました。こういったスケジュールのモデルケースがあれば、プロジェクト初期にマイルストーンごとにやるべきタスクと必要人員数や人材の投入タイミングに関するおおよその見通しがつくだろうとのこと。スケジュールを立てるときの指標にしてもらえばとおっしゃられていました。
UIタスク管理の理想像とは
立てたスケジュールがそのまま進行されるとは限らない。長﨑さんの経験上、大規模開発で初期に引いたスケジュール通りに制作が進むことは大体1~2割程度とのこと。スケジュールを立てた後に大切なことは大枠のスケジュールではなく、日々のタスク管理方法が大事。
- 作業項目の見積もり漏れ
- 実際作業してみたら想定していない作業が見つかった
- 仕様見直しによるUI修正
- UIデザインコンセプトの見直し
- UIビジュアルコンセプトが世界観表現に適していない
- ユーザーテストや社内から寄せられるUIに対しての様々な要望対応
- 想定以上のバグ対応
- クローズドベータテストなどで多く発生
上記のような変数を許容した上でも柔軟に対応できる合理的なタスク管理方法をヘブンバーンズレッドの開発で導入されたとのこと。
タスク消化に関する日数の合計がマイルストーンに収まっているのか、はみ出しているのか確認。マイルストーンに間に合わないタスクがある場合、ディレクター・プランナー・デザイナー・エンジニアで週1回、各タスクにおいての優先順位を相談しながら並べ替えをするミーティングを開くそうです。
メンバー間でこまめに認識合わせをやっていくのは大切ですね!
まとめ
メリットとしてはマイルストーンごとにやること追加人員など大枠を見通すことができ、それに応じた予算も策定することができる。デメリットはアップデートコストが高く、ある程度経験がないとスケジューリングを行うときに中々精度が高まらないとのことでした。
メリットは変化する業務の優先順位をつけやすく、マイルストーンゴールに対して何が遅れているかが把握しやすい。デメリットとしてはタスク進行が遅延し始めたときに長期的な目線での影響が把握しにくいことがあるそうです。
ご登壇者
長﨑 二郎さん
株式会社WFS
WFS Studio本部 Produce 室 UIUXチーム
マネージャー/UIUXディレクター<講演者プロフィール>
コンシューマーゲーム制作会社から2012年グリー株式会社に入社。入社後、複数のゲームUIデザイン開発に携わる。株式会社WFSでは「アナザーエデン」「武器よさらば」「ダンまち〜メモリア・フレーゼ〜」等のUIコンセプト制作や開発に携わり、現在は「ヘブンバーンズレッド」のUIデザイン開発・マネジメント業務に従事。CEDEC2016にて「UI Discussionのススメ -UIデザインの品質を効率的に向上させるには -」を登壇。
<受講者へのメッセージ>
スマートフォンゲーム「ヘブンバーンズレッド」のキャッチコピーである「最上の、切なさを。」を、UIデザインで実現する為の三言論や進行管理の理想像を事例と共に2つのセッションで紹介します。本セッションにおける汎用性の高い考え方を学ぶ事で、UIデザイン製作における組織単位での強化、意識統一に応用できる内容となっています。
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※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)
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