ゲームクリエイター図鑑No.004 矢部良輔 #02「自分の好きなもので数を打てば、何かヒットする」

「ゲームはおもしろい、ゲームを作ってる人も実はおもしろい」

多種多様な技術を持った人々が集まるゲーム業界。あの魅力的なゲームたちは、どんなゲームクリエイターが生み出しているのか。ベールに包まれた「ゲームクリエイター」の生態を解き明かし、この地に生息する「ゲームクリエイター図鑑」の完成を目指す。その過程として、一部のレポートを公開しよう。

クリエイター図鑑 No.004
インディーゲームを開発している株式会社ガンズターン代表の矢部良輔さん。  @gunsturn_tw
絵しりとりオンラインお絵かきゲームの『イラストチェイナー』はAppStore無料ゲームダウンロードランキングで1位を獲得。何回も作って失敗を繰り返し、それでも趣味で続けたことが実を結んだと話してくれました。

「単純に作るのが楽しかったんですよね」

──鉄道のシステムエンジニアをやりながら、趣味でゲームを作っていたんですね?

そうです。ノベルゲームと言うんですかね。読むだけのゲームが僕は好きで。大御所で言うと『月姫』とか、ああいうゲームを作りたくて社会人になってから趣味で作っていました。僕がゲーム業界に転職する少し前からスマホが普及し始めて、iPhone向けに『リズモグ』というモグラ叩きの音ゲーを出したんです。全く売れなかったのですが、それを作るのがすごく楽しかったんです。

 

──その頃は自分で作ったゲームをスマホで出すケースは少なかったのでは?

単純に作るのが楽しかったんですよね。スマホを触ること自体が当時は珍しくて、あのきれいな小さな画面で自分の作ったゲームが動かせるのであれば、やらない理由はないと思いました。そのためだけにMacを買って、X-CODEもインストールして。でも忙しかったので、休み休みやりながら1年ぐらいかかって完成させました。その頃にはいろんな方々が自分で作ったゲームを出してきていました。

売れなかったですけど、転職する際はポートフォリオみたいな感じで「こんなゲームを作りました」と出したのですが、意外にも採用してもらえました。少人数の会社ではありましたけど、そこでチームで働くやり方などを勉強させてもらって、そこから大きめのゲーム会社に行きました。

 

──働きながら、1週間の『ゲームジャム』にも参加していたんですよね。

そうですね、それは完全に趣味で参加していました。やはり1週間ってちょうど絶妙な期間で、割としっかりプランを練ることも、UIに凝ることも、頑張ればできるんですよね。1日だと動くものを作って終わりなんですけど、1週間だったら割とちゃんとしたゲームになります。

たまたま、ゲームジャムに過去に参加された方々のTwitterへの投稿を見て、楽しそうだなと感じまして。その時、趣味で作りかけのゲームはいっぱいあったんですけど、なかなか発表することがなかったので、自分にモチベーションを与える意味でも『ゲームジャム』に参加しようと思いました。

「思い付きで作るのが好きなので、個人の方が楽しい」

──個人とチーム、ゲーム作りにはどんな違いがあると思いますか?

違いは当然あるんですけど、僕は個人で作る方が向いていると思います。やっぱり個人だと思い付きがちゃんと作れるのですが、チームの場合は作り始める時点でどんなゲームにするのかを全員で共有できていないと上手く進まなかったりします。僕は思い付きで作るのが好きなので、個人の方が楽しいですね。

 

──そんなに簡単なことじゃないと思いますが、絵しりとりの『イラストチェイナー』ではどのように1位を獲得したんですか?

絵しりとりで1位を取った時も、半年ぐらい前からTwitterとかでずーっと「いつか1位を取りたい」と言ってたんですよね。それで実現したので、一応言っておけば何かなるのかなと。絵しりとりの1位は運だと思うんですけど、それまでに何回も自分で作って失敗してきました。だからやっぱり数を打つのが大事なんだと思います。

 

──継続することが大事、ということですね。

「絶対この1発で当ててやる」というつもりでやるのはちょっと辛いです。自分の好きなもので数を打てば、何かが世間にヒットするだろうと。続けることが大事ですね。僕の場合は最初から独立していたわけじゃなく、会社勤めで安定した生活を送る中で、趣味の時間を使ったチャレンジが花開きました。ストイックに突き詰めなくても、そういう生き方もあるのかなと思います。

 

──それでもゲームを100個作ってもヒットしないこともありますよね?

