ゲームクリエイター図鑑No.003 『鉄コン』開発者N#01「分からなかったことが分かる瞬間が楽しい」

「ゲームはおもしろい、ゲームを作ってる人も実はおもしろい」

多種多様な技術を持った人々が集まるゲーム業界。あの魅力的なゲームたちは、どんなゲームクリエイターが生み出しているのか。ベールに包まれた「ゲームクリエイター」の生態を解き明かし、この地に生息する「ゲームクリエイター図鑑」の完成を目指す。その過程として、一部のレポートを公開しよう。

クリエイター図鑑 No.003
『鉄とコンクリートの守り人』は、プレイヤーが街を歩いて撮影したマンホールの写真をアップロードして集約することでインフラを守る、「遊びつつ社会貢献ができるゲーム」。渋谷を始め各地でのイベントが好評を博している。開発者のNさんが温めていたアイデアが、インフラのメンテナンスという社会課題にマッチして位置情報ゲームとして形になった。その過程とクリエイターとしての矜持を、Nさんに語ってもらった。

「何となく仕事になり、もう20年経ちました」

──まずはNさんがゲーム開発を志したきっかけから教えてください。

1970年代生まれで、『ドラクエ3』に感動した世代です。子供の頃から基本的にゲームが好きでした。大学に入ってインターネットに出会い、インターネットを使ったゲームがすごく面白くて、「これがやりたいことなんじゃないか」と思ったのがきっかけです。それが何となく仕事になり、もう20年経ちました。

昔は『LOGiN』という雑誌があって、その最後に『ヤマログ』という読者投稿コーナーがあったんです。そこに「今後はインターネットを使ったゲームがすごい」と書いてあったのを覚えています。僕の世代だと大学に入るまでは誰もインターネットを使っていなかったし、存在もほとんど分かっていませんでした。

ですが大学に入ると状況が変わりました。サーバーを作るために必要なコンパイラーとかは当時はすごく高価だったのですが、オープンソースのプロジェクトに加わればアメリカの人たちからタダで配られるらしい、それを使えばオンラインのゲームを自作できるようになる、と聞きつけて、「これは面白い」とやり始めたんです。

 

──それは情報系の大学などで、勉強の一環としてやり始めたんですか?

いえ、大学の勉強とは全然関係なく、サークルの活動でした。サークルをやっていると部費が足りなくて、いろいろバイトするんですよ。多分、今でも結構やっていると思うんですが、大学のサークルでプログラム開発を受注したり、新しいPCやスマホをモニターして記事を書いたり、他にもゲーム会社でバイトしている先輩に手伝いとして呼ばれたり。僕も大学のサークルでいろいろな仕事をやって、そのパイプで業界に入っていきました。

「だいたい上手くいっていない時に呼ばれますね」

──今回お話をうかがう『鉄とコンクリートの守り人』は個人でかかわっているんですか?

そうですね。今はゲーム系の会社に所属していますが、これまで自分が開発にかかわったゲームはたくさん世に出ています。自分たちで企画して作ったものもあるし、大手のタイトルを作るチームの一員として働いたものもあります。ただ、今回の『鉄コン』もそうですがゲームはチームワークで作るものだし、プロモーション部分は全く自分ではやっていなかったりして、「自分が作った作品」と言い切るのは難しいですね。

僕はこれまでいろんな仕事をやってきましたが、ゲームの技術がどれも基本的に他の分野で使えるので、それが生きていると思います。例えばサーバーを作る技術、画面に描画する技術、大量のデータを保存する技術、アップルストアなどで正しくアプリを配信する技術とか、ゲーム作りでそういった技術を身につけた人はいろんな分野で働けます。自動車の自動運転に携わったり、検索エンジンを作ったり、ゲーム業界から様々な分野に散っています。ゲームは当たり外れがあるし、待遇面もあって長続きしない人も多くて大変なことが多いんですけど、扱う技術が幅広いことでゲーム以外に行ってもいろんな活躍ができます。

 

──『鉄とコンクリートの守り人』はどんな形でプロジェクトが始まったんですか?

