CEDEC2022が8月23日~25日に開催されました。
楽屋でまったりで行ったアンケートをもとに、様々なセッションのレポートをお送りいたします。
今回はボードゲームをデジタル化する際に発生した様々な問題をUIデザインで解決されたセッションをご紹介いたします。
普段ボードゲームで遊ばれる方や、アナログゲームのデジタル化へ興味がある方必見です!
ボードゲームのデジタル化への挑戦 – レッツプレイ!オインクゲームズの UI・ゲームデザイン
「レッツプレイ!オインクゲームズ」とは、オインクゲームズが2010年から現在までに制作した40以上のボードゲームの中から選りすぐりのタイトルを、デジタルかつオンラインで遊べるようにしたものです。
ボードゲームの面白さをデジタルで再現するのは一筋縄ではいきませんでした。他のプレイヤーを感じない、盛り上がりに欠けるなど、様々な壁にぶつかりました。本セッションでは、オインクゲームズのデジタル部が、いかにしてこれらの課題をUIデザインで解決していったかを共有します。また、開発に至った経緯や、初期のコンセプト・ビジュアルデザインについても説明します。そこから更に一歩進んで、デジタル上に正確にボードゲームを再現するだけでなく、リアルでの制約に囚われていた部分や、デジタルならではの利点を活かせる部分について、元のコンポーネント(UI)やルール(ゲームデザイン)に囚われずに変更を入れることで、ボードゲームの良さとデジタルゲームの良さを併せ持つ、デジタルだからこそ出来るボードゲームの形を目指した事例を紹介します。
受講スキル
- ボードゲームのデジタル化に興味のある方
- UIデザイン・ゲームデザインに興味のある方
得られる知見
- ボードゲームをデジタル化する際にどのようなことを大切にすべきか。
- ボードゲームをデジタル化するとどのような課題があるのか、またその解決策。
- リアルなボードゲームの得意・不得意は何か、デジタルゲームの得意・不得意は何か。
- 双方の得意な部分を活かした、デジタルだからこそ出来るボードゲームの形について。
アナログからデジタルへ『 レッツプレイ!オインクゲームズ』
オインクゲームズが2010年から現在までに制作したおよそ50本ボードゲームの中から人気作をオンラインでもオフラインで遊ぶことのできるデジタルゲーム。Nintendo SwitchとSteamで好評配信中です。オンラインでのクロスプラットフォームプレイに対応しています。
秋には「fafnir」や「scout」の追加が予定されています。
https://oinkgames.com/ja/games/digital/lets-play-oink-games/
経緯・コンセプト
ボードゲームの面白いところは、無意識に感じとる相手の表情・動き・会話などの情報を元に、プレイヤーが様々なことを考えることで面白さが増幅されている面があるため、表情や動きが抜け落ちてしまうと面白さを再現しにくいと考えていらっしゃったそうです。
しかし、コロナ禍になって人が集まりづらくなり、ボードゲームの危機!
離れていてもボードゲームができる環境が必要だという問題意識が生まれた頃、心理戦を楽しむオンラインゲーム『Among Us 』の流行により、ボードゲームのようなゲームをオンラインで遊ぶ土壌ができ始めていることを感じ取られたとのこと。
3つの開発コンセプト
- 人と会わなくてもプレイできる
- すべてのゲームがオンラインでほかのプレイヤーと遊べることを第一に考える
- ビデオチャットなどで遊ぶことを想定
- 人と人との関わり合いを邪魔しない
- デジタルゲームの演出やビジュアルではなく、ボードゲームの空気感から離れないことを目指す
- 友だち同士で遊ぶこと
- ランキングなどの余計なものを考えない
- 友だちと遊ぶときに世界ランキングは気にしない
- ランキングなどの余計なものを考えない
コンセプトビジュアル
<友だちと一緒にボードゲームをやっている>という雰囲気を大切に、実際に動かしているような見え方にこだわられたそう。(画像『海底探索』)
注目ポイントは得点用のチップも見えていること。得点をUI上の数字にしてしまうのもありだが、あえて置いているとのこと。物理的な物のやり取りが見えることを意識。(画像『スタータップス』)
デジタル化でぶつかった壁
現実でのゲームプレイは「自分の番」を示すものがないため、開発初期のバージョンでも何も表示がなかったそう。デジタルにしてみると分かりにくいということが判明!
