「鉄拳」「ソウルキャリバー」のアニメーターから『小澤P』になっていた話【クリエイターヒストリア#9 後編】

クリエイターヒストリアとは
クリエイターヒストリアとは、ゲーム業界でお仕事をしているデザイナー、プランナー、エンジニアなどのクリエイター向けに、キャリアデザインをテーマに実施するセミナーイベントです。 業界で成功を納めているクリエイターは、今までどのようにキャリアを積んできたのでしょうか… 現在に至るまでの努力や道のり、人生の転機など、その歴史に迫っていきます。

クリエイターヒストリア#9、小澤至論さんが登場!

クリエイターヒストリアは各回で豪華ゲストをお招きし、キャリアストーリーをインタビュー形式で紐解いていくイベント。今回は、バンダイナムコスタジオ第1スタジオ・スタジオゲームデザインマネジメント室所属の小澤至論さん。アニメーターとして鉄拳やソウルキャリバーシリーズの開発にかかわり、2018年には『ソウルキャリバー6』において制作プロデューサーを務めた小澤さんに、キャリアを語っていただきました。

ゲームクリエイターの楽屋でまったり by Game Creators Guild

「一回これは捨てて、ゼロから考え直してください」

マネジメントする側に立った小澤さんは、「部下の夢に共感して、部下の強みを認めて、信じて任せてしまえばいい」という気付きを得て、制作チームをまとめるようになりました。そして2018年には、『ソウルキャリバー6』において制作プロデューサーを務めます。ここでも良い発見があり、「信じて任せる」ことで結果を出しました。

宮田
『ソウルキャリバー6』では全体の制作プロデューサーとなりました。
小澤氏
そのちょっと前、『ソウルキャリバー4』で販売プロデューサーを務めたことで、クリエイターってセールスの方とかプロモーションの方に支えられていることに気づきました。そこで僕もクリエイターを支える側、応援する側に回らなきゃいけないと感じたんです。
宮田
そこから、制作許可が下りた企画書を破り捨てたという話になるわけですね。
小澤氏
はい。これまでの宣伝の仕方とか市場調査とか、「これをやっておけば間違いない」という企画書を作って会社から制作許可を得たのですが、その企画書は無難で、現場の仕事としては面白くないだろうと感じたんです。
小澤氏
それで思い出したんです。僕が『ソウルキャリバー2』のアイヴィーや『鉄拳』のリリのアニメーションを任せてもらった時は、ものすごいやる気とパワーで作りました。今度は僕が現場の子たちに挑戦させてあげる番だと感じて、企画書を作り直してもらったんです。
宮田
ええええー!?
小澤氏
会議で「一回これは捨てて、ゼロから考え直してください」と言いました。みんなギョッとしたのがテレビ電話会議でも伝わってきたんですね。その1ヶ月後に上がってきた企画書は、僕の作ったもののすべてを超えてきたんですよ。
宮田
その結果、イメージしていたよりも『ソウルキャリバー6』は面白くなって、お客さんの評価もすごく高いものになったという感じですね。
小澤氏
あの時に「任せる」というマネジメントにシフトしていなかったら、『ソウルキャリバー6』はあそこまで高い評価を受けていなかったと思います。振り返ると、プロデューサーというお仕事をする上で、もう信じて任せて応援する。その大切さを感じましたね。

「あの学生さんともう一度会えた時、今度こそ支える言葉をかけてあげたい」

『ソウルキャリバー6』の開発秘話が掲載されたのを機に、学校での講演依頼を受けるようになった小澤さん。都内の高校で「自分の好きなモノを追求すれば、素晴らしい仕事が見つかる」というテーマで講演をした際、ある学生が「最後に一つ、いいですか」と質問をしたそうです。

「将来やりたいことがなくて焦っています。だから大学の志望校も選べていません。でも何となくこのまま進んでいたら、いつか人生で後戻りできなくなる時が来ると思うんです。いったい何歳までに自分のやりたいものを見つけなければいけないんでしょうか」という質問でした。

