モーションアクターによる、より魅力的なキャラクター創りをお手伝いするためのノウハウ共有|CEDEC2024レポート

CEDEC2024が8月21日~23日に開催されました。
楽屋でまったりでは様々なセッションのレポートをお送りいたします。
今回はキャラクター創りを深堀するためのモーションアクターの知見を共有するセッションをご紹介いたします。

モーションアクターによる、より魅力的なキャラクター創りをお手伝いするためのノウハウ共有

セッション内容

キャラクター創りをこれまで以上に深掘りしていくためのセッションです。
ゲームの制作現場では日々様々な参考資料を研究し、魅力的なキャラクターを生み出しておられると思います。 しかし中には体を使う習慣がなく、アイデアに困ってるクリエイター様もいらっしゃるのではないでしょうか?
実際に、キャラクター創りに協力して欲しいというご依頼も増えて参りました。
仕様を理解した上で、実際に体を動かしてアイデアで出せるモーションアクターの知見は、クリエイティブの段階からお力になれると考え、その有効性・有益性を共有させていただきます。

受講スキル

  1. アニメーター、モーションデザイナー、ディレクター、プランナー、レベルデザイナー、コンセプトデザイナー

得られる知見

  1. キャラクターを創るときの基本
  2. よりこだわったモーションを開発するためのアイデア

モーションアクターのワークフロー

ご登壇者の杉口さんは、去年のCEDECでもセッションを行われていました。

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そのセッションでは、ワークフローの中で撮影やデータ加工といった現場ノウハウに焦点を当て、関係各社の風通しを良くすることで円滑なコミュニケーションを促進し、結果としてよりハイクオリティなモーションデータを生み出す方法を紹介されていました。

そのセッションを受けて、いくつかのディベロッパーから、『プロジェクトの企画の段階(プリプロダクション)からキャラクターについて相談できないか』というリクエストがあったとのことです。モーションアクターはそういった形での仕事も行っていますが、あまり周知されていないことが分かり、今回のセッションに繋がったそうです。

一般的なゲーム制作のワークフローでは、企画段階にアニメーターやデザイナーが自身の身体を動かしながら動きのアイディアを練ることが多いですが、モーションアクターと協力することで、今までにないアイデアを見つけつつ、総合的なコストを抑えながらクオリティを向上させることが可能になります。また、これは企画の円滑な進行にも寄与し、効率化にもつながるとのことです。

実演によるアイデアの発見

一つ目の例は、多様な個性を持つキャラクターに、それぞれの「回し蹴り」のモーションを作成する場合です。

格闘技の動きを土台としながら、細部にアレンジを加えることでキャラクター性を表現できるそうです。重要なポイントは、動きの始まる最初のポーズと動きが終わった後のポーズで、アニメーションのキーフレームに相当する部分です。

杉口さんは、”ディベロッパーのモーション会議に参加している”という想定のもと、実際に身体を動かしてデモンストレーションを行いました。

足幅を少し広めに取り、攻撃の軌道を大きくすると正統派な主人公風に、足幅を狭めにして軌道を鋭くするとクール風に、また体幹を曲げ関節の不自然さを極端に大きくすれば狂人風になるなど、演じ分けのセオリーもあるそうです。

二つ目の例は、「ダメージを受けた時」のモーションを作成する場合です。こちらの紹介でも、Maoさんが実際に身体を動かしてデモンストレーションを行いました。

こちらのモーションでも、上下幅の取り方や腕の動かし方、膝や手首の角度、動きの速さを使い分け、清楚風やクール風、あざと風といったように演じ分けのセオリーが紹介されました。

このように、想定した動き以外のアイデアも専門家を入れて発見したり、絵コンテでは伝えにくい部分もその場で実演できるため、ニュアンスがつかみやすくなると言います。

また、作成するモーションを使うキャラクターは細かい個性を持っているため、ポイントを整理しながらこれらのモーションを組み合わせつつ、そのキャラクターらしい新しいモーションを作っていきます。