そこで、専用のSEと表示で自分の番が分かるように対応。
さらにズームや山札が盛り上がる演出で画面に変化を作りだしたとのことでした。
現実でのプレイでは「駒を動かしてチップを取り、ほかのチップと入れ替えて駒を戻す」という手順の多さゆえに、チップを拾わないという<心理的な負荷がかかって>しまう。
デジタルのプレイでは自動的に進行されるため<心理的負荷が軽い>。自動進行は「重み」がなくゲームが単調に感じてしまう理由の一つだと判明。
「重み」を感じさせるような表現
・ダイスが振られてから自分がボタンを押すことで目が確定する演出
→ダイスに命運を託すという気持ちを乗せられるようになった。
・自分の駒が画面に大きく表示され、ボタンを押すことで配置される演出
→駒に自分が憑依する儀式のように感じられる。
デジタル化のその先へ
プレイヤーに楽しい時間を提供するため、ゲームのルールや見た目を大きく変更する判断も時には必要になってきます。
現実でのプレイでは「ゲームマスター」という進行役が必要なものも、デジタルであればシステムに任せることができる。そのため、プレイの負担を減らしたり、プレイヤー人数の制約を減らしたりすることができるたそうです。
元のルールを大きく変更することで、待ち時間の解消だけではなく、どのタイミングで回答するかというジレンマを生み出すことに成功。現実であれば誰が早くに答えたか曖昧になりがちだったことがデジタルでは厳密な判定が可能となったそうです。(画像『この顔どの顔?』)
まとめ デジタル化してみてどうだったか
デジタル化でぶつかった壁
・現実でプレイするときに自分たちは何を感じているのか。
・デジタルでそぎ落とされてしまっているものは何か
デジタル化のその先へ
・ボードゲームとデジタルゲームの得意・不得意は何か
デジタルにはいいところが沢山! いいところを伸ばすのが大事。オインクゲームズはこれからもボードゲームのオンライン化を進めていきます。
ちょっとしたUIで面白さが変わるため、テストプレイを多く行うことが大事!!
質疑応答
デジタル化するのに向いていない、難しいと感じるゲームはあります。オインクゲームズの製品でいうと、『インサイダーゲーム』ですね。こういった会話が主体のゲームは難しいなと感じています。
それから、テーブルの面積を大きく使うゲームは画面に納めるのがすごく難しく感じています。デジタル化するにはかなり試行錯誤が必要になるなと思います。
ご登壇者
-
新藤 愛大さん
株式会社オインクゲームズ
デジタル部 UIデザイナー・プログラマー -
<講演者プロフィール>
2014年より株式会社オインクゲームズにてプログラマーとして勤務。これまでにリリースされた全てのデジタルゲームのUIアニメーションや演出を手掛ける。近年ではデザイナー業務も行う。「レッツプレイ!オインクゲームズ」ではUIデザイン、モデリング、UIアニメーション、演出を担当。
「レッツプレイ!オインクゲームズ」(2021)
「とらきちのトラキッチン」(2021)
「タケシとヒロシ」(2019)
「エフェクト/UIモーションの役割〜背後にある意図とその実現」(CEDEC 2016)<受講者へのメッセージ>
ボードゲームのデジタル化は我々にとっても初めての挑戦で、作っていく過程で様々な発見がありました。ボードゲームとデジタルゲームの双方を長く作ってきたからこそ分かった知見をお話し致します。
-
佐々木 隼さん
株式会社オインクゲームズ 代表
ディレクター・ゲームデザイナー
グラフィックデザイナー -
<講演者プロフィール>
本作では、ディレクションとゲームルールの監修を担当。
デジタルゲーム、アナログゲームの双方の開発に携わっている。 「レッツプレイ!オインクゲームズ」ではディレクションとゲームルールの監修を担当している。収録されている全てのゲームは元々ゲームデザイナーとして制作したもの。
(CEDEC公演中の進藤さんによる紹介にて)<受講者へのメッセージ>
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※現役ゲームクリエイターやゲーム企業を目指す学生が約5500人参加しています。(2022年12月現在)
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