CEDEC2022が8月23日~25日に開催されています。
楽屋でまったりで行ったアンケートをもとに、様々なセッションのレポートをお送りいたします。
今回はゲームを作る部分ではなく、ゲームを作った後、売るまでの間に起きた様々なトラブルをお話いただいたセッションをご紹介いたします。
自作ゲームのパブリッシングを考えている方必見です!
自社パブリッシング…ゲームを作るだけじゃダメだった…
サイバーコネクトツー初自社パブリッシングタイトル『戦場のフーガ』を発売するにあたりゲームを開発する以外に様々な問題や課題が発生しました。各ストアでのルールの違い、プラットフォーマーへの申請など無知ゆえに沢山ご迷惑をおかけしました。そこからの失敗と学びを経てワールドワイド・マルチプラットフォームでの発売を実現しました。
これからオリジナルゲームの発売を考えている方々に事例を交えてどのように課題に対応したか、まだどのような点を気を付けたほうがよいかなどをご紹介します。
受講スキル
- とくになし
得られる知見
- ワールドワイド・マルチプラットフォームでゲームパブリッシングをしたい方がゲームを作る以外に必要なことを学べます。
ゲーム紹介
『 戦場のフーガ』
サイバーコネクトツーの初パブリッシングタイトル。
2021年7月29日発売されたゲームソフト。
対応プラットフォーム:PS4®・PS5™・Nintendo Switch™・Steam・Xbox One・Xbox Series X|S・Epic Games Store
@Fuga_CC2
https://www.cc2.co.jp/fuga/
開発部QAパート、誰一人責めることなく解決のために知恵を振り絞る
アルファ版完成が見えてきた頃に最初の事件発生!
「そろそろ開発機で動かせる時期ですね。QA用の開発機をいただけますか。」
「社内に開発機の在庫1つもないよ……。」
開発機とは……
開発中のコンシューマータイトルを動かす専用機材。市販されているゲーム機では開発中のタイトルを動かすことはできない。
◎「テスト用」の開発機がない問題! 原因
『戦場のフーガ』の企画立ち上げ当初はプログラマーやアーティスト用の開発機はすぐに使用するため購入されたそうですが、デバッグはまだまだ先の予定だったため購入が見送られ、QAが合流するまで完全に忘れ去られてしまっていたそう。
実は開発途中では何台必要かなんて分からなかったね。そういったところも含めて後回しにした結果ギリギリになってしまって、かつ「手配!」って思ってもすぐに届かないんだよね。
ゲームを作り始める段階で発売までに必要な機材を、すべて担当者にヒアリングする。
※特に開発機は受け取りまでに時間がかかるケースもあるので早めに連絡する。
対応プラットフォームが多すぎた事件
- ガイドラインやターミノロジー、ハード固有の仕様、スペックの違いなどによりテスト項目が増える。
- 各プラットフォーマーへのマスター提出やストア設定などのパブリッシング作業が増える。
- 準備するテスト機材が増える。
- 取得するレーティングが増える可能性がある。
「やれそうな人がやる」のは作戦じゃない。
正直に言いましょう。作戦とか偉そうなことは言えません。そうするしかなかったんです。
対策
- パブリッシング対応のみを行う専任者を立てて、情報を集約、スケジュール・提出物の見える化。
- 各プラットフォーマーの開発者向けポータルサイトを確認し、発売までの流れをしっかり把握。
- 各フェーズでの提出物の準備期間、各種申請の入力作業を考慮したスケジュールを作成。
開発部QAパート まとめ
- ゲーム本編のQAとは別に、パブリッシングの専任者を立てる!
- 専任者は早期に各プラットフォーマー様のポータルサイトで調査を開始する!
販売パート、続々と起きる問題に「お客さまファースト」で取り組む
『戦場のフーガ』発売日に事件発生!
◎一部プラットフォームで販売価格が違ったまま発売した原因!
ゲーム発売に向けて各プラットフォームでの申請の際に、通常は小売価格を入力するプラットフォームが多いが一部例外があった。そして、当時は事前にドキュメントを読まず進行してしまった結果ミスに気付かなかったそうです。
500円事件
◎発売から2ヵ月後「え? 海外で500円で売っている?」原因!
外国人スタッフが「海外だと500円で売っていない?」と気付いたことで慌てて調査をすることに。アルゼンチンやトルコでおよそ500円で販売。その他の国も想像より安い国が多数あることが判明したそう。
プラットフォーマーにある自動計算を使用してドルから価格を算出したため、為替の差まで把握できていなかったことが原因とのこと。さらに発生した問題として、この影響により、一部の国は安い金額となって売上本数が上がっていたそうです。
とにかく安くなっている国を調査し、価格を見直すため、全プラットフォーム特に価格が安くなっている27ヵ国を並べ修正方針を作成。
⇩
価格修正における方針
物価レートと為替レートから産出した独自計算の価格と一部プラットフォーマーの価格を比較して最も高いものを決定価格とする。
とんでもない修正対応で事件発生!