実際の撮影前に企業と打ち合わせをしながらアイディア出しと撮影をすることが増えるなか、限られた時間やこなさなければいけないモーションの数などもあり、キャラクターのモーションについて深く練ることが難しいことが多いそうです。

また、現場に来ていないスタッフに確認が取れないこともよくあるケースと言います。事前に打ち合わせをしてから撮影に入ることで、確実に必要なデータを得ることができるのが大きなメリットとのことです。

実演によるイメージのすり合わせ

実演によるイメージのすり合わせについて、撮影現場で実際にモーションを作っていく際は、リズムや雰囲気などを想像で補完する必要が無く、モーションの解像度が高まるため、有用だといいます。

さらに、複数のクリエイターが参加している場合、それぞれがモーションに対して持つ印象や認識が異なる場合も多いそうです。実際にモーションアクターによる動きを見ることで、認識をすり合わせることが可能だとのことです。

また、感情をモーションで表すことはハードルが高いことだとしながら、ベーシックなセオリーがあると言います。例えば、手の位置が高いほど感情を大きく見せることができ、動きが小さく速ければクール風な印象を持たせることができます。また、重心から先にゆっくりと動かせば、落ち着いた印象を生み出すことができるとのことです。

実演によるキャラクターのブラッシュアップ

アイディアを出し、イメージをすり合わせたあとは、より具体的なモーションに向けてブラッシュアップをしていきます。このブラッシュアップをする方法は無限に方法があるらしく、杉口さんとMaoさんは実際に身体を動かしながら説明を行いました。

原作のあるゲームの場合、アニメやマンガをモーションのリファレンス(参考資料)として使用することが多いです。しかし、そのリファレンスには最初と最後のポーズしか描かれておらず、本来は連続した動きの間に存在するはずの動きや状態が欠けていることがあります。その場合、モーションアクターはその間にある自然な動きを推測したり、新たに考案して作り出し、その部分を補完するそうです。

また、実際にキャラクターが着ているコスチュームの動きが分からない場合もあり、その際は撮影時にコスチュームを装着した状態で動き、服や装備の動きを確認するとのことです。現実の着物はめくり上がったりしてキャラクターの顔を隠してしまうこともありますが、衣装の一部を縫うなどして固定しておくことで、衣装のひらみが自然かつ障害物にならないように動くことができるそうです。

次に、とある漫画作品のバトル場面を再現した動画が再生されました。漫画は静止画によって構成されるため、コマとコマの間の動きが描かれていなかったり、視覚効果を優先したことによる矛盾の発生があったりするそうです。こうした場合の処理方法には、映画など実写におけるノウハウを応用することができ、むしろ得意分野でもあるとのことです。

さらに、動きを俯瞰するだけでなく、一連のモーションのどの部分をキービジュアルにすることで魅力的なカットになるかを考えるなど、絵コンテをブラッシュアップする手助けもできると杉口さんは述べ、「これからのモーションアクターはモーションメーカーでもある」と力強くおっしゃっていました。

まとめ

今回のセッションでは、アイディアの発見からイメージのすり合わせ、そしてブラッシュアップを通して、キャラクター作りにおけるモーションアクターの効果的な協力方法が紹介されました。

そして、YouTubeチャンネル『株式会社モーションアクター(Motion Actor Inc)』にはそのような動画が数千種類アップされていて、基本的にはフリー素材として使用できるとのことです。

登壇者の方が所属している株式会社モーションアクターでは、他社と共同でクリエイター向けのさまざまな体験会も行っており、アニメーションやモーションづくりに携わる人であれば、経験することで表現に深みが生まれると紹介されました。

最後に、モーションアクターはキャラクターや撮影方法が決まってからのみ頼める存在ではなく、撮影方法やモーションアイディア、キャラクター作りから協力できる準備があるとのことでした。