小澤氏
この時、質問の内容もさることながら、すでに人生に絶望しているような顔が印象的だったんですね。それに驚いて、しどろもどろになった僕の口から出たのは、「若いんだから大丈夫だよ」でした。でも、学生さんの気持ちを汲み取ってみると、もっと具体的な今の自分に届くアドバイスがほしかったんだと思うんですよね。それが言えなかった自分を、僕はすごく後悔したんです。
宮田
なるほど……。
小澤氏
きっと今の時代、世の中はいろんな情報に溢れています。そこで子供たちは「失敗するな」、「一流のところへ行け」と教わります。だからこそ「何歳までに何ができないと人生終わりだよ」と、誰かが勝手に決めた幸せのレールに振り回されて、そのレールから外れたと思った途端に絶望してしまうんじゃないか。
小澤氏
僕は失敗ばかりしてきた人間ですが、それでも今は意外と楽しんでいるよ、という姿を見せてきたつもりです。それで先生方も、僕であれば学生に乗り越えるためのヒントを与えてくれると期待して、講演依頼をしているんだと思ったんです。あの学生さんともう一度会えた時、今度こそ支える言葉をかけてあげたい。その時までに言葉を磨き続ける。これも今の僕の中で挑戦ですね。
宮田
そうしたら、実際に今あらためてその学生さんに答えを出すとしたら?
小澤氏
「夢を持っていない自分を責めないでほしい」です。何々しなきゃ人生終わり、みたいな他人の決めた幸せの法則は捨ててほしいんです。まず「自分の人生のハンドルを他人に預けてはいけない」。ここが一つ目ですね。
小澤氏
日々生きていく上で、自分が成長したり何かを達成する充実感があった方が生きがいを感じられると思うんです。そんな時は友達でもアイドルでも構いません、「夢に向かって走っている人を応援してあげる」です。その人の夢に相乗りさせてもらうんですね。
小澤氏
いつかその応援してる人が夢をつかんだ時、きっと自分にも何かできるんじゃないか、っていう可能性を見いだせる時が来ます。その可能性の輝きを感じ取ったら、それをヒントに自分が何をしたかったのかを追いかけ始めて、それを周りに語ってほしいです。その時に友達があなたの夢を応援し始めたら、それがあなたの生きがいになります。
宮田
その答えを彼に伝えたらどうなっていたか、見てみたいですね。
小澤氏
そうですね。あの時の表情が明るくなればと思います。

「挑戦して、応援してください」

宮田
最後のまとめとして、「振り返ったときに後悔しないクリエイター人生を歩む秘訣とは?」を教えていただきたいです。
小澤氏
「挑戦して、応援してください。そうすれば、素晴らしい仲間に巡り会えます」です。皆さんがたくさんの仲間に出会えるよう願っています。その上で、やっぱりゲーム制作って最高だよねって思えてもらえたのなら、僕と一緒にゲームを作りましょう。僕は少し先の未来で待っています。

小澤さんの熱いメッセージは心に響くものがあったのではないでしょうか。「自分の人生のハンドルを他人に預けてはいけない」と「夢に向かって走っている人を応援してあげる」。この大事な言葉を胸にしまって、今回のゲームクリエイターヒストリアはお開きとさせていただきます!

完!

▶︎前編はこちら

登壇者ご紹介

小澤至論(おざわ みちのり)氏

バンダイナムコスタジオ第1スタジオ・スタジオゲームデザインマネジメント室所属。
青森県出身。大学卒業後、大阪のゲーム会社へ入社。
2000年にナムコ(当時)へ移籍後、アニメーターとして鉄拳やソウルキャリバーシリーズの開発に関わる。2018年には『ソウルキャリバー6』において制作プロデューサーを務める。現状は同社の新人教育や学校での講演などもしている。

宮田大介(みやた だいすけ)

株式会社STAND代表取締役。
クリエイターコミュニティのゲームクリエイターズギルドを主催する。過去にはゲーム開発者として、モバイルタイトルのディレクター、プロデューサーから、プランニング部門長、ゲーム事業部の事業部長や、韓国支社で日中韓の3拠点でのゲーム開発事業の責任者をしたりといろいろ。いろんなクリエイターを応援して、愛のあるクソゲーからAAAタイトルまで多種多様なゲームが生まれ続ける環境を目指しています!


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※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)

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