100個作る時点ですごいですよ(笑)。100個と言わず、自分の作りたいゲームを20個ぐらい作ったら、1個ぐらいは当たるんじゃないかと思います。それでダメなら一度立ち止まって考えたらいいんです。

「1位を取れた瞬間はとにかく手が震えてました」

──『イラストチェイナー』が当たった時は、どんな受け止め方をしましたか?

ロングテールでそこそこヒットするアプリになるとは思っていたんですけど、1位を取れるとまでは思っていませんでした。2019年の4月末リリースで、7月の中頃に1位になりました。最後の2週間が怒涛の伸びだったんですが、それまでは1日100ダウンロードもなくて、僕が入らないと誰ともマッチングしないような状況が続いて、会社の休憩時間にこっそり接待プレイしたりして(笑)。1位を取れた瞬間はとにかく手が震えてました。信じられないって気持ちでしたね。

┗2019年7月 AppStoreでランキング1位を初めて獲得されたときの矢部さんの反応

┗2020年5月 AppStoreでランキング1位を再度達成された矢部さんの反応。

 

──その時はまだ会社でお勤めですよね? 周囲の反応はどうでしたか?

「今、ドクターマリオの上なんだよ」と言っても、みんな真に受けてくれなくて「ああ、そうなんだ」ぐらいの。僕もちょっと自分で言うのが恥ずかしかったですね。でも、1位を取った段階で一気にユーザー数が増えて、サーバーの維持費だけで会社の給料を超えたんです。それならもう自分が割ける時間をこっちに持って行こうという判断で辞めさせてもらいました。上司は「本当にすごいことだから胸を張って、今後も頑張ってください」と背中を押してくれました。

 

──独立するのに悩みませんでしたか?

3日間は悩みましたけど、悩み始めた時にはもう心は決まっていました。独立してからたくさんのアプリ開発者の方々と出会って、いろんな輪が広がりました。チームで仕事をしていないとはいえ、似たような境遇の人がいっぱいいます。

会社にいるとすごい情報がいっぱい入ってきますけど、外に出ても一緒に何かを作る仲間はいるし、僕にとっては今の方が楽しいですね。今はまた、イラストチェイナーの時と同じデザイナーさんと組んで、全くジャンルの違うゲームを仕込んでいるところです。そのゲームを世に出して、また無料ランキングで1位を取りたいですね。

#02まとめ

『イラストチェイナー』のヒットはサーバー代の維持費が給料を超えるほど。独立に悩んだ頃には心は決まっていたという矢部さん。「会社から出ても、ものづくりの仲間がいっぱいいて輪が広がった」と充実したクリエイターライフを伺えた。

ガンズターン 公式サイト

株式会社ガンズターンは、スマートフォンの企画・開発・運営を行っています。「楽しいことにまじめなアプリ」制作を目指し、現在…


 ゲームクリエイターズギルドとは
ゲームクリエイターが生涯現役でいられる世界を目指して、 ノウハウ還流の場やクリエイター同士のコミュニケーション機会など、 クリエイターの生涯活躍を支援する活動をしています。
会社の垣根を越えて、業界全体が協力してクリエイター育成が出来る 仕組みづくりを日々模索しています。
ゲームクリエイターズギルド 公式サイトはこちらから

GCGではゲームクリエイター甲子園の他にも、FB会などの甲子園関連コンテンツ、ゲームクリエイターを招いたトークイベント、企画書講座、就活相談など様々な活動をしています!

▼学生向けLINEの登録はこちらから!

▼社会人向けLINE登録はこちらから!

GCG会員になると開催予定のスケジュールの確認やWEB会員証をゲットできます。

\“いいね”“フォロー”で応援お願いいたします!/