質疑応答

性別ごとのモーションはその性別のモーションアクターしかできないのですか?
杉口 秀樹さん
動きのアイディア出しをする場合は性別に限らず協力することが可能です。しかし、違う性別の場合は想像で補えない部分も増えてしまいますが、ご相談はできます。別の方法として、時間を分けて相談することも可能ですし、単純に頭数が多い方がアイディアも増えることもあると思います。
Vtuberの3D配信などにおけるモーション指導などは行っていますか?
杉口 秀樹さん

やらせてもらっています。最近では世界コスプレサミットの日本代表コスプレイヤーに指導を行いました。

モーションづくりについてディベロッパーからアクターへ情報を提供する場合、特に有用な情報などはありますか?
杉口 秀樹さん

ビジュアルがあると早い段階で提案ができます。また、暫定的でも構わないのでセリフがあると、キャラクターを理解しやすく、アイディアを膨らませたりモーションを考えやすいです。

ご登壇者

杉口 秀樹さん

株式会社モーションアクター 代表取締役

<講演者プロフィール>

株式会社モーションアクター代表取締役
モーションアクター、アクションコーディネーター、モーションプランナー等
SAG(アメリカ俳優協会)メンバー
ハリウッドでのスタントマンを経て、日本にXMAやトリッキングを持ちこむ。
仮面ライダーウィザードのスーツアクターに抜擢される。
2020年株式会社モーションアクターを設立。
アクターとしてはもちろんのこと、動きの体系化・言語化を得意とする。
2023 モーションキャプチャーをテーマにした舞台『もーきゃぷ』をプロデュース。

過去3回のCEDECでゲーム業界に動きのノウハウを伝える。
CEDEC AWORD 2023 審査員

<受講者へのメッセージ>

ご興味を持ってくださりありがとうございます。
これまでのCEDECでは主に激しいアクションシーンにおいての自然さ、スムーズさ、迫力、仕様への調整などを講演させてもらいました。
今回のCEDECでは主にエモートや演技の部分においての内容をお話しさせていただきます。
なかなか正解・不正解がない演技パートにおいて、何を良しとするかは判断の難しいことですが、何も指針がないと混乱してしまうと思います。
その中で『モーションアクターとして、我々はこうしております』といったことをご紹介することが、ディレクターや3Dアニメーターの方々はもちろん、手書きのアニメーターさん達にも参考になるのではないかと考えております。
よろしければ是非生で見てください。楽しい講演ができるよう頑張りたいと思います。

Maoさん

株式会社モーションアクター アクター ダンス事業部部長

<講演者プロフィール>

幼少期よりダンスを始め全国大会優勝、世界大会二連覇など、
国内外の数々のダンスバトルで成績を残す。
カナダ、アメリカでの2年留学を経て、ワールドワイドなダンスを学ぶ。
帰国後はモーションアクターとして、ダンス、お芝居、アクション等、英語の台詞も含め、
あらゆるキャラクターに対応。
アクターのみに留まらず、メディア、CM、映画など様々な分野でも活躍中。

<受講者へのメッセージ>

初めまして。株式会社モーションアクターMaoです。

昨年に引き続き、今年もCEDEC2024に登壇させていただけること、とても光栄です。
会場に足を運んでいただく皆様、オンラインで参加していただく皆様のお力になれるよう、講演させていただきます!
どうぞよろしくお願いいたします!

 

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※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約7600人参加(2023年12月現在)

スキルや知識を学びゲームクリエイターとして成長・活躍し続けたい、同じ業界にいる仲間と市場の動向や技術についてなどの交流したい、日本のゲーム業界・職業自体の価値を上げ今より良い環境を作っていきたい……。そんなゲームを愛する人たちの未来に、必要な情報や機会を提供します。
ゲームクリエイターズギルド公式サイト ▶ https://game.creators-guild.com/

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