もともとWhole Earth Foundationより「インフラのメンテナンス、インフラの危機的状況に多くの人が興味を持つ様な方法は何かないか」と相談を受けたことがきっかけです。

 

──「ゲームを作ってくれ」という依頼ではなかったんですね。

僕の場合、新しい仕事はFacebookかメールで「困っているから話を聞いてくれないか?」という形で始まることが多いんです。そうやって知り合いが突然やってきて、話を聞いて「僕がやるのが一番だな」と感じた時にやる感じですね。

例えば全然売れなくて困っていたり、作ろうとしていることがさっぱりできず、時間がなくなってしまったり、誰かいなくなっちゃったり。そういうヤバい状況の相談に乗ります。だいたいみんな僕の性格を知ってるからかもしれませんが、上手くいっていない時に呼ばれますね。

「うれしい悲鳴が上がっている状態が一番苦手です」

──ヤバい状況に放り込まれ続けると、「もうちょっと早く言ってくれれば、もっと簡単に解決できたのに」と嫌気がさしませんか?

僕はね、逆なんですよ(笑)。やれることが増えて、やるべきことが具体的に決まって形になってくるのが苦手と言うか、お客さんがどんどん集まって売れまくってうれしい悲鳴が上がっている状態が一番苦手です。それはそれで良いことですけど、「僕がやらなくても大丈夫かな」と思ってしまいます。上手くいっていれば職人集団を雇うこともできるし、僕じゃなくても誰か出てくるだろう、と。

僕はゼロから小さいものを作って試しに出してみて、その反響を見て。どうやればお客さんが喜んでくれるか分からない状態から少し分かる、その時に「めっちゃ面白い!」と思うんです。だからやっぱり、まだまだ売れる前の状態が好きなんです。

 

──そんなNさんの性格を知っているから、いろんな人たちが声を掛けてくるんですね。

そうですね。そういう時ってすべてが流動的で、前提条件がコロコロ変わるんですよ。人がいなくなったり逆に戻ってきたり、スケジュールが急に半分になりましたとか、予算があると思っていたらなかったりとか、ランダムなことが発生するんですけど、それが面白い(笑)。

みんな一生懸命にやっているのに困っていて、あがいている。そこに身を投じるのは嫌ではないんですよね。分からなかったことが分かる瞬間が楽しいです。

 

──淡々と仕事をしているだけでは味わえないスリルがあるものですか?

スリルかどうかは分からないんですけど、ちょっとプログラムを書いたり手直しするだけで、大きなインパクトが返ってくることがあります。ログインもできないボロボロのゲームを1カ所直すだけで、みんな大喜びする。そのダイレクトな反応があるところにやり甲斐を感じるんだと思います。

#01まとめ

Nさんの言葉で印象深かったのは「ゲーム作りでそういった技術を身につけた人はいろんな分野で働けます」という発言。ゲームクリエイターのスキルや経験は、ゲームはもちろん他の分野でもニーズがあり、活躍できる。それを常に意識していれば、あらゆるシーンで常に吸収し、成長していけるに違いない。

『鉄とコンクリートの守り人』 公式サイト

#02記事

「ゲームはおもしろい、ゲームを作ってる人も実はおもしろい」多種多様な技術を持った人々が集まるゲーム業界。あの魅力的なゲームたちは、どんなゲームクリエイターが生み出しているのか。ベールに包まれた「ゲームクリエイター」の生態を解き明[…]

 


GCGではゲームクリエイター甲子園の他にも、FB会などの甲子園関連コンテンツ、ゲームクリエイターを招いたトークイベント、企画書講座、就活相談など様々な活動をしています!

GCG会員になると開催予定のスケジュールの確認やWEB会員証をゲットできます。
新規CTA

▼学生向けLINEの登録はこちらから!
新規CTA

▼社会人向けLINE登録はこちらから!
新規CTA

 ゲームクリエイターズギルドとは

ゲームクリエイターが生涯現役でいられる世界を目指して、
ノウハウ還流の場やクリエイター同士のコミュニケーション機会など、
クリエイターの生涯活躍を支援する活動をしています。
会社の垣根を越えて、業界全体が協力してクリエイター育成が出来る
仕組みづくりを日々模索しています。
ゲームクリエイターズギルド 公式サイトはこちらから
\“いいね”“フォロー”で応援お願いいたします!/