明日から使える!海外文献に頻出するLevel Design用語の紹介|CEDEC2024レポート

CEDEC2024が8月21日~23日に開催されました。
楽屋でまったりでは様々なセッションのレポートをお送りいたします。
今回は海外で確立された”Level Design”の手法や理論を解説するセッションをご紹介いたします。

明日から使える!海外文献に頻出するLevel Design用語の紹介

セッション内容

海外のゲームステージ設計(いわゆる”Level Design”)に関する書籍やWeb記事を読んでいると、複数の文献に頻繁に登場する手法や理論の用語があります。これらの用語は、海外で働く”Level Designer”にとっては基本的な知識としてある程度確立され、実際の開発業務でも運用されているようです。

本セッションでは、主に英語圏や韓国の文献で頻繁に登場する”Level Design”の手法を日本語で紹介し、それらが実際に用いられたと思われるゲーム作品の事例を交えながら、理論と実践の両面で解説します。
また、それらの用語を解説するにあたって、講演者の開発経験や研究をもとにしたレベルデザインのフレームワーク(考え方)についても、いくつか紹介します。

受講スキル

  1. ゲームデザインやステージ設計(Level Design)の実務経験があると、より理解が深まります

得られる知見

  1. 海外のLevel Designに関する手法や理論についての知識
  2. ロジカルなステージ設計をするための手がかり
  3. 海外の文献から見聞を広げるためのきっかけ

Level Designという概念の認識をそろえる

「レベルデザイン」の意味

日本におけるレベルデザインの意味は、プロジェクトや業態によって多様です。たとえば、ステージ配置、難易度調整、成長設計などが含まれます。一方、英語圏では「レベルデザイン」は主に「ステージの設計」を指すことが多く、その中に多様な業務内容が含まれる場合があります。

詳しくは、Automatonさんの動画をご覧くださいとのことでした。

この講演での”Level Design”の認識

要素の構成や配置によって楽しいステージをつくる

 

Level Design 役割について考える

課題の提示とペース配分

課題は英語では「チャレンジ」と呼ばれることが多く、プレイヤーが攻略すべき各場面を指します。これには、穴や扉などの障害物を越えたり、戦闘を行ったりすることが含まれます。

これらのデザインによって、プレイヤーは心地よい手ごたえを感じながら学習し、達成感や自己肯定感を得ることができるそうです。

プレイヤーの動きを間接的にコントロール

新たな目標を自然と次々と発見できるようにするためには、「おもてなし誘導」を取り入れるのはいかがでしょうか。例えば、遠くに見える気になる景色や建物、アイテム、快適に進める通路や分かりやすい入口などが該当します。また、敵の動きを観察できる見晴らしの良いスポットなどは、行動の計画を立てるためのヒントを提供することができます。

このデザインによって、プレイヤーは探索中に常に次に何があるのか気になる動機付けがされ、快適にストレスなく次の課題に進むことができるとのことです。

インタラクティブに物語や世界観へアクセス
少し異なるアプローチですが、プレイヤーがゲームの世界を歩き回り、相互作用する機会を作ることも重要です。このデザインによって、ゲーム世界への没入感やプレイヤーの実在感を高めることができるとされています。

海外の情報源とその重要性

YouTubeで「Level Design」と検索すると、開発事例や理論に関する多くの動画が見つかります。日本語で「レベルデザイン」と検索するよりも多種多様な情報が得られます。海外のネット上では議論が活発に行われているとのこと。特に、実際に作成されたステージを公開する文化が根付いているようです。

海外スタジオが強いジャンルでは、豊富な実績とノウハウの蓄積があり、その中で繰り返し登場するキーワードもいくつか見受けられたとのこと。講演者の知久さんは、日本の開発現場ではこれらのキーワードが共通言語化されていないものもあると感じているそうです。

Level Design 用語の紹介

課題の提示とペース配分

ゲーム全体の進行設計

「Beat Chart」
「Intensity Graph」

レベル内の体験設計

「Level Diagram」
「Critical Path」
「Critical Path」
「Blockout」

 

プレイヤーの動きを間接的にコントロール

行動を制限させる

「Gating」
「Encounter Design」
「Encounter Design」

視覚的に誘導する

「Point Of Interest」
「Point Of Interest」
「Breadcrumbs」
「Affordance」
インタラクティブに物語や世界観へアクセス
「Environmental Storytelling」
「Meaningful Choice」
「Emergent Gameplay」

用語のまとめ

参考文献について

知久 温さん

WEB上で読める本として、「The Level Design Book」がおすすめです。理論的な内容が豊富に書かれています。

動画資料では、「Game Maker’s Toolkit」がさまざまなテーマを扱っています。

書籍では、洋書の翻訳版がいくつかあります。「ゲームデザイナーのための空間設計 歴史的建造物から学ぶレベルデザイン」は長らく絶版でしたが、最近「レベルデザインの教科書(仮)」として第2版の予約が開始されましたので、こちらもぜひチェックしてみてください!

質疑応答

最後に紹介された「Emergent Gameplay」という言葉についてですが、ゲームでよく使われるMDAフレームワークの「D」(ダイナミクス)と似た概念のように感じます。これらはどのように区別すればよいのでしょうか?
知久 温さん

質問ありがとうございます。MDAフレームワークというゲームデザインの考え方があります。これは「Mechanics(メカニクス)・Dynamics(ダイナミクス)・Aesthetics(エステティクス)」の3つの要素からゲームデザインを考えることで、プレイヤー体験をより理解しやすくするというものです。「M」はメカニクスで、ゲームの仕様そのものを指し、それによってプレイヤーがどのように変化するかが「D」のダイナミクスです。このダイナミクス部分が無限に広がるという解釈ではないかと思います。

例えば、『ゼルダの伝説』を例に挙げると、火がついた弓矢を放てば、草に当たれば草は燃え、爆弾に当たれば爆発する、といった反応があります。これらはゲームシステム上でコリジョンやヒットの反応を考慮し、ダイナミクスも最初から意図的に組み込んでいるのではないかと考えます。

ワードそのものにこだわるのではなく、海外で頻用されている用語を知っておくと、検索する際に便利ですし、海外でも意味が曖昧なことがあるので、知識として持っておくと役立ちますね。

ご登壇者

知久 温さん

フリーランス
ゲームデザイナー/ゲーム開発研究家

<講演者プロフィール>

2015年に株式会社カプコンに入社。
以降は複数のディベロッパーでゲーム開発に従事。
専門:プロトタイプ設計進行、シングルプレイのレベルデザイン、ゲームプランナーの新人研修

本業とは別にフリーランスの「ビデオゲーム開発の研究家」として、SNSや学校講演などで活動。
CEDEC2024ゲームデザイン部門運営委員。
研究テーマ:「ゲーム開発とアカデミアの橋渡し」「ゲームデザインスキルの体系化・標準化・共通言語化」

2020年 PERACON 殿堂入り
2022年 CEDEC登壇『体系的で実践的なゲームプランナー新人研修を目指して』/ PERACON審査員
2023年 ゲームクリエイターズ甲子園 特別講評
2024年 東京国際工科専門職大学 特別講義『ゲームデザインにおけるゲームAIの役割』

 

<受講者へのメッセージ>

「あっ、このテクニックって名前がついてたんだ」というものが多いかと思います。レベルデザインに関する知見は日本語より英語の文献の方が豊富なので、英語の用語を知っておくだけでも、より多くの知見にアクセスできるようになるはずです。

本講演をきっかけに、国内外のレベルデザイナーの情報交流がもっと盛んになり、日本のゲームデザイン技術の向上につながれば幸いです。

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