修正方針として一部の値段の高いプラットフォームに合わせたのでかなり値上がりをしてしまったことが原因だったとのこと。
①日本・海外の大手パブリッシャータイトルを合計20タイトル調べる
②調べたタイトルの金額を日本円に換算。日本円から各国何%の値段(日本円)になっているか調べる
③多数の企業のレート差から平均値を求めて差の%を出す。その差を戦場のフーガの価格に適用
販売パート まとめ
- 自動計算は楽だが高くなったりやすくなったりする。価格がばらつく
- 発売前にしっかりと価格は吟味し慎重に決定しておく
- 販売地域と商品数、プラットフォームが増えるほど作業が増える(国×商品数×プラットフォーム)
- 3回目にしてたどり付いた。多数の企業のレートの差から平均値を出しその数字を反映刺せるCC2独自の金額設定
そんなとき、今回お話したようなことは次から次へと起きていくので、私たちの失敗体験が日本のデベロッパーの皆さんに共有することによって、上手く回避してもらえるといいですね。
日本のゲーム業界が盛り上がっていくことはハッピーだと思っています。
質疑応答
商標登録は企画が通った時点ですぐに着手しまして、北米や欧州の主要な国々において商標登録を実施しました。
これは自分たちではできないです。私たちも弁理士さんにご相談をさせていただき、どういった地域をどうやって網羅していくのかを教えていただきながら一つずつ積み重ねていきました。こちらも、商標登録まで色々リターンがあったので1年くらい掛かった記憶がありますね。
あとはゲームだけではなく、グッズを出したいというのも考えていたのでそういったところも商標登録が必要でした。そこも早めの相談をおすすめします。
お知らせ
公式コミカライズ『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』電子2巻 好評発売中!
┗ゲームだけだとシリアスな話ですが、ゲームでは描けなかった部分をコミックでまとめた作品。個性的なキャラクターたちが登場し、没入感をもって読んでもらえる作品になっているとのこと。
┗次こそ、世の中に迷惑をかけないように頑張りたい! 経験値は高い! とおっしゃられていました。
ご登壇者
宮崎 太一郎さん
株式会社サイバーコネクトツー
取締役副社長<講演者プロフィール>
商社(CGソフトウェア、ゲーム開発機営業)からCGプロダクションを経て、2010年サイバーコネクトツー入社。
社内の人員管理、財務管理をはじめ、国内外問わず、受発注・契約まわりの窓口や、アウトソーシング先の選定などを行っている。また、同社の業務部を取りまとめている。<受講者へのメッセージ>
デベロッパーの皆さん
普段私たちがお世話になっておりますパブリッシャーの皆さんが我々デベロッパーが開発に集中できるように様々な手続き・調整を行ってくださっているのをご存じですか?
「もちろん知ってるよ!」私そう思っていましたが全然知りませんでした。
尾崎 友哉さん
株式会社サイバーコネクトツー
制作推進課 品質保証室 リード<講演者プロフィール>
2013年に株式会社サイバーコネクトツーに入社。
ソーシャル、コンシューマタイトルの品質保証業務に従事。
現在はQAリードとして社内におけるQAの業務範囲拡大、組織化を推進中。<受講者へのメッセージ>
わからないことがわからない状態で挑戦した初パブリッシングにおいて、
ゲームの「完成」と「発売」は全く別物だということを学びました。
これからゲームを世に出したいと思っている方の参考になれば幸いです。
入部 春彦さん
株式会社サイバーコネクトツー
広報課 チーフ<講演者プロフィール>
2017年入社。福岡のゲーム団体GFFやCEDEC+KYUSHU実行委員会などイベント関連や広報業務を担当。現在は広報課チーフとして広報業務のほか、自社パブリッシングにおける様々なサポート業務に従事している。
<受講者へのメッセージ>
自社初のパブリッシングである『戦場のフーガ』は発売直前まで円、ドル、ユーロの主要貨幣しか販売価格が決定していない状態でした。発売まで、どのように世界の販売価格を決定していったか?また発売後に発生した世界各国の価格の修正など、どのように対処したかを紹介します。日本からワールドワイドへのゲーム発売を考えられている方にお勧めの講演です。
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ゲームクリエイターをはじめとしたゲームに関わる/関わりたい人たちが、プロ・アマチュア/学生・社会人/企業間など、あらゆる垣根を越え「学び合い」「語り合い」「教え合う」ゲームクリエイターのための拠点(ギルド)です。
※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)
スキルや知識を学びゲームクリエイターとして成長・活躍し続けたい、同じ業界にいる仲間と市場の動向や技術についてなどの交流したい、日本のゲーム業界・職業自体の価値を上げ今より良い環境を作っていきたい……。そんなゲームを愛する人たちの未来に、必要な情報や機会を提供します。
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